じゃあパパでいいよ。

吉井春樹

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67だめなんだよ。

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以前、2歳のムスメと

自宅で二人きりのお留守番してたときのこと。



(あとあと、ただの食べ過ぎと判明したのですがw)

具合が悪くなって蒼白な表情だったので

しばらく抱っこしたまま、

寝かせつけようとしてたんです。


でも、

なんだかおさまりが悪いみたいで

落ちつかなくてモゾモゾしていて

気持ち悪かったみたいなんです。



(あんまり気持ちいい話題じゃなくてすみません)


そうして、

「だいじょうぶ?」

ときいてみると

「・・・うん」

と消え入るような声でムスメ。


これは、

だいじょうぶじゃないときのだいじょうぶ、

だと思ったので


「吐きそうなの?」

と、きくと

「吐かないよ」

と、ムスメは即答。


なんどか聞いても

こたえは同じ。


それでふっと

考えをきりかえて

「吐いてもだいじょうぶよ」

っていうと、

「吐いたらダメなんだよ。」

と応えるんです。


それで

はっと気づいて

「気持ち悪いときは

 ちゃんと

 そのまま出していいんだよ」

 ちゃんと出しなさい」

と伝えました。



すると・・・。


・・・おもいきりすっきり、です。



====================

あたりまでもくりかえし、
いいよ、と伝えることの大切。

====================

ふだんの食事のときや
お菓子を食べるときなどに
自分で口に入れて、
そのまま咀嚼して飲み込めたときに、
自然と毎回のように誉めていたんです。

だから、本人的にも、
口の中に入れたものを出さずに飲み込む=いいこと

っていう感覚というのか、
ムスメの中での価値観があったのだと。

それを、ケースバイケースで
必ずしもそればかりがいいことではない、
という選択肢がまだなくて
どれだけ気持ち悪くても
口の中にあるものを飲み込んだら、
誉めてもらえる、と信じて、
きっと、ガマンしてたんだと思うんです。

ずいぶん言葉がわかりはじめたからこそ、
よけいに、自分の中でいろんな価値観が
芽生えつつあるんだなあ、と実感しました。

それと同時に、いつのまにか、
選択肢を狭めてしまうケースが
子どもの場合には本当にとくに、
たくさんあるということを
アタマではわかってたつもりなものの
改めて、深く気づいたのでした。


ほんとうは、苦しくてたまらないのに
体調の悪い2歳の子どもが
誉められたい一心で、
懸命にガマンをしてることを
想像するだけでも胸が締め付けられます。

子どもってやっぱり、
素直だし、健気。
オトナから、誉めてもらえたこと、
よしよし、ってしてもらえたこと、
親が喜んでくれたこと、笑ってくれたこと、
その笑顔をみたくて、
そのよしよしがほしくて、
何回でも健気に、
どんな場面でも素直に、
たったひとつの正解を
求めにいくものなのですね。

それって、ほんとに怖い。
たったひとつしか
正解がないとしたら
してはダメなことだらけで
しかも自分で選ぶ心地もなくて。


ある意味で、もちろんそれって
すごく素敵なことだけど、
「こうすること”だけが”いいこと」
「こうするのは”絶対に”よくないこと」
っていう、偏った、断定的な選択肢ではなくて、

もっと、そのときどきの
心境とか、体調とか、環境とか、
そういうものに、ちょうどよく合わせた、
自分のためにも、まわりのためにも、
なるような、そんな余白のある答えを出してもらえるように、

「◯◯してもいいんだよ」、
「◯◯できなくてもだいじょうぶだよ」
っていう言葉を伝えて、
そのたびに、子どもの選ぶ道を、
一本だけにするのではなくて、
子どもの中でいつのまにか通行止めにしてる
別の道の封鎖を解いてあげられると、
そして、その別の道の先にちゃんとある、
喜びや幸せを、見せてあげられたらな、
開放してあげられたらな、と思うのでした。



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子育て中のママはもちろん、
仕事や恋愛で、いつもいつも、
がんばっている女性へのささやかなエール。
ちょっとほっこり、ちょっと幸せになる
小さな、小さな、きっかけになればいいなと
書き残してきたメッセージです。

【 絵本ひろば 】にて公開中
・「ママに早く会いたくて」(第10回絵本大賞・読者賞受賞」
・「ぼくはお金くん」
●ホームページで「フォト エッセイ」作品公開中
 http://haruki-yoshii.com 
●Twitter/https://twitter.com/harukiyoshii

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