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三話前編
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シャーロットは外出時にいつもレイモンドが同行しようとするためカミラ夫妻の食堂に通うのをやめた。ヒノトにしばらくは通えないと伝言を頼むといつでもおいでと返され夫妻の優しさに笑みを浮かべ、立派な男爵夫人になるため頑張ろうとさらに決意を固めていた。
シャーロットは暇な時間は侍女の仕事を学んでいた。
レイモンドより黒髪の侍女は丁重に扱い様子がおかしければ報告するように言われていたためシャーロットの侍女と思われていた。
使用人達は情報共有しているため神出鬼没の挙動不審のなんでも覚えたがりのヒノトとしか話さない無言の黒髪の侍女は有名だった。厨房でシャーロットとヒノトの皮を剥く包丁捌きを料理長が見ていた。
「皮むき以外もやるか?」
「シャーリーやる?」
シャーロットは頷いた。
シャーロットはまな板の上の魚を見た。真っ青になり、瞳が潤み、震える手で包丁を握っていた。
「やめるか」
料理長の言葉にシャーロットは首を横に振った。ポロポロと泣きながら魚と見つめ合い包丁を持つシャーロットに困った料理人はレイモンドを呼びに行った。ヒノトはシャーロットに危険がなければ止めなかった。
レイモンドが厨房に駆け込み、目を丸くした。
「何して、いいから。魚は。危ないから、震えながら刃物を持たないで。お願いだから、それ貸して」
レイモンドがシャーロットから包丁を力ずくで取り上げた。あまりの早さにヒノトが止めに入る暇がなかった。
「お魚、役立たず」
「いくよ。」
レイモンドに手を引かれて嵐のように去っていく姿を料理長達は無言で見送った。料理長は今後は皮むきだけを任せて、魚は触らせないことを決めた。ヒノトが見事に捌いた魚を見て、公爵家の侍従の有能さに感心していた。
その頃シャーロットは離れでレイモンドに宥められていた。
****
翌日シャーロットは料理長に震えながら頭を下げた。料理長は話しかけられて驚いていた。
「昨日は、申しわけ、ありませんでした」
「気にしなくていいから」
「ごめんなさい」
「シャーリー、もういいって。邪魔になるから謝るの終わりだよ」
シャーロットは迷惑をかけたくないのでヒノトに腕を引かれて料理長から離れた。納品された食材を見つけて運ぶのを手伝うために近づいた。
シャーロットは食材の納品者に目を丸くした。
「シャーリー?」
親方と一緒に仕入れに行く店主の一人だった。店主をよく知っていたので納品書を無言で手に取り、じっと見て顔をあげた。
「おじさん、計算、違ってるよ。あと、・・・この品質にしては高い」
納品書を指差しぼそりと言う言葉に男は笑った。
「シャーリーには敵わないな。わからない家からは儲けてたんだがバレたか。他の納品書の計算も見てくれるならまけてやろう」
「うん。見る」
料理長はシャーロットと気難しい男との会話に驚いていた。渡されたペンと書類を持って手直しをするシャーロットの手の早さはいつもの包丁捌きが嘘のようだった。
料理長は納品書の金額が3割も引かれてさらに驚いた。
「おじさん、ここではやめて。」
「シャーリーの頼みなら」
「でも、困ってるなら男爵様に相談して。私は適正価格でのやり取りをしたい。」
「子供は心配しないでいい。ヒノトの言うこと聞けよ。またな」
男を見送りシャーロットは材料を運ぶのを手伝った。料理長の凝視に、怯えたシャーロットをヒノトが背に庇った。
「まさか・・・」
「余計なことは口にしないでください。シャーリー、行こう」
手を引くヒノトに連れられて立ち去るシャーロットの背中を見て料理長が茫然とした。
「嘘だろ・・。あの子が奥様・・?でも皮むきできるって・・・」
レイモンドを男爵様と呼ぶのは男爵邸でシャーロットだけだった。
その日から食材の値段が下がっていた。料理長はぼったくりにあっていたことに気付いていなかった。料理長は厨房に顔を出す、シャーロット達を丁重に扱うようになった。
***
レイモンドは執務室で知人や友人達からの手紙に苦笑していた。卒業してから一度も親交のない友人からも送られていた。
何が目当てかはわかっていた。
夜会と茶会の招待状も増えた。親しい友人からは訪問させろと文が届いていた。男爵を継いで2年のレイモンドは多忙のため社交は最低限である。もともと社交に積極的でないコメリ男爵家に招待状はあまり来なかった。
男爵領に押しかけられても困るので婚姻して初めて夜会に参加した。
「レイモンド、おめでとう。一人なのか?」
レイモンドは明らかに落胆する友人に苦笑した。友人の弟は学生だったのを思い出した。レイモンドは知りたいことがあったが、シャーロットには詳しく聞きづらかった。
「詳しく知らないんだけど教えてくれないか?」
