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第六話「別れた時のあなたのままで」PART5
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「やらせるかぁああああっ!」
叫びと共に復帰したサトルが、レインの前に飛び込むとその触手を素手で掴み取るっ!
それを見て、ミリアも躊躇なく渾身の力を込めて、大剣を突き刺す!
恐ろしく硬い装甲だったが……ミリアの全力を乗せた突きに耐えられなかったようで、装甲を砕きながら大剣が突き刺さる!
すかさず剣を撚ると、渾身の力を込めて、大剣を横薙ぎに薙ぎ払うっ!
高熱に炙られ、浄化の炎で焼かれながら、ほぼ胴体を両断された異形の騎士は、力尽きたように膝を屈する。
「……あらやだ……もう活動限界なんだ……所詮、分体じゃこんなもんか……残念ね……せっかく面白くなってきたのに……」
「もはやここまでだ! 貴様、何者だ……サトルに何をした!」
「別に何も? お邪魔虫を追い払って、少しお話しようとしたら、暴れるんだもん……だから、大人しくしてもらっただけよ……本当は殺せって言われてたんだけど、なんか情が湧いちゃったし……彼ってば、私の恩人なの……だから、今回はご挨拶代わりってとこね……」
「黙れっ! 貴様っ! その声で……それ以上喋るなっ!」
両腕を異形化させたサトルが白い騎士に駆け寄るとその頭部を鷲掴みにする。
白い騎士の兜がひび割れ砕けると、若い女の顔が見える。
「あら、酷い言い草ねぇ……でも、今回はおとなしく引いとくわ……またねぇ……サトルちゃん、えへへ……名前覚えちゃっ……」
最後まで言い終わる前にミリアはその女の顔に大剣を突き刺して黙らせる。
その一撃が止めとなったようで、女の頭が液状化し、残った部分も浄化の炎で溶け落ちていった。
同時にサトルの竜人化が解けて、力尽きたように倒れ込みそうになるのをミリアは慌てて、抱きかかえる。
ひとまず、周囲を見渡すとレインがサトルの様子に気付いたのか、慌てて駆け寄ってくるので、ミリアもサトルを横たえると、レインに任せる。
ルークの様子を見ると、すでにレインが治癒を施したようで、力なく片手を上げていた。
ファトリの方もサレナの治療が間に合ったようで、苦しげながら息はあるようだった。
サレナが治癒魔術をかけながら、必死に声をかけているが……芳しくない様子だった……唇と爪が紫色に変色していた……血の色もドス黒い……。
もう長く持たない……従軍経験のあるミリアが見ても、むしろとどめを刺して楽にしてやる方がいいくらいの状態だと判断する。
けれど、ミリアは楽観視していた。
ここにはレイン司教と言う天才治癒術師がいるから……即死でない限り、なんとでもなる。
「レイン……すまないが、ファトリの方を優先してやってくれ、かなり危険な状態だ……サトルの方は私が見ておく」
「あ、はいっ! 解りました!」
レインが慌てて、ファトリの方へ駆けていくとすかさず治癒魔術をかける。
浅く速い呼吸を繰り返していたファトリの呼吸がゆっくりになると、サレナがレインを抱きしめながら、涙ながらに感謝の言葉を告げていた。
サレナとしては……まさに奇跡を見た思いだったのだが、ミリアとしては今更驚くほどではない……その程度にはミリアはレインを信頼していた。
「ひとまず、敵を撃退し、ルーク達の疑いも晴れた……想定外の強敵と軍勢規模のスライムに遭遇し、武装神父達に犠牲者は出たものの、相対した全員が生き延びたのだから上出来か」
ミリアは辺りをを見渡しながら誰に言うでもなく呟く。
それにしても、恐るべきはあの白い騎士のような特異個体のスライムだった。
不意を打てたから良かったものの……身体強化で超人化したミリアですら見切るのがやっとのスピードと互角の鍔迫り合いを演じたパワー……恐ろしい相手だった。
