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しおりを挟むおうちに帰ると義兄さまも帰ってた。ついいまさっきお城から戻ったらしい。
「お帰りなさい!」
「セレナードもお帰り。久々に出かけて疲れなかったかい?」
「疲れた!生徒会の書類が溜まりに溜まってたからがんばった!」
「それは偉いね」
頭を撫でられながら、ご褒美にデザートがスペシャルプレートだったことも報告。
お着替えしてから義兄さまのお部屋に向かった。
最近は義兄さまも父さまも忙しかったからあんまりお話してないんだ。
お城にいるときは暇すぎてもう当分寝なくていいって思ったけど、やっぱり眠くなるし睡眠は大事だって再確認したこと。
こっそりたぬきを探しにいこうとしたけど、お部屋のドアを開けたとたんに使用人に見つかっちゃって行けなかったことなんかを話す。
「たぬき?」
首を傾ける義兄さまに僕も反対に首を傾げる。
「前に義兄さまお城はたぬきがいっぱいだって……」
たぬきのことを僕に教えてくれたのは義兄さまなのに忘れちゃったのかな?って思っていると、義兄さまは思い出したようにうっすらと笑った。
「ああ、古だぬきか」
お城のたぬきは年をとってるのか。
そうだ!
「ねぇ義兄さま、たぬきってなに食べる?」
餌付けをするのになにを持っていけばいいか迷ってたんだった。
この前はとりあえずお部屋にあったビスケットをポケットに詰め込んで出発した。
……行けなかったけど。
「たぬきは雑食じゃないかな?でも探しにいっちゃダメだよ」
「なんで?」
「そもそも一人で歩きまわっちゃダメだっていつも言っているだろう?誘拐されたり変な人が近づいてきたらどうするんだ」
「義兄さまかエリオットといっしょならいい?」
「ダメ」
あっさり却下されて僕はブー垂れた。
尖らせた唇をちょんっとつつきながら義兄さまは困り顔だ。
「お城のたぬきは可愛くないし見てもつまらないよ。動物が見たいなら今度動物園でも連れていってあげるから」
動物園?!
それは行きたい!!
……でもどうしてお城のはダメなんだろう。
なんで?って聞いたら「危ないから近づいちゃダメ」って。
危ない……。
「噛むのっ?!」
「すぐ噛みつくし、嘘つきでふてぶてしい害獣たちだよ。セレナードみたいな子は餌食にされちゃうから近寄っちゃダメ」
可愛いたぬきを餌付けするつもりが僕が餌なの?!!
義兄さまの言葉に、たくさんのたぬきがぐわって歯を向いて襲ってくるとこを想像してしまい僕は震えた。
お城のたぬき怖い!
しかも可愛くもないなんて……古だぬきだからだろうか。
猫とか犬は年とってても可愛いけれど、やっぱり生まれたての子猫とか子犬とかのちっちゃい子の方が可愛い。
とりあえずお城をお散歩するときは噛まれないように気をつけよう。
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