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第一話「お茶会レディース」③

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 日差しもいつでも、春の日差しのように程よくて、生活する分には、とっても快適なんだけど……。
 逆を言えば、温室みたいなもので、彼女達は、火の怖さはもちろん、夏の暑さ、冬の寒さだって知らない。
 
 まぁ、寒いのは思い切り満喫中みたいだけど……。
 さっきから焚き火の近くから離れないのも、離れると寒い、そばにいると温かいと学習したから。
 
 とは言え、日が差してて、この程度の気温なんだから、もう1、2時間もして、日が暮れてくれば一気に寒くなる。
 夜間はたぶん、氷点下余裕なのです……。
 
 でも、開発中の地上世界とかってそんなもん……。
 人が住むのはちょっと厳しいから、入植だって始まってないんだからね。
 
 コロニーにも雨や風はあるって言うけど、湿度調整や温度管理の一貫で人工的に起こしてるだけだから、ちゃんと事前警告もあるし、天気予報ならぬ天気予定なんて、やってる始末。

 雨だって、お湿り程度……傘も要らない。
 風もそよ風程度で、スカートがめくれるような突風は吹かない。
 
 ……おかげで、地上に降りてから、この二人の下着の色まで知る羽目になったってのは、あまり言いたくないけど、事実だったりする。

 二人共、とってもオシャレでした……可愛かった。

 なお、私は……風が吹いたら、即座にスカート押さえる!
 私、防御力には自信ありますけど、二人は女子としては常識レベルとも言える、風が吹いたらスカートを気にする素振りすら見せない。
 
 ……実際の地上世界の雨風ってのは、割と手加減無用でムチャクチャなのも多い。
 
 私が知ってる限りでは、私の生まれ故郷、惑星エスクロンのメガストームとか、雷嵐(サンダーストーム)とかがムチャクチャのいい例。

 前者は、風速100mとか行くスーパー台風……これが都市に上陸すると、全市民にシェルター退避命令が出る。
 
 後者は、縦横無尽に雷が飛び交う雷雲のものスゴイバージョン。
 これもやっぱり、避難命令が出る。
 
 どっちも生身でさらされたら、確実に死ぬので、警報聞いたエスクロン市民の動きはそりゃもう早い。
 
 歩くのも大変な休日の街中でも、五分位で全員、地下シェルターへと消えてしまう。
 観光客とかは、その手際の良さにビックリするらしいけど、その程度には皆、大自然の脅威ってもんを理解している。
 
 軌道エレベーターなんかも、メガストームの直撃食らったら、ポッキリ行きかねないので、他の地上世界ではお目にかかれない緊急シャフト収容システムなんてのがある。
 
 これは、エレベーターシャフトを半分辺りで分離して、地上側は地下深くへ収納。
 宇宙側は軌道ステーション諸共、高度を上げて、大気圏外へ退避させるって大仰な代物。
 
 最初の頃は、軌道ステーション諸共、軌道エレベーターが倒壊して、大惨事が起こったりしたらしく、そんなシステムを考案して、実用化したと言う話だった。
 
 科学の勝利? ユリ達エスクロン人ってのは、概ねそんな感じなのです。

 エスクロンの自然環境は、銀河レベルで見ても、相当ハードらしい。
 私にとって、自然に生きるとは……うーん? 戦い?
 
 お父さんに連れられて、都市郊外で野外生活とかやらされたから、その辺は嫌でも思い知らされている。
 
 もちろん、先輩達も知識では、そう言う自然現象があるってちゃんと解ってるし、VRでちょっとハードな自然環境体験……とかもやってたみたいなんだけど……。
 
 実体験を伴わない知識とかって、あんまり役に立たないんだなーと、この子達を見てるとつくづくそう思う。

 なお、二人はどっちも二年生で先輩なんで、この子達って呼ぶのはちょっと語弊がある。

 ユリは一年、後輩ちゃんなのです……それも9月なんて微妙な時期に転校する羽目になったってmおまけが付く。
 
 とにかく、先輩達は、こんな焚き火でお湯を沸かす様な機会もなかったのだと言う。

 文字通りの温室生まれの温室育ち。
 他の星系はもちろん、コロニーの外……宇宙空間に出たこともない。
 
 それはそれで、珍しくもないし、別に悪いもんじゃないだろうと思う。
 
 惑星エクスロンはお世辞にも住みやすいところじゃないのです。 
 あっちはあっちで、赤道付近以外は寒くてとても住めない上に、寒暖の差も激しく、40度近い灼熱日になったと思ったら、次の日にいきなり雪降って、吹雪なんてこともある。
 
 例のメガストームもよくあることだったし、何と言っても惑星エスクロンは地球の二倍くらいの巨大海洋惑星で、1.5Gの高重力惑星でもある。

 重力軽減処置が施されてる都市部から出る時は、ナノマシンによる骨格強化処置や筋力強化スキンなんてのを付けたりしないと、ものの10分ほどでダウンするのが関の山。
 
 1.5Gの環境ってのは、単純に体重が1.5倍になるだけに留まらず……あらゆる負荷が五割増しとなる。
 
 ベーシックな人間の身体では、この環境は普通にハードなので、骨格強化や外皮強化もしとかないと、ちょっと転んだだけで骨折とかするし、転んだ時の衝撃も五割増しなので、痛いじゃ済まない。
 
 重力低減区域外では、普通に歩いてるだけとか、階段降りただけで疲労骨折とかする。
 だから、ナノマシンによる身体強化措置や、身体自体を増設ハードウェアで強化するのも必要だから、やる……それだけの話。
 
 それもあって、エスクロンは身体改造者が普通にいるし、多分この銀河でも、身体改造技術は軽くトップレベル。
 かくゆう私も、エスクロンの最新身体改造技術の粋を集めた強化人間……こんなのも何人もいるのです。 

 その他の科学技術力も、銀河有数レベルを誇り、それを売りにいつしか、国自体が企業化……今や銀河有数の星間企業として、日夜営利活動に励んでいる。
 
 ……厳しい環境ってのは、科学を発展させ、その住民も一致団結させるのですよ。
 
 私が住んでたのは、そう言うところだったので、このどこかユルユルなコロニー生活は、物凄く違和感ある。
 もちろん、悪い意味じゃなく……安心して暮らせると言う意味での違和感なんだけどね。
 
 かつての人類の故郷……地球ほど人間が住みやすい星は無いってよく言われてる。
 
 あの星はもう、人類の記念碑的な惑星とされていて、太陽系丸ごとその立ち入りは厳しく制限されているのだけど、そうでもしないと皆、地球に住みたがるからってのが立ち入り制限の理由らしい。
 ……その理由も私にはよく解る。
 
 スペースコロニーってのは、そんな地球の環境に限りなく近づけてるから、とっても快適。
 一生そこに住めるなら、それも良いんじゃないかなーって私なんかは思うんだけど。
 
 この星系は、開発中の惑星があり、いずれこのコロニーの住民はその星へと降り立つ事になっているのだと言う話だった。
 
 そして、いつか降り立つであろう地上世界に慣れ親しむ為の活動をする部……それが。

「宇宙活動部」

 ……なりゆきで、私はこんな部に入ってしまったのです。 

 これは、そんなユリの苦労の日々の物語。
 
 二人の先輩にとっては、夢広がりまくりのドキドキアドベンチャーが始まるよ?

 ……いや、チョット待って。
 
「……先輩、私……帰り……」

 実際出たのはこんな言葉。
 お茶飲んだら、帰るって聞いてたから、そろそろ帰りたいって伝えたつもりだった。
 
「あら、ユリコさんまだ帰りたくないんですの? 奇遇ですわね。まずはお茶を飲む。それから、簡単な食事でもして、もうちょっとゆっくりしていきましょう。カップラーメンを持ってきてますの! 次はこれをいただきましょうっ!」

「せやな! 外泊許可ももろうとるし、あたしらの宇宙活動はまだ始まったばかりやっ! なんなら、一晩明かしたってええんやでっ!」

 ……ここに来ての誤変換。
 
 だ……誰か、へるぷみー。
 
 空を見上げると、遠くの雲に稲光が走るのが見えた。
 デンジャーッ! デンジャーですよぉっ! 

 ……かくして、ユリと先輩二人の宇宙活動部の日々が、波乱と共に始まったのだった。

 でも、その前に……このお茶会に至るまでの、お話を少しばかりしたいと思うんだけど。
 ちょっとだけ、いいかな……?
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