3 / 7
異世界転移・アルフェナ王国編
2話
しおりを挟む何故私の名前を知っていたのか。メアリーに恐る恐る聞いてみれば、なんとも呆気なく答えが示された。
「ステータス?」
「はい。基本的に他人が見れるのは名前の欄ではありますが、こちらの世界ではステータス、というものが存在します。私達使用人はまず、主人との円滑な主従関係の為、まずそのステータスからお名前を拝見させていただくのが主流なのです」
「そ、そうだったんですか…」
それは変なことを勘繰ってしまったと、メアリーが入れてくれたお茶を啜りながら申し訳なく思う。
なるほど…ステータス。確か今は遠き高校時代、クラスの男子たちが教室でそんなことをゲーム機片手に話していた気がする。
「しかし、この世界の事を知らないリン様にはひと言申し上げるべきでした。…申し訳ございません」
「えっ!?そんな、頭を上げてください!それがこの世界の常識なんですよね?それなら仕方ないですよ!」
深々と頭を下げたメアリーに、慌てて頭を上げるようお願いをする。
すると、メアリーはやはり頬を赤く高揚させたままひと言「感謝致します」と言って頭を元の位置に戻した。
私はほっと息を吐く。
「…それでは、ステータスの話にお話を戻させていただきます。そもステータスとは、この世界にいる限り誰もが持っているもの。所謂、身分証のようなものでございます。
先ほども申しました通り、他人が覗き見ることができるのはお名前のみ。ステータスの持ち主よりも優れた魔法使いの方はまた別になりますが、基本的に彼らが勝手に他人のステータスを見ることはありません。また、優れた魔法使いならばステータスの偽造も可能ですが…、今はその話は良いかと。
己が見ることができるのは、自分自身のステータス全てとなっております。名前、身長、年齢、体重、家族構成なども、全て。
ですが、その中で特に重要なものが、天に御坐す女神様が与えられし、【ジョブ】と【スキル】です。
私達はその【ジョブ】に従って職につき、【スキル】を磨きます。
現に私の【ジョブ】は使用人でございますし」
メアリーはそう説明をしてから、失礼します、と言って空になりかけていた私のカップに紅茶を注いだ。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ。仕事ですので…」
何がスイッチだったのか、また急に照れるメアリーと、数秒の沈黙。沈黙は、メアリーの咳払いで破られた。
「その、ですからリン様もステータスをご覧になって、【ジョブ】と【スキル】をご確認なさるのが良いかと…」
「え?えぇ、わかりました。…えっと、その、ステータスの開き方って…」
「えっ、あ、失礼致しました!1番簡単な方法は、『ステータスオープン』と叫ぶ事にございます!しかし、それでは周りの人間にもステータスが筒抜けになってしまいますので…、ご確認いただくときは、わ、私は退室したします!」
「あ、ありがとうございますっ、その、ごめんなさい色々と…」
「いえ、そんな事は…!」
また、沈黙。今度は私の言葉で破られた。
「そ、その…それじゃあ、後は寝るだけだから…」
「か、かしこまりました。それでは、私はこれで」
また綺麗な一礼を見せるメアリーが退室したのを、何故かどこか気恥ずかしい思いで見送って、私は「『ステータスオープン』!」と叫んでみた。
すると、薄い緑色の液晶のようなものが目の前に現れる。何となく、スマホのような感覚でスライドしてみると、確かにそこには様々な個人情報が羅列していて。私はぼんやりと、もしこれが流出したら、営業会社は大打撃だろうなぁ、なんて思いながら、メアリーの言っていた【ジョブ】と【スキル】の欄を探す。もしかしたら、こんな身体になってしまった理由がわかるかもしれない、なんて少し期待しながら。
「あっ、あったあった。…………、っ、はっ!?なにこれ…!?」
しかしそこにあったのは、信じられない、というか信じたくない文字の羅列であった。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私の愛する夫たちへ
エトカ
恋愛
日高真希(ひだかまき)は、両親の墓参りの帰りに見知らぬ世界に迷い込んでしまう。そこは女児ばかりが命を落とす病が蔓延する世界だった。そのため男女の比率は崩壊し、生き残った女性たちは複数の夫を持たねばならなかった。真希は一妻多夫制度に戸惑いを隠せない。そんな彼女が男たちに愛され、幸せになっていく物語。
*Rシーンは予告なく入ります。
よろしくお願いします!
6年間姿を消していたら、ヤンデレ幼馴染達からの愛情が限界突破していたようです~聖女は監禁・心中ルートを回避したい~
皇 翼
恋愛
グレシュタット王国の第一王女にして、この世界の聖女に選定されたロザリア=テンペラスト。昔から魔法とも魔術とも異なる不思議な力を持っていた彼女は初潮を迎えた12歳のある日、とある未来を視る。
それは、彼女の18歳の誕生日を祝う夜会にて。襲撃を受け、そのまま死亡する。そしてその『死』が原因でグレシュタットとガリレアン、コルレア3国間で争いの火種が生まれ、戦争に発展する――という恐ろしいものだった。
それらを視たロザリアは幼い身で決意することになる。自分の未来の死を回避するため、そしてついでに3国で勃発する戦争を阻止するため、行動することを。
「お父様、私は明日死にます!」
「ロザリア!!?」
しかしその選択は別の意味で地獄を産み出していた。ヤンデレ地獄を作り出していたのだ。後々後悔するとも知らず、彼女は自分の道を歩み続ける。
異世界転生先で溺愛されてます!
目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。
・男性のみ美醜逆転した世界
・一妻多夫制
・一応R指定にしてます
⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません
タグは追加していきます。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる