26 / 33
24話 落下するモノ
しおりを挟む
最近僕の通う塾では、次々に臨時の講師が辞めていた。何でもその原因は、窓に映る落下する人の姿が原因らしい。しかも、その姿は人によって異なるそうで家族であったり、自分自身であったりと多岐に渡っているそうだ。
一体僕の場合だと何が見えるんだろうと思ってしまったのが、いけなかったらしい。塾のトイレから出ると、辺りは異様なほど静まり返っていて、誰もいない廊下と扉だけがある一本道になっていた。しかも、この廊下は何故か右側に窓があるだけになっており、左手は何もない壁のみになっていた。
どうみても、異空間に招き入れられてしまったらしい。試しに入ってきたトイレの扉を開けようとしてみたけどびくともしなかった。仕方がないので、一本道の先にある扉を目指していくと、窓の外に何かが落下していくのが見えた。
(あ、あれはまさかあの時の……)
僕の目に一瞬だけ映ったのは、ヘンタイさんにカッパへと変えられてしまう前の人魚の後ろ姿だった。
こんな形でまた人魚に出会えるなんてという感動のせいか、僕はこんな状況だというのにドギマギせずにはいられなかった。
心臓が高鳴るのを感じながらも次の扉を開く。扉の先は来た道と同じような作りになっており、どうやらループしていく形の空間のようだった。
僕は期待に胸を膨らませながら、一歩一歩前へと歩んでいく。すると、やはり人魚が落下していくのが見えた。だけど、前回とは違い少しだけ体全体がこちらに向いているようだった。
(もしかして、進めば進むほどこちらに向いていくのかな)
人魚の美しい姿を思い出し、僕は思わず唾を飲み込んでしまった。このまま進めば、人魚の姿をもう一度拝めるかもしれない。だけど、進んだ先にあるのはきっと絶望的なものだろう。徐々に向きが変わっていくことから大体の予想はついてしまっていた。
しかし、僕は一秒にも満たない時間があると信じて突き進んでいく。
ついに待望の時が来た。僕は目を見開いて窓の外を凝視する。世界がすべて緩やかに感じられたけど、実際に落下のスピードもかなり遅くなっていたらしい。人魚が頭からゆっくりとこちらに向いて降ってくる。
顔が見えるか見えないかになったその時、最悪の事態が起こってしまった。人魚の顔が朽ち果てていき、まるでゾンビのようになってしまったのだ。と、同時に巻いていた海藻も萎れて、人魚だったものよりも先に落ちていった。
僕が放心状態になりかけていると、人魚だったものは何故か下を見た後に、窓に手をかけてぶら下がり始めた。一瞬、僕のことを襲うつもりなのかと思ったけどどうやら違うらしい。
下のほうからやけに明るい光が照らしていて、まるで人魚だったものを招いているようだった。覗き込むようにして、下を見てみると本当に招き入れていた。
下には『welcome』と書かれたマットが敷かれており、そのマットには顔のようなものまでが見受けられた。遠目だからはっきりとは分からないけど、こんなことをするのはヘンタイさんくらいだろう。
人魚だったものは、気づけば人型の屍のようなものへと変貌していた。腐りかけた目が窓を開けるのを懇願しているように思えたので、僕はスマホを取り出して試しにライトを照らしてみた。
瞼がないせいか、効果的だったようで、屍は顔を仰け反った拍子に掴まっていた手を放して落ちていく。
だけど、今回で落ちるのは最後になるに違いない。なんせ、下には待ちわびとが待機してるからね。
断末魔のような声が聞こえなくなると、いつもの塾の廊下に戻っていた。戻ってこれたことにため息をつくと、一粒の涙が僕の頬を伝わり零れ落ちた。
一体僕の場合だと何が見えるんだろうと思ってしまったのが、いけなかったらしい。塾のトイレから出ると、辺りは異様なほど静まり返っていて、誰もいない廊下と扉だけがある一本道になっていた。しかも、この廊下は何故か右側に窓があるだけになっており、左手は何もない壁のみになっていた。
どうみても、異空間に招き入れられてしまったらしい。試しに入ってきたトイレの扉を開けようとしてみたけどびくともしなかった。仕方がないので、一本道の先にある扉を目指していくと、窓の外に何かが落下していくのが見えた。
(あ、あれはまさかあの時の……)
僕の目に一瞬だけ映ったのは、ヘンタイさんにカッパへと変えられてしまう前の人魚の後ろ姿だった。
こんな形でまた人魚に出会えるなんてという感動のせいか、僕はこんな状況だというのにドギマギせずにはいられなかった。
心臓が高鳴るのを感じながらも次の扉を開く。扉の先は来た道と同じような作りになっており、どうやらループしていく形の空間のようだった。
僕は期待に胸を膨らませながら、一歩一歩前へと歩んでいく。すると、やはり人魚が落下していくのが見えた。だけど、前回とは違い少しだけ体全体がこちらに向いているようだった。
(もしかして、進めば進むほどこちらに向いていくのかな)
人魚の美しい姿を思い出し、僕は思わず唾を飲み込んでしまった。このまま進めば、人魚の姿をもう一度拝めるかもしれない。だけど、進んだ先にあるのはきっと絶望的なものだろう。徐々に向きが変わっていくことから大体の予想はついてしまっていた。
しかし、僕は一秒にも満たない時間があると信じて突き進んでいく。
ついに待望の時が来た。僕は目を見開いて窓の外を凝視する。世界がすべて緩やかに感じられたけど、実際に落下のスピードもかなり遅くなっていたらしい。人魚が頭からゆっくりとこちらに向いて降ってくる。
顔が見えるか見えないかになったその時、最悪の事態が起こってしまった。人魚の顔が朽ち果てていき、まるでゾンビのようになってしまったのだ。と、同時に巻いていた海藻も萎れて、人魚だったものよりも先に落ちていった。
僕が放心状態になりかけていると、人魚だったものは何故か下を見た後に、窓に手をかけてぶら下がり始めた。一瞬、僕のことを襲うつもりなのかと思ったけどどうやら違うらしい。
下のほうからやけに明るい光が照らしていて、まるで人魚だったものを招いているようだった。覗き込むようにして、下を見てみると本当に招き入れていた。
下には『welcome』と書かれたマットが敷かれており、そのマットには顔のようなものまでが見受けられた。遠目だからはっきりとは分からないけど、こんなことをするのはヘンタイさんくらいだろう。
人魚だったものは、気づけば人型の屍のようなものへと変貌していた。腐りかけた目が窓を開けるのを懇願しているように思えたので、僕はスマホを取り出して試しにライトを照らしてみた。
瞼がないせいか、効果的だったようで、屍は顔を仰け反った拍子に掴まっていた手を放して落ちていく。
だけど、今回で落ちるのは最後になるに違いない。なんせ、下には待ちわびとが待機してるからね。
断末魔のような声が聞こえなくなると、いつもの塾の廊下に戻っていた。戻ってこれたことにため息をつくと、一粒の涙が僕の頬を伝わり零れ落ちた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる