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しおりを挟むそれはなんのことない休日の午後だった。
暖かな昼下がり、ごはんを食べてお腹いっぱいの僕は義兄さまの部屋でうとうとしていた。
仕事をする義兄さまの肩やら胸やらに頭を預け、義兄さまを背もたれにしてソファーに座る。それが義兄さまの部屋での僕の定位置。
たまにころっと寝っ転がって義兄さまの足を膝枕にすることもあるが…………あれは正直あまりオススメしない。かたい。
やるならふわふわクッションを完備すべきだ。
仕事をしながらときおり長い指が僕の髪を撫で、ほっぺをつつく。
別に邪魔をしているわけではない。
真面目に仕事をしている横でぐうたらしてたら邪魔かと思ったけど、義兄さまがこの方がはかどると言うのだ。
父さまも母さまに同じようなこと言ってた。
なのでこれは邪魔でなくお手伝い。
たまーに実際の仕事も手伝うこともある。
眠くなくて、暇で気が向いたときとか。
「…………ド」
意識が微かに浮上する。
頬を包み込む感触、柔らかでほんの少し湿り気を帯びたなにかがそっと額に落とされたのを意識の奥で感じた。
「お茶の時間だよ、セレナード。今日はおやつを食べないのかい?」
おやつ……。
その単語につられるように鼻がくんっと無意識に動いた。
バターとメープルシロップの甘い香り。
パチリと瞳を開けば、義兄さまの顔のアップ。
僕を見つめるエメラルドの瞳はハチミツよりもなお甘い。
以前メイドたちがそう言ってた。
食べたことはないから事実かどうかは確認できていないし、今後も食べる予定はない。
……っと、ハチミツじゃなくてメープルシロップ。
鼻をくんくんさせながら起き上がれば「本日はパンケーキでございます」と皿を並べながらメイドが微笑む。
「パンケーキ」
三段になってクリームやフルーツが盛り付けらたそれに僕の視線は釘付けだ。
「アイスクリームはのせますか?」
「のせる。三個」
「ダメだよ。お腹を壊すから一個にしなさい」
「じゃあ二個」
「いけない、と言ってるだろう?私のを一口あげるから我慢おし」
「……」
無言で抗議するも、アイスは追加してもらえなかった。
この前お腹を壊したのは、きっとコンディションがよくなかっただけなのに。
絵本に出てきそうなパンケーキを食べて、ときおり義兄さまのアイスやフルーツもあーんしてもらってるとお腹いっぱいになった。幸せ。
ソファーでまったり食休みをしていると、隣に座っていた義兄さまが立ち上がり僕の前にゆっくりと跪いた。
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