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しおりを挟む洞窟から出ると、
立ってるはずのジャスティンが
横になって寝ていた。
向こうにはスワロフとロジャーが
イビキをかきながら横になっている。
警護の時は居眠りなんてしないのに…
スンスン…といい香りがしてきて、
私も瞼が重くなってきてしまった。
……ー
ーーーー
ーーーーー
「…マ…ママ…起きて!ママ遅刻するよ!」
パチっと
目を開ければ
もう幼稚園の制服に着がえている
カイトの姿があった。
ウィンナーと卵焼きの美味しそうな匂いも部屋中にしている
「あ、やっとママ起きたんだ!寝坊助だね~、ね?カイト?」
黒く長い髪の毛を後ろで
1つに結んで
ピンクのエプロン姿の明仁とは
結婚して6年立つ。
売れないバンドマンだった彼は、
専業主夫をして家庭を支えてくれる。
今じゃ私より料理は上手い
「え?今何時?」
時計を見ると針は8:05を指している。
8:30出勤なのに、完全に遅刻!?
急いで身支度を整えて、玄関に向かう
「今日もスッピンで出勤するの?」
少しあきれ顔のパパが言った。
化粧道具は
ディスクに置いてあるので
パソコンイジりながら
上司の隙を見てやるつもりだ。
「朝ごはんいらない!ごめん!じゃ、行って来まーす!」
鞄を持ってドアノブに手をかける
「待って!ママ!これ、お弁当…それと行ってきますのチューは?」
かわいい三角巾に包まれたお弁当箱に
いつもの朝の恒例行事
2人にキスを送る。
「はい!パパ、カイト行ってきます~!」
バタンとドアが閉まれば
そこからは駅まで猛ダッシュ!
無事に、
会社に間に合う最終便に乗りこむことに成功した。
満員電車の中揉まれるのに慣れて
器用に不安定な揺れの中立ってる。
「昨日の(勇者と騎士団)見た?」
「あー!見た見た!面白かったよな?」
近くの男子高校生が昨日の、
夜にやっていたアニメの、話をしていた。
最近流行ってるアニメのなのかな??
何だかだ楽しそうだ!
あとで見てみようかな?
若い子の流行りにのれる
アラサー女子!いいじゃん!
--------次の駅は㊙㊙駅~…
アナウンスで言われた駅では
人より先に降りて、
そこからも猛ダッシュ!
スッピンは許されても
遅刻許されないのがOLなのだ。
「ふぅ…ギリギリ間に合ったわ~」
自分のディスクにつくと、
とりあえず一息いれる。
部下の若い女の子がかけよっと来て
「今日課長お休みですよ」
と教えてくれる。
「なーんだ~、こんな走らなくて良かったじゃん、いや!いかんいかん!仕事は仕事!」
そのまま仕事に取りかかる。
午前中は新しいプロジェクトチームに
参加中なのでそちらを中心に、
新人の子の教育と、電話対応、
午後は外回り
と大変でも充実した一日が毎日なのだ。
子供も居ながら
こうして好きに仕事させてくれる
パパに感謝しなくちゃ。
定時になると、
素早く我が家へと帰っていく。
最寄りの駅を降りると
電気屋さんのテレビに
朝チラっときいた(勇者と騎士団)の
次回予告のCMが流れていた。
「これが流行ってるんだー、カイトも見るのかな?」
次の回で魔王を倒すかどうからしく、
クライマックスが近いみたいだった。
魔王?
…勇者?
…騎士団?
なにか聞き覚えのある様な…
それに私、
今までなにかと戦っていたような…。
なんだろう?
思い出せない…。
「ママー!!迎えにきたよー!」
家の方から歩いてくる
2人を見つけ、考えるのを辞めた。
「お帰り、ママ。今日あいつら飯に来るんだけどいい?」
我が夫ながらいつもカッコいい。
すれ違う女性は振り返って
頰を赤らめて見ているのが分かる。
「良いけど、パパが大変じゃない?たまには私が作ろうか?」
と言うとパパとカイトは
待った!
