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ーー
ーーーー
ーーーーー……
あれから一週間程過ぎた。
毎日、朝起きて朝食を食べると
すぐと騎士団の誰かが迎えにきて、
カイトと二人で訓練に向かう。
訓練は主に外で、騎士団の練習場の、
一角でやっていた。
カイトだけで良かったのだろうが
私も念のため着いて行く。
なにさせられるか分かんないし…
それがとーーーっても不満なのだろう。
ジャスティンは顔を合わせる度には舌打ちをしてくる。
私も睨み返す、犬猿の仲である。
その様子は他の隊員に気を使わせてしまって
いるのだろうと思っているが
カイトから離れる訳には行かないと
気まずいながらもその場に居座る。
「咲さん、このドリンク飲みながら座っていて下さいね」
特にこのアダムには気を使わせてしまっている。
ひんやりとした飲み物を渡され、
日陰の下に作られたベンチに座る様言われ、
居場所もないのでそそくさと行動に移す。
ロジャーもあの一件があったからか
よく話かけてくれる。
「今日は暑いし、日陰がいいな。体調悪くなったら言ってくれよ?」
シヴァとはあまり会話をしたことはないが、
見ているとよくカイトのお世話をしてくれる。
転んで顔に泥がつこうもんなら
自分のハンカチで丁寧に顔を拭いてくれる。
疲れたと言えば肩車をして休憩させてくれる。
まるで親子の様にも見える。
歳の離れた弟妹が多いと、少し前に聞いた。 だから扱いが上手いのかと関心する。
ジャスティンはというと
ずーーっとイライラしている。
たださすがの団長だ。
周りには言葉ではあたらない。
でも訓練がキツくなっているらしい。
腕立て伏せ3000回とか走り込み1000本
とか鬼の筋肉イジメメニューを隊員に命じている。
原因は私だろう。
何でかと言うと
カイトが真剣を持とうもんなら
「それはアブナイからダメでーす」
と取り上げ、
カイトが初歩魔術の火の出し方を教わろうもんなら
「火で火傷したらアブナイのでダメでーす」
と禁止し
馬に乗って走る練習を、させようもんなら
「落ちたら大ケガするからダメでーす」
と馬から下ろしてしまう
と言った具合に、
ことごとく練習させないからだ。
「では、カイト様今日こそは“危なくない”魔力の使い方をお教えしましょう」
危なくないって強調して言ったぞ、こいつ。
ギロッとこちらを睨むジャスティン
ヒラヒラ…
と嫌味いっぱいに笑顔で手を振る。
「では、水の出し方をお教えします」
隣にいるライナー王子と
共に水の出し方を教わるらしい。
水なら危なくないか?
本人は水遊び好きだし、暑いし、いいかな?
と言うことで何も口出ししなかった。
「ーーーーーーーーーー!」
とジャスティンが詠唱すると指先からドバーッと水が滝のように出てくる。
うわー、ほんとに魔法使ってる~!!
ん?魔術っていうのか?
違いが分からないけど。
「では、次にお二人」
ライナー王子がまず詠唱して
ピチョっ!と
おもちゃの水鉄砲の様なしぶきがあがる。
本人は大喜び。
見ていた人達は初めてで出来るのは凄い!と褒める。
カイトはというと詠唱の文章を忘れてしまってうーんうーんと考えている。
うん。かわいい。
考えて首を傾げる姿も愛らしい。
「ーーーーー!と言って想像するのです。こうして水を出るようにと」
とアドバイスを貰うと、
閃いた様で両手を上げる。
すると今までカンカン照りの
いいお天気だった空が
真っ暗になりゴロゴロと雷が鳴り始めた。
ポツリ…ポツリ…
ドバーーーー!
と一気にスコールに変わった。
「わーい!出来たあ!!お水だよお!!!」
と飛び跳ねて喜ぶ本人。
周りの大人達は口をあんぐり開けている。
「今のカイトがやったの?」
と隣にいたアダムに聞く。
「えぇ。間違いなく。…しかも無詠唱で。」
詠唱なしで魔術を使えるなんて事は
ほとんどないらしく、アダムは初めて見るそうだ。
「…まじか。」
と私はをごくりと唾を飲み込んで喉をならす。
スコールのため1度練習は中止。
お茶の時間にするそうなので
隊員について行って
お茶とお菓子を貰い、
カイトを囲み
雑談の時間となった。
「さっきの本当にカイトがやったの?」
「そうだよー!この間お家に帰る時、途中でいっぱい雨が降ってきた事思い出したの~」
たしかにまだ向こうにいた頃、
そんなことがあった。
すごい夕立で傘を忘れ
二人でずぶ濡れで帰ったんだ。
「カイト様は、天性の物を持っているな。なかなか出来る事じゃない。さすがだ」
とシヴァが頭を撫でる。
「そうなのだ。兄上達もこんな事やっていなかったのだ。やはりカイトは勇者なのだな!」
と何故か自慢気のライナー王子。
皆に褒められて嬉しいのだろう。
足をばたつかせて
ニコニコ笑顔でお菓子を頬張るカイト。
「スコールで森の魔獣が活発になっただろう。この後は森へ行って魔獣相手に討伐のやり方をお教えします」
と一番端にすわっている、ジャスティンが言った
魔獣?
それって危ないんじゃない?
さっき出来たのはマグレで
次出来なかったら危険じゃない?
「ちょっとそれはアブナイからダメでーす」
と急いで止めに入る。
チッと舌打ちが、
聞こえて
ガヤガヤと
お喋りしていた隊員達は大人しくなり
シーンと静まり返る
「お前もさっきの見ただろ?凡人レベルじゃねーんだよ。男ならちったあ冒険させてやれよ…過保護ヒス女が」
最後のは小声だったが聞こえた。
部下の前だからと我慢していたのだろうか、
訓練中文句を言ってこなかった奴が声を上げた。
「だって、さっきすぐには出来なかったじゃん!魔獣に会ってすぐ出来るとはかぎらないじゃん!」
と言い返す。
「そん時は俺がいるだろーが。頭もわりーな。」
「あんたが居ようがいまいが、知ったこっちゃないわっ!」
「くそ過保護ばばあ!!」
くそ?
ばばあ??
だと?
またキンテキコースか?
席を立ち、ヤツに食らわすため一歩踏み出す。
「僕、森に行ってみたいな。どんな所だろう?」
とお菓子を食べ終えたカイトが言った。
ジャスティンを見ると
勝ち誇った様に
微笑んでこっちを見ている。
…イラぁ
「じゃあママと一緒に行こうね」
とカイトの手を取って言う。
「ダメだ。足手まといだ。」
と奴がお茶をすすりながら言った
確かに私に、魔力はない。
試して見たが、一切その気配が見えないのだ。
足手まといになるのは重々承知だが
カイトから離れる訳には行かない。
「大丈夫!私はアダム君に守って貰うから!!」
ガチッとアダムの腕を掴んでそう言った。
アダムはえ?ってびっくりしていたが、
私は離さない。
必死さが伝わったのだろう、
ジャスティンは 「勝手にしろ」と言った。
ーーーーーーー
ーーーー
ー……
私達は場所を変え、ジャスティンが
言っていた森へと入って行った。
風でざわつく木々に、
どこかしらから聞こえる謎の生物の声、
これが魔獣なの?
アダムをがっちり片腕でフォールドして
怖がりながらも歩いて行く。
ぴょんっ!
と草むらから野ウサギが出てきた。
「ぎゃっ!!」
とさらにキツくアダムに引っ付く。
野ウサギは鼻をヒクヒクさせながら
こちらを一瞬見て、またどこかに行ってしまった。
そう。私は大の怖がりで
おばけ、幽霊なんて
もってのほか、
驚かされる事すらビビってしまう。
我が子のために
この薄暗い森の中を
ビビりながらも来ているのだ。
またぴゅっ!!と肌に何かをかすめる。
「ぎゃぁぁぁあ!」
な、なんだ!?
