行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
上 下
32 / 44
第1章

第31話 実戦

しおりを挟む
黙々と歩くケインさんに付いていくことしばし。ケインさんは草原の端っこ、森との境の辺りで足を止めた。
ジャイアントピーコックがいる盆地の方とは別方向なので、ちょっとホッとしている。あの絶景は見事だったが、あの鳥とは相対したくないからな…。

しかし、目の前には木々が鬱蒼うっそうと生い茂る深い森。俺たちのすぐ近くには、直径50cm~2mほどの大小の岩がゴロゴロ転がっている。こんな岩や木々にはばまれるなら、この森を進むのもかなり大変そうだ。

そんなことを考えていると、ケインさんがその中でも一際ひときわ大きい直径2mほどの岩に近付いて、そっと手を当てる。

…………ザアアァァ

「「「「!!!!」」」」

「えええ!? なんすか、今の!」
「何? 何がおこったの?」
「ケインさん、すごいです!」
「砂になった!? 魔法?」

そう、ケインさんが手を当てて数秒間集中していたと思ったら、大岩が砂になったのだ。地魔法か合成魔法なんだろうが、分解したんだろうか? よくわからないが、ケインさんでも瞬時には発動できない高度な魔法のようだ。

先程の岩があった向こうからは細い獣道が現れた。岩はコレを隠すためにケインさんが置いたんだろうか。

「行くぞ」

「「「「はい!」」」」

ケインさんは特に説明してくれるつもりはないらしく、一声かけただけでさっさと歩いていく。コータやミーコは今の魔法一発で、ケインさんを見る目がキラキラになった。サーヤは先ほどの魔法について考えているのか、難しい顔をしている。

俺は歩き出す前に、近くに生えていた大きめの葉っぱをちぎり、先ほどまで岩だった砂を一掴ひとつかみそれに包んで持ち帰ることにした。先ほどの魔法がどういうものか興味があるし、解らないままはちょっと悔しいからな。帰ってからゆっくり考えよう。

ケインさんを先頭にしばらく獣道を進むと、だんだんと木がまばらになり、やがて開けた場所に出た。草原から15分ほどは歩いただろうか。ケインさんのペースで歩いたので、山道といえど1.5kmくらい歩いたと思う。俺とサーヤは若干息切れしてしまった。

「ここで戦う。とりあえず、好きなようにやってみろ」

「えっ、好きなようにって…」
「いきなりですか!?」
「頑張るっす!」

ミーコとサーヤはちょっと戸惑っているようだが、コータはヤル気満々だな。まぁ実戦やるために来てるんだから、いきなりだろうが何だろうがやるしかない。ヤル気がないなら指導しない、とケインさんに降りられたら困るしな。

「よし、とにかく落ち着いてかかろう。俺が攻撃を防ぐから、その隙に攻撃してくれ」

皆を見回して声をかけると、戸惑っていたミーコやサーヤも覚悟を決めたのか、お互い顔を見合わせてコータも一緒に3人揃って一つ頷いた。
とそこでミーコが調子にのる。

「魔法打ってみてもいい?」

「やめておいた方がいいんじゃないかな?    まだ魔法を含めた連係の練習とかやってないんだから」

「そうっすね。ぶっつけ本番は危ないっすよ」

「ああ、練習のように落ち着いてできるかもわからないだろう?    ある程度戦闘に慣れてからじゃないとな」

「う~、そうだね、しょうがないか。そんじゃ、魔法ナシで、ガンバろっ!」

それぞれ武器を手に持って準備する。モンスターがどこから現れるかわからないので、全方向チェックできるように4人で固まって外側を向いて構えた。
臭いで釣るんだから、と一応俺が風下側に位置どった。

「ケインさん、お願いします!」

俺が声をかけると、ケインさんは例の魔法薬のコルク栓を抜き、地面に少しだけ垂らした。

「複数来たら、1匹残して他は俺が片付ける。その時は俺が合図するまで動くな」

「「「「はい!」」」」

しばらくすると、どんどん例の臭いがあたりに立ち込めていく。相変わらず臭いが、1分もすると幾分いくぶん慣れてきた。

周囲の様子に変化はないが、ふと見るとケインさんが油断なく武器に手をかけている。

そろそろ来るか?    

まだか?  

どこから来る?  

待っている時間はらされているようで、全く気がゆるむことはなく、むしろジワジワと緊張感が高まってくる。

静まり返った森の中で、自分の心臓の音がドクンドクンと聞こえてくる気がした。

ガサッ! ガサガサガサッ!

