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しおりを挟む……結局、その日の会議で僕の提案は可決されなかった。
実に遺憾だ。
ふて腐れていると副会長がお菓子をくれた。
今日のお菓子はマドレーヌ。
僕はお昼寝タイムを確保するために昼食は軽めなので放課後はいつもお腹がすく。
マドレーヌ二個とチョコレートを食べた。
チョコレートは後輩の書記(脳筋じゃない)の差し入れらしい。
気が利くな。あとで褒めておこう。
書記も後輩を見習えばいい。
お菓子を食べてたらうとうとしてきた……。
柔らかく頭を撫でてくれる手。頬を包み込む大きな掌。
起こそうとしているのか、深い眠りに誘おうとしているのかわからないぐらい優しく甘い声が何度も名前を呼ぶ。
「……ナード、セレナード。ほら起きて、夕食の時間だよ」
ぐらぐらと揺れる身体……ん?ぐらぐら?
「セレナード!」
違う、これは義兄さまの声じゃない。
ぱちりと目を開けばエリオットが僕の両肩を掴んで揺さぶっていた。
ぱちぱちとまばたきしてみても目の前にあるのは優しい義兄さまの微笑みでなく、眉間にシワを寄せたエリオットの顔だった。
どうやら夢を見ていたらしい。
「ごはんは……?」
「家に帰ってから食え。ほら起きろ。迎えがくるぞ」
まだ夕ごはんの時間ではないらしい。
それどころかまだ学園だ。
「あー先輩ほっぺ赤くなってますよ」
「え?殴られた?」
弟子の言葉にほっぺたを押さえて目の前の相手を仰ぎ見れば、エリオットのこめかみがピクリと震え、伸ばされた手にほっぺたをつねられた。
「いひゃい!いひゃい!」
ひどい……ただの冗談だったのに……。
机についていた方だけでなく、きっと両方とも赤くなっているだろうほっぺたを押さえながら恨めしげにエリオットを睨む。
はっと鼻で笑われた。
「こんなのがこの国の王子で生徒会長……世も末だ」
「お前に言われたくねぇ」
僕は暴力ともガラの悪さとも無縁なのになにを言っているんだ?コイツは。
首を傾げていると隣室の戸締まりを済ませた副会長が戻ってきたので、言いつけた。
「手を出すのはダメですよ」と注意されたエリオット。やーい怒られた。
「そもそも会長、よくセレナード先輩のあの顔をつねれますね。この国宝級の顔面を!」
「確かに。俺も怯むわ。いらっとする気持ちはやべーくらいわかるけど」
「見かけだけは極上だけど中身コレだしな。あと単純に見慣れてる」
あごでコレと示すエリオットは僕の扱いが色々雑だと思う。
「えー見慣れます?僕まだ全然ですよ。10年経とうと慣れる気がしません。未だに見惚れますし緊張しますもん」
「僕は美しいからな!」
弟子の言葉にえっへんと胸を張る。
ぶっちゃけ、顔だの髪だのの美しさにさほど興味はないけど、みんな褒めてくれるから僕が美しいのは知っている。
「性格がこんな感じだって知ってもそうですからね……」
どうした弟子?
なぜに視線を反らすんだ?
「ほら、早くでてください。鍵をかけますよ」
副会長に促され、生徒会室を出た。
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