3 / 43
3
しおりを挟む
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーー………
外はあのきれいな月夜からいっぺん
朝日に包まれていた。
昨日あの後は二人と言い争い、
というかジャスティンとかいう
くそ野郎だけだけど、
ロジャーは慌てながら止めに入っていたけど、隙あれば勇者に!勇者に!と言っていたので
味方ではない認定。
そして、最後にキンテキを食らわして
部屋から閉め出した。
顔面蒼白で悶えていたが、知らん!と決め込んで
窓の鍵を閉め、そのままベッドに潜り込んだ。
カイトは私が隣に来た事でまた眠気が来たようでぐっすりと腕の中で寝た。
私もその温もりから、いつの間に寝てしまった。
コンコンッ…
二人ともドアのノックの音で目を覚ます。
朝食もお持ちしましたと
侍女だろうか若めの女性が部屋に香しい匂いと共に部屋に入ってくる。
服はあれとこれよ!と教えられて、
洗面所、トイレ、バスルームと色々説明してくれ、用があれば呼ぶよう伝えられた。
まだ暖かいパンをかじりながら
これは現実なんだと改めて感じる。
朝食を食べ終わる頃
またノックが聞こえた。
先程の侍女だろうか?
食器を下げにくるタイミングで来たのだろう。とドアを開ければ
目に入ったのはくそ野郎ことジャスティン。
「…」
バタンッ
無言で
ドアを閉めた。
昨日の大喧嘩の後にも関わらず、
太々しい奴と顔を合わせる気などない。
「ママー誰だったの?」
「変な人だからいいかなって」
とわざと聞こえる様に言った。
またもコンコンとドアが鳴る。
「しつこい!」
とドアに向かって言ってみる。
コンコンと三度目のノック
うわーマジしつけーなー
と思いながらも開ける気はない。
だが、ゆっくりとドアが開いた。
この部屋は鍵がないのか?
そして、コツコツと革靴を鳴らしながら入ってくるのは奴だ。
それと
その後ろには
私と同じ歳位の小柄な綺麗な女性と
そっくりな顔をしたカイトより一回り大きい男の子。
女性と男の子は 綺麗に着飾っていた。頭にはティアラが着いている
「おはようございます。勇者様とその母君。…昨晩は大変失礼致しました。」
と品があるバージョンの奴。
私はもう騙されない!
奴はこれが本性ではない。
丁寧に挨拶をしてきたが
フルシカトを、決め込む。
ジャスティンは表情こそ変えないものの、
オーラが怒っているのが分かる。
漫画でいうと
笑顔なのに怒りマークがデコにある状態。
ひょこひょことカイトの近くに寄ってくるのは
女性の隣にいた男の子。
カイトの近くをうろうろし、
匂いを嗅ぎ、ペタペタと触れる。
最初こそ動揺していたものの、
くすぐったくなったのか
キャハハと笑いあげるのはカイト。
「くすぐったいよ~キャハハ」
びっくりするがキラキラと目を輝かせて、
「そなたが勇者であるか!僕はずーーーーっとお会いしたかったのだ!」
とカイトに抱きつく男の子。
なんとも可愛い光景である。
「これ、王子。失礼ですよ。」
と優しく叱るのはこの男の子の母親だろう。
そう言うと私に向かって
「ご挨拶が遅れました。私はこの国の王妃エマ と申しますわ。この子はライナー王子、ずっとお待ちしていたの。」
とスカート広げ優雅に挨拶する。
やはり王族の方か。
ジャスティンの猫かぶり様でなんとなく察していた。
部屋中に子供達の笑い声が聞こえる。
カイトは
さっそくライナー王子と友達になったようだ。
その辺にあるものをおもちゃにして遊ぶ二人。
紅茶も飲みながら
このエマ妃と少しずつ話をする形となった。
紅茶を飲む姿も優雅で、手に持っているその高級なそうなティーカップがよく似合う。
「カイト!こちらへこちらへ!!!」
「待ってよ~、ライナーくん」
少し年上のライナー王子が
カイトを引っ張って上手に遊んでいる様子に、目線をやりながら微笑ましく
「勇者様はカイトと申されるのですね。城には同じ歳頃の子供がおりませんので、王子もさぞ喜んでおりますわ」
とエマ妃はニッコリとする。
長いまつげが揺れるのが分かる。
白髪気味の
その髪の毛と
睫毛がさらに品の良さを感じされる。
「ところで、母君のお名前は?」
この世界にきて初めて聞かれる私の名前。
カイトの名前を聞こうにも
誰も私の名前なんて聞こうとしなかった。
まあ勇者様にくっついてきた
オマケだしと思っていたが
この人は私を一人の人として扱ってくれる。
その気持ちが嬉しくなり
「咲です。よろしくお願いします。」
と照れながら言った。
「そうですか。咲様ですか。」
とこれまたニッコリ
綺麗すぎるよ~!!!
