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天幕付きでふかふかの大きなキングサイズのベッドが中央に置いてある。
高級そうな絵画が壁に飾ってあって
窓からは月が反射して綺麗な湖が見える。
ここを使っていいと言われ案内された部屋
ベッドにドスンと座り、そのまま倒れる。
カイトは睡眠途中で起こされた為、満腹になったと同時にまた寝てしまった。
さっきのは本当に、カイトがやったのだろうか?
魔力、魔術とは?
ここは地球なの?
勇者ってなに?
危なくないの?
もうおうちに帰れないの?
たくさん不安な事だらけ。
聞きたい事は山ほどあるが
とりあえず
夜中だからと部屋に通された。
スヤスヤと寝る我が子の頭を撫で、不安を消す様に愛でる。
スクッと立ち上がり、窓へと向かう。
そこからベランダに出れる様になっているので
ガチャッと開けてみる。
サーッと気持ちよい夜風が頬をかすめる。
向こうに見える湖の揺れる水面に
不安がどっと押し上げて先程抑えた感情が溢れてくる。
カイトを起こさぬ様に声を出さずにヒッソリと泣いてしまう。
グズン…グズン…
「泣いてばかりですね」
ベランダの端の方から声がした。
警護をしていのだろうか
金髪ウエーブがキレイに月光に反射している
ハッキリ見えないが青みがかっている眼の
制服を着た男性が立っていた。
ふわっ…
いい香りをさせながら彼は近づくと
私の、頬の雫を手で優しくすくい、
ペロリと舐めた
「…しょっぱいですね。知ってますか?涙って、悲しい時と嬉しい時で味が違うんですって。どっちの方が美味しいんですかね。」
「え、どうなんでしょうね」
その仕草がとてもスマートで
こちらが、
照れるのも忘れてしまった。
ボーっと見つめてしまう。
まだ少年さを残す
あどけない顔にどこか色気を感じる
セクシーと言うより色気なのだ。
この彼もまた誰しもがイケメンという部類になるだろう。
まるでアイドルグループのセンターの様な顔立ちだ。
…ドカッ!
彼の、頭にげんこつが飛ぶ。
「イテッ!なにすんだよーー。ジャン~。せっかくかっこよく決まったのに~ぃ」
殴られた頭をさすりながら私の、
後方へと目線をあげている
「ロジャー、気持ち悪い事するな。見ててゾッとした。聞いてて寒気がする。」
私も振り向いてみると
そこには先程、食堂で会った紅眼の男性がいた。
「申し訳ありません。ノックをしたのですが、誰かと話していた様子だったので、勝手入ってきてしまいました。」
私の真後ろにいたのに気づかなかった
気配感じなかった!
そして、近くで見るとやっぱりスラっとしていて身長も、高い。
180センチは超えているだろう。
「申し遅れました。私、王宮の騎士団長のジャスティン・アルテミス。お二人にお仕えする様に仰せつかりました。まだ起きている様でしたのでご挨拶をと、参りました。」
きっとカイトを起こさない様にと、配慮なのだろう。ゆっくり、少し小声で言った。
「そして同じく副隊長のロジャー・ミネルヴァ。よろしくお願い致ます。」
こちらも優雅に礼を深々として言った。
あまりにも美しいすぎる二人に声を無くしてしまう。
この世界の人は品があってイケメンなのか?
顔面偏差値が高すぎるって!
