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しおりを挟むわりと出たとこ勝負な乱暴な計画ではあるが、緻密な計画よりも勢い任せの方が上手くことが運ぶこともままある。
護衛や、二手にわかれた男性陣が令嬢たちの不在に気づいてもその頃にはすでに犯人たちは出国していた可能性があるし、まさに危機一髪だった。
「本当に恐ろしいですわ」
拐われ、売り払われていた可能性もある書記令嬢が自分の身体を抱きしめながら呟いた。
庶務たちも涙ぐみながら「「ご無事で良かったです~」」と慰めている。
「未遂で済んで何よりです!先輩たちが拐われてたらと考えると…………生きた心地もしませんっ」
最悪の事態を想像して泣き出した弟子を見るエリオットの表情はなんともいえない。
こう、苦虫を噛み潰したような、砂糖の塊を食べたらしょっぱかったかのような、でも安堵やらも混じっている……そんな色んな感情をあわせ持ったなんとも形容しがたい表情だ。
つまりは変な顔。
「どうした?」
「いや……結果的には良かったんだが……」
問いかける書記にあ~だの、う~だの唸り声をあげるエリオット。
結果的に良かったなら素直に喜べばいいじゃないか!
まったく困ったやつめ……と思いながら僕は追加で運ばれてきたデザートにとりかかる。
チョコのミニサンデー。
本当はおっきなパフェにしようと思ったんだけど副会長に止められたからミニ。
……おっきくても全部食べれるのに。
「犯人の運のツキはそいつに目をつけたことだ」
納得いかない表情のままエリオットが指差したのは僕だ。
人を指差しちゃいけないんだぞ!
「セレナード?」
「なんで先輩に目をつけたことが計画の失敗に?」
エリオットはますます難しい表情だし、副会長と書記令嬢も半笑いのような微妙な表情だが、お手柄な僕は胸を張った。
お茶会の会場で僕をガン見してきたおじさん、あれが会長に成り済ました兄だった。
さすがに王家主催のお茶会に会長が姿を見せないのは可笑しいし、側近が裏切らないか見張るためにあの場にいた犯人は着飾った僕に目をつけたんだ。
「当初の計画じゃ拐うのは令嬢だけの予定だったのに、セレナードを目にした犯人が欲を出したんだよ」
「先輩の美貌に目が眩んだってわけですね」
「確かに会場でも一際目をひきましたからね」
「ええ、妖精のようで素敵でした」
おい、エリオット。
そのしょっぱい顔はなんだ?
「……まぁそれでだ、見掛けだけは極上のそれに目をつけた犯人はターゲットに急遽数人の令息を追加した」
実際、当初はお茶会のあとは僕も義兄さまたちと一緒の予定だった。
だけど歌や舞をどうかってお誘いがかかって、そっちのが楽そうだから受けたんだ。
剣だの小難しい政治の話には興味ないし。
まさか誘拐のためだとかびっくり。
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