「来るぞ! 3匹、風下だ」

ケインさんが短い言葉で伝えてくれる。まだ姿は見えないが、ケインさんには数まで判っているらしい。
その間にも木々をかき分ける音は近付き、ドタドタと足音も聞こえるようになってきた。

モンスターが来るまでに、こちらも態勢を整える。俺を先頭に、半歩下がった左右にコータとミーコ、右後方にサーヤという配置だ。

準備がバッチリ整ったところで、ちょうどモンスターの姿が見えた。
1mほどの高さの人型で、薄汚れたような暗い緑色の肌、大きすぎるギョロギョロとした目が印象的だ。いわゆるゴブリンというやつだろう。手には木の棒を持っている。

向こうからも俺たちの姿が確認できたようで「ゲギャ、ギャー」と、なんとも言えない気味の悪い声を出し、こちらを指差しながら近付いて来る。

「動くな」

俺たちにそう言いつつ、ケインさんは剣を抜いて数歩前に出た。

木がまばらになってきたせいか、敵を定めたせいか、ゴブリンも速度を上げて迫って来る。
開けた場所に入る直前に3方向にバラけ、一斉にケインさん目掛けて飛びかかるゴブリン。

ケインさんは落ち着いて腰を落として構え、向かって左のゴブリンと中央のゴブリンのどうをまとめて真っ二つに切り裂いた。そして右のゴブリンには、腹に軽く蹴りを入れて1mほど下がらせる。

下位のモンスターとは言え、たったの一振りで2匹を切り伏せてしまった。
ケインさんがあまりに圧倒的過ぎて、思わず見入ってしまう。

「出番だ」

ケインさんの言葉にハッと我に返ると、後ろに飛ばされたゴブリンが体勢を整えた所だった。仲間があっという間に倒されたというのに、恐怖心や悲しみといった感情はないのか、普通に向かってくるようだ。

俺との距離はおよそ3m。先程ケインさんに飛びかかったのが1.5mくらい手前だったので、そのくらいからがゴブリンの射程圏内だと心の準備をする。

警戒しているのか、先程のように勢いに任せて突っ込んで来ることはなく、慎重にジリジリと近付いてくる。

2.5m…2m…1.5m…、飛びかかってくる様子はない。

1.3m…1m…と、急にゴブリンがスッとかがんだ。

「来るよ!」

ミーコが声をかける。もちろんわかってるさ!

助走もない状態で飛びあがれば、身動きもできないまま的になるだけだ。なら、そのまま低い体勢で突っ込んでくるか?    
そう考えて、ゴブリンの高さに合わせて低い位置に盾を構える。

するとゴブリンは、1歩踏み込んだかと思うと視界から消えた。

「!!」

しかし、次の瞬間には視界の端に暗い緑色が飛び込んでくる。俺の左側、コータのいる方だ。あわてて左に向き直り、そのまま盾ごとゴブリンに体当たりする。

カーン!ドゴッ!
「グゲャ」

ゴブリンは持っていた棒を振りかぶってコータ目掛けて振り下ろそうとしていたようだが、その攻撃が届く前に、コータの木刀がゴブリンの手を叩く。その衝撃で、ゴブリンが持っていた棒はあさっての方向へ飛んでいった。その直後に俺がサイドから盾で押し倒した形になったようだ。

俺はそのまま盾で腰から足にかけてを押さえ込んだ。ゴブリンはかなり手足をバタつかせているが、うつ伏せに近い姿勢で特に害はない。しっかり体重をかけて押さえつけ、ベルトで腰に固定していたナイフを取り出す。

しかし、いざ刺そうとしたところで手が止まってしまった。
地球では、虫や釣った魚くらいしか生き物の命を直接奪った経験はない。情けないが、モンスターとはいえ人型である生き物を殺すことに怯んでしまった。

「モンスターは、理由もなく人を襲う。今無抵抗だろうが、見逃すようなヤツはアリアでは生きていけん」

脳裏にホーンラビットと対峙していたマックスの姿が浮かぶ。そして、後ろや横で見守っているミーコたちのこと、フォンド村で出会ったノバラやアヤメさん…。

アリアで生きていく以上、避けては通れないことだ。
俺はようやく覚悟を決め、ゴブリンの背中側から胸を一刺しした。
しおりを挟む
誠に勝手ながら、こちらの作品は、2017年12月1日の投稿をもって無期限の休止にさせていただきます。次話からは2章に突入予定でおりますが、また書き溜めができれば再開するかと思います。気長にお待ちいただければ幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...