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ーー…って事で今にも至る訳」
と魔王の話は終わった。
私は知らなかった。
捨てられたとばかり思っていたのに、
私から明仁を拒絶したんだと。
見えなくなってしまった
原因は分からない。
だけど、
今思うと
明仁が吸っていた
タバコの匂いがする時があった
ソレはもしかして、
近くにいたのでは?なんて思ったりもした
「…ごめん。あきひと…寂しかったよね…」
私は寂しかった
彼が突然前触れもなく居なくなって
幸せに満ちた日常が破壊されたつもりでいた。
ただ、あの子を…
カイトを産んで深海の底の様な世界が
どんどん光に満ちてきた
私を海底に沈めた明仁
地上に引き上げてくれたカイト
そして、
地に足をつけて
歩く喜びをくれたのは
ジャスティン
今、私は歩いてる。
歩いてるんだ。
彼の話が終える頃には
目元を無数の涙の粒が流れていた。
ごめん…ごめん…と何度も謝る私に
いいんだ。仕方ない。
と何度も何度も許してくれる明仁。
「じゃあ、そろそろ皆の所にいくか?…
あのアホ団長が痺れを切らしていると伝達がきた。」
魔族にはいわゆる、
テレパシーの様なものがあるらしく、
簡単な物ならそれで伝達でくるらしい。
泣き腫らして
赤くなっている瞼を
明仁はやさしく触れる。
既に知っている
その優しさに私は答える事が出来ない。
「…明仁、私は…ジャンが好きなの…」
今、言わなくてはいけない
そう思った時にはすでに口が動いていた。
ずっとオモリに感じていた
明仁の存在を
上回って
ジャスティンが
私の蓋をこじ開けてきたから。
目の前の明仁は口角を少し上げて
優しく微笑んだ。
「…少し遅かった様だな」
その一言だけ言って
その後に続く事はなかった。
ーーーーー
ーーーー
ー…
2人で
少し距離を取りながら
皆のいる大広間へと帰ってきた。
私の泣いたと分かる顔付きに
カイトは不安そうに駈け寄ってくる
そのままぎゅーっと腰辺りを
力強く抱き締めてくれた。
「ママ…大丈夫?…泣いちゃったの?」
子供は素直だ。
皆が思っている事を
ストレートに言ってくる
なんて声をかけていいのか分からず、
そっと頭を撫でる
サラサラとした感触が
心を温めてくれる気がした
「って言うことで魔王様は無事失恋されましたし~今後は仕事に熱中して頂きましょう!!」
ヴァンパイアのキューが
雰囲気を変えるために言ったのが分かる
キューはこの側近の中では
魔王の補佐をしている様で、
彼の後ろには山積みになっている書類が
綺麗に整頓されてあった。
「なぁ、魔王の仕事ってなにやんの?」
とロジャーがケーキを食べながら言った。
魔王と私が居なくなってから
ロジャーと魔王側近達は
なぜか仲良くなった様で、
隣にいるメデューサのメメと
同じホールケーキを食べている
「主に、魔族の統率…それから教育、整備、物資の確保…地方巡回…それからえーっと」
とキューが
考え込んでしまう程あるのだろう
「意外と色々あるんですね!人を襲ってばかりかと…おっと、失礼しました」
口が滑ってしまった
アダムは
丁寧にお辞儀をして魔族に謝る。
シルバーウルフのギンジが
頭を下げているアダムを、
慌てて姿勢を直す様伝え
悲しそうに
「人を襲うなんてもう数代前までの話ですよ。…逆に人々がこの森にやって来ては魔獣を襲ってくるんです…売れば高い値がつきますし」
と言った。
ちなみにギンジの首からは
【お仕置き中 抜け駆け野郎】
と言う看板がぶら下がっている。
そのギンジの表情から
本当の事だと察する騎士団達
どうやら魔王軍の勢力が増してきたと
思ってもいたのは
自己防衛のためだった様だ
「だが、人を襲う魔族も少なからずいるのも確かだ…そこでだ。我々魔族はホワイトローズ国と同盟を結びたい」
と魔王である明仁が
ハッキリとした口調で言った。
今飲んだばかりのお茶を
ゴクリと慌てて飲んで
スワロフが目を輝かせながら
その場に立ち上がった。
「それは素晴らしい!魔王と同盟関係であれば我が国は永久に繁栄する!食料や物資はこちらから輸出し、魔族の受けいれもしよう!それに魔族がいれば人々の魔術スキルもあがるだろう!」
大賢人が大賛成となれば話は早い、
他に反対する者も居ないだろう
国に戻ってその話をしなくてはならない。
「あ~…でも帰るのにまた時間がかかるよ?」
と私は言った
私達はたくさんの時間と距離をかけて
この魔王城へと来た。
まあ、
楽しませるためのアクシデントって奴が
無ければもっと早かったのかも知れないけど…
またあの道のりを…
と考えると正直ダルいと感じてしまう。
パチンっ!
明仁が指を鳴らすと
大きな空間魔術の窓が現れ、
その中にホワイトローズ城が見えた。
「コレで行けばいいだろ?」
と自信たっぷりな表情で言った。
皆、
無詠唱でこれ程大きなものを
出せる彼に感謝し、
その中に入っては行く。
ぬぅ…とくぐれば
魔王の森とは違う
澄んだ爽やかな風に、心地よい日差し。
かすかにバラの香りもする
「私達帰ってきたんだ!!」
と魔王の話は終わった。
私は知らなかった。
捨てられたとばかり思っていたのに、
私から明仁を拒絶したんだと。
見えなくなってしまった
原因は分からない。
だけど、
今思うと
明仁が吸っていた
タバコの匂いがする時があった
ソレはもしかして、
近くにいたのでは?なんて思ったりもした
「…ごめん。あきひと…寂しかったよね…」
私は寂しかった
彼が突然前触れもなく居なくなって
幸せに満ちた日常が破壊されたつもりでいた。
ただ、あの子を…
カイトを産んで深海の底の様な世界が
どんどん光に満ちてきた
私を海底に沈めた明仁
地上に引き上げてくれたカイト
そして、
地に足をつけて
歩く喜びをくれたのは
ジャスティン
今、私は歩いてる。
歩いてるんだ。
彼の話が終える頃には
目元を無数の涙の粒が流れていた。
ごめん…ごめん…と何度も謝る私に
いいんだ。仕方ない。
と何度も何度も許してくれる明仁。
「じゃあ、そろそろ皆の所にいくか?…
あのアホ団長が痺れを切らしていると伝達がきた。」
魔族にはいわゆる、
テレパシーの様なものがあるらしく、
簡単な物ならそれで伝達でくるらしい。
泣き腫らして
赤くなっている瞼を
明仁はやさしく触れる。
既に知っている
その優しさに私は答える事が出来ない。
「…明仁、私は…ジャンが好きなの…」
今、言わなくてはいけない
そう思った時にはすでに口が動いていた。
ずっとオモリに感じていた
明仁の存在を
上回って
ジャスティンが
私の蓋をこじ開けてきたから。
目の前の明仁は口角を少し上げて
優しく微笑んだ。
「…少し遅かった様だな」
その一言だけ言って
その後に続く事はなかった。
ーーーーー
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ー…
2人で
少し距離を取りながら
皆のいる大広間へと帰ってきた。
私の泣いたと分かる顔付きに
カイトは不安そうに駈け寄ってくる
そのままぎゅーっと腰辺りを
力強く抱き締めてくれた。
「ママ…大丈夫?…泣いちゃったの?」
子供は素直だ。
皆が思っている事を
ストレートに言ってくる
なんて声をかけていいのか分からず、
そっと頭を撫でる
サラサラとした感触が
心を温めてくれる気がした
「って言うことで魔王様は無事失恋されましたし~今後は仕事に熱中して頂きましょう!!」
ヴァンパイアのキューが
雰囲気を変えるために言ったのが分かる
キューはこの側近の中では
魔王の補佐をしている様で、
彼の後ろには山積みになっている書類が
綺麗に整頓されてあった。
「なぁ、魔王の仕事ってなにやんの?」
とロジャーがケーキを食べながら言った。
魔王と私が居なくなってから
ロジャーと魔王側近達は
なぜか仲良くなった様で、
隣にいるメデューサのメメと
同じホールケーキを食べている
「主に、魔族の統率…それから教育、整備、物資の確保…地方巡回…それからえーっと」
とキューが
考え込んでしまう程あるのだろう
「意外と色々あるんですね!人を襲ってばかりかと…おっと、失礼しました」
口が滑ってしまった
アダムは
丁寧にお辞儀をして魔族に謝る。
シルバーウルフのギンジが
頭を下げているアダムを、
慌てて姿勢を直す様伝え
悲しそうに
「人を襲うなんてもう数代前までの話ですよ。…逆に人々がこの森にやって来ては魔獣を襲ってくるんです…売れば高い値がつきますし」
と言った。
ちなみにギンジの首からは
【お仕置き中 抜け駆け野郎】
と言う看板がぶら下がっている。
そのギンジの表情から
本当の事だと察する騎士団達
どうやら魔王軍の勢力が増してきたと
思ってもいたのは
自己防衛のためだった様だ
「だが、人を襲う魔族も少なからずいるのも確かだ…そこでだ。我々魔族はホワイトローズ国と同盟を結びたい」
と魔王である明仁が
ハッキリとした口調で言った。
今飲んだばかりのお茶を
ゴクリと慌てて飲んで
スワロフが目を輝かせながら
その場に立ち上がった。
「それは素晴らしい!魔王と同盟関係であれば我が国は永久に繁栄する!食料や物資はこちらから輸出し、魔族の受けいれもしよう!それに魔族がいれば人々の魔術スキルもあがるだろう!」
大賢人が大賛成となれば話は早い、
他に反対する者も居ないだろう
国に戻ってその話をしなくてはならない。
「あ~…でも帰るのにまた時間がかかるよ?」
と私は言った
私達はたくさんの時間と距離をかけて
この魔王城へと来た。
まあ、
楽しませるためのアクシデントって奴が
無ければもっと早かったのかも知れないけど…
またあの道のりを…
と考えると正直ダルいと感じてしまう。
パチンっ!
明仁が指を鳴らすと
大きな空間魔術の窓が現れ、
その中にホワイトローズ城が見えた。
「コレで行けばいいだろ?」
と自信たっぷりな表情で言った。
皆、
無詠唱でこれ程大きなものを
出せる彼に感謝し、
その中に入っては行く。
ぬぅ…とくぐれば
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「私達帰ってきたんだ!!」
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