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妹が織田信長だった件。(5/5)
しおりを挟む理解が出来ないと言えば、その後の妹――信長の事もそうだった。
流石は「織田信長」なのか。妹は一連のイジワルの黒幕で主犯だった明智光秀ことアーチャンと今も仲良く遊んでいた。
「器が大きいのか、それとも何も考えていないウツケなのか」
更にはイジワルがぱたりと止んだ事から信長が「すごい。すごい。おにいちゃんはすごい」と言い出したばかりか、どの面を下げて言っているのか光秀まで「本当に。お兄さんはすごいです」と妹に追従してくれやがったおかげで周囲に変な伝わり方をしてしまい、今やスズキリョウスケ・ベイカーは相手の本質を見抜く目を持っているだの、実は的中率の物凄く高い占いの能力を前世から受け継いでいて、相手の名前を聞いただけでその全てを見通すだのといった厄介なデマが流れてしまっていた。
「ったく。逆だよ。逆。凄いのは俺じゃなくて『織田信長』とか『明智光秀』の方だから。超有名人の信長と光秀の関係性なんか『記憶』さえあれば一般常識だから」
ごく普通の「ジャン・カーソン」とか「上野ヨウスケ」の名前を聞かされても何をした人間かなんざ1ミリも分からねえっての。本質も未来も知らねえよ。
ただのパン屋に「占ってください」なんて来るんじゃねえよ。もう。
親がやんわりと断っても埒が明かず、俺本人の口から「すみません。出来ません。その噂は嘘なんです」と言ってきっぱりと断る為だけに、俺は台所の隅でやっていた野菜の皮剥きを店内の隅でやらされるようになっていた。
もう。いやになる。
今日も今日とて、
「ごめんください」
家族連れと見られる三名が店に入ってきた。大人の男女と男の子だ。
広くもない店内を見回すその視線はパンではなくて人を探しているようだった。
「はぁ……またか」
こっそりと溜め息を吐いた俺の存在に気が付いて大人の男性がやってきた。
「はじめまして。今度、こちらの斜向いの空き地に家を建てまして、引っ越してくる予定のアロンオコナー・クラークです。これから宜しくお願いします」
斜向いの空き地? 一連の現場となった空き地に新しく家が建つのか。
うん。これは良い事だ。あんな変な思い出の場所は無くなってしまってよろしい。クラークさん一家には感謝だ。
「スズキリョウスケ・ベイカーです。こちらこそ宜しくお願いします」
俺は差し出されていたアロンオコナーさんの手を握って大きく振った。
「アロンオコナーの妻のノンナマスロフ・クラークです。宜しくお願いします」
大人の女性も頭を下げる。
そして最後に男の子がにっこりと笑った。
「息子のジャンヌダルク・クラークです。よろしくお願いします」
「ジャンヌ・ダルク――!?」
男の子の名前を聞かされて、俺は再び頭を抱えた。
今度は燃やされる方かよ……。
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