行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

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第1章

第11話 異変

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「ミーコ、コータくん、これを見てくれ。」

例のレシートを2人に渡す。

「これは!」「こ、これ!どこにあったの!?」

2人とも目を見開いてレシートを凝視している。

「まぁ、待てミーコ。念のために聞くが、これはコータくんが落としたものじゃないよな?」

「違うっす!違うっす!自分じゃないっすよ!!
コレは先輩が持ってた店の袋に入れてたはずっす。先輩がお金立て替えてて、合宿所に戻ったら請求するからって!それで、荷物もレシートも先輩が持ったまま行っちゃったっすよ!」

確認すると、コータはぶんぶんと凄い勢いで首を横に振りながら答えた。この様子なら間違いないだろう。それに、袋に入れていたということは、レシートだけがこちらに飛ばされたとも思えない。やはり春樹がこちらに来て、袋の中身を出した時にでも落ちたと考えるのが自然だろう。

「そうか。これは祠から少し離れたところで、落ち葉の下に埋もれてたんだ。」

「「落ち葉の下!?」」

2人が声をそろえて聞き返す。

「ああ。おそらく、転移したときに時間軸がズレたんじゃないかと思う。このレシートの状態からしても、たぶん、春樹がここに来てから数ヶ月経ってるんだろう。」

「時間軸?…えっーと、よく分かんないけど、ハル兄がっこちに来たのは間違いないんだよね!?」

「十中八九、そうだろうな。」

難しい顔で確認してきたミーコにそう返事を返すなり、パッと明るい表情になって、ガバっと抱きついてくる。衝撃でよろけそうになってしまった。

「ユウ兄~!!見つけてくれてありがと~!良かった!良かったよぉ~!きっとハル兄に会えるよね!見つけられるよね!?」

「まだレシート見つけただけだ。安心するのは早いだろ。それに、だいぶ時間が経ってるんだから、痕跡こんせきを辿るのも簡単じゃないぞ。」

ミーコの頭をで、まだ喜ぶのは早いとたしなめる。

「それでも、こっちに来てるって判っただけでも嬉しいよ!」
「良かったね、ミーコ!そのレシートが落ちてたところ、もっと詳しく調べてみよ!」

サーヤがかぶせ気味にそう笑顔で言いながら近付き、いまだ俺に抱きついたままだったミーコの手をとって連れて行った。サーヤ、張り切ってるな…。
まぁそれはいいか。俺はコータにこっちの探索の状況を聞いておくとしよう。

「コータくん、こっちの状況はどうだ?何かあったか?さっきも言ったように…」

コータの方を振り返ると、コータはまだ2人の後姿を見てぼーっとしていた。

「コータくん?」
「っはっ!!わっ!優介さん!?すいません!なんすか!?」

「いや、こっちの探索の状況を聞きたかったんだが。どうした?ぼーっとして。」

「あ、いや、その…優介さんとミーコちゃんってスゲー仲いいんっすね。」

ああ、コータはミーコのことがかなり気になってるようだからな。ミーコが俺に抱きついてショックだったのか?

「まーな。あいつが生まれた頃から隣同士だったからな。ほとんど妹みたいなもんだ。」

「あ、あ~、そうっすよね!幼馴染っすもんね!妹。妹か、うん。」

どうやら復活したようだ。いちいち分かりやすくておもしろいな。

「まぁその話はどうでもいい。それで、探索の成果はどうなんだ?」

「あ、はい!えーと、特にコレといって何もなかったっす。すいません。」

「いや、別に謝ることはないよ。数ヶ月経ってるかもしれないんだ。もう痕跡が消えてしまってても不思議じゃないからな。」

コータにそう話しているところで女子2人が戻ってきた。

「レシートのあったところの近くを見てきたけど、他には何もなさそうだね。」

ちょっと残念そうにミーコが告げる。

「ほんとに、春樹はどっちに向かって行ったんだろうな。ここからじゃ森の先の様子は全くわからない。富士の樹海とかだって毎年遭難者が出るんだし、知らない森に入って行くなんて自殺行為だろ。」

ついつい愚痴のようなものが口をついて出てしまう。

「先輩なら無謀なことはしなさそうっすけど、ずっとここでじっとしてるわけにもいかないっすから、覚悟決めて行ったんすかね?」

まぁコータの言うとおり、帰れる見込みがないなら、ここに留まってもジリ貧だな。

「だが、それなら自分が通ったところに道しるべくらい付けるだろ。迷ってもとりあえずここに戻って来られるようにするはずだ。」

「そうですね。合宿所のところの山とはわけが違いますよね。あそこなら戻れなくても、最悪どんどん下っていけばどうにかなったでしょうけど…。」

サーヤが俺の考えに同意する。この草原は平地なのだが、それだけでここが平地なのか山の一部なのかは判断が付かない。ここから上を見ても周りの高い木にはばまれて、ただ空が見えるだけなのだ。山なら下ればいいかもしれないが、ここでは下手に動けない。

「あ、そうだ!ハル兄が本当に召喚されたんなら、召喚した人に付いてったんじゃない?それなら目印とかいらないし!」

ミーコが「これ当たりじゃない!?」と言わんばかりに得意げな顔で言う。

「ん~、優介さん、自分を召喚したっていう会ったばかりの人に、春樹さんが付いて行くと思いますか?」

ミーコの発言を受けてサーヤが聞いてくる。

「普通なら行かないだろうが、この森から抜け出すために仕方なく、なら行くかもな。けどアイツは人の本性を見抜くのが上手いというか、人を見る目はあるからな。悪意のある相手なら付いて行かないだろう。それか、春樹好みの美女だったら付いて行くかもな。」

「あ、ナルホド。女の人にばれたんでしたね。」

「も~!だから、ハル兄はそんな下心とかないってば!困ってる人がいたら放っておけないだけだよ!変態メガネとは違うんだからね!」

サーヤは納得しているが、ミーコは相変わらずの春樹信者ぶりだ。っつーか、すっかり『変態メガネ』が定着しつつある気がする。とりあえずミーコにはデコピンをおみまいしておいた。

「まぁ、今は考察はいい。春樹が森に入ったのは間違いないんだから、どうにか痕跡を探すぞ。レシートもあったんだし、落ち葉どかせば足跡のひとつくらい出てくるだろう。」

今度は男女に分かれ、探索を開始した。
ここまでモンスターどころか野生の獣の姿も、声すらも聞いていない。警戒を少し緩めても、手分けして早く探索を進めるべきだろう。そういうわけで、特に警戒担当は作らず、それでいてすぐに手を貸せる距離を保って探索していく。
しかし、探せど探せどそれらしい跡はなく、ため息混じりにコータにぼやく。

「もうしばらく探してみてもダメなら、いよいよ覚悟を決めて森に入らないといけないかな。」

「そうっすね。そろそ「ひああぁ!ユ、ユユユ、ユウ兄!ユウ兄ぃ~!!」」

コータが答える途中で突如ミーコの悲鳴が響いた。しまった!警戒を緩めるべきじゃなかったか!
獣かモンスターでも出たのかと、コータと一緒に慌てて2人の元へと駆け出す。

「どうした!何があっ…っ!!!なっなんだコレっ!?」
「なっ!!えぇぇっ!!!な、なんなんすかコレ!?」
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誠に勝手ながら、こちらの作品は、2017年12月1日の投稿をもって無期限の休止にさせていただきます。次話からは2章に突入予定でおりますが、また書き溜めができれば再開するかと思います。気長にお待ちいただければ幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
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