忠犬ポチは人並みの幸せを望んでる!

Lofn Pro

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【4】

あっちでもこっちでも。

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 酒場の裏口、そこのちょっとした庭にある犬小屋の前で、ポルトは闇に紛れるようにうずくまっていた。この世の全てから隠れるように深く深く被られたフード、その奥にある金色の瞳は犬小屋の入り口をじぃっと見つめている。
 風が入らないように厚い布がカーテンのように垂れ下がっていて、奥から時折ガサゴソと音がする。店主の奥さんが言っていた子犬がいつ顔を出すのかと胸が高鳴った。

 どうせ二時間酒場で粘っても駄目だったんだし…と、今日の婚活は諦めた。胸が大きくなっただけで十分だ。それに一人でいるより犬と戯れている方が楽しいに決まっている。何よりあの奥さんのいる酒場、しかもカウンター席なんて……。戻るにはちょっとどころじゃない勇気が必要だ。

 外の寒さのせいか、それとも子犬たちが眠っているのか、ちっとも顔を出そうとはしない。かといってカーテンをめくるのはちょっと可哀想な気がして躊躇してしまう。

(でも…ちょっとだけなら覗いても……。いやいやいや、でもここで嫌われちゃったら元も子も……)

 ごちそうを目の前におあずけ状態。ポルトはむむぅ…と考え込んだ、その時。突然背後の扉が開く。

「お嬢ちゃん、すまないね。こちらの旦那と交代だ。」
「!」

 ポルトは思わずフードを引っ張った。

(………………うそ……………)

 扉の後ろから現れたのは店主と客人であろう一人の男。見るからに貴族とわかる出で立ちで現れたのは、同じ職場で働く見知った相手…ローガンだったのだ。

(……うそ……!うそ……!!なんで!?なんで!?)

 フォルカーと二人でいなくなったことに気付かれたのだろうか?まさか城から追いかけてきた…?そうじゃなければどうしてこの場所がバレてしまったのか。頭の中には次から次へと疑問が噴出し体中に嫌な汗をかかせる。

「いや、私は構わない。そのままでいてくれ」

 ローガンはそう言って店主に銅貨を渡す。

(あ、ヤバイ。これは一対一でのお説教タイムだ……!逃げなきゃ…!殿下に知らせなくっちゃ!!)
「おや、そうですか?良かったな、お嬢ちゃん。それじゃ、俺は店があるんで先に中に入ってますね。お二人とも風邪引かないように、キリの良いところで戻ってきて下さいよ!」

 店へ戻る店主に追随するように、ローガンの脇をすり抜けようとするが、長い腕がそれを妨害する。

 「待ちなさい。私は城で王に仕えているローガンという者だ怪しい人間じゃないよ、どうぞよろしく。君の名は?」
(あれ、自己紹介……??もしかしてバレてないの……?)

 しかし万が一ということがある。ポルトはその身を固く強ばらせた。ローガンはそのまま話を続ける。

「まあ、自分が悪人だと紹介する悪党も珍しいか。私はここの店の顔なじみだ。私が悪人だったら店主がこんな場所で君のように若い女性と二人きりにすることはないだろう?」
(わかってます、わかってます!貴方が悪者でないことはわかってます!よぉっくわかってます…!)

 声を出すことは出来ず、頷くだけの返事をした。
 今ならまだ間に合う。すぐにここを離れてあの馬鹿王子を回収し脱出する、これしかない……!
 正体がバレていないということは、恐らくローガンの目的は自分と同じ…つまり犬小屋の中にいる子犬だろう。度を超えた犬好きの彼ならば、きっと子犬を見た瞬間全ての感覚をそこに集中させる。その隙を狙うのだ。
 ぐっと決意を固めた、その時。小屋の中から聞こえた高く、か細い声。

「クゥンッ」
「「――――――ッッッ!!!」」

 高速で顔の向きが変わる。
 カーテンをくぐり、目の前に現れたのは……生後1ヶ月にも満たない子犬だ。厚い毛に覆われた茶色の天使。時折よろめきながらも短い足をピンと伸ばし、黒くて小さなお鼻をクンクン鳴らしている。
 好奇心の塊である子犬は見慣れない人間二人の姿を発見すると人差し指くらいの小さな小さな尻尾がピンと立たせ、嬉しそうに左右に揺らす。何より印象的なのは黒曜石のような真っ黒な瞳、そして小指の先ほどしかない小さな小さなお耳……!

(ぬあぁぁぁああ……!!!これはぁあぁあああああああぁぁぁ………!!!!)

 見つめて欲しい!いや、これは危ない。見つめないで!!もはやこれは生きる兵器。もし戦場で兵士と同じ数のと対峙することになったら…瞬時に心を奪われ剣を落とし、敵国へ寝返ることだろう。彼らのためなら奴隷として捕まったとしても構わない。むしろ転職したい。
 腰から崩れ落ちそうになり慌てて顔を覆い、視界を遮った。そしてなんとか体勢を保とうと背筋を伸ばす…が、やっぱり腰に力がうまく入らなくて、仰け反るような形のまま硬直してしまう。
 荒々しく夜の空気を吸っては吐き、なんとか気持ちを落ち着かせた。指の隙間からもう一度声のする方向を見ると……なんとローガンが天使を抱っこしているではないか!!しかも何度も何度も頬ずりをし、すでに顔の筋肉は崩壊寸前。そしてこちらは我慢の限界。

「あ、あの……!わ…私も触ってよろしいでしょうか……っ?」

 言ってしまった……。
 なるべく顔が見えないようにフードを押さえながら、高い声を意識しつつ話しかけてみた。
 だってズルいでしょ!先に待っていたのはこちらだというのに!!え?馬鹿王子??そんなものは後で良い!!
 ポルトの気持ちを知ってか知らずか、ローガンは笑顔で頷いた。

「ああ、勿論だとも!彼らの愛らしさは人類共通の財産だからね!…でもこの子は後かな。ホラ、後ろ。」
「!!!」

 促されるように振り向いて、ポルトは硬直する。なんということだ……。小屋の中から兄弟犬が顔を出しているではないか……!!丸くてモコモコでヨタヨタでプニプニな小っちゃワンコワンコワンコ!!

(嗚呼…やばい……意識が飛ぶ……)

 シーザーとカロンというかなり大きいサイズのワンコ(と同じ形をした狼)しか相手にしていないポルトには、キュン死必至の幼獣だ。
 その視聴覚攻撃に必死に耐えながら、膝から崩れ落ちるように腰を下ろした。

「ここの店主は猟犬を育てていてね、私の家もここで何匹か買ったことがある。この子達も今はこんなに小さく愛らしいが、そのうち立派に獲物を追うようになるよ」

 可愛い上に猟犬になるだなんて、どれだけ有能な生き物なんだ。いっそ世界を征服すればいい。出来ることなら今ここで自分を獲物に見立てて狩りの練習をして欲しいくらいだ。歯があるのか無いのかわからないような小っちゃなお口であぐあぐされる……そんな姿を想像すると理性が飛んで行きそうになる。

 「そう…なんですか。母犬は……」

 目線を移すと小屋の入り口からこちらを見ている母犬がいた。見たところシーザーやカロン達より年上に見える。既に何度か出産を経験しているのだろう。抱き上げられた子供を視線で追いはするが、人間に歯を見せたりはしない。
 ポルトは手を伸ばし、挨拶をするかのように匂いを嗅がせる。母犬は大人しく、優しく指先を舐めた。

「可愛くて穏やかな目…。普通ならちょっと神経質になるんですけど…優しい性格なんですね。……よく頑張ったね、お母さん。」

 子犬と同じ茶色い頭を撫でる。そして足下で鼻を鳴らす子犬の一匹を膝に乗せ、もう一匹を抱き上げた。まだ肉球は春先の花弁のように柔らかく、色は淡いピンク色。
 我慢出来ずに子犬を抱きしめると、その身体は小さくて小さくて、温かくて…とても柔らかい。胴を覆う手の平から力強い鼓動がドッドッドッと響いてくる。
 頬を舐められると愛おしくて泣いてしまいそうだった。実際出そうになったのは涙ではなくヨダレかも知れないが。
 その姿を見ていたローガンの表情も緩む。

「犬、好きかい?」
「はい…!あ…っ、こら…!」

 揺れるイヤリングを玩具と勘違いしたのか子犬が胸元をよじ登ってきた。もし間違ってイヤリングを食べてしまっては大変だ。慌てて顔を遠ざけた……その拍子にフードはパサリと脱げ、ローガンと思いっきり目が合う。

「「!?!?」」
「……あれ?ポルト?」
(…………や…ば……っ!)

 こんな背筋の凍り付きは、久しぶりだった。


━━…━━…━━…━━…━━…━━…━━…━━


 ファールン国の一般的な家の窓には板戸が設置してあるが、少し値の張るメニューが並ぶこの店には板戸の内側に動物の角で作られた窓があった。薄く伸ばされたそれは月の光に透けて、窓枠をぼんやりと浮かび上がらせる。
 棚の上に置かれた蝋燭の炎が揺れ、芯がジリッと鳴った。酒場の賑わいもかすかに聞こえるが、部屋は静かな空気に包まれていた。

「持ってる荷物とお金、ぜぇんぶ置いていって貰おうかしら?」

 女はフォードの首筋にナイフを当てながら、紅を引いた唇で微笑む。

「……それは貴女の腕次第では?」
「やだ。本当にただの商売女だとでも思ったの?夢見させちゃってごめんなさいね、インテリさん?授業料だと思って諦めて頂戴」

 フォードの上半身はすでに裸。腰に帯びていた剣も女によって床の上に転がされ、手も足も届かない。恐らく身につけている武器があるかどうかを調べ、あればそれを外す為に女は積極的に脱がせていたのだろう。

(激しいのも嫌いじゃ無いんだけどなぁ。惜しかった……)

 使用人や姫君の多くは自分が口説いてリードするパターンが多い。楽しくもあるが気も遣うので、こういうことに積極的な女性は男にとってはありがたい存在だ。それなのに……。
 ちょっとがっかりしているフォードを慰めるように女が顔を近づけた。

「眼鏡をかけてる男は初めてだわ。それにこれは…薔薇の香水かしら?とても良い匂い。従者にこんなものを使わせるなんて、貴方のお勤め先はさぞお金持ちなんでしょうね」
「確かに比較的大きな額の金銭は取り扱っておりますが、最近は出る額も多くてね…。困ったものです。連れのお嬢様も服装以外は貧相だったでしょ?」

 フォードがにっこりと笑う。まさか国家予算を扱う人間が目の前にいるとは夢にも思わないだろう。女が怪訝な表情を浮かべる……その瞬間だった。その視線が突然地面に落とされる。
 フォードはナイフを持った手首を掴み、後ろを向きながら細腕を脇に挟むように固定。腰を少し落とすと、女の関節は「これ以上は曲がらない」とばかりにギシギシと軋むんだ。

「ウゥ……ッ!」

 低いうなり声。フォルカーの目の前には今にも手からこぼれ落ちそうなナイフが淡く光っていた。

「綺麗な薔薇には刺があると言いますが……。もしかしたら、この言葉を紡いだ方も同じような経験をしたのかもしれませんね」

 空いていた片手でナイフを取ると、まるでペンでも回すように遊び始めた。

「誤解なさらないで下さいね。わたくしは本来、女性には最大限の敬意を払っております。ただ今回は特殊な事例とでも申しましょうか?いたずらをした子はお仕置きされるものですからね。これくらいならきっと、お嬢様にも許して頂ける範囲だと思いますし……。どうぞご容赦を」
「……っ……。…随分と…気を遣うのね」
「以前彼女とは大きな喧嘩をしてしまいましてね…。年長者らしく、こちらが折れることにしたんですよ。…ほら、色々と面倒でしょ?」

 ナイフが止まり、その切っ先が女の背中に向かう。なだらかな曲線を辿りながら後ろで布を止めているボタンを刃先で二三度撫でた。

「“子供”には早すぎて理解出来ないことも多いでしょうし、わざわざ説明したところで飲み込む程の柔軟さも持ち合わせない。純粋といえば響きは良いですが、真っ直ぐ過ぎる性格は視界を狭めてしまう。気に入らないものを拒むお気持ちもわかりますが、さりとて現状が変わるわけでもない。結局互いに自分の理想を押しつけているだけだというのに……。本当に羨ましくも愚かな方だ」

 刃先を布との隙間に潜り込ませる。ナイフはよく研がれていて、少し力を入れるだけでプチンと糸が切れた。その全てを外したところでフォードは彼女の腕を放す。

「花も果実も、少し厳しいくらいの環境に置いた方が立派に育つ。貴女もそう思うでしょ?」

 女は落ちるドレスを押さえながら、余裕の無い笑顔を見せた。

「子守も大変ね」
「だから貴女のような方は大歓迎です。……腕、大丈夫ですか?もし必要なら医者を呼びますが?」
「もう痛くないわ。手加減して頂いて恐縮よ。それで?私をどうする気?憲兵に突きだして報奨金でも貰うつもりかしら?」
「いいえ、とんでもない」

 一歩、また一歩と距離を詰めるフォード。今度は女を壁際へと追いつめた。女は気丈に振る舞ってはいるが、その足が前へ進むことはない。
 フォードは彼女の長い髪を一房持つと、優しくキスをした。

「!」
「荒っぽいことは終わりです。どうか怖がらないで下さい」

 髪の流れに沿うように顔を近づけ。額同士を軽くぶつけるように触れさせる。
 その呼吸を一つでも見逃さないように、エメラルドの瞳が彼女を捕らえた。

「出来ればこのまま…わたくしめの相手をして頂けませんか?手放すにはあまりにも惜しい。こんな形の‘忘れられない夜’は後悔しか残らない…」

 フォードの言葉に女は驚きを隠せない。

「あ・貴方、思っていたより節操がないのね…っ。今殺されそうになった相手よ…っ?」
「ええ、なかなか刺激的な演出でしたね。それにわたくしは、本当に美しいと…〈欲しい〉と思った方にしか応じません。ご自身の魅力……自負して頂いて結構ですよ」
「――――――……」
「報酬も最初の額で…。少ないなら今持っている全てでも良いでしょう。嫌ならこの手を振り払って逃げても構いません」
「あ…あら?逃がしてくれるの?」
「貴女がそう望むなら従うしかありませんね。でも……」
「っ!?」

 女の顎を捕らえるとやや強引に唇を重ねる。逃げられないようにくびれたウエストを引き寄せ、柔らかい太ももの間に自分の足をねじ込んだ。女はもがくようにフォードの胸を叩くがどこか力はなく、そのうち諦めたように彼を受け入れ始める。
 しばらくして唇が離れる音が水滴の様に響き、呼吸を整える音に変わる。女は熱いため息を吐きながら力なく彼の胸にもたれかかり、その身体を太い腕が抱きしめた。女の耳元で落ち着いた声音が静かに、甘く響く。

「……生憎わたくし、この手の勝負で負けたことはありません」

 誘われるように、女はゆっくりとフォードを見上げる。
 至近距離でぶつかる視線は思っていたよりもずっと優しくて、意志より先に反応した身体が頬を熱くさせる。
 優美な顔立ちだけではない。落ち着いた物腰、乱れのない美しい発音、みすぼらしさの欠片も感じさせない男…。今まで見てきた連中は、力で無理矢理言うことを聞かせるようなのも多かった。汚い言葉で罵り、「売女のくせに」と蔑む奴もいた。男なんてみんな頭が悪くて汚らしい…そう思っていた。酒場で彼を見つけた時だって「良いカモ」としか見ていなかった。

「あ…貴方一体…何者なの……っ?だって…だって……っ」

 やっぱりただの付き人などではない。もしかして、何処かの貴族様か騎士様ではないのだろうか?しかし軍人にありがちな荒々しさは見あたらない。
 その視線は真っ直ぐに注がれ、愛おしい者を見るように優しい。こんな風に見つめられたのはいつくらいぶりだろう。
 例えるなら、そう…、まるで……

「……王子様…みたい……」

 力なくこぼれた言葉にフォードは微笑し、眼鏡を外す。

「お覚悟なさいませ、レディ」


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