スライムスレイヤーZ! スライムに転生して俺Tueeeとかやってる馬鹿が影で支配する世界を僕はブチ壊す。

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第一話「死んだスライムだけが良いスライムだ」PART3

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「クソがっ! よくも同胞をやりやがったな……それに俺も正体がバレちまったから、また誰かに成り変わらねぇといけねぇじゃねぇか……どうしてくれんだ……このクソカルトのガキが!」

 男の触手がレインに向かうと、あっけなくレインはその触手に拘束される。

「……擬態種……噂には聞いてたけど、なんて速度とパワー……サトル様! 大丈夫ですか! 返事をしてっ!」

「無駄だ! 俺の触手は城壁だって崩すくらいのパワーがある! あの小僧は即死だ! 安心しなぁ……お前も同じように神様のところへ送ってやるよ!」

「サトル様がお前なんか負けるはずがありません! やっぱり、ラーテルム様の神託は間違ってなかった! ……スライム、滅ぶべし! この邪悪なる生物に死と滅びをっ!」

 懸命に触手に抵抗し、ペンダントを掲げようとするレイン。

「まだ言ってやがるのか……この糞ガキが!」

 スライム男がそう言うと、レインの拘束はますます激しくなる。

 一本だった触手が幾重にも別れると、シスター服を引き裂きながら、その小さな身体に巻き付いていく、そして触手がレインの口の中に強引に突っ込まれる。

 もがきながら、必死で触手を振り払おうとするレイン……けれども、たちまちその目は光を失いぐったりとする。

「グヒャヒャ……肺の中まで俺の触手で埋め尽くしてやるよ……死因は溺死ってとこだ……死体は穴という穴に触手を突っ込んで中身を念入りにぐちゃぐちゃにしてドブ川にでも沈めといてや……る?」

 スライム男が吠える……けれども、その言葉は最後まで言えなかった。
 その視線は、自らの腹部へと移る……信じられないものを見たと言った様子でその眼が大きく見開かれる!

 男の腹から、凶悪な鉤爪付きの腕が生えていた。
 ……それは大穴を空けただけでなく周囲の組織を沸騰させていく。

「調子に乗るな……下等生物……貴様はレベル2の個体か? やけに好戦的だと思ったら、そう言うことか……だが、これで終わりだ! クセェ中身をぶち撒いて死ね! と言うか今すぐ死ねっ! 念入りに死ねっ!」

 ……サトルだった……その姿は先程までより、更に人間離れしていた。
 手足の先に凶悪な鉤爪が付いていて、兜の形自体が変形していて、トカゲとか爬虫類を彷彿させる異形と化していた。

 ゆっくりとスライム男の頭を掴むとサトルの姿が陽炎のように揺らめく。
 頭の部分だけは、人間の原型を残していたのだが……ボコボコとその頭部が蠢くと、まず眼球が真っ先に飛び出して、パンパンと言う音を立てて、派手に体液を撒き散らす!

「ガ……ゲ……ヤ、ヤメロォッ! オデハシビタブ……!」

 言葉にならない叫びを上げながら、体表のあちこちをブツブツと弾けさせ、ボダボタと崩れていくスライム男。

「砕け散れっ! ジャッジメントヒートエンドッ!」

 最後にサトルが吠えて、スライム男を引き伸ばすように両腕を広げる! 大きくビグンビグンとスライム男が全身を痙攣させると、バーンと言う破裂音と共に木っ端微塵になる。

 スライム男に拘束されていたレインも触手が力を失ったことで、すでに逃れていた……ゴホゴホと咳をしながら、恨みがましい目で破れた服を抑えて、露出した肌や下着を隠そうとしていた。

「レイン……無事か? すまない……噴水に落とされたのは計算外だった。やはり、この身体……水が弱点みたいだな」

「サトル様、ありがとうございます……ちょっと危なかったです! でも結局、擬態種は二体だけしか仕留められなかったんですね……いえ、ご無事で何よりです……これが先でしたね」

 そう言って、レインは笑顔を浮かべる。

「ああ、こいつが思ったより手ごわかったからな……パワーが尋常じゃなかったし、再生力がエラく高かった……恐らく上位個体のレベル2だったみたいだな。直接ヒートエンドをブチ込んでやっとくたばった……他に居た奴は、どさくさに紛れて逃げやがったが、いずれも小物だ……大したもんじゃない。それより、衛兵が来たようだな……ここは逃げとくか?」

「……あはは、実は腰が抜けちゃいましたから……おぶってくれないと動けません。
でも、うちの教団は世間じゃカルトとか言われてますけど、法皇様からも正式に認められてる上に、世界最古の歴史を誇る由緒正しい教団です……何より、このペンダントは教会の権威を示す身分証明になります。だから、むしろ堂々とすればいいと思いますよ。わたし達は正しいことをしたんですからね」

「まぁ、神様がむしろやれって言ってるんだから、正しいかどうかと言う意味なら、これは問答無用で正しい行いだ。でも、この街の人の視線が痛いね……ありゃ、まるっきり人殺しを見る目だ……話には聞いてたけど、ホントに酷いもんだ……あんな有毒の体液を撒き散らすような生物が、すぐに隣に居たって事実の方が衝撃的だと思うんだがな」

「どちらかと言うと理解が追いついていないんじゃないかと……大丈夫、遠慮なんていりませんよ。サトル様の行いはすべて、神の御名に置いて正当化されますから」

「でも、子供のペットまで殺すのは、さすがにやり過ぎだったなぁ……確かにスライムは例外なく駆除べきなんだが、せめて見えない所でこっそり始末するべきだった……まとわりつかれて、ついカッとなってしまった……あの娘、ショックでしばらく寝込むんじゃないかな……?」

「間違いは速やかに是正すべきです……愛玩種は飼い主を精神汚染して、知らず知らずに立場を逆転させますからね。……あの女の子は後日、うちの教団の者がフォローするだろうから、気にしなくていいですよ……」

 そんな風に呑気に話すサトルとレインの周囲に武装した兵士が続々とやってきて、取り囲む。

 異形の姿をなしていたサトルも、いつの間にか人間同様の姿に戻っていた。
 異様な黒い兜は相変わらずなのだけど……先程のようなトカゲのような形ではなかった。

「貴様ら! この騒ぎはなんだ! 何があった! 武器を持っているなら捨てろ!」

 兵士たちの一人が声をあげる。

「わたし達は、聖光教会の執行者! なんの騒ぎと問われるならば、神の正義を執行したに過ぎないと答えよう! 邪悪なる生き物が昼間から堂々と町中を闊歩しているこの状況はどういうことか! この街の正義はどうなっているのだ!」

 そう言って、小さなレインが朗々と声を上げ、ペンダントを掲げると、兵士たちがざわめく。

「こちらは何も聞いてない……市民を虐殺している狂人がいるという通報があったのだ! 騒ぎを起こしたのは事実のようだし、貴様らは怪しげな事この上ない……抵抗するのならば、制圧するまで……それが街の治安を守る我々の責務だ!」

「まぁまぁ……抵抗なんてしませんよ……事前通告ナシで騒ぎを起こしたのは申し訳なかったです。とりあえず、そちらの詰め所とかでいいですから場所変えません? 美人のお姉さん」

 サトルはそう言うと兜を脱いで、顔を見せると朗らかな笑みを浮かべる。
 その見た目は至って、何処にでも居そうな若い少年の顔で……先程、凶行を行った怪人と同一人物とはとても思えない豹変ぶりだった。

 隊長格が応えるように兜を脱ぐ……バサッとプラチナブロンドの髪の毛が広がった。

「私はオルタンシア警備隊第二小隊隊長のマクミリア・フォン・フォーグレン中尉だ……貴様の名は? まぁ、細かいことは詰め所で聞こう。まずはご同道いただけるということでよろしいかな?」

「僕はサトルだ……ミチカネ・サトル。マクミリア……ミリアさんってとこかな? フォンが付くって事は貴族様か……まぁ……僕らもこれ以上は騒ぎを起こすつもりもないから、おとなしくするよ。レインもそれでいいよね?」

「わたしはサトル様の下僕です……サトル様の仰せのままにいたします。でも、出来ることならお着替えしたいです……これはちょっと酷いですよね……身体もスライム汁でヌルヌルベタベタで気持ち悪いので、どこかで洗いたいんですけど……」

「そ、そうね……その姿……何があったのか解りませんけど、何とかします……。ひとまずこれをどうぞ……」

 そう言って、ミリアは微笑むと羽織っていたマントをレインの肩に羽織らせる。

「あ、ありがとうございます……そうだ! 貴女に感謝と祝福の祈りを」

 そう言って、レインはミリアにペンダントをかざすと、ミリアも応えるように跪くと、レインはミリアの額に軽くペンダントを当てる。

「神の祝福に感謝を……子供のシスター見習いとでも思ってましたが、三本羽の司教クラスの方なんですね……そのペンダントも本物のようですから、すでに身分は証明されているようなものです。神の名に誓って、相応の扱いをお約束します。けど、成り代わりって……そもそも、一体何が……」

「うん、女性の隊長さんで良かったね……レイン。詳しいことは後でゆっくり話すよ……まずは詰め所に案内して欲しいな」

 有無を言わさぬ口調でサトルがそう言うとミリアも頷くしか無く、10人近い兵士に囲まれながら、二人は詰め所へと連行されていった……。
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