シングルマザー 子供と、異世界へ行く!【完結】

チャップスティック

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ゆっくりと目を開ける。 

ふぅ…ふぅ…と 
呼吸も落ち着いてちゃんとしている。
 


動かせなかった手を慎重に上げてみる
ぐーぱーぐーぱーと 
掌を閉じたり開けたりと試しにやってみた。
 

よし、動く!


どこかのベッドだろうか。
とてもフカフカで気持ちが良い。

知らずのうちに寝かせられた 
この部屋は 
私達親子が借りている部屋ではない。
 



「起きたのか。ヒス女」

隣にはジャスティンが寝ていた。
上半身は何も着ていない。

私は驚いてガバッと上半身だけ起き上がる 



そして私は一切、衣類を着用していない。 


「なにこれ!?」 


ジャスティンにも、 
かかっている毛布を全て取り上げ、 
体を隠すため包まる。

 

ふぁーっと大きなあくびをするジャスティン。 




「あんた、下の毛は黒いのな。」

そう言ってベッドから降りて、 
そばにあったボトルから水をコップに注ぎ、ごくごくと飲み干した。

「下の毛!?な、ななななにしてんのよ!!」


え?どゆこと?
ヤッチャッたってこと???
こいつと?
てゆからやられた? 




「安心しろ。俺は悪食じゃねぇし…それに、病気の奴を、犯す趣味はない」
 

寝起きの体を起こすように  
関節をボキボキと鳴らし、伸びをする。 



そして、

「あんた、瘴気に当てられて倒れたんだよ。だから俺が瘴気抜きをしてやった。」
 



瘴気抜き?
なにそれ?
 


きょとんとしていると
やり方は後で誰かに聞けと言ってテーブルの上のりんごをガリッとかじる 



「それとも、なんかあった方がよかったか?」

と言ってベッドの端にドガッと勢いよく座った 



したたるリンゴの果汁が手について 
ペロッと舐める仕草が 
やけに色っぽく見えた
 


うっすらと目の下にはクマができていて、少し髭も伸びている。
 


「は?なんであんたと私がっ…」    



悪態をつこうとすると
食べていたリンゴをガッと口に入れられ 
モゴモゴ動く私の口。
 


クククとまたあの笑みを浮かべるとコレを着ろと奴の服を渡される。
 



 全裸なので仕方が無く着るが


デカい。 



Tシャツがワンピースになってしまう 


まあ、 
さすがに女物の下着は無いので、 
素肌に直接だが
 


その間一応女認定されたのか後ろを向いて、見ないようにしてくれた。
 

その足で部屋の外にでてみると
どうやら訓練場の小屋だったようだ。
 


外にはカイトやライナー王子 
 
もちろん他の隊員もいた。
 


「あ!ママ~!大丈夫なの?お熱でちゃったんでしょ?」
 

とカイトは少し半泣きで駆け寄って抱きついてくる
 

話を聞くと一晩寝込んでしまっていたらしい。

その間ずっと寝ずに介抱してくれていたのはジャスティンだと言う。


魔力が無い私は少しの瘴気ですら 
命の危険があるらしく、 
だから私だけ倒れたという事だ。 



瘴気抜きするには熱をとるように  

肌を合わせ、吸収するのだという。 
 
魔力の強い者しか出来ないらしく、 
その技術は高度なのだという。 



分隊長レベルなら皆できるらしいが、 
ジャスティンが率先してやっていたため 
他の者の出番はなかったらしい。
 


ロジャーがニヤニヤしながら教えてくれた。
 


「ジャン!どうよ?女の肌ってのは」

興味津々にジャスティンに聞くロジャー。

さすが年頃の男ってやつだ。


「まあ、顔面見なきゃイケたけどなぁ。さすがにヒステリック女は俺の、趣味じゃねーしなー。あーでも体付きはいい感じ。」


は?なんつった? 



ギロリと睨む。 

その視線に気付いた奴が冷やかす様に
反応する。 

「あ、でもこいつ、下の毛…」 


と言いかけたところで走って言って、 
急いで口を塞ぐ 


危ない! 
余計な事を言われるところだった。 



「何言おうとしてんのよ!子供の前で辞めてよ!」


「…プハッ…別に減るもんじゃねーだろ」

「減る!心がする減る!」

「おい!みんなー!!こいつ下の毛…」

とまた言いかけるのでさらに強く手を押しつける。


その様子もみて
カイトがにっこりしながら

「ママとジャスティン、仲良くなったね!なにがあったの?」

と聞いてきた。

顔が熱くなるのが分かる。 

 

周りはニヤニヤして、こちらも見ている。

「顔まっかか!タコサンみたいよー」

とカイトのダメ押しで

爆笑の渦となった。


シヴァが大人になったら分かると 
こそっと後で教えていた。



なんかみんな誤解してない?
やってない!やってない!
本当になにもない、 
ただ一晩瘴気抜きをして貰っていただけ。

本当になんもない!!! 
 


