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声のする 
ドアの方には
ジャスティンが 
壁にもたれながら立っていた。 



「…ジャン、イタ…イキたい…」  
 

ジャスティンを見つけると 
立ち上がって 
フラフラ…とそちらへ足が動く。
 


ドサッと力無く彼に抱きつくと 
お姫さまダッコをして 
ベッドへと移動する。
 


「…ジャン、ごめん…俺…」  

  
とすれ違う時に 
ロジャーが泣きそうな声で言った。 

「大丈夫だ。分かっている。…気にするな。後は俺に任せろ」

親友同士の会話だった。

それを聞くと 
ロジャーは走って 
部屋を出て行ってしまった



「ジ…ャン…アツ…カラダ…ハヤクキ…テ…」

お姫さまだっこままベッドで 
寝せられる私 
ジャスティンはそのまま口づけを交わす。 
 


…じゅるっ…じゅる…っる 


 
お互い息をするのを 
忘れてしまいそうになる位 
夢中で舌を絡ませ合う 

 
ハァ…という息遣いすら気持ちいい  


これまでに無く激しく舌を捻じ入れてくる。 

 


下唇を甘噛みする彼 
その少しの痛みが心地良い。  


ジュワァ…と口の中に血の味が広がる。
 
1回噛んで
2回目は少し強く噛む

 




この下唇を噛む癖
私は、知っている


まだ意識がハッキリとしていないが
目の前の彼を突き飛ばす
 


「ア…んた…ダレ?」
 



ぐるぐると回る視界、 
ずっと耳鳴りがする。
 

「…ほお、術があまいのか…それか自分で自分を取り戻したか」

ジャスティンが  


いつもの顔で 
いつもの声でそう言った。
 


けれど、私は今のキス
知っているのだ


ノイズが頭から消えた。 



まだ体は熱いが、 
視界がハッキリとしてきた


「…あきひと」

目の前のジャスティンは
不敵な笑みをうかべ、
高らかに笑った。
 


その姿のまま

「ククク…気付いたか。相変わらず勘が鋭いな。咲は」



なんで?
どうして? 


明仁(あきひと)がここにいるの?
だってあなた私を捨てて出て行ったきり…
 

この世界にいるなんてどういうこと? 
 

混乱している私に、 
追い打ちをかける様に 
その人はもう一度口づけを、 
しようとする。


「イヤッ!!辞めて!」 


ものすごい力で押さえこまれ、 
身動きが取れない。
 


バンッッ!!!

と勢いよく部屋のドアが開いた

そこには剣を持った 
ロジャーと騎士団員数名の姿だった。
  

私はその人に叫ばない様に 
口元を抑えられる。 
  

「どうした?ロジャーそんな怖い顔で。さっきの事なら気にするなと言っただろ?」
 


ジャスティンの姿をしたその人は
ジャスティンの声で
ジャスティンの様にそう言った。 


「…ジャンはな…俺のことミネルヴァなんて呼ばねーんだよ!俺が大嫌いなミネルヴァなんてよぉ!!!」 


鷹の様に鋭く眼孔を広げ、 
全身でその人に斬りかかる。
 

 
その人は易々と真剣を素手でつかむと  

ニヤリとして
 

「嫌いなんて悲しい事だ。…我々はあんなにミネルヴァ家には世話になったのにな」
 
と 
その人は聞き覚えのある声に変わり言った 
 

ロジャーが全身の毛を逆立てるくらい力を入れているのに 


ビクともしない。

「…クッ!やはりか!てめぇ魔王だな!!!」

ロジャーは後ろに素早く下がり、 
そう言った。


するとその人は一瞬のうちにして元の姿に戻る 


漆黒の長い髪に 
闇も思わせる黒い目
耳は尖っていて 
爪は鋭く伸びている
 


彼は人々を脅かす魔王だった
 



私から降りると、 
ロジャーに数発魔術を放す

ロジャーも詠唱して魔術で、 
それを受け流す
  

「ミネルヴァ家の者が城の騎士とは面白いな」

大きく尖っている牙を 
見せながら冷たくそう言った 

「…うるせーな。いつの話をしてんだよ。魔王城に引きこもってて、時代に追いついてねぇんじゃねーの?」

冷や汗を額に流しながらロジャーは 
口元が引きつっているのが分かる 
  

「まあよい。肝心な用件はすでに済んでいる。野暮用で此処に来たまで…」
 

魔王は手で、 
空気をなぞると 
空間魔術の窓が現れた。 



「てめぇ逃げるのかよ!ちっと相手にしてくれてもいいんじゃねぇか、魔王さんよぉ」 

体を窓に入れ、 
魔王は余裕な表情を浮かべながら

「すぐまた会うだろう。その時に相手をしてやる」 


とロジャーに言った。
 

魔王は私に視線を移すと  


「…きっとまた会いたくなるぞ」
 

 
そう言った 


昔、こうやって言われた事があるのを 
思い出ししてしまう
 


嫌な思い出だ

「…もう、二度と会いたくない」 
 
目を見るのが怖い
私の心を、壊した人に会いたくない 

先程触れた唇を強く擦ってそう言った。

すでに止まった傷口から再度血が滲み出る 

「……会いには来ない。自ら来い。大事なモノを、返して欲しければ」

そう言って魔王は窓の中に姿を、消した。


大事なモノ…って 
まさかっ…!!

 













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