女の私でも惚れてもしまうくらい美しい。
「咲様なんて!ただの咲でいいですよ。
様呼びなんてとんでもないです。」
と慌てて様呼びを辞めてくれるようにお願いした。
「そうですか。では私もエマとお呼び下さい。咲」
なんともまあ、心が広い妃なのだろうか。
常に笑顔のエマ妃
昨日の国王も割とニコニコしていたが、この皇后にあの王ありですなと納得する。
「……咲の気持ちはよく分かります。私も腹を痛めて産んだ子に危険な事などさせたくないですもの」
部屋中を駆け回る子供二人に目線をやりながらそう言った。
ハッと言う顔をするのは
今まで黙って話を聞いていた
ジャスティンだった。
何か言いたげだ。
その表情を確認し、またニコリと微笑むエマ。
「私が咲の立場ならもちろん猛反対致しますわ。…だから…勇者にならなくていいんではないかしら?」
何か思いついた様にパチンと手を合わせながら言うのだ。
「今までいた世界に帰せる様に頼んでみます。今までの勇者だって、事が終われば帰って行った方もいますし。 この国の事はあなた方には関係無いことですもの。それに、こんなに幼い子供を勇者にと祭り上げる事すらおかしいんですわ」
はぁ…とため息がジャスティンの方から聞こえた。
エマは変わらずニコリとしている。
勇者を辞められるの?
やらなくていいの?
危険な事しなくていいの?
その言葉がやけに頭の中をぐるぐる回る、
「エマ様…さすがにそれは勝手に決めすぎでは?」
と厳しい顔付きのジャスティンがエマに向かっていった。
「カイト様をご覧になれば分かるでしょう?あの魔力の多さ…滲み出ております。並みの人なら殺気だけで倒れます。今は無邪気に遊んでおられるだけなので何もございまんが…」
とカイトをみながら淡々と話す。
「使い方さえ分かれば、歴代最強になるのは確実でございます。それに…従者の4人も相当の使い手…カイト様をお守りしながらでも戦えるはずでござます。最後の切り札としてカイト様がこの国には必要なのですよ。」
と淡々と真剣に語るのだ。
「ダメダメ!危ないのはダメ!そんな使い手がいっぱいいるなら5歳児なんかに任せなくていいんじゃないの!?てか、あんたがやればいいでしょ?」
と食ってかかる。
ギロッと睨みをきかせるジャスティンだが、私も怯まない。
昨日のキンテキ、もう一度食らわしてやるか?
その言葉をきいてエマは
「うーん。では、魔術がちゃんと使えるかどうか試して見てから考えればよいのでは? もし、それでも咲がダメだと言うのなら元の世界にお帰り頂く…そうしましょ!」
と首を傾げて明るく可愛らしく言うのだ。
ジャスティンの怒りがどんどん上がっていくのが雰囲気で分かる。
どうせ普通に子供だし、出来ないでしょ!
そのお試し期間とやらになんにも出来ないのを分かって貰えれば帰れる!
昨日の食堂パリン事件も他の誰かでしょ?
うん。そうしよう!