ただ覚えがあるのは
久しぶりの、男性の人肌。
 

すこく心地よく、吸い付いてくる

ハァ…ハァ…という息遣いも耳元で聞こえていたし

それに、ジャスティンの下部分だろう、 
たまに硬いモノが当たっていた
 

ただ本当に手は出さなかったのだと思う。

触れる手は優しく体をスベる。

後から聞いた話だが、 
瘴気抜きを男女でした場合 
ほとんどそういう関係になってしまうのだという。

そりゃそうだ。
男からしたら生殺しな訳だし。

よくそんなんで手を出されなかったと思う。 





ああ!私が嫌いだからか。
なるほど。 
 




その日は大事を取って部屋で休むことにした。

カイトはライナー王子と遊ぶー!と言ってそちらの部屋に一日中いて、 
戻ってきた頃には
ぐっすり寝ていた。 



寝ているカイトを抱っこして 
連れてきてくれたのは
王妃のエマである。 



さすが母親! 
扱いが慣れていると思った
 



あっという間に外は真っ暗。
カイトも寝ているし、 
ベランダで風に当たろうと、外に出てみる

ガチャ 

と開ければ、
やはり華麗な月夜だった。 



「もう寝てなくていいのか」 



と声のする方を振り向く。

制服をキチンと着た 
ジャスティンがそこにいた 


そしてシヴァも

どうやら護衛らしい。

「まあ…大丈夫」

「そうか。」

「あの…ありがとう、助けてくれて…」

悪態をつかないで会話したのが 
初めてだろう 



向こうも舌打ちしてこないし 
睨んでもこない


こちらも恩があるし一応普通に対応する。


ああ。とだけ返事をして
しばらくの沈黙。
 



いや…だって、 
なんて会話すればいいか分からないし! 

それに裸、見られてるし…
色々恥ずかしい。気まずい

向こうも
同じだろう。
表情は変わらないもの 
耳元が少し赤い様な気がする。


その空気を察したのだろうか 
シヴァが珍しく話かけてくる。


「カイト様は間違いなく勇者様だ。これからどうする気だ?」





「…うーん。分かんない。」
 



正直、水の魔法の時から思っていた 

この子は本当に魔術が使えるんだと 

勇者なんだと 

この国の 
強者達が揃っている騎士団の隊員すら驚いているレベルなのだ

確かに危険なことはさせたくないが

この国にも子供ってのは居て 
その子達の笑顔が消える世界にするのは 
悲しい。


だからと言って、カイトが犠牲になるのは絶対嫌だ。


考えこむと 

「…まだ時間はある。ゆっくり考えろ」
とジャスティンが言った

シヴァは安心したような 
悲しい様な顔付きをしていた

そこに、駆け寄ってくる一人の陰、

「おーい、今晩の夜食持ってきたぜ」

と月の光に反射して綺麗に光る 
あの金の髪は… 


ロジャーだ。

「あれ?咲さんもいたんだ」

と私の顔をみるやいなや、   
ニヤニヤと気持ち悪い 


「な、なによ?」 



まだ、さっきの引きずってるの?
もう辞めてもいいころじゃない? 
いい大人がさー。
 
 


「咲さんって本当にカイト様の親だったんだね」

「当たり前でしょ?どー言うこと?」

も、もしかして

とギロリとジャスティンを睨む。 


あー…と頭を抱え 
うなだれるのは奴だ。
シヴァはわざとらしく目線を逸らす。

「ちょっと!言ったの?ねぇ!言ったの?なにを喋ったか教えて!!」

とジャスティンを責める。

ロジャーが自分の手を 
股間部分に持って行き、指を広げた。 



「あんたねーーー!!!!余計なこと言うなって言ったじゃん!!!その顔で本当性格悪い」

クククと笑うのは奴だ。 


「一応、名誉もあるだろうからチチの大きさはこんくらいって教えといてやったから許せ」



あっけらかんと言う。

「はぁぁあ?何してくれてんのよ!意味分かんない。ただの治療でしょ?介抱でしょ?」


「まあ、噂話は娯楽の一つって事で」

とにっこり。

奴の笑顔初めて見た。

ロジャー曰く、 
騎士団の皆はもちろん城に 
仕えてる者なら知ってるとのことだ

娯楽が少ない 
この国はあっという間に 
話が尾びれ背びれついて、


とうとうその数日後には 


【勇者に連れてきた母親の陰毛を手に入れると魔力が上がる】  


という謎の都市伝説とまで話は膨らんだ。

絶対街にいくのは辞めよう。 

これもそれも
このジャスティンのせいだ。 

助けてくれたのは感謝しているが、変な話までしやがって 



絶対許さん!!!!












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