こんな芸能人級、普通に生活していてそうそう出会えるもんでもない。
「母君は、黒髪ではないのですね」
ジャスティンはそう言って私の、ぼさついた枝毛だらけの髪の毛の一束をスルリと手に取った。
ドキッと胸が高鳴る。
なに…この人達、さっきから初対面なのに距離感がおかしい。
そう思いつつも、抵抗しないのは彼らがいわゆるイケメンだからだろう。
そしてあの力強い眼で真っ直ぐ見つめてくるのだ。
「…髪、染めてますし…一応……」
少しだけ茶色に脱色している私。
しばらく美容室にも行けていないので、根元は元の色にはなっているが…。
熱くなる耳が、照れを隠してくれない。
その姿を見てジャスティンはふっと微笑を浮かた
月の光が照らすその姿に、少し気味の悪い美しさも覚えつつ、どうしても見入ってしまう。
「では、元は黒髪なのか。」
表情こそは崩さないものの一層、力強くそう言った。
まあ、純日本人ですしそうなりますが…
「じゃぁ、母君も魔力が強いかもしれないですね。さすが勇者様の親ですし」
金髪を、揺らしながらニコリと嬉しそうに言うロジャーは
横目で寝ているカイトに視線をやりながら口を開く
「この国では、黒というのは魔力が強い者しか使えません。それが生まれつき備わっているとなれば魔力が体内から放出されている証拠…髪のも目もほくろさえもそうなのです。」
そう説明してくれた。
確かに、先程の大広間でも黒色を身につけている人は国王のマント位でしかなかった。
他の人は
金や茶、水色や赤色等の様々な髪の色や服装をしていた。
目の前にいるジャスティンが唯一黒髪。
話に聞く限り、魔力は相当あるのだろう。
「そんなの私にないと思います。魔力なんておとぎ話の中の話ですし。私のいた世界ではそんなのを使っている人は見た事ありません。」
男性二人は顔を見合わせて
不思議そうに表情を浮かべる。
サラリ…パサッ
「魔力の無い国ですか…平和なのでしょうね」
と寂しそうに手に持っていた私の髪の束を、ジャスティンは離して、口をゆっくりと開く
「我々の世界には魔物や魔獣、魔人と呼ばれる魔族がいます。それらから身を守るために我々は遠い昔に魔王と契約し、魔力を得た。」
コツコツッ…
上等な革靴なのだろう。
ベランダの隅に向かうジャスティンの靴の音が広すぎる庭に、響く。
こちらに大きく立派な背中を向け、どんな表情なのだろうと気になる。
「そして、今はこの国の住人、皆、魔術が使えるのです。子供達も遊びの中から学び、成人する頃にはほとんどの人間が使える。ただ…」
くるっと回りこちらも振り向き、少し昔話をしてくれた。
ーーー
ーーーーー
ーーーーーーーー………
昔々の話…
人々は魔術も使えず、日々、魔獣や魔人に苛められる毎日でした。
せっかく育てた野菜も踏みつけられ、
川の水は汚く、飲めるものでは無かった程でした。
女は犯され男は奴隷にされるのです。
日々を怯えながら過ごしていたある日
黒髪黒眼の青年が立ち上がりました、
【なぜ親兄弟は魔族にイジメられているのだろう?
なぜ、食べ物も満足に食べられないのだろう?
僕の人生はなんのためにあるの?】
その、疑問からでした。
そうして、人々は青年の後に続き、魔王城へとクワや剣を持ち向かって行くのです。
魔王城では好き勝手やっていた魔王がおりました。
大好きなお酒を浴びる程飲んでいた
門番たちは誰も来た事のないこの城に
まさか人が来るなどと
思ってもおらず、
酔ってぐーぐー居眠りをしておりました。
そのすきに人達は城の中へと侵入、
寝ている魔王の心臓へ剣を突き刺すのでした。
ですが、さすがの魔王
1度心臓を突かれるだけでは死にません。
魔王が繰り出す攻撃はそれはそれは
激しいものでした。
海は二つに割れ、鳴り止まない雷に、
地面は大きく揺れるのです。
1000もいた人は沢山死に、残ったのは黒髪黒眼の青年とその仲間達の5人のみなのです。
魔王がトドメを刺そうと思った時、
青年の持っている剣が光ります。
その剣で魔王の心臓をもう1度一刺しすると、
とうとう魔王は虫の息になりました。
魔王は泣きながら、