それがいい
と私は大賛成した。
「では、その様に致しましょう!ライナー王子もそろそろ学ぶ年齢ですし、一緒に見て貰いましょうかしら…」
なんと自由なのだろう。
フリーダム人間だ。
まあ、カイトもお友達と一緒にいた方が楽しく、遊べるしいいのかもしれない。
「いいかしら?ジャスティン」
「…かしこまりました」
と返事はするもののイマイチな様子なジャスティン。
あーこいつが…仕込み役って訳か。
カイトはこいつに教わるのか…不服。
では、その様な事でよろしくーって感じでササーっと部屋を出るエマ妃とライナー王子。
残されたり私達3人はなんとなく、
顔を見合わせる。
カイトは相変わらずかわいい。
うん。さすが我が子。
まだまだ遊び足らない様子ではある。
いつもなら公園だったり、
保育園で遊んでいる時間だ。
確かにまだ体力はありそうな感じ。
「はぁ…なんてこった。子守りかよ」
ブスッとしながら姿勢を崩す
やはり不満なのだろう。
さっきまでのバージョンはどうした。
その変わり身にイラッとする。
「早くお家に帰れるといいね!カイト!」
と嫌味っぽく言った。
するとジャスティンはハァ…とまたため息をついて
こちらに見る。
「あんた、自分の子供の事なーんもしんねーのな。」
と呆れた目もして言った。
はぁ?なんも知らない?
赤ちゃんの頃からずーーっと一緒にいて、
育ててきてなんも知らない訳ないじゃない。
昨日会ったばっかのあんたに何がわかんのよ?
イラッとするので
すぐ近くにあったソファーのクッションを奴の顔面
目がけて投げた。
ボスっ!といい音がして
狙いどうり顔面ど真ん中。
あの綺麗な顔にドストレート
ストライク。
うーん、気分いい!
床に落ちたそのクッションを拾うとジャスティンも
振りかぶって投げ返した。
ドスッ…と先程より鈍い音がして、
私の顔面がヒリヒリする。
奴も負けてない。ストライク。
「…あんたね~!!!女の子に顔に投げるってどーゆー神経してんよ!!」
「誰が女の子?どこにいるの?女の子?」
「はぁ?目の前にいんでしょーが、目まで悪いの?あんたは!!」
「視力はいいですが?」
「そーゆー話じゃないし!ほんっっっとに性悪男」
「ヒステリック女!こんな母君でカイト様は毎日疲れないのですか?」
あーいえばこう言う。
まるで子供の、ケンカの様だ。
負けじと言い返そうとドンドン詰め寄っていく二人。
カイトは遊びの延長だと思っているのか、
自分の方にある枕を投げてきた。
まだ5歳には重い様で、届かずすぐに落ちてしまう。
その枕につまずいてしまい、
あー!!コケるっ!?
と思って目をつむる。
「イテテ…くない?」
パチと目を開ければ、ジャスティンが
目の前にいるというか、私が抱きついてる形になってしまった。
突然のことに言葉を失ってしまう。
やっぱり凄く綺麗な眼だなぁ。
目の中で炎が揺れている様に見える。
そして、久しぶりの男性の腕の中という事もあり、体温は急上昇。
体が、熱い。
その眼をジッと見入ってしまった。
ジャスティンは何も言わずただ、こちらも見つめるのみで、
それがさらに言葉をかけずらくさせてしまう。
どうしよう。やっちまった。
困っていると コンコンとまたノックがなった。
急いで離れる二人。
返事をすると
そこには昨日の件を目撃していたロジャーと
同じ制服を着ている短髪の二人が入ってきた。
一人は褐色肌に紫がかった髪の色が印象的な長身で肩幅が広く、見事な逆三角形の
ソフトマッチョな男性。
もう一人は女の子かと思うくらい可愛らしい顔つきの
私とそんなに身長差のない10代と思われる男の子
「失礼致しまします。他の仲間も連れてき…ってなに二人して焦った顔してんの?」
と私達の顔を交互に見るのはロジャー。
こいつも昨日猫かぶりしてたんだよな。
許さん!
