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「マーマー!はーやーくー!」
あれから数日、
教えた魔術は見ただけで覚え、
全て無詠唱でイメージのみで
発動する様になったカイトは
毎日の、訓練が楽しくて楽しくて仕方ないらしく、
今日も早く訓練場に行きたくて
私を急かしてくる。
まだ、勇者やります!!って決めた訳ではないけど、
カイト本人が楽しそうにしているので、無理に辞める訳にもいかず
こうして毎日、習い事のように通っているのだ。
必ず誰かが部屋に迎えに来てから
行くのだが、
今日は分隊長のアダム。
「おはよう御座います。本当は団長だったのですが、咲さんがドアを開けてくれないから行ってくれと頼まれました。」
と眉毛を八の字にさげ、ポリポリと頰を掻きながらいっ
そう。
あの日以来ずーーーーっと避け続けている。
顔を合わせないようにしている
噂話を、流した奴は絶対に許さん!
それに…
顔を合わせたら
頭の中で瘴気抜きをして貰った時の事を
思い出してしまう。
ハァ…ハァ…と、奴の息遣いがまだ聞こえる様な気がする。
あの優しく触れる手…
それに、あの硬い物…
「ぎゃゃゃゃーー!!!」
と思い出すのを止めるため叫ぶ。
二人はまた始まったとばかりに苦笑い。
私は母親!!!!
カイトが一番!!!
カイトために生き、カイトのために死ぬ!!
それに今さら………
「今日も近くの湖での、訓練になりますよ」
とアダムが言った
水遊びが大好きなカイトは大喜び、
水系魔術が使いやすい様で
そのためか湖での訓練が多くなっていた。
……ー
ーーーー
ーーーーーー
「カイトー!遅いぞ!待ちわびたぞ!」
と先に訓練場に仲良しのライナー王子、
今日は珍しくエマもお供できていた。
「ごきげんよう。カイト様と咲」
「おはようございましゅ!」
と大きな声を皆にかけると
「おはようございます!カイト様」
皆明るく返事をしてくれた。
その中にはもちろん、奴もいる。
ジーッとこちらも見るも何も言わない。
こちらが避けているのに
気づいているせいか
仕事が忙しいのか
言葉を交わす事は無かった。
「まーだケンカしてんの?早く仲直りしなよー」
とロジャーが
ジャスティンに言っていたのが
聞こえた。
言われた本人はすん…とするだけで
なんの反応もない
「あら。貴方達ケンカをしているのね?…なんだ、お似合いの色合いだったのだけれど…」
とエマが気付く位の二人の、雰囲気らしい。
訓練中は
エマと雑談しながら時間を過ごした、
まるで保護者会の様だ。
バシャンッッッ!
「マーマー…いーたーいー!」
カイトが浅い水辺でコケる。
打ち所が悪かったのか
珍しく泣き声をあげた
「あーあ…痛かったねー。気をつけて~」
と、カイトの元に駆け寄っていく。
完全に母親モードだ。
よく公園ではこうして
コケるたびに駆け寄ってなだめてたっけ。
片脚を水に入れると、ツルンっとスベってしまう。
「うわっ!ここすべるっ!」
…バッシャーーン!!!
と水飛沫を上げて盛大に水の中に、
腰がダイブ。
「……うわー。きもちい。」
暑さもあってひんやり冷たく、丁度良かった
前からこの湖に入ってみたいと思っていた
「そうでしょう。この際咲さんも入っちゃえば?」
そう言ってパシャンっ!と
水を軽くかけてくるのがロジャー。
カイトも泣き止んでパシャンと、
ひとかけしてくる。
頭もビジョヌレになってしまうが
それがまた気持ちよい。
「そう?じゃあ、はいっちゃおうかな~?」
泳ぐ気満々モード全開。
水着はきていないが
タンクトップ着てるし
大丈夫でしょう!
と上着を脱ごうとする手を誰かが止めた。
「だめだ。」
と厳しい顔付きのジャスティン。
「なんで?」
ケンカ中なのもあり余計腹が立つ。
「いいからダメだ。…てか誰もお前の醜い脂肪の塊なんて見たくないからな。隊員の士気が下がる。」
と脱ぎかけた上着を戻される。
醜い脂肪の塊だと?
久しぶりに
口をきいたと思えば
また悪口言いやがって!
むかつく。なにが何でも入ってやる!!
ムキになり上着を脱ごうとするけど、
着せられる。
そうだ!
「…じゃああんたが入っちゃえ!!」
ちょっと脅かしてやろう
と思っただけだった。
ジャスティンの腕を
おもいっきり引っ張って
水の中に入れてしまおう!と思った。
日頃の恨み!今晴らしてやる!
思ったより体が重くて私もバランスを崩した。
「「うわっ!!」」
バッシャーーン
私に、馬乗りになるようにして
二人は頭の先から水浸し。
ジャスティンの訓練着から透けて見える
たくましい筋肉
目の前にある綺麗な顔から滴る水滴
一瞬びっくりした様だが、
キリっと目つきは鋭い物となった。
うわ。完全に怒らせた
やり過ぎた。
…しゅるっ
ジャスティンは最初頃にしたみたいに
私の髪の毛の束を取る
私はジャスティンの眼から目が離せない。
束を取っていたその手は
指に変わり
私の頰を、なぞる
私の呼吸が荒くなって
同時に胸の奥がぎゅーっと
締め付けられる。
心拍数があがっている。
この音が聞こえてしまうのではないかと
思う位大きく高鳴っている。
時間にして数秒間なのだろう。
二人は何も言わない。
周りの音も聞こえない。
ただ、ただ見つめ合っているだけ。
瞬きをするたびに落ちる水滴が
やけにゆっくり見えるのだ
まるでスローモーションを見ている様。
この感覚は知ってる。
今はまだ気付きたくない
気付いてはいけない。
脳裏によぎるあいつの後ろ姿…
「…まだ、続行してるの?あの、作戦?」
何かに蓋をするように、
出会い当初の王から下された
あの、ゲス作戦を思い出す。
「本性でたからムリだって分かったからやってないけど?」
蓋はキチンとしまった様で
ちゃんとした心拍数に戻っている。
「そう。引っ張ってごめんなさい。ちょっとどいてくれる?」
そう言って自分で立ち上がり
エマの方へ向かった
エマが乾燥の魔法をかけてくれたので
濡れていた服は一瞬で乾いた。
心配そうにこちらを覗いているが、
今はしらないふり。
女性同士分かってしまったのだろう。
もう二度とあんた思いごめんだ。
もう一度硬くキツく蓋を閉め直した。
ーーーーーー
ーーーー
ーー…
夕食時、今日は珍しく
内廷の食堂にお呼ばれしたので
行ってみる事にした。
どうやら勇者の従者が一人、
地方巡回から帰って来たそうだ。
こっちの、世界にきて以来
久しぶりに訪ねるこの部屋。
この間の長いテーブルは無く、
立食パーティー会場となっていた。
たくさんの豪華な食事に、
侍女や執事達が大勢いて
来客のお世話をしている。
招待されているのは
貴族の中でも上級貴族のようだった。
会場に着くとカイトを色々な大人が囲む。
さずかの本人も慣れなすぎて
怯えてしまっている。
その様子に正装したシヴァがやってきて
肩車をして緊張を、
ほぐしてあげていた。
長身のシヴァがやるものだから
他の大人達の声は
本人に届いていないだろう。
それを分かってやっているのだ。
「ママ~みてー!たかーいよー」
カイトから見下ろされるのも悪くない。
笑顔が溢れるカイトを見て
微笑ましく思う。
「それにしてもシヴァ、正装姿がカッコいいね!」
いつもは汚れた訓練着か、
騎士団の制服姿しか見たことがない。
雰囲気がガラリと変わり、
男前さが増していた。
それに、私と歳も同じくらいだろうか
年相応の落ち着いた雰囲気。
子供の扱いも上手なので、
良きパパというイメージ。
「結婚するならシヴァみたいな人がいいな~」
と言ってみる。
ポッと頰が赤く染まるシヴァ
「やっほー、聞いちゃった!それって浮気じゃないの~?」
金髪ウエーブロジャーが登場した
片手に持ったシャンパンの色が髪の毛と同じだ。
「浮気って…あたし結婚してませんが?相手居ませんが?未婚シングルですが?」
とぷくーっと頰を、膨らませて言う。
隣で聞いていたアダムがびっくりする。
「えっ!?そうだったんですか!てっきり僕達はご主人は元の世界に居るものだと思っていました」
子供は産んだが結婚はしていない
未婚シングルマザーってやつだ
そりゃ相手が居なくなっちゃうから
婚姻届け出したくても出せないし
そんな話こっちに来てからしてないから
皆知らない人のは当然である
「…じゃぁ全然ありって事か」
とボソッと何かつぶやていたが
その途中で部屋の奥で歓声があがる
皆の注目の先に
薄緑の長髪をした、
たれ目の優しそうな男の人がいた
その男性はこちらも見つけると
ゆっくり歩いてきて
カイトの前で膝を付ける。
シヴァの肩に乗っていた
カイトはゆっくり降ろされて
キョトンとしていた。
「初めまして、勇者カイト。私は大賢者の、スワロフ。貴殿と共に運命を共にする者だ」
と優しく言った。
きっと出来る人なのだろう。
こっちの、世界での事はさっぱりだが
もし会社に居れば
凄く仕事が出来る上に
周りに慕わてるって感じがする。
なんとなく直感でそう思った
難しい事を言われ
?が浮かぶカイトに
気付いたのだろう
ポケットから飴を取り出しカイトに
あげる。
受け取ると
まだ少し慣れていないようで
控えた目に
「ありがと…」
と、言っていた。
スワロフはカイトの頭を
そっと撫でると
立ち上がり今度は私に、話かける。
「あなたが母君か。よくカイトに似ている、どうかよろしく頼む」
そう言って私の手を取り
甲に軽くキスをした。
え?