どうか助けて欲しい。
魔力もあげるから
魔術を教えるから
殺さないでくれと
お願いするのでした。
心優しい青年はその願いを聞き入れ、魔力を手にするのでした。
何百年とした頃
人間達は魔力も使いこなしておりました。
生活には無くてはならないモノとなっていたのです。
あの頃のひどい扱いが嘘のように平和の世でした。
たくさん食べ、たくさん愛し、
たくさん笑う人たちを見て、
敗北した
魔王は腹が立ちました。
昔の様にいばって暮らせず、
肩身のせまい思いをしていたからです。
あの時、魔力さえ渡さなければ…
あの時、魔術さえ教えなければ…
あの時、負けなければ…
そうだ。魔力を返してもらえば、使えなくなるだろう。
そうすればまた人間達を犯し、
奴隷にできる日が戻ってくるだろう。
魔王の復讐がはじまるのです。
何度も何度も人達に仕掛けるも
その度に黒髪黒眼の人にやられてしまいます。
やられては戦い
殺されては生き返る
そうして魔族と人間の戦いが何度も何度も繰り返されるのです。
………ーーーー
ーーーーー
ーー
この話はこの国で語り継がれていると言うジャスティン
話の流れは何となく分かったけど、
なんでそれがうちの子なの…
という気持ちで埋め尽くされる。
怖い思いをさせたくないし、
痛い事をさせたくない。
戦いとなればそうなるだろう。
どこの親もそんな事を
子供にはさせたくないのだろうと思う。
スクッと床に膝を付け
二人は深々と頭をさげる。
「今また、魔王の勢力が大きくなって来ております。…今は何とか我々騎士団で食い止めておりますが…あと数ヶ月持つかどうか…」
と、ジャスティン力強く言った。
そして、胸に当てている手が震えている。
必死なのだろうと思う。
プライドが高そうな彼が…と思うと胸が苦しくなる。
「いいよ。僕が助けてあげる」
ベッドの方からそう聞こえた。
後ろを振り向くとカイトが起き上がっていた。
1度寝たら起きないカイトが
今日に限って何度も起きるのだ。
そして、今の話を聞いていたらしい。
その言葉に
ジャスティンとロジャーは驚いた様に そして、表情は明るくなった。
「…本当ですか!勇者様!」
と膝をついたままカイトを見るジャスティン。
「なんかよく分からないけど、悪いことしてる人がイジメくるんでしょ?ママに
いじめっ子はだめだよ。もし、いじめられるひとがいたら助けてあげてっていわれてるもん。」
と言う。
確かにそう教えてきたけど…
レベルが違うんじゃないかな…。
二人が喜んでいるのが分かるが
「ダメダメダメダメ!カイトにそんな事させられない。無理!絶対ダメ!危なすぎる!遊びじゃないんだよ!ダメダメ」
と猛反対。
すぐにカイトに駈け寄ると抱きしめる。
寝起きの暖かさを肌に感じる。
こんなに可愛い我が子に
そんな危険な事させられない。
ぎゅーと力をいれると、いたいよーと嬉しそうにいうカイト。
「…チッ。本人がやるって言ってんだからいいだろーが。オマケがでしゃばってくんなよ。」
…?
は?誰?今のは
二人に目線を移すと
冷や汗ダラダラのロジャーと。
先程までの品の良さを一切感じられなくなってしまったジャスティン。
頭をワシャワシャと掻きむしり、あーもう辞めだ。やめ。といって丁寧に着ていた制服のえりを緩める。
そして、
「勇者召喚に勝手にくっついて来たくせして、めんどーくせー事をガタガタうるせーんだよ。」
と態度が180度変えてきた。
さっきまでの
イケメン像は崩れ去り、今は野蛮な男でしかない。
「もう、ジャン!我慢してって言ったのに!初日でバラしてどうするんだよ!」
「だってー、こいつ召喚時からずーーーーっとヒスってんだぞ、聞いてるこっちが疲れるわ。」
「だからまずは母親から口説いて上手い事やれって言われてたじゃねーかよ。…あ。やべ。」
言ってはならぬことを言ったのだろう、チラとロジャーはこちらを見てさらに、冷や汗が増す。
あの距離感はそういう事か。
なるほどね。
私が猛反対するのが分かっていた国王は
まず私を口説き落とせばいいと思ったのだろう。
確かにうわーイケメンだ!
うわー美形だ!
と少しドキドキしていたのだけど、
今は二人共、イメージは全然違う。
「おい、ばばあ。うるせぇ事ぬかしてねーで、さっさとガキを勇者にします!って言え。」
と耳をほじりながらいう。
その姿、態度に
そして
ばばあと言うパワーワードを聞いた瞬間に
ブチッと何かが切れた。
いや、キレた。
「絶対やらないから!!!」
と今日一の大声である。
高級そうな絵画が壁に飾ってあって
窓からは月が反射して綺麗な湖が見える。
ここを使っていいと言われ案内された部屋
ベッドにドスンと座り、そのまま倒れる。
カイトは睡眠途中で起こされた為、満腹になったと同時にまた寝てしまった。
さっきのは本当に、カイトがやったのだろうか?
魔力、魔術とは?
ここは地球なの?
勇者ってなに?
危なくないの?
もうおうちに帰れないの?
たくさん不安な事だらけ。
聞きたい事は山ほどあるが
とりあえず
夜中だからと部屋に通された。
スヤスヤと寝る我が子の頭を撫で、不安を消す様に愛でる。
スクッと立ち上がり、窓へと向かう。
そこからベランダに出れる様になっているので
ガチャッと開けてみる。
サーッと気持ちよい夜風が頬をかすめる。
向こうに見える湖の揺れる水面に
不安がどっと押し上げて先程抑えた感情が溢れてくる。
カイトを起こさぬ様に声を出さずにヒッソリと泣いてしまう。
グズン…グズン…
「泣いてばかりですね」
ベランダの端の方から声がした。
警護をしていのだろうか
金髪ウエーブがキレイに月光に反射している
ハッキリ見えないが青みがかっている眼の
制服を着た男性が立っていた。
ふわっ…
いい香りをさせながら彼は近づくと
私の、頬の雫を手で優しくすくい、
ペロリと舐めた
「…しょっぱいですね。知ってますか?涙って、悲しい時と嬉しい時で味が違うんですって。どっちの方が美味しいんですかね。」
「え、どうなんでしょうね」
その仕草がとてもスマートで
こちらが、
照れるのも忘れてしまった。
ボーっと見つめてしまう。
まだ少年さを残す
あどけない顔にどこか色気を感じる
セクシーと言うより色気なのだ。
この彼もまた誰しもがイケメンという部類になるだろう。
まるでアイドルグループのセンターの様な顔立ちだ。
…ドカッ!
彼の、頭にげんこつが飛ぶ。
「イテッ!なにすんだよーー。ジャン~。せっかくかっこよく決まったのに~ぃ」
殴られた頭をさすりながら私の、
後方へと目線をあげている
「ロジャー、気持ち悪い事するな。見ててゾッとした。聞いてて寒気がする。」
私も振り向いてみると
そこには先程、食堂で会った紅眼の男性がいた。
「申し訳ありません。ノックをしたのですが、誰かと話していた様子だったので、勝手入ってきてしまいました。」
私の真後ろにいたのに気づかなかった
気配感じなかった!
そして、近くで見るとやっぱりスラっとしていて身長も、高い。
180センチは超えているだろう。
「申し遅れました。私、王宮の騎士団長のジャスティン・アルテミス。お二人にお仕えする様に仰せつかりました。まだ起きている様でしたのでご挨拶をと、参りました。」
きっとカイトを起こさない様にと、配慮なのだろう。ゆっくり、少し小声で言った。
「そして同じく副隊長のロジャー・ミネルヴァ。よろしくお願い致ます。」
こちらも優雅に礼を深々として言った。
あまりにも美しいすぎる二人に声を無くしてしまう。
この世界の人は品があってイケメンなのか?
顔面偏差値が高すぎるって!
こんな芸能人級、普通に生活していてそうそう出会えるもんでもない。
「母君は、黒髪ではないのですね」
ジャスティンはそう言って私の、ぼさついた枝毛だらけの髪の毛の一束をスルリと手に取った。
ドキッと胸が高鳴る。
なに…この人達、さっきから初対面なのに距離感がおかしい。
そう思いつつも、抵抗しないのは彼らがいわゆるイケメンだからだろう。
そしてあの力強い眼で真っ直ぐ見つめてくるのだ。
「…髪、染めてますし…一応……」
少しだけ茶色に脱色している私。
しばらく美容室にも行けていないので、根元は元の色にはなっているが…。
熱くなる耳が、照れを隠してくれない。
その姿を見てジャスティンはふっと微笑を浮かた
月の光が照らすその姿に、少し気味の悪い美しさも覚えつつ、どうしても見入ってしまう。
「では、元は黒髪なのか。」
表情こそは崩さないものの一層、力強くそう言った。
まあ、純日本人ですしそうなりますが…
「じゃぁ、母君も魔力が強いかもしれないですね。さすが勇者様の親ですし」
金髪を、揺らしながらニコリと嬉しそうに言うロジャーは
横目で寝ているカイトに視線をやりながら口を開く
「この国では、黒というのは魔力が強い者しか使えません。それが生まれつき備わっているとなれば魔力が体内から放出されている証拠…髪のも目もほくろさえもそうなのです。」
そう説明してくれた。
確かに、先程の大広間でも黒色を身につけている人は国王のマント位でしかなかった。
他の人は
金や茶、水色や赤色等の様々な髪の色や服装をしていた。
目の前にいるジャスティンが唯一黒髪。
話に聞く限り、魔力は相当あるのだろう。
「そんなの私にないと思います。魔力なんておとぎ話の中の話ですし。私のいた世界ではそんなのを使っている人は見た事ありません。」
男性二人は顔を見合わせて
不思議そうに表情を浮かべる。
サラリ…パサッ
「魔力の無い国ですか…平和なのでしょうね」
と寂しそうに手に持っていた私の髪の束を、ジャスティンは離して、口をゆっくりと開く
「我々の世界には魔物や魔獣、魔人と呼ばれる魔族がいます。それらから身を守るために我々は遠い昔に魔王と契約し、魔力を得た。」
コツコツッ…
上等な革靴なのだろう。
ベランダの隅に向かうジャスティンの靴の音が広すぎる庭に、響く。
こちらに大きく立派な背中を向け、どんな表情なのだろうと気になる。
「そして、今はこの国の住人、皆、魔術が使えるのです。子供達も遊びの中から学び、成人する頃にはほとんどの人間が使える。ただ…」
くるっと回りこちらも振り向き、少し昔話をしてくれた。
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昔々の話…
人々は魔術も使えず、日々、魔獣や魔人に苛められる毎日でした。
せっかく育てた野菜も踏みつけられ、
川の水は汚く、飲めるものでは無かった程でした。
女は犯され男は奴隷にされるのです。
日々を怯えながら過ごしていたある日
黒髪黒眼の青年が立ち上がりました、
【なぜ親兄弟は魔族にイジメられているのだろう?
なぜ、食べ物も満足に食べられないのだろう?
僕の人生はなんのためにあるの?】
その、疑問からでした。
そうして、人々は青年の後に続き、魔王城へとクワや剣を持ち向かって行くのです。
魔王城では好き勝手やっていた魔王がおりました。
大好きなお酒を浴びる程飲んでいた
門番たちは誰も来た事のないこの城に
まさか人が来るなどと
思ってもおらず、
酔ってぐーぐー居眠りをしておりました。
そのすきに人達は城の中へと侵入、
寝ている魔王の心臓へ剣を突き刺すのでした。
ですが、さすがの魔王
1度心臓を突かれるだけでは死にません。
魔王が繰り出す攻撃はそれはそれは
激しいものでした。
海は二つに割れ、鳴り止まない雷に、
地面は大きく揺れるのです。
1000もいた人は沢山死に、残ったのは黒髪黒眼の青年とその仲間達の5人のみなのです。
魔王がトドメを刺そうと思った時、
青年の持っている剣が光ります。
その剣で魔王の心臓をもう1度一刺しすると、
とうとう魔王は虫の息になりました。
魔王は泣きながら、
どうか助けて欲しい。
魔力もあげるから
魔術を教えるから
殺さないでくれと
お願いするのでした。
心優しい青年はその願いを聞き入れ、魔力を手にするのでした。
何百年とした頃
人間達は魔力も使いこなしておりました。
生活には無くてはならないモノとなっていたのです。
あの頃のひどい扱いが嘘のように平和の世でした。
たくさん食べ、たくさん愛し、
