スライムスレイヤーZ! スライムに転生して俺Tueeeとかやってる馬鹿が影で支配する世界を僕はブチ壊す。

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第六話「別れた時のあなたのままで」PART1

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 少し時間を遡る。
 ここは、迷宮最深部の迷宮守護者が居座っていた最下層のボスルーム。
 
 サトルはアメリアと5人ほどの武装神父達と待機していた。
 
「やれやれ……どうもこの作戦……どうにも回りくどくていけないな……なんで、僕がダンジョンのボスキャラよろしくこんなとこで待ち伏せてなきゃいけないんだか……」

「サトル様、多少回りくどくても、ここは敵地のようなものですから……なるべく目立たないのが肝要です……なにより、戦果もちゃんと上がっているじゃないですか……」

 そう言って、アメリアはメガネをクイッと直しながら、微笑む。
 アメリアは……実妹のレインと同様金色の髪で顔立ちもよく似ており、一言で言えばメガネを掛けて育ったレイン……まさにそんな感じだった。
 
 元々技術畑の人間で最前線に出てくるタイプではないのだけど……オルメキアでのスライム掃討戦での功績もあり、サトルの側近の一人のようになってしまった。

 レインとは10近くも離れた姉妹ながら、教団内の序列ではレインの方が上と言う複雑な関係なのだけど、お姉さん気取りは止めるつもりはないらしく、良く喧嘩もしている。

 それでも、基本的には仲の良い姉妹……と言うのがサトルの印象だった。
 
「けど……レイン達の定時報告だと、今回はハズレの可能性が高いらしいじゃないか……」

 相変わらず、不機嫌そうなサトルが応えると、アメリアも困ったように苦笑する。

「そうですね……女エルフと人間の魔術師と剣士だそうですからね……ただ、剣士がちょっと怪しいと言う話です……最近、スライム側も擬態能力を進化させたようで、切って血を流すケースや浄化の炎を無効化するような事例があるみたいで……ホント、厄介な相手ですわ」

「なるほどね……僕のスライムの判別能力もオーラの色が見分けられるくらいまで近づかないと確実じゃないからなぁ……敵も日々進化している……か、面倒な話だな……下等生物のくせに無駄に高度だ」

「伊達に世界を席巻してないと言う事ですかね……けど、事情を知って、こちらに同調してくれる冒険者も増えてますからね。悪いことばかりじゃないですよ……せめて、ギルドが味方してくれると良いんですけどね……」

「やれやれ……目につくスライムを片っ端から狩っていくだけで良いって思ってたんだけどな……人間に紛れてるような奴が相手だと、どうしても人間が邪魔になってしまう……女神様も難儀な制約を課してくれたものだよ」

「……我々がサトル様の剣となりますから、ご安心を……我々をいくらでも使ってください」

 そう言って、深々と頭を下げるアメリア……なにぶん、彼女達聖光教会の人間にとっては、サトルは女神様の御使い……けれども、あまりに実直すぎるのでサトル的には引き気味だった。
 
 そんな風に無駄話をしていると、部屋に戻ってきた武装神父がアメリアに耳打ちする……アメリアも表情を厳しいものにする。
 
「……どうした? 何かあった?」

「いえ……地上の歩哨と連絡が取れなくなったそうです……それと一層に配置していた分隊からも……現在、二層に展開していた隊員を集結させています……敵襲の可能性が考えられます!」

「まさか……ここに敵襲だと? どう言う事だ……情報が向こうに漏れていたのか?」

「解りません……付近のスライムは掃討したはずなんですが……何ぶん敵の規模が解りません……サトル様、戦闘準備を!」

 ……ダンジョンの最深部……もっとも守りが堅牢と言えば聞こえが良いが、逃げ場もないとも言えるのだった。
 
 二層に居た武装神父の残り5名が、広めのボスルームに駆け込んでくると、盾と剣を構えて臨戦態勢に入る。
 
 10秒もしないうちに、スライムが押し寄せてくる!
 
 たちまち、乱戦となり浄化の炎、アメリアの放つ小型爆弾……竜人形態となったサトルの吐く炎が飛び交う戦場となる。
 
 サトル付きの武装神父も教会の精鋭……アメリアも司祭級とは言え、その戦闘力は低くない。
 数に任せて押し寄せるスライム相手に誰もが奮戦し、その勢いが衰えかけるところまで行けた。
 
 けれども、突然の冷気と共に現れた白い騎士のような姿の異形のスライムの登場で戦況は一気に逆転された。
 
 現れるなりの怒涛のような勢いで放たれる剣手と呼ばれる刃物状の触手。
 
 ……たった一体の変異スライムその攻撃によって、アメリアを含むほぼ全員が負傷し、戦闘不能者も続出し……戦況は一気に逆転した。
 
「……アメリア、負傷者を連れて脱出するんだ……僕が時間を稼ぐ」

 アメリア達はかねてからの戦訓を元に、緊急脱出用に使い捨ての転移魔法を封じた転移石を持っていた。
 だから、彼女達だけなら、即時撤退が可能だった。
 
 もちろん、サトルも同じものを持っているのだが……その為には、一度人間形態に戻る必要があった。
 
 けれども、そんな隙を見せたら、確実に殺される……それが解っていたからこそ、サトルはアメリア達を先に撤退させると言う道を選んだ。
 
 アメリア達を犠牲にすれば、サトルだけが脱出することも可能だったのだが……サトルは、そんな選択は選ばない……むしろ、彼には撤退という選択肢自体がそもそも頭になかった。

「い、いけませんサトル様……そのよう無茶をされては困ります!」

「いいから行けっ! 敵はスライムだ……僕も君達がいたんじゃ本気で戦えない……なぁに、こいつらを皆殺しにしたら、すぐに脱出するさ……」
 
 すごみのある笑顔と共に睨まれたアメリアは息を呑むと、全員に撤退命令を下命する。
 一人、また一人と武装神父達が転移の魔法陣の光と共に消えていく。
 
 白い甲冑のようなものを身に纏った変異個体……敵は、サトル達の様子を興味深げに見てはいたが、サトルが牽制しているのもあって、おとなしく見逃してくれたようだった。
 
「さぁ、行くぞ化物っ! 全部ぶち殺してやるっ!」

……かくして、異形同士の戦いが始まった。
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