と驚いていると
こちらをちらりと見てウィンクをする
な、な、ナチュラル~!!!!!
キザな事されているのに
凄くナチュラルに決まっていた。
こっちにきてから
イケメンばっかり見てきてるから
イケメン指数高くなってきているが
負けじとイケメン
優しい顔つきにこのキザな感じ
絶対モテてきた人だ
「首都に帰ってきたばかりで体を休めたいのだが、どうでしょう?今晩…二人で?」
と誘われてしまった。
そこにスパーーーンっと
手刀が勢い良く割って入る。
「久しぶりだな。スワロフ」
ジャスティンだ。
正装していて前髪を上げている。
どこかの王にも、見えなくはない。
グイッと肩を間に入れ込んで私に
背中を向けて立つ。
「何いきなり!?…てか居たの?」
裾をチョンチョンと引っ張ってみるが
こちらを向かない
イラッとするが、
いつものこの感じにはもう慣れた
「やぁ。ジャン!久しいね。…もしかしてお手つきだったのかな?悪い事したね。」
「今日帰ってくるなら連絡しろよ。」
「いきなりだったね!すまないねー。こちらも急に戻って来いなんて言われたから焦ってしまってね」
「まあ良いけど、今晩は俺に付き合えよ。寝かしておいたウイスキーがあるんだ」
「ほお。それはそそられる話だね!旅の話を肴に語らうとするか」
なんて話をしている様子を見ると
二人は仲が良い様だ
割り込んでまで話をしたかったのか!
と手刀も納得した。
あれから数日、
教えた魔術は見ただけで覚え、
全て無詠唱でイメージのみで
発動する様になったカイトは
毎日の、訓練が楽しくて楽しくて仕方ないらしく、
今日も早く訓練場に行きたくて
私を急かしてくる。
まだ、勇者やります!!って決めた訳ではないけど、
カイト本人が楽しそうにしているので、無理に辞める訳にもいかず
こうして毎日、習い事のように通っているのだ。
必ず誰かが部屋に迎えに来てから
行くのだが、
今日は分隊長のアダム。
「おはよう御座います。本当は団長だったのですが、咲さんがドアを開けてくれないから行ってくれと頼まれました。」
と眉毛を八の字にさげ、ポリポリと頰を掻きながらいっ
そう。
あの日以来ずーーーーっと避け続けている。
顔を合わせないようにしている
噂話を、流した奴は絶対に許さん!
それに…
顔を合わせたら
頭の中で瘴気抜きをして貰った時の事を
思い出してしまう。
ハァ…ハァ…と、奴の息遣いがまだ聞こえる様な気がする。
あの優しく触れる手…
それに、あの硬い物…
「ぎゃゃゃゃーー!!!」
と思い出すのを止めるため叫ぶ。
二人はまた始まったとばかりに苦笑い。
私は母親!!!!
カイトが一番!!!
カイトために生き、カイトのために死ぬ!!
それに今さら………
「今日も近くの湖での、訓練になりますよ」
とアダムが言った
水遊びが大好きなカイトは大喜び、
水系魔術が使いやすい様で
そのためか湖での訓練が多くなっていた。
……ー
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ーーーーーー
「カイトー!遅いぞ!待ちわびたぞ!」
と先に訓練場に仲良しのライナー王子、
今日は珍しくエマもお供できていた。
「ごきげんよう。カイト様と咲」
「おはようございましゅ!」
と大きな声を皆にかけると
「おはようございます!カイト様」
皆明るく返事をしてくれた。
その中にはもちろん、奴もいる。
ジーッとこちらも見るも何も言わない。
こちらが避けているのに
気づいているせいか
仕事が忙しいのか
言葉を交わす事は無かった。
「まーだケンカしてんの?早く仲直りしなよー」
とロジャーが
ジャスティンに言っていたのが
聞こえた。
言われた本人はすん…とするだけで
なんの反応もない
「あら。貴方達ケンカをしているのね?…なんだ、お似合いの色合いだったのだけれど…」
とエマが気付く位の二人の、雰囲気らしい。
訓練中は
エマと雑談しながら時間を過ごした、
まるで保護者会の様だ。
バシャンッッッ!
