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しおりを挟む「ろ…っさ…お…咲殿起きろ!ジャン達は咲殿を置いて、出るつもりだ!」
目覚めは
普段大人しいシヴァの大きな声から始まった。
「え?どういこと?」
寝起きの私に
シヴァは着がえを持たせ、
寝間着のまま部屋を飛び出る。
バタバタと城中を必死に駆けて、
私を抱えて馬へ飛び乗る。
「どういう事?説明して!」
いまいち、状況が理解出来ていない私は、シヴァの大きな背中に向けて、
問いかけた。
「そのままだ。ジャン達は咲殿をココに置いて魔王の森へと向かった」
驚く私はしっかりシヴァの腰に手を回して落ちない様に掴まる
それを確認した彼はスピードを上げた。
国境の関所を抜けた所に
ジャスティン達騎士団の姿があった
私達を確認すると立ち止まり
「なんだ、気付いちまったか。」
と少年の様に笑うジャスティン
「魔王を討伐したら迎えに来るつもりだったのに~」
とロジャー
「見つかったら仕方ないですね。早く来て下さい!」
とアダム
私は馬を急いで降りて
関所の門をくぐり抜ける
国境である門を
数歩進んだところで
シヴァが着いてきていないのに
気づいた。
「シヴァ?早く行かないと皆において行かれるよ?…ってシヴァ?」
振り向くとシヴァはまだ関所に居た。
馬で走ったのが
疲れたのか少し肩で息をしていた。
「シヴァ?何してるの?はやくーう!」
大声で呼ぶもシヴァは一歩も動かない
「…俺は行けない」
そう言った彼の顔は切なそうにしている。
信じられず、皆の顔を見ると
涙を両目から流しているアダムに
表情に陰りを見せるロジャー
ジャスティンは一点とシヴァをみつめている
その様子に
シヴァはココに残るのだと
理解する事が出来た
「え!?なんで?シヴァ一緒に最後まで行こう…ね?シヴァ…」
シヴァは横に首振るばかり。
そこから出ることが出来るのに、
本人は一歩も動かない。
「俺は…楽しかった…」
ツーと流れるシヴァの涙が地面に落ちる。
「全団員、シヴァ分隊長に敬礼っ!!」
大きく響いたジャスティンの声
全員がシヴァに向けて敬礼をしている
私も涙が溢れてしまう。
まだシヴァに返事を言えていないし、
まだお礼も言えていない。
カイトと遊んでくれたし、
相談にものってくれた。
まだ沢山お話したかった…
言いたいことは山ほどあるのだけど、
涙が邪魔して上手く言えない。
そんな私を
ジャスティンが抱えて荷馬車に乗せる。
一歩一歩と遠くなる騎士団に
普段聞き慣れない大声でシヴァが言う
「アダム!弟の様に思っていた」
「はあい!!シヴァさん!僕も兄だと思って…接して…ぅぅ…ぐ…」
泣いていて最後まで言い切れないアダム。
「ロジャー!!俺の隊を頼む!」
「任せろ…友よ」
俯きながら鼻声で返事するロジャー
「ジャン!!…また酒を飲み交わそう」
「…またな…待っている」
ジャスティンは
彼が見えなくなるまで敬礼をしながら
「咲殿!!…本当にありがとう」
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