前の方を歩いているジャスティンが
クククといたずらっ子特有の笑みを浮かべている。
「色気ねー声」
「あんたか!!」
どうやら私がビビりなのに気づいたらしく、なにかしらの魔術を放ったらしい。
それからしばらくは謎の魔術に数回ビビり、
何度もぎゃあぎゃあ!!と叫び声をあげる。
その都度、大成功!と
言わんばかりの笑みで一人楽しんでいるジャスティンがいる。
シヴァにもう辞めてあげろ
と言われるまで何度も何度も驚かされる。
あの性悪男。いくつだよ、まったく。
今は下級隊員は森の外で訓練中、
奴の気心の知れた仲間しかいないからだろう。本性がでている。
一時間程度だろうか休憩を挟みながら歩いたが
あの野ウサギ位しか動物はいなかったし、
魔獣なんて出てこなかった。
アダムの話によるとカイトの気配を察して、
魔獣は逃げてしまった様なのだ。
魔力があるモノは
強い魔力を察する力があるらしく、
この森の魔獣は
カイトにヤラレル~と
怖がってどこかに行ったんではないかと
の事だ。
カイトはお散歩できた!位に思っていて、
楽しかったねーなんてライナー王子と他愛ない話をしている。
息子の無事に、そして、緊張していた全身の力がスゥッと抜けた。
「…良かった…」
と呟いて、
膝からガクッと崩れ、そのまま倒れ込む。
「咲さん!?どうしたんですか?」
と隣のアダムが声をかけているのが
聞こえるが口が動かない。
体の力が入らない。
じんわりと全身に熱が籠もっているように思える。
「…この森にも瘴気が」
そうボソっと誰かが呟いて私の意識は遠のいた。
うっすら誰かに抱えられているのが記憶にある。
カイトが泣いてる?
子供の泣き声も聞こえる。
どこかに移動して、
飲めと言われた水を口に含むも
飲み込む力が無い。
タラーッと口から水がこぼれ落ちる。
「面倒くせーな。ほら、口開けろ」
この口の悪さは奴だろう。
口に指が入り、
何かが覆い被さって水が喉を流れる。
……ちゅ…ゴクン
「とりあえず脱がせる」
そう言われるとと着ていた服のボタンが
ポチんポチんと取れていく。
あれ?なんか脱がされてる?
うっすら目を開ければ、揺れる紅眼が見えた。
あーヤメテー…とうとう私は奴に犯されるのか…。
嫌がらせも程がある。
最初から大人しくしてればこんな事されないで済んだかな?
そう思って完全に意識が無くなった。
ーーーー
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あれから一週間程過ぎた。
毎日、朝起きて朝食を食べると
すぐと騎士団の誰かが迎えにきて、
カイトと二人で訓練に向かう。
訓練は主に外で、騎士団の練習場の、
一角でやっていた。
カイトだけで良かったのだろうが
私も念のため着いて行く。
なにさせられるか分かんないし…
それがとーーーっても不満なのだろう。
ジャスティンは顔を合わせる度には舌打ちをしてくる。
私も睨み返す、犬猿の仲である。
その様子は他の隊員に気を使わせてしまって
いるのだろうと思っているが
カイトから離れる訳には行かないと
気まずいながらもその場に居座る。
「咲さん、このドリンク飲みながら座っていて下さいね」
特にこのアダムには気を使わせてしまっている。
ひんやりとした飲み物を渡され、
日陰の下に作られたベンチに座る様言われ、
居場所もないのでそそくさと行動に移す。
ロジャーもあの一件があったからか
よく話かけてくれる。
「今日は暑いし、日陰がいいな。体調悪くなったら言ってくれよ?」
シヴァとはあまり会話をしたことはないが、
見ているとよくカイトのお世話をしてくれる。
転んで顔に泥がつこうもんなら
自分のハンカチで丁寧に顔を拭いてくれる。
疲れたと言えば肩車をして休憩させてくれる。
まるで親子の様にも見える。
歳の離れた弟妹が多いと、少し前に聞いた。 だから扱いが上手いのかと関心する。
ジャスティンはというと
ずーーっとイライラしている。
たださすがの団長だ。
周りには言葉ではあたらない。
でも訓練がキツくなっているらしい。
腕立て伏せ3000回とか走り込み1000本
とか鬼の筋肉イジメメニューを隊員に命じている。
原因は私だろう。
何でかと言うと
カイトが真剣を持とうもんなら
「それはアブナイからダメでーす」
と取り上げ、
カイトが初歩魔術の火の出し方を教わろうもんなら
「火で火傷したらアブナイのでダメでーす」
と禁止し
馬に乗って走る練習を、させようもんなら
「落ちたら大ケガするからダメでーす」
と馬から下ろしてしまう
と言った具合に、
ことごとく練習させないからだ。
「では、カイト様今日こそは“危なくない”魔力の使い方をお教えしましょう」
危なくないって強調して言ったぞ、こいつ。
ギロッとこちらを睨むジャスティン
ヒラヒラ…
と嫌味いっぱいに笑顔で手を振る。
「では、水の出し方をお教えします」
隣にいるライナー王子と
共に水の出し方を教わるらしい。
水なら危なくないか?