「マーマー…いーたーいー!」
カイトが浅い水辺でコケる。
打ち所が悪かったのか
珍しく泣き声をあげた
「あーあ…痛かったねー。気をつけて~」
と、カイトの元に駆け寄っていく。
完全に母親モードだ。
よく公園ではこうして
コケるたびに駆け寄ってなだめてたっけ。
片脚を水に入れると、ツルンっとスベってしまう。
「うわっ!ここすべるっ!」
…バッシャーーン!!!
と水飛沫を上げて盛大に水の中に、
腰がダイブ。
「……うわー。きもちい。」
暑さもあってひんやり冷たく、丁度良かった
前からこの湖に入ってみたいと思っていた
「そうでしょう。この際咲さんも入っちゃえば?」
そう言ってパシャンっ!と
水を軽くかけてくるのがロジャー。
カイトも泣き止んでパシャンと、
ひとかけしてくる。
頭もビジョヌレになってしまうが
それがまた気持ちよい。
「そう?じゃあ、はいっちゃおうかな~?」
泳ぐ気満々モード全開。
水着はきていないが
タンクトップ着てるし
大丈夫でしょう!
と上着を脱ごうとする手を誰かが止めた。
「だめだ。」
と厳しい顔付きのジャスティン。
「なんで?」
ケンカ中なのもあり余計腹が立つ。
「いいからダメだ。…てか誰もお前の醜い脂肪の塊なんて見たくないからな。隊員の士気が下がる。」
と脱ぎかけた上着を戻される。
醜い脂肪の塊だと?
久しぶりに
口をきいたと思えば
また悪口言いやがって!
むかつく。なにが何でも入ってやる!!
ムキになり上着を脱ごうとするけど、
着せられる。
そうだ!
「…じゃああんたが入っちゃえ!!」
ちょっと脅かしてやろう
と思っただけだった。
ジャスティンの腕を
おもいっきり引っ張って
水の中に入れてしまおう!と思った。
日頃の恨み!今晴らしてやる!
思ったより体が重くて私もバランスを崩した。
「「うわっ!!」」
バッシャーーン
私に、馬乗りになるようにして
二人は頭の先から水浸し。
ジャスティンの訓練着から透けて見える
たくましい筋肉
目の前にある綺麗な顔から滴る水滴
一瞬びっくりした様だが、
キリっと目つきは鋭い物となった。
うわ。完全に怒らせた
やり過ぎた。
…しゅるっ
ジャスティンは最初頃にしたみたいに
私の髪の毛の束を取る
私はジャスティンの眼から目が離せない。
束を取っていたその手は
指に変わり
私の頰を、なぞる
私の呼吸が荒くなって
同時に胸の奥がぎゅーっと
締め付けられる。
心拍数があがっている。
この音が聞こえてしまうのではないかと
思う位大きく高鳴っている。
時間にして数秒間なのだろう。
二人は何も言わない。
周りの音も聞こえない。
ただ、ただ見つめ合っているだけ。
瞬きをするたびに落ちる水滴が
やけにゆっくり見えるのだ
まるでスローモーションを見ている様。
この感覚は知ってる。
今はまだ気付きたくない
気付いてはいけない。
脳裏によぎるあいつの後ろ姿…
「…まだ、続行してるの?あの、作戦?」
何かに蓋をするように、
出会い当初の王から下された
あの、ゲス作戦を思い出す。
「本性でたからムリだって分かったからやってないけど?」
蓋はキチンとしまった様で
ちゃんとした心拍数に戻っている。
「そう。引っ張ってごめんなさい。ちょっとどいてくれる?」
そう言って自分で立ち上がり
エマの方へ向かった
エマが乾燥の魔法をかけてくれたので
濡れていた服は一瞬で乾いた。
心配そうにこちらを覗いているが、
今はしらないふり。
女性同士分かってしまったのだろう。
もう二度とあんた思いごめんだ。
もう一度硬くキツく蓋を閉め直した。
ーーーーーー
ーーーー
ーー…
夕食時、今日は珍しく
内廷の食堂にお呼ばれしたので
行ってみる事にした。
どうやら勇者の従者が一人、
地方巡回から帰って来たそうだ。
こっちの、世界にきて以来
久しぶりに訪ねるこの部屋。
この間の長いテーブルは無く、
立食パーティー会場となっていた。
たくさんの豪華な食事に、
侍女や執事達が大勢いて
来客のお世話をしている。
招待されているのは
貴族の中でも上級貴族のようだった。
会場に着くとカイトを色々な大人が囲む。
さずかの本人も慣れなすぎて
怯えてしまっている。
その様子に正装したシヴァがやってきて
肩車をして緊張を、
ほぐしてあげていた。
長身のシヴァがやるものだから
他の大人達の声は
本人に届いていないだろう。
それを分かってやっているのだ。
「ママ~みてー!たかーいよー」
カイトから見下ろされるのも悪くない。
笑顔が溢れるカイトを見て
微笑ましく思う。
「それにしてもシヴァ、正装姿がカッコいいね!」
いつもは汚れた訓練着か、
騎士団の制服姿しか見たことがない。
雰囲気がガラリと変わり、
男前さが増していた。
それに、私と歳も同じくらいだろうか
年相応の落ち着いた雰囲気。
子供の扱いも上手なので、
良きパパというイメージ。
「結婚するならシヴァみたいな人がいいな~」
と言ってみる。
ポッと頰が赤く染まるシヴァ
「やっほー、聞いちゃった!それって浮気じゃないの~?」
金髪ウエーブロジャーが登場した
片手に持ったシャンパンの色が髪の毛と同じだ。
「浮気って…あたし結婚してませんが?相手居ませんが?未婚シングルですが?」
とぷくーっと頰を、膨らませて言う。
隣で聞いていたアダムがびっくりする。
「えっ!?そうだったんですか!てっきり僕達はご主人は元の世界に居るものだと思っていました」
子供は産んだが結婚はしていない
未婚シングルマザーってやつだ
そりゃ相手が居なくなっちゃうから
婚姻届け出したくても出せないし
そんな話こっちに来てからしてないから
皆知らない人のは当然である
「…じゃぁ全然ありって事か」
とボソッと何かつぶやていたが
その途中で部屋の奥で歓声があがる
皆の注目の先に
薄緑の長髪をした、
たれ目の優しそうな男の人がいた
その男性はこちらも見つけると
ゆっくり歩いてきて
カイトの前で膝を付ける。
シヴァの肩に乗っていた
カイトはゆっくり降ろされて
キョトンとしていた。
「初めまして、勇者カイト。私は大賢者の、スワロフ。貴殿と共に運命を共にする者だ」
と優しく言った。
きっと出来る人なのだろう。
こっちの、世界での事はさっぱりだが
もし会社に居れば
凄く仕事が出来る上に
周りに慕わてるって感じがする。
なんとなく直感でそう思った
難しい事を言われ
?が浮かぶカイトに
気付いたのだろう
ポケットから飴を取り出しカイトに
あげる。
受け取ると
まだ少し慣れていないようで
控えた目に
「ありがと…」
と、言っていた。
スワロフはカイトの頭を
そっと撫でると
立ち上がり今度は私に、話かける。
「あなたが母君か。よくカイトに似ている、どうかよろしく頼む」
そう言って私の手を取り
甲に軽くキスをした。
え?
と驚いていると
こちらをちらりと見てウィンクをする
な、な、ナチュラル~!!!!!
キザな事されているのに
凄くナチュラルに決まっていた。
こっちにきてから
イケメンばっかり見てきてるから
イケメン指数高くなってきているが
負けじとイケメン
優しい顔つきにこのキザな感じ
絶対モテてきた人だ
「首都に帰ってきたばかりで体を休めたいのだが、どうでしょう?今晩…二人で?」
と誘われてしまった。
そこにスパーーーンっと
手刀が勢い良く割って入る。
「久しぶりだな。スワロフ」
ジャスティンだ。
正装していて前髪を上げている。
どこかの王にも、見えなくはない。
グイッと肩を間に入れ込んで私に
背中を向けて立つ。
「何いきなり!?…てか居たの?」
裾をチョンチョンと引っ張ってみるが
こちらを向かない
イラッとするが、
いつものこの感じにはもう慣れた
「やぁ。ジャン!久しいね。…もしかしてお手つきだったのかな?悪い事したね。」
「今日帰ってくるなら連絡しろよ。」
「いきなりだったね!すまないねー。こちらも急に戻って来いなんて言われたから焦ってしまってね」
「まあ良いけど、今晩は俺に付き合えよ。寝かしておいたウイスキーがあるんだ」
「ほお。それはそそられる話だね!旅の話を肴に語らうとするか」
なんて話をしている様子を見ると
二人は仲が良い様だ
割り込んでまで話をしたかったのか!
と手刀も納得した。
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