28 / 47
28
しおりを挟むそうやってよしよししてるとエリオットもやってきた。
肩で息をする彼の隣には王宮医のおじいちゃんもいる。僕も何度もお世話になってるおじいちゃんだ。
「ようやくお目覚めになったか。さて、具合はどうですかな?」
聴診器を弄りながら近づいてきたおじいちゃんに「それが……頭が痛いらしくて……」と母さまが眉を下げて言うと義兄さまとエリオットがすごく慌て出した。
「もう痛くないからへいき」
過保護な義兄さまはともかく、エリオットまで血相を変えて心配する姿にびっくりしつつ答えた。
実際、いまは痛くない。
体がダルい感じはするけど。
ちょっと失礼、そう言って聴診器を当てられ、あーとお口の中を覗かれたり目にペンライトを当てられた。
ふむ、とお髭を触るおじいちゃんにみんなの視線が集まった。
「問題なし。起き抜けに頭が痛かったのとダルさは、慣れない薬の影響と…………寝すぎによる影響ですな」
「新記録」
指を三本たててつき出せば、エリオットには「心配させやがって」と毒づかれ、義兄さまには「本当に?本当にどこも具合は悪くないんだね?」と何度も確認された。
五回目のやりとりでやっと信じてもらえ、よかったとギルの表情が緩んだ。
「とはいえ、数日は安静にして様子を見た方がいいですじゃろ。なんせ薬が効きすぎておる」
「そういえば、僕だれに薬を盛られたの?」
聞くタイミングを逃していたが、重要なことに気づいて聞いた。
その途端……部屋の空気が変わった。
具体的に言うと、仄暗い殺気が渦巻いている。
発生源はギルにエリオット、それに使用人たちだ。
そしてエリオットの口から語られた名は……知らない人だった。
……誰?
「商会の人間だ。恰幅のいいのが居ただろ?」
「すっごい見られた人」
「そう」
お茶会の準備に携わった商会にたしかにそんな人が居た。
名前を名乗る挨拶はしてないけど会場の隅に商会の人らがいたから会釈だけしたんだけど、お腹ゆさゆさの偉そうなおじさんに目を見開いてガン見されたんだ。
見惚れたりされるのはよくあることだけど、あんまりにも凝視してくるおじさんに義兄さまの機嫌が悪くなったからよく覚えてる。
……と、なると。
「誘拐?」
目的はやっぱりそれだろうか。
エリオットいわく、僕は変質者ホイホイらしいから。
失礼な言い分だが、過去の誘拐未遂の件数を考えれば否定はできない。
でもみんなが全部防いでくれているから、いまいち危機感も持ててなかったりする。
「目的は誘拐ではあったんだけどね……」
含みを持たせて呟いた義兄さまの瞳はハイライトが消えている。
これはいけないと手をぎゅっとすれば僕を見て微笑んでくれた。
危ない、危ない。
ギルがダークサイドに堕ちてしまう。
エリオットも義兄さまの危うさに気づいたようで「ま、お前も目覚めてばっかだし、詳しい話はまた今度な。体もダルいんだろ?いまは休め」と話題を変えてきた。
ちょっと気にはなるけどその方がいいだろう。
312
お気に入りに追加
774
あなたにおすすめの小説

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。


嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる