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むしゃむしゃと目の前に 
たくさんあるお菓子を頬ばる 
カイトとサキュバスの子供組はヨソに 
 


私達は状況を読めないままでいた。


「カイトが大丈夫だよ!皆優しいよ」 

と言って無理矢理城の中に 
私を引いて入っていくものだから

仕方なくジャスティン達は 
着いて来たにすぎない。


「ちょっと!明仁!説明して!なにこれ?どーいうことなの?意味分かんない!色々意味分かんない」
 


分かりやすくテンパる 
私が面白いのか魔王は笑い声をあげた。


「そーゆー所、変わってないなぁ~咲は…」

昔、ケンカすると一方的に私だけが 
喋って、その姿をこいつは笑いながら 
見ていたのを思い出す。
 
「んーどこから説明しようかな…」 


なんて言う彼は、 
昔の面影はそのままでも
近くで見ると 
やっぱり人じゃないのが分かる。
 
見た目もそうだが
雰囲気と風格からして全然違う
 

「とりあえず、自分の息子と遊んでみたかった、ただソレだけ」

とあっけらかんと言う彼に怒りを覚える。

「だからって連れ去る必要ないでしょーが!!」
 
この世界に何度目かの腹から出た 
大声だった。 



バンッとお菓子が置いてあるテーブルに 
手を叩きつけた衝撃で部屋中が揺れる。

「うぅ…相変わらずうるさい~」  

とさっきまでの頭に蛇を飼っていた 
メデューサが見知った顔になって 
そう言った。

「メメくん?…って事は…」 

目線をゆっくりとヴァンパイアに 
向けると
青白かった顔はみるみる血色が良くなり、
あの頃上手なギターの扱いを 
披露したキューとなった。

隣にはギンジもいる。


あの時のバンドメンバーが 
魔王の 
側近だったのだ。
 
 
「じゃあ、あの子は?」

とカイト共にお菓子を食べ終えて、 
遊んでいるサキュバス
を指さした。

「あーあれも俺の息子」

口元には凶悪そうな牙をだしながら 
わたあめを食べる魔王。


「は?」 

そのわたあめを嫌味っぽくつつく私 


「サキュバスはこの世界で産まれた俺の子。母親にはいない、カイトは血の繋がった俺と咲が作った子供!どう?大丈夫そ?」
 


大丈夫そ? 

じゃねーわ!!若者言葉使いやがって! 




魔王はこの城の誕生の間という所で 
産まれるらしく、
この森に住む魔獣や魔人の魔力が集まって勝手に出来るらしい。

産まれた時に 
魔王の子供として育てられるらしい。


「それで、あんたは何がしたかったの?さっきまでばかみたいに私達に攻撃してたけど?」 



イライラをしているのを 
分かって貰うために 
ワザと怒り口調で言う 

「え?咲に楽しんで貰おうかと思って!多少アクシデントあった方が面白いじゃん?」

と真顔でキメポースをしながら言った。


普通に
いみわからん。  
 
話を聞いていくと、 
本当に楽しませる気だったみたいで
人の騎士団でも倒せる魔獣しか仕向けていないし、

側近達も殺さないように
50%位の魔力しか戦えない様に 
命令はしたと言っている 



その話を聞いスワロフは

「その話は本当だろう。手を抜かれている気はしていた。なにせ弱すぎたからな」
 
と納得していた。




「じゃああの変な呪いの術は?」

散々恥ずかしい思いをさせられた 
忌々しいサキュバスの呪いの件を 
口にすると

向こうで遊んでいるサキュバスが手を止めて

「あーアレね!本当にマーキングの術かけたつもりだったんだけど……間違っちゃってさ~ごめんね~♪」

と照れくさそうに 
頭を片手で掻きながら言うサキュバス。

そして、私に近づいて
目の前で術を解除してくれる

ふわっ  

と体の何かが剥がれた気がしたので
本当にあの術を解除してくれた様だ。


一緒に攫われたエマは私達が城を出たのを確認すると城に戻し、  

魔王が消したと言っていた下級隊員達は近くの人の村で寝せて置いたそうだ。
 
指揮官を失った彼らは
今頃は城に戻るために歩いている 
際中だと言う
 


勇者従者のジルとクリスタルは元々、 
城に戻ってくる便りを 
魔王が破棄したため、 

まだ遠征先にいるんだそうだ。

 



「アンタね~!!本当迷惑ばっかりかけて~いい加減にしなさいよ!!」
 


と昔のように魔王だと知ってもこの人の頭を引っぱたく。

バシッ 

といい音がするが、痛がる様子もなく私の手の平の方が痛い 
 
それがまた腹に立つので 
もう一発引っぱたいてやろうと 
振りかざした。
  

パシツ!と魔王に腕掴まれ 

「俺だって普通に咲に会いたかったんだ…」
 
久しぶりに触れるその手から 
懐かしい暖かさを感じた
 
魔王はその立場を忘れて  

明仁  

になっている 
表情からも寂しさを感じられる   
 

「…なぁ、俺達やり直さないか?…」   

眼差しからも真剣なんだと伝わってくる 

一度は狂おしい程愛した人だ。  

居なくなって 
どれだけ 
必要だったのか 
どれだけ 
辛かったのか 
思い出した。
 
カイトもパパと呼んでいたし
父親として認めたのだろう。




だけど、私の心は今… 


 

 
「昔の男は黙ってろ、咲は俺のだ」


今まで黙っていたジャスティンが、 
私を後ろから抱き締め
敵意むき出しで 
魔王に向かって言った。
 


「ほう…俺より弱いのにか?」

と目の前の魔王はその敵意を買って 
逆に売りつける。


バチバチと2人の間には人には見えない火花が散っていた。



睨み合う2人は 
今にも決戦の火蓋が落ちそうに 

ジリジリとした雰囲気を出している。

魔王はフッと鼻で笑うと  

「たかが1回しか抱いてないくせに 
咲の男気取りか?俺は何度も中に出したからな」

と恥ずかしげも無く余計な事を言った 


「はん…1回だろうと10回だろうと、咲の気持ちいい所は全て知っている。イカせまくってるからな」

とこいつも負けじと競ってくる 

その会話を聞いていた 
カイトが不思議そうに2人を見ている 

「ちょっと!子供の前で辞めてよ~!!」

2人の間には挟まれた私は耳が痛い。
  
「くそ団長」 「あほ魔王」
と互いを呼び合う2人は、 
悪口レベルが同じだ。


  

「…とりあえず、2人で話をさせて」

ジャスティンの腕の中にいた私は、 
すくっ 
と抜け出て魔王に向かって言った。

「そうか。じゃココで…」

瞬時に窓をつくり、 
向こうには彼の寝室が見えていた。 


「違う違う!真面目な話をするの!」
 

魔王は残念がると 
机と椅子が並んでいる部屋へと 
案内してくれた。
 


…ー 
ーーー 
ーーーーーー


ぱたん…

部屋には二人っきり
シーン静まり返るこの空気を
醸し出しているのは私だ

「そんな、怖い顔するなよ。」 

そう言いつつも怖がっていない彼は、
コポコポとグラスにワインを入れながら 
それを口に含む。


「…どうして私を捨てたの?明仁」

色々聞きたい事はあるが 
一番気になるのはこの事だった。
 


彼が姿を消したあの時からずっと疑問に思っていた事だった。 


「俺は捨てたつもりじゃないーーーーー…
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