42 / 43
最終話
しおりを挟む「…おき…ん…起きてください!!ロジャーさん!」
頭をガンガンと金槌で
殴られてる様な痛みと共に
アダムの焦せりながら怒っている声で起される。
ムクッとダルい体を
起こしてボーーっとしてしまう。
完全に二日酔いだ。
昨晩何度もトイレに駆け込んだのを思い出す
脱ぎ散らかした服に、
片っぽしかない靴下。
自分の体から酒の臭いがするのが分かる
「何やってるんですかっ?遅刻しますよ!コレに急いで着替えて下さい」
アダムは壁に丁寧に掛かっている
スーツを指さして言った
「…あっ!やっべ!!」
そう言うとベッドから
急いで飛び降り、
シャワールームへと向かう
この部屋は元々、
団長だったジャンが使っていた部屋を
出て行ったのを機に俺がもらい受けた。
いいよな、
団長だけ部屋にバスルーム付いててさ
出るとアダムが早く早く!と急かしながら着替えを渡してきた。
髪は魔術で一瞬にして渇かして、
ワイシャツに腕を通す。
「…頭いてーんだけど?」
二日酔いの後遺症を訴えるも
アダムは俺を見下ろしながら
「それはロジャーさんの勝手です!今日重要な役なんですから!キチンとして下さい」
とお叱りを受けてしまった。
ここ最近で一気に
背の伸びたアダムはもう少年の面影はない。
「お前また背伸びた?」
「そうですね!シヴァさん位には…って早く!」
アダムとシヴァは
今でも交流を続けていて、
良く2人で会っているらしい。
バタバタと幹部2人、
超特急で誰も居ない寮を出て行く。
「ほら~もう、訓練生すら行っちゃってますよ」
「悪い悪い…あ!馬!乗ってこーぜ」
広い城内を移動するには
この馬に乗って行くのが一番だ
すぐそこに湖で
泳ぎ疲れた白鳥が休んでいるので
アダムにアイコンタクトを送る
「もう。仕方ないですね!今日だけですよ!」
シュルシュルル…!
困り顔をしながらアダムは
この馬に白鳥と融合する術をかけて
ペガサスを作ってくれた。
身長俺より高くなったくせに
技術も上がって、
俺は最近立場が無い気がする
リーンゴーンリンゴーン…
城の教会には隊員はもちろん、王族、
近隣国の重役や
見知った顔の貴族、市民、
なんと魔族も大勢来ていた。
魔族って教会入れんのか?
入りきらない
沢山の人混みを避け、
俺達は中に入っていく。
「あら?もう!今日の重役が遅刻してどうすんのよ!」
と長かった髪の毛をバッサリ耳元まで切った、
元オカ…おねぇの
エドワードが控え室の前で
仁王立ちで待っていた。
「まあ新婦の支度が終わって居ないので遅刻ではないから大丈夫だ」
クラウン国王のシヴァも
側近の赤髪の弟を連れてココにいる。
ここ最近のクラウン国は、
他国との貿易を始めたのを
切っ掛けに外国人の受けいれも
許可したらしい。
奧地に秘境と言われていた
絶景があってそこが
観光地としてバズっている。
女卑の思想も薄くなってきて
あの冷酷国家として有名だった国では無くなってきている。
キィ…
控え室のドアが開いた
中からお腹の大きい
エマ妃が俺達に声をかける
「支度が終わりましたわ。どうぞ中へ…」
エマ妃は第二子を妊娠中で来月が予定日だ。
あの王様…俺の父親より上なのにすごいよな…
「あれ?皆こっちに来て良かったのかよ?ジャンの所のが良かったんじゃね?きっと怒るだろ」
カイトも大きくなって、
ジャンの口の悪さがうつっている。
あの口の悪さは教育に不向きだよな
でもまだまだ子供のカイトは
相変わらず懐いてるシヴァを見つけると
子犬の様に駈け寄って行った
カーテンが開くと彼女の後ろ姿が見える。
手前に居たジャンの母が
「皆うちの花嫁、盗らないで下さいよ?…それ位綺麗よ?」
髪型はこの人が作ったのだろう、
後ろから見ても分かる綺麗な仕上がりだ
染めていたって言ってた
髪は伸びて綺麗な真っ黒なもの
になっていた。
狭い肩幅が後ろ姿だと
目立つ彼女がユックリこっちを振り向いた
「え?皆こっち来て良かったの?ジャンの所の方が良かったんじゃないの?」
カイトと同じ事言ってる
やっぱり親子だわ…
ふんわりとしたウエディングドレスに
谷間が強調されていて、
男ならだれもぐっときてしまう。
普段とは違い目元が、キラキラとして 頰はピンク色のチークを乗せ、
華やかな化粧をしている彼女は
本当に、綺麗だった。
ボーと皆声を失って見ているだけだった。
「もう!なんか言ってよ!恥ずかしいんだけど!」
と赤くなる彼女の顔
「咲殿、すごく綺麗だ」
さすが国王、
顔色を変えずにスマートに
こう言う事言えるなんて尊敬する
後ろに居た弟に
「兄様も早くご結婚して下さい…この方の事は早く忘れて下さい」
と小言を言われ、ぐうの音も出ない様子
「誰だか分かんない位綺麗になったよ、咲さん」
「あはは、それ昔にも言われたやつだ」
と笑う彼女が覚えて居てくれたのが嬉しくて
昔の事を思い出す。
彼女とカイトがこっちに来て早2年が
経とうとしている
バタバタと勇者業に忙しくて、
婚約は、すぐした2人だったが
結婚式は今日まで挙げられないでいた。
あの頃
この彼女の事を好きだった
俺だってジャンが
一目惚れしてるのが
分からなかったら
俺が手を出していたと思う
この世界に来たときの
カイトと寝る姿を見たときに
なんて優しそうな女性なんだろう。
って気になっていた。
ジャンと言い合える女なんて
見たこと無かったから
第一印象なんて当てにならないなー
って思ってたけど、
彼女は優しくて、俺達以上に勇敢だった。
俺が魔力無かったら
魔王の森なんて行かないねーな。
正直理想の女だったよ
俺の子を産んで欲しいと
思った事もあったりなかったり
口に出してはいないが
エドワードもその口じゃないかと思う。
ジャンが
咲さんと結婚するって
言ってきて
すぐに髪を切ってきた
服装も男らしくなってきたしな。
まあ、口調はなかなか直んないけど…
「お母様!すんごいかわいいよ~やっぱり僕がお嫁に貰っちゃおうかな」
シュルシュルルと
突然出て来た空間魔術の窓から
サキュバスの奴が顔を出してきた。
そのままひょいと降りて俺達の前に立つ
こいつは見た目変わんねーな
魔族って成長遅いのか?
「バス!昨日ぶり~」
とカイトとハイタッチする
今ではこの2人、
この空間移動の窓で
世界を行き来する悪ガキになっている
昨日って確かに、エルフの里か?
「ギンジがしょげてるからさっき教会の外に置いてきてからきたから遅くなった!」
サキュバスのその一言で
あの銀狼も彼女の事が好きだったのだと気付いた。
「お前ら!俺より先に見に来てんじゃねーよ!」
ドアの方に立って
怒っているのは
本日のもう一人の、主役だ
自分より、
先に彼女の花嫁姿を見られたのが
悔しかったらしい
まあ、そういう奴だよな
何年立っても
アツアツと言うか…らぶらぶと言うか。
嫉妬深いと言うか…
ジャンが
初恋の女性と結ばれたのは凄く嬉しい。
「ジャンは来ちゃダメだろ?そう言う約束じゃん!」
とカイトに追い出されてしまう。
今では街内の屋敷に住む3人だが、
仲は良く、
ジャンとカイトは親子というより
友達の様な関係になっている。
剣術教えるときだけ師弟関係になるらしく、厳しいジャンの教えに
ついて行くカイトは
子供の頃の俺達を見ている様だった。
「…時間ですわ、参りましょうか?」
エマ妃のかけ声で
ゾロゾロと教会へと移動する。
勇者である彼女が教会前に立つとワァー!という歓声があがる。
「本当に綺麗です!」
「咲様~!おめでとう!」
「お幸せに~!」
と沢山の声貰って本人は照れながら
手を振っていた。
「じゃ、僕達は中で…ドレスの裾とか踏まないで下さいよ!エスコート役なんですからね!」
とアダムに今朝の事もあってまた叱られる
そう。俺は今日
彼女と共にヴァージンロードを歩くエスコート役として任命された。
本来父親と歩くものなのだけど、
どうしても俺にって
2人揃っていうものだから
断れなくて。
昔、惚れた女とヴァージンロード歩いて
ジャンに引き渡すなんて複雑な気分
やっぱりジャンになりたかったと再度思ってしまう。
バチンっ!
「…よっしゃ!行こうか!」
両頰を思いっきり叩いて邪心を捨てる。
パパパ~♪パパパ~♪
ピアノとトランペットの
入場曲と共に扉が開かれる。
両端の列の、
参列者達は
となりの新婦の彼女をうっとりと見ている。
一歩一歩、
彼女と共にゆっくり
赤いフワフワの絨毯に足を出して行く
花の香りがする教会には
二人思い出の赤いバラが多く飾ってあった。
この国ホワイトローズって名前なんですが?
とツッコミたいけど辞めておく。
ドンドン近づく新郎のジャン
さっき彼女のドレス姿が
見れていなかったのだろう
ボーと頰を赤らめながら彼女に見惚れていた。
けれど、
腕を組む俺達を見て
こちらまで歩いてやって来て
「やっぱり俺以外の男と腕を組む姿は見てらんねぇ!」
と言って彼女を奪うようにして
攫って行った。
「…俺はダチは裏切らねぇぞ!」
とワザと大声で言うと会場は笑いに包まれた。
2人は
神父のスワロフの言葉で誓い合い
リング交換として
そして最後に誓いのキスをする時
バンっ!!
後ろのドアがもの凄い勢いで開いた
立っていたのは魔王の明仁だ。
これは、お約束の
ちょっと待ったー!
って奴か?
と少し期待する
その明仁の後ろから
ひょっこりと顔を出したのは
カイトだった。
カイトはもじもじと恥ずかしそうに動き
「ママ…ジャ…お父さんおめでとう!」
と言った。
カイトの
手から渡される
レインボーのバラの花束を手にする2人
「カイトが俺の事、お父さんって…」
ジャンは感動してうっすら涙を浮かべて言っている
知ってるか?
ジャン
涙って嬉し泣きの方が甘いらしいぜ。
俺も親父から教わった話だから
本当かは分からないけど。
大勢の祝福を貰いながら
2人は長い長いキスをして
永遠を誓いあった
お前ら2人を心から祝福するよ
どうか、お幸せに…
おわり
12
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる