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09話 噂のトイレ
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僕の通う小学校には、あまり人が立ち寄らない場所がある。それは、一階の隅にあるトイレだ。そのトイレは、階段を通り過ぎた先にある上に、そもそも一階には教室自体がないので入ろうとする人自体がまれなのだ。
だが、理由はそれだけではなかった。そのトイレには、有名な怪談で出てくるモノが出るのだ。そう、女子トイレや男子トイレの話で出てて来るあのモノ達だ。しかも、片方だけではなく男女両方ともに出てくる始末。
僕の周りにはどんだけ怪奇がいるんだろうね。もしかしたら、見える人が少ないだけで世界には、そういったモノ達が蔓延ってるのかな。
「おーい、マル。トイレなんて見つめて、どうしたんだよ?」
僕は廊下から噂のトイレの出入り口を見つめているところで、クラスの友人である佐々木君に声をかけられた。
「いや、階段を下りたら知らない大人の女性が、女子トイレに入っていくのが見えたから、ついね」
「げっ! 女子トイレって出るって噂のやつじゃないか! しかも、知らない大人って、それ幽霊なんじゃ……」
佐々木君の隣にいた男子生徒が怯えながら言った。顔は見たことはあるけど名前は知らない人だ。他のクラスの人かな。などと小首を傾げていると佐々木君がその生徒を親指で指した。
「マルはこいつのことあまり知らないんだっけ? こいつは、コウキといって幼稚園からの知り合いだ」
「知り合いってダチじゃないのかよ」
さっきまで怯えていたコウキ君が、すぐにツッコミを入れた。
「僕は……」
「マルって言うんだよな。こいつからよく聞かされてるよ」
僕が名乗ろうとした矢先に、コウキ君から言われてしまった。それにしても、佐々木君から『よく聞かされている』とは一体何を聞かされているんだろうか。
「うん、マルはあだ名だけどこれからよろしく。コウキ君もこの後ドッジボールに参加するのかな?」
「おうよ! ドッジと聞いたら参加しないわけにはいかないからな!!」
「お前、どんだけドッジボール好きなんだよ。呼んでもいないのにどこからか聞きつけてくるし」
佐々木君が呆れ顔をしながら言った。その横では、コウキ君が盛大な笑みを浮かべていた。だが、次の瞬間にはまたしても怯えた表情に戻っていた。
「なあ、話は戻るけどよ。さっき見たっていう女性って幽霊なのか」
「僕の見た感じでは幽霊じゃなくて人間だったよ。多分新しく入った臨時の先生じゃないかな」
「そうか。幽霊じゃないのか」
僕の話を聞いてコウキ君は、ほっと胸を撫で下ろした。どうやら、彼は怖い話の類が駄目なようだ。
「なんだ? まだここにいたのか。ボール取りに行ったんじゃなかったのかよ」
他のクラスの面々も次々に階段から下りてきて声をかけてきた。
「あ、そうだった! 悪い、今から急いで取ってくるわ」
コウキ君は、そう言うと慌てたように駆け出していた。
「さて、俺らも行こうか」
「僕は、ちょっと用を足してから行くから先に校庭に行っててくれる?」
僕は言うや否や男子トイレへと向けて歩いていく。
「ああ、分かった」
「トイレって……。マルの奴、相変わらず怖いもの知らずだな」
後方では、佐々木君の了解の返事や他の面々の声が聞こえてきた。
(怖いもの知らずっていうより、僕は怖いものを知りすぎているってだけなんだけどなぁ)
僕が心の中で、ため息をついていると佐々木君の大きな声が聞こえてくる。
「そうだった、すっかり忘れてた。マルゥー、姉ちゃんがありがとうだってよー!」
佐々木君のお姉さんが僕に礼を言っていたらしい。一体何のことを言っているのだろうか。僕にはぴんと来るものがなかった。多分あの時の階段のことを言っているのは分かるんだけど、その時、僕はあるものが気になっていたのだ。
お陰で、僕は心ここにあらずの状態になってしまい、記憶もあやふやになってしまった。
(僕、変なこと口走ってないよね)
僕は過去を思い返しながら男子トイレへと入っていった。
用も済ませて手を洗おうとしていると、突如、悲鳴が聞こえてくる。
「いやあああ、離して!」
何処から聞こえてくるのかと思い、トイレから外に出てみると、どうやら声は隣の女子トイレから聞こえてきたようだ。
「ちょ、ちょっと、何よこれ!?」
今度は、少女の驚くような声が聞こえてきた。一体、女子トイレでは何が起きているのだろうか。気になったのだが、先ほどの女性が襲われているわけではなさそうなので、僕は一先ず手を洗いに男子トイレへと戻ることにした。
あのトイレで少女の声。うちの学校の女生徒で、隣の女子トイレを使うものはいない。となると、今の声はまず間違いなく例の怪奇によるものだ。そして、そんな怪奇に悲鳴を出させるモノに、僕は一つだけ心当たりがあった。そのことに、気づいた僕の鼓動は少しだけ早くなった。
早く手を洗い終えないと、そう思った僕の後ろを何者かが通り過ぎていく。目の前の鏡には、先ほどの女性と何故か手首を縛られて引かれるように歩く少女の姿が映っていた。
僕が手を洗い終える頃には、スーツ姿の女性と晴れ着を着ている少女は、三番目にある個室のトイレの中へと姿を消していた。
あの狭い中に、大人と少女が入るのはきついのではないか。そんな疑問がふと頭の中によぎっていると、今度は少年の声が聞こえてくる。
「どうやってここに!? ノックの音も聞こえなかったのに……って何でキミが捕まってるんだよ!」
「この人に捕まって……」
「人間に僕たちが捕まるものなのか!?」
「そんなことより早く私を助けて!」
「え? 助け……って、うわ何をするんだ!? やめろおおお! 何で僕の服を脱がすんだよ!」
「ハァハァ、早くこれに着替えましょ?」
興奮した様子の女性の声が聞こえてきた。声は完全に女性のものだったが間違いなく中にいるのはヘンタイさんだった。
「ま、まさか……キミも……キミも、こんな目に……」
「――ッ!」
一体中では何が行われているのだろうか。そう思っていると今度はシャッター音が聞こえてくる。僕は好奇心の赴くままに歩みを進めていく。
「ちょっと窓を開けようかな」
言い訳をしつつ窓を開けながら、横目で開かれたままになっている一番奥のトイレの中を覗く。すると、そこはトイレとは思えない空間になっており、スーツ姿の女性が晴れ着姿の少年少女の肩に手を置いているところだった。
(なんだろう。入学式とか七五三とかで見る親子の記念撮影に見えるんだけど……)
僕が呆気にとられていると、ヘンタイさんが唐突に床に寝っ転がりだした。
「ハァハァ、今度はローアングルからね」
「コイツ、一体何なんだよ」
「し、しらないわよ」
二人があきれ顔で目を合わせた後に、ヘンタイさんを見下ろした。そんなヘンタイさんは、カメラ越しに少女たちを見つめていた。
「あ、見えそうになってるわよ」
見えそうとは一体何が見えそうなのだろうか。僕はつい詳細を問いただしたくなってしまったが、すぐに口を固く結んだ。
「ちょっと何見てるのよ!」
少女が怒鳴り声とともに、下で寝ているヘンタイさんを踏みつけた。
「余計に見えてるわよ。あら、その表情もいいわね」
ヘンタイさんは、痛烈な踏みつけを物ともせずにシャッターを切り始めた。少女はヘンタイさんの言葉を聞いて更に何度も踏みつける。そんな中で少年の方は、深いため息をついていた。
「おーい、マル。まだかかるのか?」
トイレの外から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。みんなを待たせてしまったようだ。僕は慌てて返事をする。
「今、手を洗い終わったところだからすぐ行くよー」
そう言いながら、早歩きでトイレの出入り口へと向かう。僕の後ろでは、尚も少女の怒鳴り声とヘンタイさんの喜びの声が男子トイレの中に響き渡っていた。
だが、理由はそれだけではなかった。そのトイレには、有名な怪談で出てくるモノが出るのだ。そう、女子トイレや男子トイレの話で出てて来るあのモノ達だ。しかも、片方だけではなく男女両方ともに出てくる始末。
僕の周りにはどんだけ怪奇がいるんだろうね。もしかしたら、見える人が少ないだけで世界には、そういったモノ達が蔓延ってるのかな。
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「マルはこいつのことあまり知らないんだっけ? こいつは、コウキといって幼稚園からの知り合いだ」
「知り合いってダチじゃないのかよ」
さっきまで怯えていたコウキ君が、すぐにツッコミを入れた。
「僕は……」
「マルって言うんだよな。こいつからよく聞かされてるよ」
僕が名乗ろうとした矢先に、コウキ君から言われてしまった。それにしても、佐々木君から『よく聞かされている』とは一体何を聞かされているんだろうか。
「うん、マルはあだ名だけどこれからよろしく。コウキ君もこの後ドッジボールに参加するのかな?」
「おうよ! ドッジと聞いたら参加しないわけにはいかないからな!!」
「お前、どんだけドッジボール好きなんだよ。呼んでもいないのにどこからか聞きつけてくるし」
佐々木君が呆れ顔をしながら言った。その横では、コウキ君が盛大な笑みを浮かべていた。だが、次の瞬間にはまたしても怯えた表情に戻っていた。
「なあ、話は戻るけどよ。さっき見たっていう女性って幽霊なのか」
「僕の見た感じでは幽霊じゃなくて人間だったよ。多分新しく入った臨時の先生じゃないかな」
「そうか。幽霊じゃないのか」
僕の話を聞いてコウキ君は、ほっと胸を撫で下ろした。どうやら、彼は怖い話の類が駄目なようだ。
「なんだ? まだここにいたのか。ボール取りに行ったんじゃなかったのかよ」
他のクラスの面々も次々に階段から下りてきて声をかけてきた。
「あ、そうだった! 悪い、今から急いで取ってくるわ」
コウキ君は、そう言うと慌てたように駆け出していた。
「さて、俺らも行こうか」
「僕は、ちょっと用を足してから行くから先に校庭に行っててくれる?」
僕は言うや否や男子トイレへと向けて歩いていく。
「ああ、分かった」
「トイレって……。マルの奴、相変わらず怖いもの知らずだな」
後方では、佐々木君の了解の返事や他の面々の声が聞こえてきた。
(怖いもの知らずっていうより、僕は怖いものを知りすぎているってだけなんだけどなぁ)
僕が心の中で、ため息をついていると佐々木君の大きな声が聞こえてくる。
「そうだった、すっかり忘れてた。マルゥー、姉ちゃんがありがとうだってよー!」
佐々木君のお姉さんが僕に礼を言っていたらしい。一体何のことを言っているのだろうか。僕にはぴんと来るものがなかった。多分あの時の階段のことを言っているのは分かるんだけど、その時、僕はあるものが気になっていたのだ。
お陰で、僕は心ここにあらずの状態になってしまい、記憶もあやふやになってしまった。
(僕、変なこと口走ってないよね)
僕は過去を思い返しながら男子トイレへと入っていった。
用も済ませて手を洗おうとしていると、突如、悲鳴が聞こえてくる。
「いやあああ、離して!」
何処から聞こえてくるのかと思い、トイレから外に出てみると、どうやら声は隣の女子トイレから聞こえてきたようだ。
「ちょ、ちょっと、何よこれ!?」
今度は、少女の驚くような声が聞こえてきた。一体、女子トイレでは何が起きているのだろうか。気になったのだが、先ほどの女性が襲われているわけではなさそうなので、僕は一先ず手を洗いに男子トイレへと戻ることにした。
あのトイレで少女の声。うちの学校の女生徒で、隣の女子トイレを使うものはいない。となると、今の声はまず間違いなく例の怪奇によるものだ。そして、そんな怪奇に悲鳴を出させるモノに、僕は一つだけ心当たりがあった。そのことに、気づいた僕の鼓動は少しだけ早くなった。
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あの狭い中に、大人と少女が入るのはきついのではないか。そんな疑問がふと頭の中によぎっていると、今度は少年の声が聞こえてくる。
「どうやってここに!? ノックの音も聞こえなかったのに……って何でキミが捕まってるんだよ!」
「この人に捕まって……」
「人間に僕たちが捕まるものなのか!?」
「そんなことより早く私を助けて!」
「え? 助け……って、うわ何をするんだ!? やめろおおお! 何で僕の服を脱がすんだよ!」
「ハァハァ、早くこれに着替えましょ?」
興奮した様子の女性の声が聞こえてきた。声は完全に女性のものだったが間違いなく中にいるのはヘンタイさんだった。
「ま、まさか……キミも……キミも、こんな目に……」
「――ッ!」
一体中では何が行われているのだろうか。そう思っていると今度はシャッター音が聞こえてくる。僕は好奇心の赴くままに歩みを進めていく。
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むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
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工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
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