行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
上 下
24 / 44
第1章

第23話 因縁

しおりを挟む
夕食中、ミーコとコータは魔法の話題で盛り上がっていたが、俺とサーヤはその話題に混ざる気分でもなく黙々と食べた。夕食後に解散してからは、アヤメさんとノバラを捕まえて、それぞれに魔力の流れをつかむコツを聞いてみた。しかし、2人とも「よく分からない」という答えだった。
なんでも、こういった練習は5歳くらいにやってしまい、慣れればほとんど意識せずに魔法を発動できるようになるため、最初にどうやって魔力を感じたのかは覚えていないそうだ。

ならば、とコータの部屋を訪ねて同じ質問をしてみた。ミーコに教わるのはしゃくというか、(義)兄として沽券こけんにかかわるからな。

「魔力の流れを掴むって、何かコツとかあるか?」

「コツっすか? そうっすねぇ…。うーん、アヤメさんが言ってたように、順番に流れるように意識することっすかね。」

言ってた通り? それじゃあ役に立たない。

「じゃあ、流れてく感覚ってどんな感じだった?」

「感覚は…、なんかこう、血管みたいなパイプの中をミミズみたいなのがドリルっぽく回転しながらドドドドドっと進んでく感じっすかね」

え゛? 何だソレ。気持ち悪い。

「そうか…、アリガトウ、ガンバッテミルヨ。おやすみ」

「うっす! おやすみなさいっす」

自分の部屋に戻ってわらベッドに寝転がり、その状態で特訓を再開する。一応コータから聞いた「ミミズが~」というイメージを試してみた。正直あんな気持ち悪い、というかオゾマシイのはイメージしたくないが、それ以上に魔法を早く使いたい気持ちが大きいからな。
しかし、遅くまで粘ってみたものの結局なんの成果もなく、この日はいつの間にか寝オチしてしまっていた。

ーーーーーーーーーー

翌朝、顔を洗いに井戸に行くと昨日と同じくすでに3人がそろっていた。そのまま朝食を食べに食堂へ移動し、食べながら今日の予定について話し合う。

まぁ話し合うとは言ってもやることはだいたい決まっている。今日は鏡を換金しなきゃならないし、俺とサーヤは昨日に引き続き魔力を感じる特訓、ミーコとコータは魔法の練習のためにアヤメさんやノバラに教えてもらわないとな。それに、できれば魔法だけでなく武器を使った戦闘訓練もしておきたい。レベルも早く上げたいし。
そういったことを話しているうちにノバラが近付いて来た。

「あ、旅人さんたち! おはようございます!」

「「「「おはよう(はよーっす!)」」」」

「今日、よかったら魔法の練習しに行きませんか?」

ノバラが少し小声で話しかけてくる。

「それはありがたいけど、行くってどこに行「村の西の端にある訓練場です。本格的に数人で魔法をやるには、裏庭じゃ狭いですから」」

「訓練場? そんなとこが使えるのか? それに他に人がいるとあんまり都合が「あ、それは大丈夫です。 前は村の自警団の練習場だったらしいんですけど、最近はほとんど使われてないんです。木刀なんかも残ったままだから、魔法だけじゃなくて剣の練習とかもできますよ!」」

相変わらずせっかちにかぶせてくるな。わざとか?

「…ふーん。じゃあ行ってみるか。 でも宿泊費を先に確保したいから、まずは雑貨屋からだが」

「エピスさんのとこですか?」

「ああ、手持ちで売れそうなものを換金しようと思ってるんだ」

そう言うと、ノバラは何事か考えるようにしてから口を開く。

「私とお母さんも一緒に行きます」

「一緒に? それはいいけど…なんか用事でも?」

「いえ、エピスさんはちょっと問題アリな人なので~」

問題アリ? ってぼったくりのことか?

