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しおりを挟む「セレナードは保健室でもう充分寝ただけですよ」
副会長のいう通り、睡眠は充分に果たした。
なにせ一限の途中からさっきまで保健室でぐっすりだ。
「やっぱり具合が悪かったんじゃないですか」
「ぜんぜん」
「えっ?えっ?」
大きく首を振る僕に弟子は助けを求める目でエリオットを見た。
「当然のように俺を見るな」
「仕方ねーじゃん。保護者さまだし」
「誰が保護者だ!」
「そうだぞ。僕の方が年上だし保護者というなら僕の方だ」
エリオットは僕より誕生日が2ヶ月遅いから僕の方がお兄さんだ。
「「お前は黙っとけ」」
「体調は悪くないけど周囲からは体調が悪いように見えたんですよ」
「アンニュイだった」
教室でアンニュイしてたら心配された。
具合が悪いのか問われ、大丈夫ですって言ったのに授業の途中で教師が「やっぱり具合が悪そうだ。保健室で休んできなさい」と言い出した。
優等生の僕としては人生の先輩でもある教師の言葉に素直に従うしかないだろう。
……と言うことで、保健室で爆睡した。
ちなみにクラスが違う副会長や書記も知っているのは、一限から四限までぶっ通しで保健室で過ごしたから噂になっていたらしい。
「お前の外見マジで得だよな」
呆れたようにこぼす書記の言葉はある意味事実。
今回のようにいいこともある。
だが……。
「普通に話しているだけで相手が鼻血出して倒れたり、やたらはぁはぁしながら近づかれても羨ましいか?」
「悪かった」
謝られた。
素直でよろしい。
下手すると襲われそうになったり、誘拐されそうになるからいい面だけじゃない。
知らない人からお菓子をもらったり、ついて行っちゃいけませんって家族や使用人たちからも口をすっぱくして言われている。
あと学園ではエリオットから離れちゃダメなんだ。
あれ?
これじゃあエリオットが僕の保護者みたいじゃないか。
僕がお兄さんなのに。あれれ?
「で、どうしたんだ?」
腕を組んで首を傾げていると、机に肘をついて顎を乗っけたエリオットが聞いてきた。
王子にあるまじきお行儀だが、その瞳には心配の色が浮かんでいる。
長い付き合いだけあって、僕のアンニュイに気づいているのだろう。
「考えてたんだ……」
マグカップを両手で抱えて、ぽつりと呟く。
エリオットの背にした窓からは、いまだひらひらと枯れ葉が舞う。
蝶のように漂いながら落下していくその様を眺めながら睫を伏せた。
「どうして人は…………冬眠しないんだろう?」
なんとも言えない沈黙が流れた。
エリオットや書記は脱力して額を押さえているし、副会長らは半笑いのような微妙な表情を浮かべている。
そんなことかという心の声が聞こえた気がしてムッと唇を尖らせた。
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