と白い目でロジャーも見ると察したのか目をそらしながら
「…ではカイト様の護衛件ご指導係として我らが仰せつかっておりますのでご挨拶を…」
と言った。
ジャスティンを先頭に他3人も並び、膝を床につけ礼をとる
右からジャスティン、ロジャー、
そして新顔のシヴァとアダム。
皆騎士団の一員だという。
各分隊長もしているので、
警護は分隊をローテーションで回すそうだ。
主に指導をするのは4人と言うことらしい。
カイトもいきなり
大の大人が自分を敬うのだから
びっくりする様子を見せるもすぐに懐いてしまう。
人見知りはしない子に、育ったもんだ、
やっぱり片親だから身についた処世術なのだろうと、少し寂しく思う。
ーーーーーー
ーーーーーーー………
外はあのきれいな月夜からいっぺん
朝日に包まれていた。
昨日あの後は二人と言い争い、
というかジャスティンとかいう
くそ野郎だけだけど、
ロジャーは慌てながら止めに入っていたけど、隙あれば勇者に!勇者に!と言っていたので
味方ではない認定。
そして、最後にキンテキを食らわして
部屋から閉め出した。
顔面蒼白で悶えていたが、知らん!と決め込んで
窓の鍵を閉め、そのままベッドに潜り込んだ。
カイトは私が隣に来た事でまた眠気が来たようでぐっすりと腕の中で寝た。
私もその温もりから、いつの間に寝てしまった。
コンコンッ…
二人ともドアのノックの音で目を覚ます。
朝食もお持ちしましたと
侍女だろうか若めの女性が部屋に香しい匂いと共に部屋に入ってくる。
服はあれとこれよ!と教えられて、
洗面所、トイレ、バスルームと色々説明してくれ、用があれば呼ぶよう伝えられた。
まだ暖かいパンをかじりながら
これは現実なんだと改めて感じる。
朝食を食べ終わる頃
またノックが聞こえた。
先程の侍女だろうか?
食器を下げにくるタイミングで来たのだろう。とドアを開ければ
目に入ったのはくそ野郎ことジャスティン。
「…」
バタンッ
無言で
ドアを閉めた。
昨日の大喧嘩の後にも関わらず、
太々しい奴と顔を合わせる気などない。
「ママー誰だったの?」
「変な人だからいいかなって」
とわざと聞こえる様に言った。
またもコンコンとドアが鳴る。
「しつこい!」
とドアに向かって言ってみる。
コンコンと三度目のノック
うわーマジしつけーなー
と思いながらも開ける気はない。
だが、ゆっくりとドアが開いた。
この部屋は鍵がないのか?
そして、コツコツと革靴を鳴らしながら入ってくるのは奴だ。
それと
その後ろには
私と同じ歳位の小柄な綺麗な女性と
そっくりな顔をしたカイトより一回り大きい男の子。
女性と男の子は 綺麗に着飾っていた。頭にはティアラが着いている
「おはようございます。勇者様とその母君。…昨晩は大変失礼致しました。」
と品があるバージョンの奴。
私はもう騙されない!
奴はこれが本性ではない。
丁寧に挨拶をしてきたが
フルシカトを、決め込む。
ジャスティンは表情こそ変えないものの、
オーラが怒っているのが分かる。
漫画でいうと
笑顔なのに怒りマークがデコにある状態。
ひょこひょことカイトの近くに寄ってくるのは
女性の隣にいた男の子。
カイトの近くをうろうろし、
匂いを嗅ぎ、ペタペタと触れる。
最初こそ動揺していたものの、
くすぐったくなったのか
キャハハと笑いあげるのはカイト。
「くすぐったいよ~キャハハ」
びっくりするがキラキラと目を輝かせて、
「そなたが勇者であるか!僕はずーーーーっとお会いしたかったのだ!」
とカイトに抱きつく男の子。
なんとも可愛い光景である。
「これ、王子。失礼ですよ。」
と優しく叱るのはこの男の子の母親だろう。
そう言うと私に向かって
「ご挨拶が遅れました。私はこの国の王妃エマ と申しますわ。この子はライナー王子、ずっとお待ちしていたの。」
とスカート広げ優雅に挨拶する。
やはり王族の方か。
ジャスティンの猫かぶり様でなんとなく察していた。
部屋中に子供達の笑い声が聞こえる。
カイトは
さっそくライナー王子と友達になったようだ。
その辺にあるものをおもちゃにして遊ぶ二人。
紅茶も飲みながら
このエマ妃と少しずつ話をする形となった。
紅茶を飲む姿も優雅で、手に持っているその高級なそうなティーカップがよく似合う。
「カイト!こちらへこちらへ!!!」
「待ってよ~、ライナーくん」
少し年上のライナー王子が
カイトを引っ張って上手に遊んでいる様子に、目線をやりながら微笑ましく
「勇者様はカイトと申されるのですね。城には同じ歳頃の子供がおりませんので、王子もさぞ喜んでおりますわ」
とエマ妃はニッコリとする。
長いまつげが揺れるのが分かる。
白髪気味の
その髪の毛と
睫毛がさらに品の良さを感じされる。
「ところで、母君のお名前は?」
この世界にきて初めて聞かれる私の名前。
カイトの名前を聞こうにも
誰も私の名前なんて聞こうとしなかった。
まあ勇者様にくっついてきた
オマケだしと思っていたが
この人は私を一人の人として扱ってくれる。
その気持ちが嬉しくなり
「咲です。よろしくお願いします。」
と照れながら言った。
「そうですか。咲様ですか。」
とこれまたニッコリ
綺麗すぎるよ~!!!
