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歌の無い世界

02(露出・自慰・顔射)

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「半裸」――「半分が裸」と言われて想像する姿は「上半身が裸」だろう。当然だ。

 しかし、

「え? な……? ……ええ?」

 大きく見張られた海人の目に映っていた青年の格好は「下半身が裸」だった。

「は? え? ええ?」と驚きが止まらない海人を

「リアクションがオカシイぞ」

 と悠二が笑う。

「いえーいッ! とか、ひゅーひゅーッ! じゃねえの? 声出すんなら」

「実際に見てみたら海人の想像とは違ってたか? うちの町には路上ミュージシャンなんか居なかったからな。生の迫力には圧倒されるものがあるよな」

 本音だろうか。それともフォローだろうか。英太は理解を示してくれた。

 がその理解は誤解だ。悠二も英太も海人が何に対して驚いているのか全く解ってはいないようだった。

「あのヒト……ちんこ丸出しなんだけど?」

 小声で海人は囁いた。

「当たり前だろ?」

「路上ミュージシャンだしな」

 二人は普通の音量で返してくる。

 当たり前? 路上ミュージシャンだし? 意味が分からない。

「は、犯罪じゃないのか?」

「ええと……無許可だと道交法違反にはなるんだったかな。厳密に言うと」

「テキトウな路上でやってると警察に怒られて帰らされるとか聞くけどな。この駅前広場は此処からプロになったヤツもいる路上ミュージシャンの聖地だからよ。警察も見逃してくれてんじゃねえの?」

「いや。普通に許可を取ってやってるんだろう」

 英太と悠二が丁寧に説明をしてくれたが、

「そうじゃなくて。その……猥褻物陳列罪だか公然猥褻だかそういう」

 海人には理解が出来なかった。納得がいかない。

「わいせつぶつちんれつ? ちんこだけにか? 二文字しか合ってねえぞ?」

「こーぜんわいせつ? バンド名か? 知らないな」

 悠二だけならまだしも英太までもがそんな事を言う。

 知識が足りないわけでも冗談を言っているわけでもなさそうなのが本当に怖い。

 なんだ? なんだ? なんなんだ?

「いや。あの。なんて言えば良いんだ……」

「おいおいおい。何なんだよ? さっきっからオカシイぞ? 海人」

「大丈夫か? 初めて見る路上ミュージシャンに感激し過ぎてるのか?」

 会話が全く噛み合わない。

「オカシイ」も「大丈夫か?」も海人が言いたい台詞だった。

「…………」

 口は開けども声が出ない。海人が次の言葉を探しているうちに、

「お。次の曲が始まるっぽいぞ。良かったな。終わるとこじゃなくて」

「ああ。ちょうど曲の合間だったみたいだな」

 悠二と英太が海人の背中を軽く叩いた。

 急に背中を叩かれた海人は人込みの最前列から更に半歩、前に出てしまった。

「お?」

 と「半裸」の青年が海人に気付く。

「あ。いや。あの」

 おどおどと呟いた海人と目を合わせた青年はへへッと人懐っこい笑みを浮かべた。

「中学生?」

 青年が海人に尋ねた。海人は答える。

「ちゅ、中学校はこないだ卒業して。高校生になります」

「そっか。おめでとう」

 爽やかな笑顔で青年が言ってくれた。下半身は丸出しのまま。

「あ。ど、どうも」と頭を下げると青年の下半身が視界の中心に飛び込んでくる。

 ……堂々と他人様に晒しているだけあってか、なかなかにご立派なモノをお持ちでいらっしゃる……。

「良いね。若いね。初々しいな」

 青年は言ってくれたが海人の精神的な年齢は前世の三十歳プラス今世の十五歳だ。

 どうみても二十代――前半だろうか中頃かもしれないがアラサーには届いていないように見える青年の方が若々しかった。眩しかった。

「じゃあ今日は少年の中学校卒業と高校入学をお祝いして特別に」

 青年が言うと、

「きゃーッ!」

「いいなあ。おめでとーッ!」

「おおー。ラッキーだな。高校で自慢してやれ」

 人集りが一斉に悲鳴を上げた。海人は勿論、英太も悠二も知らないみたいだったが実は随分と人気のある青年だったようだ。

 知る人ぞ知るとか静かなブームってヤツなのか?

「少年。ちょっとこっちに来てくれるか?」

「え? あの……え?」

 海人は戸惑い、英太や悠二に視線を送って助けを求めたが悠二はニヤニヤと笑い、英太も「行って来い」とばかりに深く頷くだけだった。

「少年。名前を聞いても良いかな? 呼ばれてるあだ名とかでも良い」

 青年の隣に立たされた海人は簡単なインタビューを受ける。

「あ、えっと。海人です」

 二十も三十も超える数の目が海人に向けられていた。

 少なくとも海人が感じるにはその目の殆どが好意的で「いいなあ」とか「うらやましいなあ」程度はあっても度が過ぎる妬み嫉みは無いようだった。

 内心、海人はほっとしてしまう。

 理不尽な嫉妬から青年のファンに刺されるような事は無さそうだ。

「カイトか。良い名前だな。じゃあ。カイト。今日は一曲、カイトの為に歌うよ」

「あ、ど、どうも。ありがとうございます」

 爽やかな笑顔が彼の魅力を二割増しにしている可能性もあるが、青年はなかなかのイケメンだった。

 とは言えその顔だけでこれだけの人を集める事は出来ないだろう。

 この青年はきっと歌が上手いのだ。

 海人は純粋に彼の生歌を聞きたいと思った。

「よろしくお願いします」

 頭を下げる。海人の視界に忘れていた青年の股間が入り込む。生の股間だ。

「……は?」

 気の所為だろうか。……なんか、おっきくなってないか……?

