麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴

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「……ということがあって婚約した」

一瞬の沈黙。

その後の反応はまちまちだった。
引き続き黙り混む派と、悶えたり机バンバンしたり暴れる派。

「結局、お前の決め手は……?」

「きゅんときた」

エリオットと書記がなにやら胡乱な目をしてる。なぜだ。

「それはギルバートに対してか?好きなだけ寝ていいって言われたからじゃなくて?」

「両方」

僕の理想を全て叶えてくれる義兄さまに ずっきゅん! だった。

即OKした。

父さまたちにも報告したら最初はビックリしてたけど、僕をお嫁に出さなくていいって喜んで義兄さまにサムズアップしてグッジョブしてた。
使用人たちもお祭り騒ぎでその日はお祝いだった。

「睡眠につられただけじゃねぇの?」

エリオットも書記もしつこい。
思わずじとっと見る僕に、肘をついて書記が意地悪に笑った。

「じゃあ寝るのと婚約者なお義兄さまどっちが好きだ?」

バカな質問を投げ掛ける書記に哀れみを向けてしまったのは仕方がないことだろう。

「しょーもない小娘みたいな質問」

やれやれと首を振っていると弟子がぶっと吹き出した。

慌てて口を押さえたけど間に合わなかったっぽい。書記に睨まれて怯えてるくせに肩の震えは収まらない。

たしかにこのムキムキが小娘とか笑える……いや、やっぱり怖すぎて笑えないな。
書記がドレス着てたらダッシュで逃げる。

「お前にドレスは似合わないぞ?」

「誰が着るかっ!!」

親切心で教えてやったのに怒鳴られた。

だが着る予定がないのは誰にとってもなによりだ。

「っーか小娘とかお前が言い出しただけだしな?」

呆れ顔のエリオットにきょとんと首を傾げた。

「だっておばさまが言ってたぞ?」

おばさまっていうのはエリオットの母さま、つまりはこの国の王妃さまだ。

「わたしと仕事、どっちが大切?とかしょうもない質問するような小娘はダメよ。って」

「お前……母上とどんな会話してんの……?」

さぁ?なんの会話でそんな話になったのかはよく覚えてない。
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