女の私でも惚れてもしまうくらい美しい。
「咲様なんて!ただの咲でいいですよ。
様呼びなんてとんでもないです。」
と慌てて様呼びを辞めてくれるようにお願いした。
「そうですか。では私もエマとお呼び下さい。咲」
なんともまあ、心が広い妃なのだろうか。
常に笑顔のエマ妃
昨日の国王も割とニコニコしていたが、この皇后にあの王ありですなと納得する。
「……咲の気持ちはよく分かります。私も腹を痛めて産んだ子に危険な事などさせたくないですもの」
部屋中を駆け回る子供二人に目線をやりながらそう言った。
ハッと言う顔をするのは
今まで黙って話を聞いていた
ジャスティンだった。
何か言いたげだ。
その表情を確認し、またニコリと微笑むエマ。
「私が咲の立場ならもちろん猛反対致しますわ。…だから…勇者にならなくていいんではないかしら?」
何か思いついた様にパチンと手を合わせながら言うのだ。
「今までいた世界に帰せる様に頼んでみます。今までの勇者だって、事が終われば帰って行った方もいますし。 この国の事はあなた方には関係無いことですもの。それに、こんなに幼い子供を勇者にと祭り上げる事すらおかしいんですわ」
はぁ…とため息がジャスティンの方から聞こえた。
エマは変わらずニコリとしている。
勇者を辞められるの?
やらなくていいの?
危険な事しなくていいの?
その言葉がやけに頭の中をぐるぐる回る、
「エマ様…さすがにそれは勝手に決めすぎでは?」
と厳しい顔付きのジャスティンがエマに向かっていった。
「カイト様をご覧になれば分かるでしょう?あの魔力の多さ…滲み出ております。並みの人なら殺気だけで倒れます。今は無邪気に遊んでおられるだけなので何もございまんが…」
とカイトをみながら淡々と話す。
「使い方さえ分かれば、歴代最強になるのは確実でございます。それに…従者の4人も相当の使い手…カイト様をお守りしながらでも戦えるはずでござます。最後の切り札としてカイト様がこの国には必要なのですよ。」
と淡々と真剣に語るのだ。
「ダメダメ!危ないのはダメ!そんな使い手がいっぱいいるなら5歳児なんかに任せなくていいんじゃないの!?てか、あんたがやればいいでしょ?」
と食ってかかる。
ギロッと睨みをきかせるジャスティンだが、私も怯まない。
昨日のキンテキ、もう一度食らわしてやるか?
その言葉をきいてエマは
「うーん。では、魔術がちゃんと使えるかどうか試して見てから考えればよいのでは? もし、それでも咲がダメだと言うのなら元の世界にお帰り頂く…そうしましょ!」
と首を傾げて明るく可愛らしく言うのだ。
ジャスティンの怒りがどんどん上がっていくのが雰囲気で分かる。
どうせ普通に子供だし、出来ないでしょ!
そのお試し期間とやらになんにも出来ないのを分かって貰えれば帰れる!
昨日の食堂パリン事件も他の誰かでしょ?
うん。そうしよう!
それがいい
と私は大賛成した。
「では、その様に致しましょう!ライナー王子もそろそろ学ぶ年齢ですし、一緒に見て貰いましょうかしら…」
なんと自由なのだろう。
フリーダム人間だ。
まあ、カイトもお友達と一緒にいた方が楽しく、遊べるしいいのかもしれない。
「いいかしら?ジャスティン」
「…かしこまりました」
と返事はするもののイマイチな様子なジャスティン。
あーこいつが…仕込み役って訳か。
カイトはこいつに教わるのか…不服。
では、その様な事でよろしくーって感じでササーっと部屋を出るエマ妃とライナー王子。
残されたり私達3人はなんとなく、
顔を見合わせる。
カイトは相変わらずかわいい。
うん。さすが我が子。
まだまだ遊び足らない様子ではある。
いつもなら公園だったり、
保育園で遊んでいる時間だ。
確かにまだ体力はありそうな感じ。
「はぁ…なんてこった。子守りかよ」
ブスッとしながら姿勢を崩す
やはり不満なのだろう。
さっきまでのバージョンはどうした。
その変わり身にイラッとする。
「早くお家に帰れるといいね!カイト!」
と嫌味っぽく言った。
するとジャスティンはハァ…とまたため息をついて
こちらに見る。
「あんた、自分の子供の事なーんもしんねーのな。」
と呆れた目もして言った。
はぁ?なんも知らない?