たくさん笑う人たちを見て、
敗北した
魔王は腹が立ちました。
昔の様にいばって暮らせず、
肩身のせまい思いをしていたからです。
あの時、魔力さえ渡さなければ…
あの時、魔術さえ教えなければ…
あの時、負けなければ…
そうだ。魔力を返してもらえば、使えなくなるだろう。
そうすればまた人間達を犯し、
奴隷にできる日が戻ってくるだろう。
魔王の復讐がはじまるのです。
何度も何度も人達に仕掛けるも
その度に黒髪黒眼の人にやられてしまいます。
やられては戦い
殺されては生き返る
そうして魔族と人間の戦いが何度も何度も繰り返されるのです。
………ーーーー
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この話はこの国で語り継がれていると言うジャスティン
話の流れは何となく分かったけど、
なんでそれがうちの子なの…
という気持ちで埋め尽くされる。
怖い思いをさせたくないし、
痛い事をさせたくない。
戦いとなればそうなるだろう。
どこの親もそんな事を
子供にはさせたくないのだろうと思う。
スクッと床に膝を付け
二人は深々と頭をさげる。
「今また、魔王の勢力が大きくなって来ております。…今は何とか我々騎士団で食い止めておりますが…あと数ヶ月持つかどうか…」
と、ジャスティン力強く言った。
そして、胸に当てている手が震えている。
必死なのだろうと思う。
プライドが高そうな彼が…と思うと胸が苦しくなる。
「いいよ。僕が助けてあげる」
ベッドの方からそう聞こえた。
後ろを振り向くとカイトが起き上がっていた。
1度寝たら起きないカイトが
今日に限って何度も起きるのだ。
そして、今の話を聞いていたらしい。
その言葉に
ジャスティンとロジャーは驚いた様に そして、表情は明るくなった。
「…本当ですか!勇者様!」
と膝をついたままカイトを見るジャスティン。
「なんかよく分からないけど、悪いことしてる人がイジメくるんでしょ?ママに
いじめっ子はだめだよ。もし、いじめられるひとがいたら助けてあげてっていわれてるもん。」
と言う。
確かにそう教えてきたけど…
レベルが違うんじゃないかな…。
二人が喜んでいるのが分かるが
「ダメダメダメダメ!カイトにそんな事させられない。無理!絶対ダメ!危なすぎる!遊びじゃないんだよ!ダメダメ」
と猛反対。
すぐにカイトに駈け寄ると抱きしめる。
寝起きの暖かさを肌に感じる。
こんなに可愛い我が子に
そんな危険な事させられない。
ぎゅーと力をいれると、いたいよーと嬉しそうにいうカイト。
「…チッ。本人がやるって言ってんだからいいだろーが。オマケがでしゃばってくんなよ。」
…?
は?誰?今のは
二人に目線を移すと
冷や汗ダラダラのロジャーと。
先程までの品の良さを一切感じられなくなってしまったジャスティン。
頭をワシャワシャと掻きむしり、あーもう辞めだ。やめ。といって丁寧に着ていた制服のえりを緩める。
そして、
「勇者召喚に勝手にくっついて来たくせして、めんどーくせー事をガタガタうるせーんだよ。」
と態度が180度変えてきた。
さっきまでの
イケメン像は崩れ去り、今は野蛮な男でしかない。
「もう、ジャン!我慢してって言ったのに!初日でバラしてどうするんだよ!」
「だってー、こいつ召喚時からずーーーーっとヒスってんだぞ、聞いてるこっちが疲れるわ。」
「だからまずは母親から口説いて上手い事やれって言われてたじゃねーかよ。…あ。やべ。」
言ってはならぬことを言ったのだろう、チラとロジャーはこちらを見てさらに、冷や汗が増す。
あの距離感はそういう事か。
なるほどね。
私が猛反対するのが分かっていた国王は
まず私を口説き落とせばいいと思ったのだろう。
確かにうわーイケメンだ!
うわー美形だ!
と少しドキドキしていたのだけど、
今は二人共、イメージは全然違う。
「おい、ばばあ。うるせぇ事ぬかしてねーで、さっさとガキを勇者にします!って言え。」
と耳をほじりながらいう。
その姿、態度に
そして
ばばあと言うパワーワードを聞いた瞬間に
ブチッと何かが切れた。
いや、キレた。
「絶対やらないから!!!」
と今日一の大声である。
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・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
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