 いやいや。そんな。まさか。と海人が思っている間に青年の股の間にぶら下がっていたモノが、ぐぐぐ……と前を向いて、ぐぐぐぐぐ……と上を向いた。

 青年は猛り立った自身の逸物を握りしめると、

「カイト」

 海人の名前を呼んだ。

「え?」と海人が驚きの声を漏らす間も無く、

「カイト。カイト。カイト……」

 青年は海人の名前を連呼する。

 はあ、はあ、と熱い吐息混じりだ。

 青年は海人の名前を呼びながら逸物を握る手をゆっくりと上下させていた。

 海人の目を真っ直ぐに見詰めてくる青年の目は艶っぽく濡れていた。

「カイト……」

 舌舐めずりをする。濡らされた唇がいやらしく輝く。

「……かわいいな。カイト。嫌か? カワイイだなんて言われるのは。でもかわいいよ。大きな目。小さな鼻。柔らかそうなほっぺ。唇。かわいいよ。カイト。カイト」

 言いながら青年は逸物をしごく。リズミカルにシュッシュッシュッシュッ……。

「すぐにカッコよくなっちまうんだろうな。カイト。かわいいカイト。今、俺だけのカイト。カイト。純朴なカイト。純粋なカイト。天使のようなカイト」

「…………」

 蛇に睨まれた蛙のように海人はその場に立ち尽くしていた。

 海人の顔を見詰めながら青年は明らかに自慰行為をしていた。

 もっと言えば海人の事をオカズにして青年はシコっていた。

 オナニーをしていた。

 ゴシゴシとちんこをしごいていた。

 ……変態だ。

 逃げるべきだ。

 海人は思った。しかし。体が動かない。

「かわいいカイト。嗚呼。天使のようなカイト。お前を汚してしまいたい。何処にも行けないように。俺色に染めてやりたい。カイト。お前に俺の精液をぶっかけたい。柔らかいほっぺに俺の汚らしいチンポを擦り付けたい。唇を押し割ってその口の中に入り込みたい。吸ってくれ。舐めてくれ。噛んでくれ。カイト。カイト。カイト」

 青年は海人を見詰めながら、海人の事だけをその瞳に映したまま自身の逸物を擦り上げていた。

 逸物の先端からは透明な液が溢れ出ていた。

 その液が青年の手を濡らし、濡れた手で擦られた青年の逸物全体がてらてらと光り輝いていた。

 ……ごくり。海人は唾を飲み下す。

 胸の鼓動がうるさく聞こえる。息が苦しくなってきた。

 その感情は恐怖ではなかった。

 これは……感動……なのか?

 胸が熱い。顔も熱い。頭も熱くなってきた。

 ぼおっとしてくる。

「カイト。カイト。カイト」

 青年の声が聞こえる。股間に置いた手を激しく上下に動かす青年の姿が見える。

 でも。何も考えられなくなってくる。

 前世の記憶を残している海人の魂は「逃げろ!」と叫んでいた。

 だけど。今世を生きる海人の脳みそは青年の「歌」に感動してしまっていた。

 青年は額に汗を浮かばせながら一生懸命に逸物をしごいていた。そして、

「カイト。カイト。カイト……――カイトぉぉぉぉぉおおおッ!」

 力強く熱く叫びながら青年は射精した。立派な逸物の先端から大量の白濁液が勢い良く噴き出された。青年の精液が真っ昼間の駅前広場で大きな放物線を描いた。

 ……前世では決して見られなかったであろう光景だった。

 見上げ、見惚れた海人の顔に――頬に、鼻に、唇に、青年の精液が降り掛かる。

 ……生臭い。

 青年の精液はどろりと重たい感触を残しながら海人のあごを伝って地面に落ちた。

 ――途端、

「きゃーッ!」

「いえーいッ!!」

「サイコーッ、サイコーッ、サイコーッ!!!」

 海人の耳に周囲の人間の声が聞こえ始めた。

 海人と青年の二人だけだった世界にヒビが入る。壊される。

 現実が押し寄せてくる。

「俺……」

 海人は自然と口を開いていた。

「こんな大勢の人間に見られてる中、見知らぬ兄チャンに顔射されたのか……?」

 さー……っと引くかと思われた海人の血の気は逆に、かーっと高まっていた。

 いつからだろうか。いつの間にか。気が付けば海人の股間は自己最大限にまで強く硬く大きく勃起していた。

 今にもはち切れそうだった。


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