の、ポーズをして
嫌がっている。
「なによ?ソレどーゆーこと?」
私がキリッと睨み付けると
2人は来た道を走って逃げていく。
「何も言ってない!」
はしゃぐパパに合わせて
カイトも楽しそうに、走る。
「それじゃ、さっきのはどういうことだー!?」
と2人を追いかけていく。
こんなつまらないやり取りも
幸せだと感じてしまう。
自他共に認める仲良し家族なのだ。
ーーーーー…
「じゃあかんぱーい!」
明日は休みなので
パパの元バンドメンバーと
共にお酒を飲むことにした。
目の前の豪華な料理を食べながら、
一週間の疲れを流し込む様に
ビールをグビッと飲み飲み干す
「いやー、良い飲みっぷりだね!咲ちゃん!ケケケ」
と言うのはバンドのギター担当のメメ君
生意気な顔付きとは
裏腹にお喋りで
よく、好きなゲームの話をしてくる。
「ビールは喉越しだ。一気に飲むのが、うまい」
クールなビジュアル通りのキュー君、
楽器はベース。
「このお鍋も美味しいよ、さすが明仁だね」
ドラム担当の筋肉モリモリマンの優男ギンジ君
このメンバーに
パパを加えてバンドしていた頃は
出待ちの女の子達にキャーキャー言われてかなりモテていた。
ワイワイと
皆に囲まれての夕食は楽しく、
食事もお酒も進む。
いい感じになった頃、カイトが眠いと言うので寝室に連れて行く。
「子守歌を歌う?絵本よむ?そのまま添い寝?」
いつも、
寝かしつけはこのどれかを選ばせる。
じゃないとぐずって大変なのだ。
眠い目をこすりながら、
添い寝する~と言うので
隣で横になってトントンする事にした。
「ママぁ…このネックレス誰にもらったのぉ?」
丁度カイトの顔の所に
ぶら下がっていた赤く光る石のついた
ネックレスが気になった様だった。
「え?これ?パパから………じゃ…ない」
これは、パパから貰ったモノじゃない…。違う誰かだ
この石と同じ色をした眼の…
見た目の割に口が悪くて…
子どもっぽくて…
面倒くさくて…
私の好きな人…
…大好きな
「…ジャン」
そう口が動くと、寝そうなカイトはニコリと笑った
:ーーーーーーーー
ーーーーー
ー……
パチっ
「咲っ!良かった!このまま起きないんじゃないかと…」
目を覚ますと騎士団の面々が
心配そうな顔をしていた。
涙が流れた後が
両目の脇にあったので
無意識に泣いていたらしい。
「俺らも術を気づかない内にかけられてたんだ。魔王側近の一人ヴァンパイアに…」
そう言うジャスティンの指さす方に
木に吊された
ハットを被った顔の青白い男性が
ぐったりとしている姿が見える
どうやらそいつがヴァンパイアらしい。
「……ひぃ!日の光に当てないでくれ~!だから昼間に動くの嫌だったのだ…あちぃっ!!」
吊されながらもピョンピョンと日陰を求めながら動いている。
「もうお風呂から上がってビックリよ!皆気持ち良さそうに寝ているんだもの。おかしいって思ってとりあえず犯人探したわよ!見つけ次第ぶっ飛ばしたけどね!」
腕に力こぶを作ってマリアンヌは自慢気に言った。
「ところでどんなの夢みたんだ?泣いてたけど」
唐突にジャスティンに聞かれて、
慌ててしまう。
ついさっきマリアンヌに言ったばかりなのもあり彼女の顔を見ると
パチッとウィンクをしてくる
この感じ、気づいている様な気がする。
今はまだその時じゃないと思い
「…カイトの夢。早く会いたい!抱き締めたい!美味しいものいっぱい食べさせたい!」
と力強く言った
本当は明仁もいたのだけど、
クソ認定しているので名前を出したくないし、思い出したくもない。
……でもあれは、ワタシの願望だったのかな…
だとしたら私はまだ明仁を忘れられずにいるの?
夢の中の彼は、昔の様に優しかった
あのメメ君、キュー君、ギンジ君の3人は今、どうしているんだろう?
懐かしい気持ちにさせられる
「カイト様か…早く救出しないとな!おい、ヴァンパイア、カイト様は今はどうなっているんだ?」
と
ジャスティンが先程より
更にぐったりとしたヴァンパイアに問う。
「…」
ツーンとして無視を決め込むヴァンパイアに
ジャスティンは長い枝を持ってきて、
ロジャーに渡し、
「もうちょい日の当たる所に動かせ」
と脅す。
観念したようで重い口が動いていく。
「…カイトは城で楽しく遊んでいるよ…そう、タノシクね」
ヴァンパイアの意味深な発言と共に
コウモリの群れが私達を襲う。
「うわ!なにこれ~!!また変な術…っていない。」
キツく縛られていたはずの
ヴァンパイアがその場から姿を消した。
あの意味深な言い方に
胸が騒ぐ、
不安と焦りが一気に倍増して、
ガクガクと体が震えてくる。
「カイトに何かしたら死んでも呪ってやる」
ぎりっと唇を、噛み締める。
その様子にジャスティンが
私の肩を抱き寄せて
「焦るな…なら先を進もう」
と優しく言った。
いつの間にか震えては止まり、
足が前に進んでくれる。
まだ城は見つからない。
いつまで探せばいいのかも分からない。
ただ、カイトとエマの無事を祈るしか出来ない自分が歯がゆいばかりだ。
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