本人は水遊び好きだし、暑いし、いいかな?
と言うことで何も口出ししなかった。
「ーーーーーーーーーー!」
とジャスティンが詠唱すると指先からドバーッと水が滝のように出てくる。
うわー、ほんとに魔法使ってる~!!
ん?魔術っていうのか?
違いが分からないけど。
「では、次にお二人」
ライナー王子がまず詠唱して
ピチョっ!と
おもちゃの水鉄砲の様なしぶきがあがる。
本人は大喜び。
見ていた人達は初めてで出来るのは凄い!と褒める。
カイトはというと詠唱の文章を忘れてしまってうーんうーんと考えている。
うん。かわいい。
考えて首を傾げる姿も愛らしい。
「ーーーーー!と言って想像するのです。こうして水を出るようにと」
とアドバイスを貰うと、
閃いた様で両手を上げる。
すると今までカンカン照りの
いいお天気だった空が
真っ暗になりゴロゴロと雷が鳴り始めた。
ポツリ…ポツリ…
ドバーーーー!
と一気にスコールに変わった。
「わーい!出来たあ!!お水だよお!!!」
と飛び跳ねて喜ぶ本人。
周りの大人達は口をあんぐり開けている。
「今のカイトがやったの?」
と隣にいたアダムに聞く。
「えぇ。間違いなく。…しかも無詠唱で。」
詠唱なしで魔術を使えるなんて事は
ほとんどないらしく、アダムは初めて見るそうだ。
「…まじか。」
と私はをごくりと唾を飲み込んで喉をならす。
スコールのため1度練習は中止。
お茶の時間にするそうなので
隊員について行って
お茶とお菓子を貰い、
カイトを囲み
雑談の時間となった。
「さっきの本当にカイトがやったの?」
「そうだよー!この間お家に帰る時、途中でいっぱい雨が降ってきた事思い出したの~」
たしかにまだ向こうにいた頃、
そんなことがあった。
すごい夕立で傘を忘れ
二人でずぶ濡れで帰ったんだ。
「カイト様は、天性の物を持っているな。なかなか出来る事じゃない。さすがだ」
とシヴァが頭を撫でる。
「そうなのだ。兄上達もこんな事やっていなかったのだ。やはりカイトは勇者なのだな!」
と何故か自慢気のライナー王子。
皆に褒められて嬉しいのだろう。
足をばたつかせて
ニコニコ笑顔でお菓子を頬張るカイト。
「スコールで森の魔獣が活発になっただろう。この後は森へ行って魔獣相手に討伐のやり方をお教えします」
と一番端にすわっている、ジャスティンが言った
魔獣?
それって危ないんじゃない?
さっき出来たのはマグレで
次出来なかったら危険じゃない?
「ちょっとそれはアブナイからダメでーす」
と急いで止めに入る。
チッと舌打ちが、
聞こえて
ガヤガヤと
お喋りしていた隊員達は大人しくなり
シーンと静まり返る
「お前もさっきの見ただろ?凡人レベルじゃねーんだよ。男ならちったあ冒険させてやれよ…過保護ヒス女が」
最後のは小声だったが聞こえた。
部下の前だからと我慢していたのだろうか、
訓練中文句を言ってこなかった奴が声を上げた。
「だって、さっきすぐには出来なかったじゃん!魔獣に会ってすぐ出来るとはかぎらないじゃん!」
と言い返す。
「そん時は俺がいるだろーが。頭もわりーな。」
「あんたが居ようがいまいが、知ったこっちゃないわっ!」
「くそ過保護ばばあ!!」
くそ?
ばばあ??
だと?
またキンテキコースか?
席を立ち、ヤツに食らわすため一歩踏み出す。
「僕、森に行ってみたいな。どんな所だろう?」
とお菓子を食べ終えたカイトが言った。
ジャスティンを見ると
勝ち誇った様に
微笑んでこっちを見ている。
…イラぁ
「じゃあママと一緒に行こうね」
とカイトの手を取って言う。
「ダメだ。足手まといだ。」
と奴がお茶をすすりながら言った
確かに私に、魔力はない。
試して見たが、一切その気配が見えないのだ。
足手まといになるのは重々承知だが
カイトから離れる訳には行かない。
「大丈夫!私はアダム君に守って貰うから!!」
ガチッとアダムの腕を掴んでそう言った。
アダムはえ?ってびっくりしていたが、
私は離さない。
必死さが伝わったのだろう、
ジャスティンは 「勝手にしろ」と言った。
ーーーーーーー
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私達は場所を変え、ジャスティンが
言っていた森へと入って行った。
風でざわつく木々に、
どこかしらから聞こえる謎の生物の声、
これが魔獣なの?
アダムをがっちり片腕でフォールドして
怖がりながらも歩いて行く。
ぴょんっ!
と草むらから野ウサギが出てきた。
「ぎゃっ!!」
とさらにキツくアダムに引っ付く。
野ウサギは鼻をヒクヒクさせながら
こちらを一瞬見て、またどこかに行ってしまった。
そう。私は大の怖がりで
おばけ、幽霊なんて
もってのほか、
驚かされる事すらビビってしまう。
我が子のために
この薄暗い森の中を
ビビりながらも来ているのだ。
またぴゅっ!!と肌に何かをかすめる。
「ぎゃぁぁぁあ!」
な、なんだ!?
前の方を歩いているジャスティンが
クククといたずらっ子特有の笑みを浮かべている。
「色気ねー声」
「あんたか!!」
どうやら私がビビりなのに気づいたらしく、なにかしらの魔術を放ったらしい。
それからしばらくは謎の魔術に数回ビビり、
何度もぎゃあぎゃあ!!と叫び声をあげる。
その都度、大成功!と
言わんばかりの笑みで一人楽しんでいるジャスティンがいる。
シヴァにもう辞めてあげろ
と言われるまで何度も何度も驚かされる。
あの性悪男。いくつだよ、まったく。
今は下級隊員は森の外で訓練中、
奴の気心の知れた仲間しかいないからだろう。本性がでている。
一時間程度だろうか休憩を挟みながら歩いたが
あの野ウサギ位しか動物はいなかったし、
魔獣なんて出てこなかった。
アダムの話によるとカイトの気配を察して、
魔獣は逃げてしまった様なのだ。
魔力があるモノは
強い魔力を察する力があるらしく、
この森の魔獣は
カイトにヤラレル~と
怖がってどこかに行ったんではないかと
の事だ。
カイトはお散歩できた!位に思っていて、
楽しかったねーなんてライナー王子と他愛ない話をしている。
息子の無事に、そして、緊張していた全身の力がスゥッと抜けた。
「…良かった…」
と呟いて、
膝からガクッと崩れ、そのまま倒れ込む。
「咲さん!?どうしたんですか?」
と隣のアダムが声をかけているのが
聞こえるが口が動かない。
体の力が入らない。
じんわりと全身に熱が籠もっているように思える。
「…この森にも瘴気が」
そうボソっと誰かが呟いて私の意識は遠のいた。
うっすら誰かに抱えられているのが記憶にある。
カイトが泣いてる?
子供の泣き声も聞こえる。
どこかに移動して、
飲めと言われた水を口に含むも
飲み込む力が無い。
タラーッと口から水がこぼれ落ちる。
「面倒くせーな。ほら、口開けろ」
この口の悪さは奴だろう。
口に指が入り、
何かが覆い被さって水が喉を流れる。
……ちゅ…ゴクン
「とりあえず脱がせる」
そう言われるとと着ていた服のボタンが
ポチんポチんと取れていく。
あれ?なんか脱がされてる?
うっすら目を開ければ、揺れる紅眼が見えた。
あーヤメテー…とうとう私は奴に犯されるのか…。
嫌がらせも程がある。
最初から大人しくしてればこんな事されないで済んだかな?
そう思って完全に意識が無くなった。
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