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しおりを挟むちょっと眠気でふらふらしつつもエリオットに手を引かれて馬車へと向かう途中、なんか周りがざわざわしてた。
「おい、あれって……」とか「素敵っ!」なんて潜めた声がちらほら。
「一体なんだ?」
友人だろうか?エリオットが近くにいた人を呼び止めその人が示す方に視線をやると……やたら豪華な馬車があった。
王家が公務で出向くときのように豪華な馬車と、やたらきらびやかな男性にお付きらしき人たち。
見るからにただ者でない異国の貴人。
だけど僕の視線はみんなが騒ぐその人よりもその隣に立つ人物に釘付けだ。
ふわりと笑みを浮かべたギルが一歩踏み出すと同時に、僕もエリオットの手を離して駆け出していた。
「義兄さまっ!!」
ぽすんっと抱きつけばいつものようにぎゅっとしてくれる義兄さま。
懐かしいコロンの香りに嬉しくてぐりぐりと胸に懐いていると、つん、と痛くない強さで髪を引かれた。
笑みを含んだ声が落ちる。
「久しぶりなんだ。可愛い顔を見せて?」
クスクスと笑みを含んだ甘い声に、抱きついたまま顔をあげる。
「お帰りギル」
「ただいま。あぁ、やっと会えた」
「「ギルバート」」
ハモって義兄さまを呼んだ二人がちょっと驚いたようにお互いを見る。
エリオットと知らない人は軽く会釈をしてから義兄さまに顔を向けた。
エリオットがちょっと余所行きの顔してる。
「こちらは?」
視線で示され、義兄さまは僕を離して居住いを正し礼をとる。
「お久しぶりですエリオット殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。こちらはラーニャ国のアギア殿下です」
まさかの王子さま!
……ということはこの人がタヌキのプロフェッショナルな王子か。
さすがにペットは連れてきてないよな?見たい……。
「私が帰国するのについてきたばかりでなく、久々の再会にまでついてきやがったんです」
あれ?ちょっと義兄さまの言葉が崩れた気が……。
「どうしたんだい?セレナード」
気のせいか。
すごくにこにこしてるし。
「義兄さまはどうしてここに?」
王子同士で挨拶している間にくいっと袖を引いてこそこそと聞いた。
帰国してばっかりだし疲れてもいるはずだ。
学園に急ぎの用事でもあったのかな?
「もちろんセレナードを迎えにきたんだよ。一秒でも早く君に会いたかったからね」
パチンとウインクされ嬉しくなって「僕も会いたかった」ってまた抱きついた。
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