赤ちゃんの頃からずーーっと一緒にいて、
育ててきてなんも知らない訳ないじゃない。
昨日会ったばっかのあんたに何がわかんのよ?
イラッとするので
すぐ近くにあったソファーのクッションを奴の顔面
目がけて投げた。
ボスっ!といい音がして
狙いどうり顔面ど真ん中。
あの綺麗な顔にドストレート
ストライク。
うーん、気分いい!
床に落ちたそのクッションを拾うとジャスティンも
振りかぶって投げ返した。
ドスッ…と先程より鈍い音がして、
私の顔面がヒリヒリする。
奴も負けてない。ストライク。
「…あんたね~!!!女の子に顔に投げるってどーゆー神経してんよ!!」
「誰が女の子?どこにいるの?女の子?」
「はぁ?目の前にいんでしょーが、目まで悪いの?あんたは!!」
「視力はいいですが?」
「そーゆー話じゃないし!ほんっっっとに性悪男」
「ヒステリック女!こんな母君でカイト様は毎日疲れないのですか?」
あーいえばこう言う。
まるで子供の、ケンカの様だ。
負けじと言い返そうとドンドン詰め寄っていく二人。
カイトは遊びの延長だと思っているのか、
自分の方にある枕を投げてきた。
まだ5歳には重い様で、届かずすぐに落ちてしまう。
その枕につまずいてしまい、
あー!!コケるっ!?
と思って目をつむる。
「イテテ…くない?」
パチと目を開ければ、ジャスティンが
目の前にいるというか、私が抱きついてる形になってしまった。
突然のことに言葉を失ってしまう。
やっぱり凄く綺麗な眼だなぁ。
目の中で炎が揺れている様に見える。
そして、久しぶりの男性の腕の中という事もあり、体温は急上昇。
体が、熱い。
その眼をジッと見入ってしまった。
ジャスティンは何も言わずただ、こちらも見つめるのみで、
それがさらに言葉をかけずらくさせてしまう。
どうしよう。やっちまった。
困っていると コンコンとまたノックがなった。
急いで離れる二人。
返事をすると
そこには昨日の件を目撃していたロジャーと
同じ制服を着ている短髪の二人が入ってきた。
一人は褐色肌に紫がかった髪の色が印象的な長身で肩幅が広く、見事な逆三角形の
ソフトマッチョな男性。
もう一人は女の子かと思うくらい可愛らしい顔つきの
私とそんなに身長差のない10代と思われる男の子
「失礼致しまします。他の仲間も連れてき…ってなに二人して焦った顔してんの?」
と私達の顔を交互に見るのはロジャー。
こいつも昨日猫かぶりしてたんだよな。
許さん!
と白い目でロジャーも見ると察したのか目をそらしながら
「…ではカイト様の護衛件ご指導係として我らが仰せつかっておりますのでご挨拶を…」
と言った。
ジャスティンを先頭に他3人も並び、膝を床につけ礼をとる
右からジャスティン、ロジャー、
そして新顔のシヴァとアダム。
皆騎士団の一員だという。
各分隊長もしているので、
警護は分隊をローテーションで回すそうだ。
主に指導をするのは4人と言うことらしい。
カイトもいきなり
大の大人が自分を敬うのだから
びっくりする様子を見せるもすぐに懐いてしまう。
人見知りはしない子に、育ったもんだ、
やっぱり片親だから身についた処世術なのだろうと、少し寂しく思う。
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。

騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

【完結】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる
大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】
大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。
「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」
死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。
国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!?
「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」
エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって……
常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。
※どんな形であれハッピーエンドになります。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる