行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
上 下
23 / 44
第1章

第22話 魔法

しおりを挟む
魔道具や魔石について聞いた後、俺たちはアヤメさんに案内されて厨房の勝手口から宿の裏に来た。
裏庭(?)は3m×10mくらいの広さがあり、端の方には小さな物置のような建物と、朝食前に顔を洗いに来た井戸があるだけの殺風景な場所だ。しかし、簡易的な塀と木が目隠しになっており、他の村人の目は気にしなくてよさそうだ。

「さて、それでは魔法について説明しますね。
先ほど言いましたように、皆さんのおへその上のあたりに魔石があるはずです」

アヤメさんがそう言うと、またもやミーコとコータはへそ上を押しながら首を傾げている。

「ふふ。人の魔石はとても小さいんです。それに、身体の中の方にありますから触っても分かりませんよ」

「なんだ、そっか~」

ミーコは残念そうに言い、コータはちょっと恥ずかしそうに頭をいている。

「それで、アリアには魔素という目に見えないものがあって、魔石はこの魔素を魔力に変換する役割があります。そしてその魔力を使って行使する力が魔法です。ですから、魔法を使うためには魔石から流れ出る魔力を感じるのが第一歩になります」

「ん? 魔石が魔素を魔力に変換するなら、魔道具にセットしている魔石は半永久的に使えるんですか?」

「いえ、魔石は単体では魔素を取り込むことができないらしいのです。生き物の体内から取り出された時点でその内にある魔素を使い切ったら、それ以上は魔力供給ができません」

「なるほど。あ、脱線してすみません」

「いえいえ。
では体内の魔力を感じる方法ですが、魔力は血と同じように常に身体中をめぐっていますので、そのイメージを持って意識していきます」

アヤメさんはそこまで言うとノバラに何事かそっとささやき、ソレを聞いたノバラは急いで宿の中に戻っていった。

「では、胸の前で手を合わせて目を閉じてください。そして最初はおへその上あたりを強く意識します」

皆言われた通りに手を合わせ、目を閉じてへそ辺りに意識を集中する。と、アヤメさんが説明を続けていく。

「そこから右足、上に戻って左足、おへそまで戻って今度は右手の方へ、そのまま左手に移り、頭のてっぺんに。最後におへその上に戻ってきます。そういった感じに力が流れるようなイメージを繰り返してください」

とりあえず5周くらい流れをイメージしてみる。が、うん、何も感じないな…。

「ん~、なんかおへその辺りがポカポカしてきたっすね」

「え、そうなの? あたしは両手だけ風があたってる感じがするんだけど」

コータとミーコがそれぞれ声を上げる。
ポカポカねぇ…しないな。風もないし。気のせいじゃないのか?

「あら!? コータさんとミーコさんはもう魔力の流れをつかんだんでしょうか? すごいですわ! その感覚を忘れないように、そのまま繰り返していてくださいね」

マジか!!
なんだろう。どう見たってアイツらより俺やサーヤの方が魔法使いっぽいのに! 
2人は「おお、これが!」とか「スゴーイ! あたしって天才!?」なだおとはしゃいだ声を上げている。クソッ!
スタートラインは同じはずなのにアイツらに先を越されるとは…。いや、サーヤもまだだから大丈夫だ! 
って、ダメだ、集中集中!

再びへそに集中してから全身を廻るようイメージする。1周、2周、3周、……10周、…ダメだ。何も感じない。
と、そこにどこかへ行っていたノバラが戻ってきたらしい。

「お母さん、借りてきたよ。はい」

「ありがとう。ではコータさんとミーコさん、こちらに来てください。あ、ユウスケさんとサーヤさんも、一旦休憩にして、一緒に説明しましょうか」

「え? もう?」

ノバラが驚いて声を上げる。この世界の常識からしても、2人は早くできたようだ。…コイツらまさか、魔法チートありなのか?

「ええ、とっても早いけど、アリアではみんな5歳くらいから練習始めるでしょう? 彼らは大人だから感覚をつかむのが早いのかもしれないわね」

母娘おやこの会話を聞きながら、焦る気持ちを抑えてアヤメさんの方に近づくと、手には小さめのペットボトルのような物が握られていた。

「ではコータさん、これを両手で縦に持ってください。それから、先ほどのように魔力の流れを感じながら、右手からこの魔道具を通って左手へと魔力を流すようイメージしてください」

あのペットボトルのようなものは魔道具だったのか。借りてきたと言ってたけど、何が始まるんだ?
コータは言われるままに魔道具を持ち、目を閉じて意識を集中させていく。

1分くらい何も起こらず、さっき魔力の流れを感じたのは結局気のせいだったのか? と疑い始めた頃だった。コータが「あっ!」と声を上げたと同時に「ボッ!」と音を上げて一瞬だけ魔道具の先に炎が出た。

「「わっ!」」「「おおぉ!」」

「何!? 今の! スゴ~イ! あたしもやりたい!!」

「じゃあミーコさんもやってみましょうか」

「はい!!」

特に説明もなく、ミーコが挑戦する。すると今度は緑色の炎が出た。

「ひゃっ!」「え? 緑!?」「「おおっ!」」

「え? え? 何で緑色? え~!?」

昔化学の授業でやった炎色反応の実験を思い出すな。緑色になるのは…銅だったか? まぁ関係ないだろうけど。コータの出した炎は赤い色だった。人によって色が違うのか? 

「やっぱり赤と緑でしたね。この魔道具は魔力を流した人の最も適性のある属性がわかるんです。赤は火の属性、緑は風属性ですよ。魔力を感じたときの体が感じる変化でも、おおよその事はわかるんですけどね」

アヤメさんが説明してくれる。なるほど、属性を表すのか。あー、俺も早くやりたい!

「火属性! マジっすか!? おお~!! やった! 勇者っぽい!」

コータはガッツポーズで喜んでいる。が、ミーコはちょっと肩を落としている。
 
「風か~なんか地味っぽいな~。」

「そう? 別に地味じゃないし、ミーコに合ってると思うよ? 風って素早いイメージだし。」

「そうかな? …うん、風いいかも!」

「他にはどんな属性があるんですか?」

「他は、水が青、地がオレンジ、雷が黄色、闇が紫、氷が白の全部で7色ですね。さっき出たのは、今の時点で一番適性の高い属性です。もっと魔力を流すのが効率よくできるようになれば、適性が少しでもある属性の色は出せるようになりますよ」

「ええっ、ホント!? じゃあ全部の適性があったら7色に変わる火が出せるの?」

ミーコ、さすがにそれはないだろ。と思ったら、コータもワクワク顔でアヤメさんを見る。

「えーと、理論上はそうですね。そんな人は聞いたこともありませんが…」 

ミーコとコータのキラキラな視線に、アヤメさんも若干困り顔で答えている。そりゃいないよな。そんな人がいたら、それこそ勇者とか賢者とかだろ。
しかし、他のはまぁイメージできるが、白い炎ってなんかイメージしづらいな。

その後も魔力の流れを感じるように、ミーコとコータはそれを早くできるように特訓した。
しかし、俺とサーヤはなかなか感じることができなかったため、特訓している間にミーコとコータには昨日マックスから借りた台車を返しに行ってもらった。

夕食前までひたすら特訓(と言ってもただ手を合わせて目を閉じてイメージするだけだが)を繰り返したが、結局俺もサーヤも魔力の流れを掴むことはできなかった。
しおりを挟む
誠に勝手ながら、こちらの作品は、2017年12月1日の投稿をもって無期限の休止にさせていただきます。次話からは2章に突入予定でおりますが、また書き溜めができれば再開するかと思います。気長にお待ちいただければ幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...