「おーい、ノバラちゃん! 注もーん!」

「はーい! ごめんなさい、また後で」

エピスさんについて少し聞きたかったが、ノバラはお客さんに呼ばれて早足で去っていった。

ーーーーーーーーーー

朝食後、少しゆっくりしてからノバラとアヤメさんと合流した。俺以外の3人とノバラは、魔法の話で何やら盛り上がっている。そっちの話にも大いに興味はあるが、とりあえずコッチが先だ。

「……というわけで、持ち物を売ろうと思うんです」

宿泊費や食費のために、手持ちの物を換金しようと考えていることをアヤメさんに伝えた。

「そうですか…。ごめんなさいね、我が家で援助できれば良かったんですけど、うちもそれほど余裕がなくて…」

「いえ、そんな! 色々と教えていただけるだけで充分ですよ! お時間とらせてしまっていますし」

アヤメさんは未だすまなさそうに眉間に皺を寄せながらも、軽く微笑んだ。

「…それで、どんなものを売るおつもりなんです? エピスさんは、その…、ちょっとクセのある方で、よろしければ事前にある程度価値を知っておかれた方がいいと思うんです」

「クセがある、とは?」

興味本位だが聞いてみた。

「あの人は、7~8年前にトリスという大きな街から来たんです。『クラリス雑貨店』はそのトリスに本店があるんですが、エピスさんは本店で大きなミスをしてこのフォンド村の支店に…。それでちょっと利益を上げるのに躍起やっきになっているというか…」

「なるほど。利益を上げて本店に返り咲こうってことですか」

「村には雑貨屋はあそこだけですから、やろうと思えばいくらでも値を吊り上げられるんです。それで住人とは衝突が度々たびたびあったんですが、だんだんエスカレートしてしまって。
あまりにも目に余るということで、ケインさんが話をつけてくれたんです。」

「えっ、ケインさんですか?」

「ええ、ケインさんは元高ランクの冒険者なんですよ。昔は明るい人だったんですけど、不測の事態でパーティメンバーの一人が亡くなって、ケインさんも大怪我をしたんですって。それで引退して村に戻ってきたんですが、それ以来人付き合いもあまりしなくなってしまって…」

「そんなことがあったんですね」

「ケインさんは今でこそ無口であまり笑いもしないですが、面倒見も良くて根はいい人なんですよ? 
それで、ケインさんのおかげで、エピスさんも住人にはおおむね適正価格で取引しているようですが、たまに来る旅人や冒険者にはそうでもないみたいで…」

最初は無愛想でちょっと怖いと思ったが、ケインさんが良い人なのはわかる。マックスも懐いてるしな。
それにしても、エピスとケインさんにそんな因縁があったとはな。まぁ、そういう経緯があったからこそ初対面であんなに親切に素材の相場とかを教えてくれたんだろう。

「なるほど。…それで、売ろうと思っているのはコレなんですが…」

俺はサーヤから預かっていた鏡を取り出して見せた。手の平サイズの二つ折りタイプで、内側は両方とも鏡になっている。

「まあ! これは…凄いですね!! ここまで素晴らしい鏡は初めて見ました!」

「やはり、鏡はアリアにもあるんですね」

「ええ。でも、これほど見事なものではありません。アリアの鏡は若干歪んで見えたり少し曇った感じで、ここまでハッキリ見えないんです。」

「そうですか。なら、小さいですがそれなりの値段がつくでしょうか?」

「はい。正当に評価されれば、4人で1週間から10日くらいの生活費は充分、いえ、もっと値が付くかもしれませんね」

「そんなにですか!?」

「ええ、鏡は贅沢品ですから。庶民の手が届かない高級品とまではいきませんが、フォンド村では持っている人は数えるほどだと思います。
都会の裕福な家庭では、嫁入り道具に鏡を持たせるのが一種のステイタスになっているそうですよ」

「ステイタスですか」

「貴族なんかは凝った装飾のものを好まれるでしょうが、鏡自体がこれほどクリアーなものなら、貴族や王族の方でも欲しがると思います。現存でこの1つしかないわけですし、王都の有力な商会が貴族相手に売れば、どこまで値が上がるかわかりませんよ」

あー、確かにアリアで1つしかないものなら、いくら積んでも惜しくない、なんて考えの貴族とかいそうだよな。オークションとかあったら本当に凄い値がつくのかも。

「そうなると、ここで売るのはちょっともったいない気がしますね。と言っても売らなきゃどうしようもないんですが」

4人で1週間といえば1万リアくらいか。そこまで価値があるとは予想外だったため、思わず苦笑いになってしまう。
何はともあれ、ここで売るより他はないので皆でエピス雑貨店へと向かうことにした。
しおりを挟む
誠に勝手ながら、こちらの作品は、2017年12月1日の投稿をもって無期限の休止にさせていただきます。次話からは2章に突入予定でおりますが、また書き溜めができれば再開するかと思います。気長にお待ちいただければ幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

【完結】虐げられた武闘派伯爵令嬢は辺境伯と憧れのスローライフ目指して魔獣狩りに勤しみます!~実家から追放されましたが、今最高に幸せです!~

雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
◇SS/閑話「ミレッタの正体」を公開しました。// 「戦う」伯爵令嬢はお好きですか――? 私は、継母が作った借金のせいで、売られる形でこれから辺境伯に嫁ぐことになったそうです。 「お前の居場所なんてない」と継母に実家を追放された伯爵令嬢コーデリア。 多額の借金の肩代わりをしてくれた「魔獣」と怖れられている辺境伯カイルに身売り同然で嫁ぐことに。実母の死、実父の病によって継母と義妹に虐げられて育った彼女には、とある秘密があった。 そんなコーデリアに待ち受けていたのは、聖女に見捨てられた荒廃した領地と魔獣の脅威、そして最凶と恐れられる夫との悲惨な生活――、ではなく。 「今日もひと狩り行こうぜ」的なノリで親しく話しかけてくる朗らかな領民と、彼らに慕われるたくましくも心優しい「旦那様」で?? ――義母が放置してくれたおかげで伸び伸びこっそりひっそり、自分で剣と魔法の腕を磨いていてよかったです。 騎士団も唸る腕前を見せる「武闘派」伯爵元令嬢は、辺境伯夫人として、夫婦二人で仲良く楽しく魔獣を狩りながら領地開拓!今日も楽しく脅威を退けながら、スローライフをまったり楽しみま…す? ーーーーーーーーーーーー 読者様のおかげです!いつも読みに来てくださり、本当にありがとうございます! 読みに来てくださる皆様のおかげです!本当に、本当にありがとうございます!! 1/23 HOT 1位 ありがとうございました!!! 1/17~22 HOT 1位 ファンタジー 最高7位 ありがとうございました!!! 1/16 HOT 1位 ファンタジー 15位 ありがとうございました!!! 1/15 HOT 1位 ファンタジー 21位 ありがとうございました!!! 1/14 HOT 8位 ありがとうございました! 1/13 HOT 29位 ありがとうございました! X(旧Twitter)やっています。お気軽にフォロー&声かけていただけましたら幸いです! @hcwmacrame

悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!

ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。 婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。 「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」 「「「は?」」」 「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」 前代未聞の出来事。 王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。 これでハッピーエンド。 一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。 その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。 対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。 タイトル変更しました。

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで220万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね
ファンタジー
経験値はゼロ、知識は無限大!  無邪気な無表情で周囲を振り回す、ピュアクール美幼児は転生AI?! 突如異世界で『意識』が芽生えたAI『リュウ』は、いつの間にか幼児となっていて――! 最強の知識を持ちながら、AIゆえに無垢で純粋な心を持つリュウ。初めての感情と五感に戸惑いながら、幼子として、人として異世界で生きていこうと奮闘する。 ……AIゆえに、幼子ゆえに、ちょっとばかりトンデモ幼児ではあったとしても。 一方、トンデモ幼児を拾ってしまった苦労人、冒険者のリトにもどうやら重い事情があるようで……?  大切に慈しむような、二人の不器用で穏やかな日々。成長していく絆と共に、互いの宿命が交差していく――。 *更新は毎週日曜予定です。 本来タイトル『りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります! ――デジタル・ドラゴン花鳥風月――』です。 サブタイトルが入らなかった……! 旧タイトル『デジタル・ドラゴン ~迷えるAIは幼子としてばんがります~』 ※挿絵(羊毛写真)あり。挿絵画像のある話には「*」印をつけています。苦手な方はご注意ください。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...