栄えある未来と輝かしい過去に手を振って、堕ちていこう

環希碧位

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栄えある未来と輝かしい過去に手を振って、堕ちていこう

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 ──傷つき倒れ、それでもなお、穢れを知ろうとしない貴方の魂こそ、この祭壇に捧げるに相応しい。
 ──そして存分に思い知るがいい。世界には絶望しかないのだと。


 殺意と憎悪が交錯し、せめぎ合い、嵐となって吹き荒れる。
 正常な時間軸から切り離された混沌の戦場で、今、一つの死闘に終止符が打たれた。

 まさに乾坤一擲、全身全霊を込めて放たれた一撃が、光の矢と化して悪しき魂の鼓動を貫き穿つ。

「が…………ッ!」
 魔術師は声も無く、刃が肉を抉る衝撃に背を仰け反らせながら、呼気と共に大量の血を吐き散らす。
 色素を失った長い髪を赤い華が彩るが、美貌の騎士は気にも留めず、鋭い表情を崩さぬまま、宿敵の最期を見守っていた。

 悠久の時を超え再び憎い男の胸板を貫いた剣は、戦いの最中、酷使によって急速にその奇跡の力を減じつつあったが、それでも最後まで主の期待に応えてくれた。
 そして、恐らく自らの命もそう遠からず燃え尽きるであろう事を感じながらも、剣を握る騎士の心に迷いは無く、ただ、安らぎと大きな達成感に満ちていた。

 ──ああ、やっと……今度こそ終わる事が出来る。

 この世で生きる寄る辺の全てを失ってから幾年月、己から名も誉れも、密やかに抱いた愛すら奪い取った魔術師を屠る事のみを使命として存在してきた彼にとって、迎えたこの瞬間こそ約束された祝福の時であった。

 ──あとはもう何も望むまい。
 ──ただ、この男を地獄へと連れて行けるなら。
 愛しい乙女の面影に祈りと勝利を捧げ、騎士の緊張に引き締められた口元が穏やかな微笑みを形作ろうとした。その時。

「…………ふふふ、やっと……つかまえたぁ……」
 血塗られた唇がそれより早く不穏な気配を伴って、弧を描いた。

「ちょろちょろと逃げ回るからぁ……苦労したんですよぉ……貴方は本当につれないから……だから好きなんですけどね……っくっくっ」
 瀕死の魔術師が大きく腕を広げる。
 ずるずると、自らより深く己の臓腑を抉り傷つけながら、見るものを凍りつかせる歓喜の笑みを浮かべ、驚愕に眼を見開いたまま動けずにいる騎士へと近づき──抱き留める。
 耳朶に感じる熱い吐息に、騎士の背を冷たいものが走り抜けた。

「相変わらず細いなぁ……ちゃあんと食べてます?
 ふふ、でももう良いんですよ……これからはずぅっと一緒にいて、貴方を守ってあげますからね……」

 魔術師の言葉とただならぬ気配に、騎士が身を強張らせたその時。
 突如、バラバラと音を立てながら、紙片が二人を取り囲むように舞い踊った。

「…………!」

 刹那、静けさに包まれていた空間が不吉な鳴動を繰り返し、不浄な気に染まっていく。
 ──何か……常軌を逸した危険が訪れようとしている。
 永劫にも感じられる時の中、数多の戦いに研ぎ澄まされてきた騎士の感覚が、警鐘を鳴らす。だが。
 魔術師が耳元で囁く言葉がこの世ならざるものを呼び寄せる術式であり、紙片が魔力を文字として刻み込まれた魔道書であると気付くまでのほんの数秒。それは、騎士にとって致命的な対処の遅れを生じさせた。

 ──しまった……!

 魔術師を中心に足元を走りぬけた光が複雑な図形を描き、法陣を形成する。
 円環が閉じる。魔力が満ちる。世界が歪み、ここより異なる位相に繋がる。
 悪意と妄執によって成された時空の綻びへと、闇が殺到する。
 確信したはずの勝利が一転、捕らわれの身となった事に焦りを覚えつつも、彼に対処する術は既に無く。

「──さあ、一緒に世界を滅ぼしましょう。私の可愛い騎士殿」

 ふいに、鼻腔をついた腐臭に騎士が柳眉を寄せた次の瞬間、魔術師の身体が勢いよく内側から爆ぜ割れた。
「…………ッ!!!」
 怖気の走るような破裂音の後、血煙と共に魔術師の内から飛び出してきたものは、千切れた肉片と──異形の怪異であった。

 
 絡まり喰い合う大蛇の群れのごとき怪異の端末──赤黒い触手の群れが、一斉に騎士を襲う。

「ぐっ……!」

 汚猥な粘液にまみれ、妖しい光を弾いてのたうつそれは、生理的嫌悪を嫌が応にも呼び起こす耳障りな水音を立てながら、たちまち彼の四肢や胴を束縛し、締め上げる。

 無論、されるがままでいる騎士ではない。
 巻き付いてきた触手を膂力にまかせて引き千切ろうとするが、ぬらぬらと肌をすべる感触は、まるで巨大な舌で舐め上げられているかのような不快感を覚えさせるだけだ。

「くそ……っ」

 不気味な肉鞭がうねり身体を這い回る度、排出される汚液がじっとりと着衣や髪を濡らし、そこかしこから漂うむせかえるような異臭に、騎士の眉根がきつく寄せられる。質量すら感じられる淀んだ空気の息苦しさに呼吸すらままならず、碧眼にうっすらと涙が浮かんできた。

 せめてこの身が万全であったならば、と歯噛みせずにはいられない。

 先刻までの激戦に次ぐ激戦で、彼の魔力はとうに枯渇していた。
 敵を捉えた一撃は、残された手段と力の全てをかけたものだったのだ。まさか相手がこれほどの召喚魔術を行える程の余力を残していたとは。彼にとっては完全に計算外の事態であり、今となっては己の浅はかな思考を呪うしかない。

 ──そうだ、相手はどこまでも人の期待や希望を欺き裏切り続ける事をその生甲斐としてきた外道だったではないか。だからこそ、自分はその絶対的とも思える不条理を覆しうる奇跡を求め、戦ってきたのではないか。

 焦燥を隠せないでいる騎士を嘲うかのように、奇妙な弾力と伸縮性に満ちたそれは、いよいよ攻撃的な意思を持って彼の身体に絡みつき、あらゆる抵抗を封じようとする。
 刹那、腕に絡み付いていた触手がその力を増した。

「あ…………っ」

 そして呆気なく、未だ奇跡的に得物を握ったままでいた騎士の利き腕をへし折った。

「…………!!!」

 一瞬の間をおいて、脳髄へと駆け上がる灼熱のような痛みが、彼の思考を破壊する。崩れた理性の防壁の隙間から、魔術師の高笑いが聞こえた気がした。
 握力を失った指先から、するりと剣が滑り落ちる。鋼の輝きは程なく、際限なく増殖する腐肉の波間に消え、見えなくなってしまう。
 だが、彼にとって真の絶望が始まるのはこれからだった。

「………………!」

 痛覚に支配されていたはずの思考を唐突に別の感覚が襲った。砕かれ、押しつぶされ、頂点を極めた痛みの奔流が過ぎ去った後、その衝撃を埋め合わせるかのように、たとえようもない安らぎが身体を包み込んでいく。

「……あ……ああ……」

 未知の感覚だった。今もこの身は異界の暴威に翻弄されているというのに、まるで母の胎内に抱かれているかのごとき絶対的な安心感が、勝手に強張っていた四肢を弛緩させ、唇から恍惚の溜息を紡ぎだす。
 劇的な変化は、いきなり身体と思考が作りかえられてしまったかのではないかと思えるほどだった。
 自分は一体、どうなってしまったのか。
 理由の無い変化は何より恐ろしい事だった。怒りによって支えられていた戦意が、総倍する安寧と癒しの感覚によって塗りつぶされていく。

 弱っていたとはいえ、それでもヒトという種を超越した身である。既にへし折られた腕は機能を取り戻しつつあったのだが、もはや己を犯す異形に抗おうとする気持ちは騎士の中に存在しえなかった。

 魔術師の残骸を苗床に、次から次へと、触手が腐肉の雪崩となって押し寄せてくる。
 それまで衣服に粘液を塗り込むだけに留まっていた触手が、蠢きながら騎士の身体をくまなく蹂躙する。細く枝分かれした肉の穂先が襟元や袖口から侵入し、到るところを汚し、犯し尽くす。

「ひあ……っ!」

 脚を這い登ってきたとりわけ太い肉鞭が、太腿の間を何度も滑り、吸い付き、布地越しに局部を執拗に刺激した。
 手練れの娼婦を思わせる大胆でありながら精緻なその技巧に、たちまち本能から騎士の雄の部分が反応してしまう。
 充血し熱を帯びたそこは、今や官能の発露への期待をはち切れんばかりに膨らませ、女性的な騎士の美貌には不釣り合いな程、勇ましい形をくっきりと浮かび上がらせていた。

 腰から這い上がってくるやるせない疼き。己を責め立てるおぞましい愛撫に、騎士の身体がひきつけを起こしたように痙攣する──嫌悪からではなく、急速に呼び起こされた肉の愉悦によって。


「あっ……んっ、んんっ……」

 鼻を抜ける吐息は危うい熱を帯び、頭蓋に反響する声は媚びるように甘く掠れている。
「……んあっ、ああ……あ……」
 苦痛と快楽がない交ぜになった切ない感覚に、均整のとれた長身が身悶えする。
 焦らすように会陰部を撫で擦る蛇の動きがもどかしい。自分から少しでも媚態を引きそうと楽しんでいるのだろう。あの牢獄での晩のように──

「……!? 」

 悩ましい呼気が漏れた間隙を縫い、薄く開いた朱唇が触手によって無理矢理こじ開けられる。
 そして息を吐く間もなく、無遠慮な肉の杭がねじ込まれた。

「ひっ……んぐッ、んんんッ!!……」
 思わず激しく咳き込むが、触手を押し出すには到らず、弾力に富んだ先端が喉の奥に当たり、撫で付けられる。
 舌に感じるおぞましい感触、鼻腔を突く刺激臭が、かつて刻み付けられた屈辱の記憶と怪異に玩弄される今の自分を重ね合わせ──被虐の興奮が隷従の快感となって、騎士の腰を浮き立たせた。

「ん────ッ!!!」

 口腔内を犯していた肉棒が一瞬、膨れ上がったかと思うと、勢い良く汚液を食道へと流し込む。その衝撃に、既に濡れて張りついた布地越しにも露わだった騎士の下肢の強張りもまた、白い蜜を噴き上げた。
 大量に撒き散らされたそれは、触手が吐き出した粘液と交じり合い、じっとりと張りつく布地の重さを増させる事で、更に騎士を惨めに打ちのめす。

 だが、そんな恥辱でさえ今や肉悦を彩るスパイスでしかない。
 むしろ、そこで得られた絶対的な解放感は、騎士に残った最後の理性を消し飛ばすには十分過ぎる程だった。触手が吐き出した淫液を飲み干すと、腹の内で熱が弾け、えも言われぬ甘い痺れが全身へ伝播していく。
 知らず、騎士は肉の波間でその長身痩躯をくねらせ、肉の歓びに打ち震える。

「ふぁ……あァァ……」

 狂暴なまでの愉悦に全身を支配された騎士の唇は、言葉を紡ぐのを忘れてしまったかのように、ただ艶やかな喘ぎ声と、汚液の残滓を漏らすばかり。
 腐肉の海のおぞましい意志は、すっかり従順になった獲物を尚も深く堕とそうと、騎士の身体を弄ぶ。
 絶え間なく迸る快感が引き締まった太腿を小刻みに震えさせ、きつく閉じられた瞳からは悦びの涙が零れ落ちた。

「ああーッ!んんッ!……ああ……ン…ア…い……イッ!!」

 触手が抜き去られた唇からは堪えようのない歓喜の声が呪われた歌となって紡ぎ出され、腰は達した後も落ち着きを取り戻せずに、自ら蛇の群れへと擦り付けるように揺らめいてしまう。
 淫液に塗れた恥知らずな騎士の肉棒は、次の解放を待ち望んで既に熱く張りつめている。濡れた肉鞭の表面を擦る度、腰の奥が痺れて蕩けそうになる。

 ──あれほど不快でたまらなかったはずの触手の動きが、粘液まみれの感触が心地良くて堪らない。

 今や騎士の全身が性感帯だった。時間の経過と共にどうしようもなく肌が敏感になっていくにつれ、思考には靄がかかったように意識が遠くなっていく。
 異界の毒に侵された彼の頭脳はもはや明確な道筋を持たず、理性と良心が麻痺したその精神が望むのは、ただ純粋な肉の欲求だけだった。

「………………」

 ただ己の中に芽吹いた欲望の昇華だけを追い求め、絶頂の余韻に焦点の定まらない瞳が、ぼんやりと辺りを見回す。
 術者による制御を失った召喚により、時空に空けられた穴からは今も留まる事無く異界の生物が這い出してきており、淀んだ瘴気に覆われた一帯は不毛の大地と化していた。常人であれば一歩足を踏み入れただけで気がふれてしまうだろう。

 だったら、その汚染の中心に在って、異界の住人と戯れる自分は何なのか。
 たゆたう意識が抱いた疑問に応える者はいない。
 だが精彩を欠いたその思考にも、答の輪郭は漠然と掴めた気がした。

 ──別に──この身の慰めてくれるものさえあれば、それでいい。

 ごく自然に導き出された言葉こそが、誇り高い騎士だった青年がそれまで居た世界に別離を告げた証であり、彼の疑問に対する何より雄弁な回答であった。
 ……この瞬間、貶められ蔑まれてなお、ヒトとそのヒトが生きる世界を愛していた騎士の高貴な魂は砕け堕ちたのだった。

 後に遺されたのは、快楽にのみ反応する美しい抜け殻のような肉体だけ。
 だが、絡みつく触手は、むしろ白痴の青年の身体を祝福し、愛おしむように彼が望むものを与え続ける。

「はァ……ァああンっ……」

 柔肌の上を絡み合い、引きずりあい、踊り狂う淫靡な蛇が、無用となった贄の衣服を内から破り、剥ぎ捨てる。
 赤黒いキャンバスの上に、白い裸身が鮮やかに浮かび上がった。
 守るものが何も無くなった青年の瑞々しい身体を、一片の慈悲も無く、それでいてこれ以上ない熱意と愛情を感じさせる動きで、触手が責め立てる。

「アァ……やだ……な、これ……す、すごぃい……ッ!」

 官能に狂った青年の美貌が、無邪気でありながら途方も無く淫靡な艶笑に包まれた。
 清廉な騎士装束の下に隠されていた獣欲の塊。綺麗に剃毛され産毛すら見当たらない滑らかな下肢の中心で硬く屹立している雄の証を、盛んに蠢く触手が吸い付き、扱き上げる。
 
 加えて、白い胸元を飾る薔薇色の突起にも肉の穂先が集中し、乳を求める幼子のように、柔らかな先端から媚毒を塗り込めるようにして、そこを食み啜る。
 粘液に含まれる淫薬の効果は遺憾なく発揮され、男のものとは思えないほど固く尖り、恥ずかしいほど大きく膨らんだ先端から、じわじわととろ火で炙るような、それでいて深い官能が、神経を伝って下肢へと降りていく。

 堪えようもない更なる堕落への誘いに、青年の腰が歓びに踊った。

 この底意地の悪い二点攻めに、美しい虜囚の身体はすぐさま屈服を示し、虜とならざるを得なかった。
 腹につきそうなほど反り返り、狂おしいほどの快感に悦び脈打つ先端からは、絶え間なく先走りの雫が吐き出される。

「ふぁ……あっ……あっ、あっ……ひぅっ……!」

 前への刺激に夢中になっていた青年の背面から、別の触手の群れが新たな標的を求めてそこへと食らいついた。
 白い双丘の狭間に隠されながら、青年が愉悦に震える度、物欲しげにひくついていた小さな窄まり。青年の身体で最も敏感で、最も罪深い法悦を生み出す秘所へと。

 先端が窄まりを撫でると、長身痩躯がびくりと大きく跳ね上がり、悲鳴とも歓声ともつかない声が青年の唇を吐く。媚びるように青年の腰が前後に揺らめいた。
 そんな獲物の憐れな様子を楽しむかのように、意志持つそれは、しばしの間、ちょろちょろと焦らすようにそこを舐め上げた後、その狂暴な質量を一息に突きこんだ。

「…………ッ!」

 それだけに留まらず、後ろの口から体内へ割り入った触手は、中をのたうち刷り上げながら、きつく閉じられた青年の身体を押し広げ、幾度となく抽挿を繰り返す。

「ああああァ……!」

 初心であれば、失神しかねない衝撃で腹の中を犯されながら、青年の顔に浮かんだのは、喜悦の表情だった。

 遠い昔、既に魔術師の手によって男を喜ばせる術を無理矢理施された彼の不浄の穴は、女の密壺と同じか、あるいはそれ以上の快感を齎す禁忌の場所だった。
 ずぶずぶと自らの汚液と青年の体液を粟立たせながら、肉鞭が理性によって封じられてきた彼の欲望を暴き、激しく追い立てる。

「……んうっ!…んあっ…ああっ!……い、イクっ……!また出るぅ……ッ!」

 恥も外聞もない言葉が、だらしがなく開き切った口から吐いて出る。

 自らの言葉に酔ったように、少し前までは凛々しく引き結ばれていたはずの口元からは、正気の彼であれば耳を塞ぎたくなるような、あられもない単語が堰を切ったように次々と飛び出す。
 そしてそれは、堕落しきった己を更に恥辱の底へと深く突き落とし、彼の歪んだ快感を更に煽るのだった。

「ああっ……そこぉっ!
 もっと……ッ……もっと突いて……ッ!擦り上げてぇ……!」
 
 髪を振り乱し、涙を流して青年が自らを犯す肉塊に乞う。

 爪先から髪の一本一本に到るまで、嬲られ穢され、辱められているというのに、脳髄からはおよそヒトの倫理観からはかけ離れた昏い愉悦が湧き上がり、凶悪な快楽が全身に伝播していく。

 触手が跳ね回る音に、哀れな啜り泣きの声が交じる。

 自分は今嬉しいのか、悲しいのか、もうそれすら判断出来ない興奮に焼き切れた青年の思考を占める感覚はただ一つ。

──気持ちいい。
──気持ちいい。
──気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいいいいいいいいいいいいいいいいいィィああああああああああああああああああァあッ!!!

 快楽の奔流に意識が寸断される。

「いぁ……あ、ああ、ああああああッ!!!」

 触手の波に漂いながら、青年は絶頂を迎えた。

 ──そしてそこからまた時間を置かず、絶頂に到るだろう。
 再び。三度。何度でも。
 彼が壊れようと、世界が果てようと、悪魔が彼との交合に飽きるまで。宇宙の中心でまどろむ創造主がその目を開く時まで──  

 かくして、魔術師の望みのまま、彼の世界は永遠に閉ざされたのだった。 
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