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03話 散歩
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天気もいいので朝から散歩でもしようかと思い、外をぶらつく。
ここ最近は雨ばかりだったので、久々の日光浴は最高だ。などと思いながら歩いていると、何やら前方に見覚えのある人影が店から出てきてしまった。
その人影はヘンタイさんである。めずらしいことに手には首輪と紐を持っていた。きっと今出てきた店で購入した物に違いない。ということは、あのヘンタイさんがペットでも飼ったのだろうか。いや、僕の住んでいるアパートはそもそもがペットは不可なのでその可能性はまずないはずだ。
それにヘンタイさんは、僕が知る中では生きているモノに興味などないはずなのだ。つまりが人間や他の生き物たちには興味がないということ。なので、隠れて生き物を飼っていることはまずありえない。
そこから導かれる答えは簡単だ。この世ではないものに使うはずなのだ。化け狐とかにだろうか。彼ならばその可能性もありうる。以前に、化けだぬきを追いかけているところを目撃したことがあるからだ。
よし、関わらないでおこう。と思ったら、よくよく見るとヘンタイさんは人間用のネコミミカチューシャも持っていた。
ネコミミ……首輪……。
僕の鼓動が徐々に加速していく。
前回の化けだぬきの時には、たまたま前を横切って行くのを見かけただけだったからな。よし、今回は初めから見てみることにしよう。僕が襲われることはないだろうから安心だしね。
僕の早くなってしまった鼓動を落ち着けながら、ヘンタイさんを尾行していく。そして、気づけば人気がない路地裏へときていた。
ヘンタイさんは、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回していた。まだ、見つかりそうにないかなと思い、ふと足元の地面を見ると一匹の犬が横切って行った。その犬が僕の視線に入っていることに気づいたのかくるりと振り向き、声をかけてくる。
「何見てんだ? そんなに俺が珍しいか?」
頭がおっさんの犬が文句を言ってきた。だが、動じずに先ほど地面を見たときに見つけていたお金らしき物を手を伸ばして拾う。
「チッ!」
犬は舌打ちをしたあとに、くるりと方向転換して走り去っていった。その先はヘンタイさんがいる場所だ。
すぐにおっさんの悲鳴と共に、あの犬が戻ってくる。首には首輪と紐が付けられており、頭にはネコミミカチューシャがつけられていた。そして、その紐は散歩用の伸びるタイプだったらしく紐がヘンタイさんのところまで続いていた。
「た、助けてくれ。っておい、無視するな! どうせ見えているんだろ!」
僕は必死で訴えているおっさんを無視して、先ほど拾ったお金を摘まみながら観察する。どうやらお金ではなくメダルだったようだ。
「外れか……」
おっさんとは目を合わせずに摘まんでいたメダルを片手でギュっと握りしめる。それと同時におっさんは短くなっていく紐と、ヘンタイさんが紐を掴んで引っ張ったことにより一気に後方へと吹っ飛んでいった。
そして、とうとうヘンタイさんに捕まってしまった。どうでもいいけど……。
僕は何事もなかったかのように彼らの横を通り過ぎていく。ちょうど真横に差し掛かった時には、犬のお尻に猫の尻尾のおもちゃが差し込まれるところだった。
「ぎゃあああああ」
後方ではおっさんの悲鳴の後にシャッター音が鳴り響いていた。どうやらヘンタイさんは目的を達成できたようだ。
対して、僕が得られた物はというと拳の中で玉のように丸まってしまったコインだけだった。
ここ最近は雨ばかりだったので、久々の日光浴は最高だ。などと思いながら歩いていると、何やら前方に見覚えのある人影が店から出てきてしまった。
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「チッ!」
犬は舌打ちをしたあとに、くるりと方向転換して走り去っていった。その先はヘンタイさんがいる場所だ。
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「外れか……」
おっさんとは目を合わせずに摘まんでいたメダルを片手でギュっと握りしめる。それと同時におっさんは短くなっていく紐と、ヘンタイさんが紐を掴んで引っ張ったことにより一気に後方へと吹っ飛んでいった。
そして、とうとうヘンタイさんに捕まってしまった。どうでもいいけど……。
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「ぎゃあああああ」
後方ではおっさんの悲鳴の後にシャッター音が鳴り響いていた。どうやらヘンタイさんは目的を達成できたようだ。
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