その上、何やら、分体を遠隔操作でもしていたような事を言っていた……つまり、あれですら本気で無い上に、この先また出くわす可能性が高かった……それを考えるとうんざりするような話だった。
「……ミリアさんか……やれやれ、君には助けられてばかりだな……」
とりあえず、サトルのことは膝枕状態で寝かせて居たのだけど、回復したらしくサトルは目を開ける。
「……礼なら、あの三人にも言っておくのだな……私達だけでは、ここまで辿り着けなかったし、あれを仕留める事はできなかっただろうさ」
そう言って、ひとまずミリアもサトルに肩を貸して、立ち上がろうとするのだけど、身体強化が切れた反動で力が入らず、倒れそうになる。
「おっとっと……大丈夫か? 兄さんが何者だかは知らんけど、肩くらい貸すぜ!」
そばまで来ていたルークがサトルに肩を貸す……。
「ああ、悪いね……ミリアさん、彼は?」
「ああ、例の冒険者の一人でルーク君だ……一応、聞いておくが……彼は人間か?」
「……ああ、紛れもなく、人さ……ルークさん、すまないな……巻き込んでしまって……」
「よ、よく解かんねぇけど……あんた、あの化物と戦ってたみたいだし……と言うか、ミリアさんよ……事情は後でゆっくり聞かせてもらうからな! まずは、さっさとこっから出ねぇと……サレナ! ファトリは動かせるか?」
「……うん、多分もう大丈夫だと思う……自力で立てそう?」
「き、気持ち悪いです……と言うか、私……なんで生きてるんです?」
ファトリが上半身を起こすと、ローブに空いた大穴とべっとりこびり付いた自分の血を呆然と見て、再びパッタリと倒れる。
「サレナさん! 無茶言っちゃ駄目です……処置が遅かったら死んでたくらいの重傷なんですから! もうすぐ姉さん達が来ますから、そのまま動かさないで! ルークさん、あなたもなんでもう動いてるんですかっ! けが人は皆、大人しくしててー! ですですー!」
……そんな風にレインが騒いでいると、アメリア達がドカドカと入ってくる。
彼らの手を借りて、負傷者は担架に乗せられ、速やかに撤収作業が進められていった。
この場での戦いは終わり……いつ敵の増援が来るとも解らない以上、長居は無用だった。
叫びと共に復帰したサトルが、レインの前に飛び込むとその触手を素手で掴み取るっ!
それを見て、ミリアも躊躇なく渾身の力を込めて、大剣を突き刺す!
恐ろしく硬い装甲だったが……ミリアの全力を乗せた突きに耐えられなかったようで、装甲を砕きながら大剣が突き刺さる!
すかさず剣を撚ると、渾身の力を込めて、大剣を横薙ぎに薙ぎ払うっ!
高熱に炙られ、浄化の炎で焼かれながら、ほぼ胴体を両断された異形の騎士は、力尽きたように膝を屈する。
「……あらやだ……もう活動限界なんだ……所詮、分体じゃこんなもんか……残念ね……せっかく面白くなってきたのに……」
「もはやここまでだ! 貴様、何者だ……サトルに何をした!」
「別に何も? お邪魔虫を追い払って、少しお話しようとしたら、暴れるんだもん……だから、大人しくしてもらっただけよ……本当は殺せって言われてたんだけど、なんか情が湧いちゃったし……彼ってば、私の恩人なの……だから、今回はご挨拶代わりってとこね……」
「黙れっ! 貴様っ! その声で……それ以上喋るなっ!」
両腕を異形化させたサトルが白い騎士に駆け寄るとその頭部を鷲掴みにする。
白い騎士の兜がひび割れ砕けると、若い女の顔が見える。
「あら、酷い言い草ねぇ……でも、今回はおとなしく引いとくわ……またねぇ……サトルちゃん、えへへ……名前覚えちゃっ……」
最後まで言い終わる前にミリアはその女の顔に大剣を突き刺して黙らせる。
その一撃が止めとなったようで、女の頭が液状化し、残った部分も浄化の炎で溶け落ちていった。
同時にサトルの竜人化が解けて、力尽きたように倒れ込みそうになるのをミリアは慌てて、抱きかかえる。
ひとまず、周囲を見渡すとレインがサトルの様子に気付いたのか、慌てて駆け寄ってくるので、ミリアもサトルを横たえると、レインに任せる。
