行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
上 下
12 / 44
第1章

第11話 異変

しおりを挟む
「ミーコ、コータくん、これを見てくれ。」

例のレシートを2人に渡す。

「これは!」「こ、これ!どこにあったの!?」

2人とも目を見開いてレシートを凝視している。

「まぁ、待てミーコ。念のために聞くが、これはコータくんが落としたものじゃないよな?」

「違うっす!違うっす!自分じゃないっすよ!!
コレは先輩が持ってた店の袋に入れてたはずっす。先輩がお金立て替えてて、合宿所に戻ったら請求するからって!それで、荷物もレシートも先輩が持ったまま行っちゃったっすよ!」

確認すると、コータはぶんぶんと凄い勢いで首を横に振りながら答えた。この様子なら間違いないだろう。それに、袋に入れていたということは、レシートだけがこちらに飛ばされたとも思えない。やはり春樹がこちらに来て、袋の中身を出した時にでも落ちたと考えるのが自然だろう。

「そうか。これは祠から少し離れたところで、落ち葉の下に埋もれてたんだ。」

「「落ち葉の下!?」」

2人が声をそろえて聞き返す。

「ああ。おそらく、転移したときに時間軸がズレたんじゃないかと思う。このレシートの状態からしても、たぶん、春樹がここに来てから数ヶ月経ってるんだろう。」

「時間軸?…えっーと、よく分かんないけど、ハル兄がっこちに来たのは間違いないんだよね!?」

「十中八九、そうだろうな。」

難しい顔で確認してきたミーコにそう返事を返すなり、パッと明るい表情になって、ガバっと抱きついてくる。衝撃でよろけそうになってしまった。

「ユウ兄~!!見つけてくれてありがと~!良かった!良かったよぉ~!きっとハル兄に会えるよね!見つけられるよね!?」

「まだレシート見つけただけだ。安心するのは早いだろ。それに、だいぶ時間が経ってるんだから、痕跡こんせきを辿るのも簡単じゃないぞ。」

ミーコの頭をで、まだ喜ぶのは早いとたしなめる。

「それでも、こっちに来てるって判っただけでも嬉しいよ!」
「良かったね、ミーコ!そのレシートが落ちてたところ、もっと詳しく調べてみよ!」

サーヤがかぶせ気味にそう笑顔で言いながら近付き、いまだ俺に抱きついたままだったミーコの手をとって連れて行った。サーヤ、張り切ってるな…。
まぁそれはいいか。俺はコータにこっちの探索の状況を聞いておくとしよう。

「コータくん、こっちの状況はどうだ?何かあったか?さっきも言ったように…」

コータの方を振り返ると、コータはまだ2人の後姿を見てぼーっとしていた。

「コータくん?」
「っはっ!!わっ!優介さん!?すいません!なんすか!?」

「いや、こっちの探索の状況を聞きたかったんだが。どうした?ぼーっとして。」

「あ、いや、その…優介さんとミーコちゃんってスゲー仲いいんっすね。」

ああ、コータはミーコのことがかなり気になってるようだからな。ミーコが俺に抱きついてショックだったのか?

「まーな。あいつが生まれた頃から隣同士だったからな。ほとんど妹みたいなもんだ。」

「あ、あ~、そうっすよね!幼馴染っすもんね!妹。妹か、うん。」

どうやら復活したようだ。いちいち分かりやすくておもしろいな。

「まぁその話はどうでもいい。それで、探索の成果はどうなんだ?」

「あ、はい!えーと、特にコレといって何もなかったっす。すいません。」

「いや、別に謝ることはないよ。数ヶ月経ってるかもしれないんだ。もう痕跡が消えてしまってても不思議じゃないからな。」

コータにそう話しているところで女子2人が戻ってきた。

「レシートのあったところの近くを見てきたけど、他には何もなさそうだね。」

ちょっと残念そうにミーコが告げる。

「ほんとに、春樹はどっちに向かって行ったんだろうな。ここからじゃ森の先の様子は全くわからない。富士の樹海とかだって毎年遭難者が出るんだし、知らない森に入って行くなんて自殺行為だろ。」

ついつい愚痴のようなものが口をついて出てしまう。

「先輩なら無謀なことはしなさそうっすけど、ずっとここでじっとしてるわけにもいかないっすから、覚悟決めて行ったんすかね?」

まぁコータの言うとおり、帰れる見込みがないなら、ここに留まってもジリ貧だな。

「だが、それなら自分が通ったところに道しるべくらい付けるだろ。迷ってもとりあえずここに戻って来られるようにするはずだ。」

「そうですね。合宿所のところの山とはわけが違いますよね。あそこなら戻れなくても、最悪どんどん下っていけばどうにかなったでしょうけど…。」

サーヤが俺の考えに同意する。この草原は平地なのだが、それだけでここが平地なのか山の一部なのかは判断が付かない。ここから上を見ても周りの高い木にはばまれて、ただ空が見えるだけなのだ。山なら下ればいいかもしれないが、ここでは下手に動けない。

「あ、そうだ!ハル兄が本当に召喚されたんなら、召喚した人に付いてったんじゃない?それなら目印とかいらないし!」

ミーコが「これ当たりじゃない!?」と言わんばかりに得意げな顔で言う。

「ん~、優介さん、自分を召喚したっていう会ったばかりの人に、春樹さんが付いて行くと思いますか?」

ミーコの発言を受けてサーヤが聞いてくる。

「普通なら行かないだろうが、この森から抜け出すために仕方なく、なら行くかもな。けどアイツは人の本性を見抜くのが上手いというか、人を見る目はあるからな。悪意のある相手なら付いて行かないだろう。それか、春樹好みの美女だったら付いて行くかもな。」

「あ、ナルホド。女の人にばれたんでしたね。」

「も~!だから、ハル兄はそんな下心とかないってば!困ってる人がいたら放っておけないだけだよ!変態メガネとは違うんだからね!」

サーヤは納得しているが、ミーコは相変わらずの春樹信者ぶりだ。っつーか、すっかり『変態メガネ』が定着しつつある気がする。とりあえずミーコにはデコピンをおみまいしておいた。

「まぁ、今は考察はいい。春樹が森に入ったのは間違いないんだから、どうにか痕跡を探すぞ。レシートもあったんだし、落ち葉どかせば足跡のひとつくらい出てくるだろう。」

今度は男女に分かれ、探索を開始した。
ここまでモンスターどころか野生の獣の姿も、声すらも聞いていない。警戒を少し緩めても、手分けして早く探索を進めるべきだろう。そういうわけで、特に警戒担当は作らず、それでいてすぐに手を貸せる距離を保って探索していく。
しかし、探せど探せどそれらしい跡はなく、ため息混じりにコータにぼやく。

「もうしばらく探してみてもダメなら、いよいよ覚悟を決めて森に入らないといけないかな。」

「そうっすね。そろそ「ひああぁ!ユ、ユユユ、ユウ兄!ユウ兄ぃ~!!」」

コータが答える途中で突如ミーコの悲鳴が響いた。しまった!警戒を緩めるべきじゃなかったか!
獣かモンスターでも出たのかと、コータと一緒に慌てて2人の元へと駆け出す。

「どうした!何があっ…っ!!!なっなんだコレっ!?」
「なっ!!えぇぇっ!!!な、なんなんすかコレ!?」
しおりを挟む
誠に勝手ながら、こちらの作品は、2017年12月1日の投稿をもって無期限の休止にさせていただきます。次話からは2章に突入予定でおりますが、また書き溜めができれば再開するかと思います。気長にお待ちいただければ幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者現代へ帰る。でも、国ごと付いてきちゃいました。

Azanasi
ファンタジー
突然召喚された卒業間近の中学生、直人 召喚の途中で女神の元へ……女神から魔神の討伐を頼まれる。 断ればそのまま召喚されて帰るすべはないと女神は言い、討伐さえすれば元の世界の元の時間軸へ帰してくれると言う言葉を信じて異世界へ。 直人は魔神を討伐するが帰れない。実は魔神は元々そんなに力があるわけでもなくただのハリボテだった。そう、魔法で強く見せていただけだったのだが、女神ともなればそれくらい簡単に見抜けるはずなおだが見抜けなかった。女神としては責任問題だここでも女神は隠蔽を施す。 帰るまで数年かかると直人に伝える、直人は仕方なくも受け入れて現代の知識とお買い物スキルで国を発展させていく ある時、何の前触れもなく待望していた帰還が突然がかなってしまう。 それには10年の歳月がかかっていた。おまけにあろうことか国ごと付いてきてしまったのだ。 現代社会に中世チックな羽毛の国が現れた。各国ともいろんな手を使って取り込もうとするが直人は抵抗しアルスタン王国の将来を模索して行くのだった。 ■小説家になろうにも掲載

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...