スライムスレイヤーZ! スライムに転生して俺Tueeeとかやってる馬鹿が影で支配する世界を僕はブチ壊す。

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第一話「死んだスライムだけが良いスライムだ」PART1

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 それは、平和な街の風景。

 それは、静かな午後のひととき。

 朝から快晴で、雲一つない青空が広がる……。

 このオルタンシアの街は至って平和だった。

 街の象徴となっている中央広場の噴水。

 水の飛沫が陽の光を浴びて、虹色に輝く。

 小さな子供がペットと思わしき、ボール状の生き物と戯れている。

 スライム……本来、魔物の一種とされていたが、近年その攻撃性が薄まり、人にも懐きやすく家のゴミを処分してくれたり、汚れなども浄化する……見た目の愛らしさもあって、とある大国の王が益獣として扱うよう布告したことをきっかけに、人畜無害な生物として認知されるようになった。

 特にこのボール状の愛玩種のスライムは、つぶらな瞳が可愛らしく大変人気があった。
 この瞳自体は、目としては機能しておらず人間に可愛がられるための擬態と言う説があるのだが。

 それはつまり、犬猫と同じく人と共に生きる共生の道を選んだ魔物だと言う証左でもあった。

 広場に面した店先にも二匹のスライムが並んでいて、ポヨンポヨンと飛び跳ねながら客寄せに余念がない。
 何とも可愛らしい仕草に、行き交う人々の視線も温かい。

 通りがかりの買い物帰りの主婦が、店先のスライムを撫で回したりしていく。

 ちょうど少し日が傾きかけた頃合い。
 季節は春……暑くもなく寒くもない……柔らかい日差しと風に乗って、花の香が運ばれてくる。

 家の屋根の上には白と黒の二匹の愛玩スライムが、お互いを追い回してクルクルと回りながら、時折ピョンピョンと跳ね回っていた。

 少し大型の愛玩種のスライムを連れたお年寄りがゆっくり、ゆっくりと歩く。
 スライムも尺取り虫のような動きでお年寄りに合わせて、のんびりと進んでいく。

 人と魔物とが手を取り合って、平和に暮らす世界……まさにそんな言葉がしっくり来る光景だった。

 けれども、こんな光景も今時は、珍しい光景ではなかった。

 ほんの10年程度前まで続いていた群雄割拠の戦乱の世。
 唐突に始まった各国の融和政策、魔物の沈静化……そんな数々の僥倖が重なり、そんな時代がまでがまるでウソだったかのような……平和な日々が訪れた。

 この街もそんな平和を享受している田舎街のひとつ。

 国境に近いがゆえに幾度となく戦火に巻き込まれた……この街には、数々の悲劇と不幸が積み重なっていた。

 けれども、それももう過去の話だと誰もがそう思っていた。

 平和そのものと言った風景がここにあった。

 不意に……どこからともなく現れた青と白のシスター服の小柄な少女が一人、噴水の脇に腰掛ける。

 首から下げたネックレスには、彼女の所属する教団のシンボルマークが描かれていた。
 それは、二重の丸に十字架のマークに3本の羽が並ぶ……そんな意匠だった。

 詳しいものが見れば、それは太陽神ラーテルムを崇める聖光教会の司教ビショップを意味するものだと解っただろうが、この場にはそこまで詳しいものは居なかった。

 この辺りでは見かけない顔だと誰もが思うのだけど、旅のシスターくらいは珍しくはなかった……強いて言えば、こんな10歳程度の見かけのシスター自体が珍しいのだけど。

 彼女は少し緊張した面持ちでペンダントを弄んでいた。

 聖光教会……それはむしろ、カルト教団として有名だった。
 各地でテロ活動じみた騒ぎを起こしては、問題になっているのだが。

 教団自体は1000年近い長い歴史を誇る上に、各地に支部があり、権力者にも信者を多く抱える一大宗教勢力と言えた。

 そのテロの対象は現状、極めて限定されており、殺人や破壊行為を積極的に行う訳ではないので、下手につついて暴発されたら極めてやっかい……そんな理由で多少のトラブルを起こしても黙認される……それが現状だった。

 そんな彼らは近年、唐突にとある生物を目の敵にするようになっており、以前にもましてトラブルメーカーの側面が強くなっていた。
 排除を望む勢力もあるのだけれど……敵に回すと厄介この上ないので、表立って敵対しようとする者は少数派だった。

 結局……この突然現れた聖光教会の小さなシスターには、誰も気を払わなかった……。
 見た目は、無害そうな金髪の可愛らしい少女だったから。

 ……この少女、誰かと話でもしているようにしきりに口を動かしているのだけど、噴水の水の音に紛れて、その声は周囲には聞こえていなかった。

「はい……解りました。わたしも所定の配置につきました……お姉……じやなくて、そちらはどうですか?」

 独り言のように呟く少女。
 誰かと会話でもしているかのように時折、頷きながら辺りを見渡す。

「そうですね。見たところ、愛玩種が6匹ほどいます……他はわたしには解りません……ええ? そんなにいるんですかっ!」

 驚いたように大きな声を出したシスター少女に、通りがかりの人々が視線を向ける。
 彼女はペコリとお辞儀をすると、四角いカードのような物に手を添える。

 通信札と呼ばれるそれは、二枚一組となっていて、対となるカードを通して、遠隔相互通信を可能とする魔道具だった。

 この世界では、誰でも持っているほど一般的ではないが……大きな街では、通信屋と呼ばれる商売が成り立っており、一般人でも急ぎだったり、簡単な用件を言付けたりするのに、使う機会があるので、さほど珍しいものではなかった。

「わ、解りました……それでは、作戦開始ですね……サトル様、お待ちしております!」

 最後に彼女はそんな事を口にするとうつむき加減だった顔を上げると、唐突に魔法陣の描かれた布を地面に広げる。

 そして、一陣の風が吹く……。

 少女の広げた魔法陣が赤く輝き、続いて魔法陣から生えるように人影が現れる!

 赤いマントをたなびかせ、顔を覆い尽くす赤いフルフェイスの兜で顔を隠し、バンデッドアーマーと呼ばれる薄い帯状の金属の板を重ね合わせた赤い鎧を着込んでいる。

 兜も一般的な騎士のかぶるような物と違い、不思議な素材で作られており、顔のあるべき部分にはのっぺりとした黒い板のようなもので覆われており、全く素顔が見えなかった。

 更に、マントの隙間からはいくつもの柄の付いた薄い刃のナイフのような物が覗いていた。
 その形状は油彩などに使われるパレットナイフと呼ばれるものに酷似しているのだが……その刃は容易に曲がりそうなほど、薄っぺらく殺傷力があるようにはとても見えないものだった。

 ……平和な街の中では、明らかに浮いた異様な怪人物というより他なかった。

 シューッと言う音を立てて、その周囲にうっすらと陽炎が立ちのぼる……通りすがりの人々も思わず足を止めて、その怪人に注目する。

 そこへ、折り悪くスライムを連れた少女が近づいていた……少女も思わず足を止めたのだけど、スライムは無警戒に怪人に近づき、その足元にまとわり付く。

 その男はチラリと少女とスライムを一瞥すると、足元のスライムを優しげな手つきでそっと拾い上げる。

 愛玩種のスライムは基本的に人懐こい……男のなすがままに、その手に収まるとつぶらな瞳を潤ませながら、プルプルと震える。

「お兄ちゃん! そのコはゴビちゃんって言うの! 遊んでくれてありがとうねっ!」

 無邪気な少女の言葉に答えるように、男は左手に乗せたスライムを撫でるように右手を乗せる。
 いきなり現れた場違いな怪人に、何事かと思った人々も彼の仕草に少し安心したのか、むしろ微笑ましいと言った視線を向ける。

 少女がスライムに手を伸ばそうと近づこうと一歩踏み出した……次の瞬間!

 男が右手に力を込めると、メメタァと言う音と共にその愛玩スライムの身体が潰れ、パーンと言う音と共に弾け飛んだ!
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