ルークの様子を見ると、すでにレインが治癒を施したようで、力なく片手を上げていた。
ファトリの方もサレナの治療が間に合ったようで、苦しげながら息はあるようだった。
サレナが治癒魔術をかけながら、必死に声をかけているが……芳しくない様子だった……唇と爪が紫色に変色していた……血の色もドス黒い……。
もう長く持たない……従軍経験のあるミリアが見ても、むしろとどめを刺して楽にしてやる方がいいくらいの状態だと判断する。
けれど、ミリアは楽観視していた。
ここにはレイン司教と言う天才治癒術師がいるから……即死でない限り、なんとでもなる。
「レイン……すまないが、ファトリの方を優先してやってくれ、かなり危険な状態だ……サトルの方は私が見ておく」
「あ、はいっ! 解りました!」
レインが慌てて、ファトリの方へ駆けていくとすかさず治癒魔術をかける。
浅く速い呼吸を繰り返していたファトリの呼吸がゆっくりになると、サレナがレインを抱きしめながら、涙ながらに感謝の言葉を告げていた。
サレナとしては……まさに奇跡を見た思いだったのだが、ミリアとしては今更驚くほどではない……その程度にはミリアはレインを信頼していた。
「ひとまず、敵を撃退し、ルーク達の疑いも晴れた……想定外の強敵と軍勢規模のスライムに遭遇し、武装神父達に犠牲者は出たものの、相対した全員が生き延びたのだから上出来か」
ミリアは辺りをを見渡しながら誰に言うでもなく呟く。
それにしても、恐るべきはあの白い騎士のような特異個体のスライムだった。
不意を打てたから良かったものの……身体強化で超人化したミリアですら見切るのがやっとのスピードと互角の鍔迫り合いを演じたパワー……恐ろしい相手だった。
その上、何やら、分体を遠隔操作でもしていたような事を言っていた……つまり、あれですら本気で無い上に、この先また出くわす可能性が高かった……それを考えるとうんざりするような話だった。
「……ミリアさんか……やれやれ、君には助けられてばかりだな……」
とりあえず、サトルのことは膝枕状態で寝かせて居たのだけど、回復したらしくサトルは目を開ける。
「……礼なら、あの三人にも言っておくのだな……私達だけでは、ここまで辿り着けなかったし、あれを仕留める事はできなかっただろうさ」
そう言って、ひとまずミリアもサトルに肩を貸して、立ち上がろうとするのだけど、身体強化が切れた反動で力が入らず、倒れそうになる。
「おっとっと……大丈夫か? 兄さんが何者だかは知らんけど、肩くらい貸すぜ!」
そばまで来ていたルークがサトルに肩を貸す……。
「ああ、悪いね……ミリアさん、彼は?」
「ああ、例の冒険者の一人でルーク君だ……一応、聞いておくが……彼は人間か?」
「……ああ、紛れもなく、人さ……ルークさん、すまないな……巻き込んでしまって……」
「よ、よく解かんねぇけど……あんた、あの化物と戦ってたみたいだし……と言うか、ミリアさんよ……事情は後でゆっくり聞かせてもらうからな! まずは、さっさとこっから出ねぇと……サレナ! ファトリは動かせるか?」
「……うん、多分もう大丈夫だと思う……自力で立てそう?」
「き、気持ち悪いです……と言うか、私……なんで生きてるんです?」
ファトリが上半身を起こすと、ローブに空いた大穴とべっとりこびり付いた自分の血を呆然と見て、再びパッタリと倒れる。
「サレナさん! 無茶言っちゃ駄目です……処置が遅かったら死んでたくらいの重傷なんですから! もうすぐ姉さん達が来ますから、そのまま動かさないで! ルークさん、あなたもなんでもう動いてるんですかっ! けが人は皆、大人しくしててー! ですですー!」
……そんな風にレインが騒いでいると、アメリア達がドカドカと入ってくる。
彼らの手を借りて、負傷者は担架に乗せられ、速やかに撤収作業が進められていった。
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