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04話 暑い日は
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「暑すぎでしょ」
僕は、服をパタパタと仰ぎながら公園のベンチに座っていた。今座っているベンチは木陰になっているので涼むのには最適なのだ。
公園には僕以外の子供の姿は見えなかった。こうも暑いとみんなプールに行っているか、冷房の効いている部屋にいるのだろう。僕も用事がなければ外には出ていなかった。
出かける原因となった物を手に持ち見つめる。そこには、紙パックに抹茶とみたらし団子のイラストが書かれており、右下の方には『みたらし抹茶味』なる意味不明な表記がされていた。
早速、ストローを差し込み未知なる味を吸い寄せる。やたらと濁った色の液体がストローの内部を上昇していき、ついに僕の口の中へと到達する。
その液体は、液体と呼んでいいのかと思うほどドロッとしていた。どおりで、なかなか吸えないはずだ。
「片栗粉入れる必要ないでしょ……」
ついつい愚痴を零してしまった。だが、この飲み物の本領はこんなものではなかった。あまじょっぱい味のせいで飲み物であるはずなのに逆にのどが乾いてくるのだ。内容物の表記をみてもそこまで塩分が入っていないにもかかわらずにだ。
不思議だと思いながら表記を眺めていると、とんでもない後味が駆け抜けてくる。そいつはとんでもなく、渋いものだったのだ。奈良の鹿せんべいを食べたことがあるだろうか? まさしくあんな感じの渋さが僕の舌を襲った。
「これ作った人、絶対味覚音痴でしょ……」
僕は独り言を言ってしまった後に一気に飲み干す。そして、渋さに耐えながらも大きなため息をつく。
「はぁ、毎度ながらこのメーカーは、チャレンジ精神がすごいな……」
この飲料を出しているメーカーは毎度このような物ばかりを出しているのだ。そんな飲み物を僕は全て味わっている。これはファンというのだろうか。同じものは二度と買おうとは思わないけど……。
余韻に浸りながら紙パックを眺めていると、僕の向かいのベンチにとある人物がやってきて腰を下ろした。その人物はヘンタイさんだった。彼も暑いと思っているのか手でパタパタと仰ぎ始める。
だが、その手はすぐに止まった。どうやら、暑すぎるのでまずは服を脱ぐつもりらしい。胸元辺りからチャックを下ろす動作をし始めた。そして、彼は脱皮した。
服を脱ぐことを脱皮と例えた訳ではない。文字通り脱皮したのである。意味が分からない。顔まで変わってるし……。
そんなヘンタイさんは、小太りの男の中から爽やかなイケメンが現れた状態へとなっていた。
これはあれかな? ヘンタイさんが変態したということなのだろうか。
そんなヘンタイさんに、通りすがりの女性たちが話しかけようとしていた。
「ねえ、声かけてみなよ」
「えっ? 私だけなの? 皆で一緒に行こうよ」
声をかけられそうになっているのを察してか、ヘンタイさんは突如立ち上がり速足で公園を後にする。
「あっ、ちょっと待ってー」
女性たちも彼を追いかけて公園の外へと向かっていった。
色男なのは分かるんだけどさ。何であの人たちはヘンタイさんの脱皮したものが気にならないのかな。どうみても、脱皮を終えてたのって上半身だけだったし。立ち去る時だって脱皮した上半身がぶら下がったままだったのに……。
「さて、僕も帰るかな」
答えを考えても分からないので、僕はこの暑すぎる陽気から退散するために公園を後にする。
出口には先ほどの女性たちがいて、お目当ての人物を探していた。どうやら見失ってしまったらしい。僕はそんな女性たちの横を通り抜けて、ヘンタイさんの後ろを歩いていく。
僕は、服をパタパタと仰ぎながら公園のベンチに座っていた。今座っているベンチは木陰になっているので涼むのには最適なのだ。
公園には僕以外の子供の姿は見えなかった。こうも暑いとみんなプールに行っているか、冷房の効いている部屋にいるのだろう。僕も用事がなければ外には出ていなかった。
出かける原因となった物を手に持ち見つめる。そこには、紙パックに抹茶とみたらし団子のイラストが書かれており、右下の方には『みたらし抹茶味』なる意味不明な表記がされていた。
早速、ストローを差し込み未知なる味を吸い寄せる。やたらと濁った色の液体がストローの内部を上昇していき、ついに僕の口の中へと到達する。
その液体は、液体と呼んでいいのかと思うほどドロッとしていた。どおりで、なかなか吸えないはずだ。
「片栗粉入れる必要ないでしょ……」
ついつい愚痴を零してしまった。だが、この飲み物の本領はこんなものではなかった。あまじょっぱい味のせいで飲み物であるはずなのに逆にのどが乾いてくるのだ。内容物の表記をみてもそこまで塩分が入っていないにもかかわらずにだ。
不思議だと思いながら表記を眺めていると、とんでもない後味が駆け抜けてくる。そいつはとんでもなく、渋いものだったのだ。奈良の鹿せんべいを食べたことがあるだろうか? まさしくあんな感じの渋さが僕の舌を襲った。
「これ作った人、絶対味覚音痴でしょ……」
僕は独り言を言ってしまった後に一気に飲み干す。そして、渋さに耐えながらも大きなため息をつく。
「はぁ、毎度ながらこのメーカーは、チャレンジ精神がすごいな……」
この飲料を出しているメーカーは毎度このような物ばかりを出しているのだ。そんな飲み物を僕は全て味わっている。これはファンというのだろうか。同じものは二度と買おうとは思わないけど……。
余韻に浸りながら紙パックを眺めていると、僕の向かいのベンチにとある人物がやってきて腰を下ろした。その人物はヘンタイさんだった。彼も暑いと思っているのか手でパタパタと仰ぎ始める。
だが、その手はすぐに止まった。どうやら、暑すぎるのでまずは服を脱ぐつもりらしい。胸元辺りからチャックを下ろす動作をし始めた。そして、彼は脱皮した。
服を脱ぐことを脱皮と例えた訳ではない。文字通り脱皮したのである。意味が分からない。顔まで変わってるし……。
そんなヘンタイさんは、小太りの男の中から爽やかなイケメンが現れた状態へとなっていた。
これはあれかな? ヘンタイさんが変態したということなのだろうか。
そんなヘンタイさんに、通りすがりの女性たちが話しかけようとしていた。
「ねえ、声かけてみなよ」
「えっ? 私だけなの? 皆で一緒に行こうよ」
声をかけられそうになっているのを察してか、ヘンタイさんは突如立ち上がり速足で公園を後にする。
「あっ、ちょっと待ってー」
女性たちも彼を追いかけて公園の外へと向かっていった。
色男なのは分かるんだけどさ。何であの人たちはヘンタイさんの脱皮したものが気にならないのかな。どうみても、脱皮を終えてたのって上半身だけだったし。立ち去る時だって脱皮した上半身がぶら下がったままだったのに……。
「さて、僕も帰るかな」
答えを考えても分からないので、僕はこの暑すぎる陽気から退散するために公園を後にする。
出口には先ほどの女性たちがいて、お目当ての人物を探していた。どうやら見失ってしまったらしい。僕はそんな女性たちの横を通り抜けて、ヘンタイさんの後ろを歩いていく。
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