友人はレイモンドの言葉に頷いて囁いた。
「箝口令が敷かれてる。移動するか」
人目のない庭園の隅に二人は移動した。
「シャーロット様が殿下と親しいウルマを妬んで酷い言葉を浴びせていたらしい。シャーロット様はお一人で庭園で読書されるのがお好きだっただろう?シャーロット様に気を遣われ離れていたご友人達の目を盗んで嫌がらせをされていたと。その罪で国母の資質がないからお前と婚姻だって。羨ましい。あのボロい家にシャーロット様がいるなんて。お会いしたいけど、近づくのも恐れ多い。あの美しさを。お前、シャーロット様と話せるのか?」
レイモンドは友人がシャーロットのファンだったのを思い出した。学生時代に遠目で眺めるのに付き合わされた。令嬢が苦手なレイモンドは綺麗だと思っても興味は全くなかった。シャーロットは悪役令嬢のフリをしても嫌がらせができる性格ではないのはレイモンドはよくわかっていた。
「妬み・・?最近は緊張しないで話せるよ。環境の違いに戸惑ってるよ。シャーロットの家臣も美形だから領民達も目の保養になるって歓迎してくれてる。」
「シャーロット様を呼びすて・・、なんて」
羨ましそうに見られたレイモンドは頬を掻いた。
「本人の希望。世間では罪人扱いなのか。」
「殿下が言うなら。遠目で見に行ってもいいか?」
「いずれ招くよ。シャーロットに大声で勢いよく話しかけないなら。」
「シャーロット様に話しかけるなんて恐れ多い。いいよな。あの遠目で眺めるしか許されなかったシャーロット様を。殿下も趣味が悪いよな。美人よりも可愛らしい顔が良かったんだろうか。」
レイモンドはシャーロットの素のほうが可愛いのは口に出さなかった。
「さぁな。頼むから突然押しかけるのはやめて。余裕ないから。皆にも伝えてよ」
「レイモンドは常に余裕がないからな」
庭園で友人と話しているレイモンドは他の貴族達に見つかった。気づくと囲まれ、シャーロットのことを聞かれるため曖昧にごまかした。領民に怯えるシャーロットが、この状況にさらに怯えるのが想像できて、社交に出すのが不安になった。
王子のお気に入りのアリシアを擁護する者はいなかった。王都から離れた田舎に住む貴族達は正直で本音を隠した会話とは無縁だった。王都の社交界ではシャーロット達のことは話題に出されていなかった。王族関係はデリケートなので、口に出すのははばかられ、影で囁かれるだけだった。
****
レイモンドが夜会に出かけた夜にシャーロットは執事長に面会を求めた。
「お嬢様、どうされました?」
シャーロットは貴族の仮面を被っていた。レイモンドの仕事を手伝いながらコメリ男爵領のことを調べていた。どうしても見過ごせないことがあり、コメリ男爵家に長く仕える執事長に相談を決めた。
「お時間をいただき申しわけありません。男爵様にはお伝えできないんですが、一昨年より始めた事業の利益配分が不当です。お許しいただけるなら、私が処理します。」
シャーロットは調べて、まとめた書類を執事長に渡した。執事長は書類を読んで気付いた。
「騙されたと?」
「はい。男爵様には隠れて正しい形に戻しますが、経費がかさんで、将来的に見込みがないので、引き際を。いえ、差し出がましいのは重々承知なのですが・・。さすがにこれは・・」
シャーロットはこの事業のためにコメリ男爵領が多忙に襲われ、無駄にコキ使われたのに気付いていた。この事業を成功したと思っている領民にもレイモンドにも口にできなかった。利益が出ているように見えているが実際は材料費や運搬、人員等を配慮すれば赤字に近かった。
過労で倒れた前男爵を思い浮かべ元婚約者の無能は切り捨てろと言う声が聞こえて慌てて打ち消していた。
この事業が一番酷く他にも気になる点は多かったが男爵夫人として認められていないシャーロットは口に出せなかった。
言葉を濁し曖昧に笑うシャーロットに執事長は気付いた。
「お嬢様、もしかして他にも気になるものが?」
「はい。うちならありえないものが・・」
「モール公爵家でもお仕事を?」
「簡単な物ばかりですわ。重要なものは兄が。王家の執務は殿下と共に。私は邸の管理と後方支援専門です」
執事長はレイモンドよりシャーロットを頼りにすることを決めた。
シャーロットは執事長に正直に教えてほしいと言われ、追加の資料を渡して説明を始め、執事長が頷いた。シャーロットはレイモンドに内緒で進める許可をもらってほっとしていた。モールならば少額の取引に失敗しても痛手は少ないが貧しいコメリ男爵家では一つ一つが致命傷だった。シャーロットが関わってきた事業としては小さいものばかりだったので、レイモンドの心を折ってまで報告しなくていいかと思っていた。
執事長はシャーロットに相談しながら確認を進め手直しすると赤字が黒字にかわっていた。親子で抜けているレイモンド達にため息を溢し、聡明な男爵夫人を迎えたことに感謝した。
レイモンドの補佐官を呼び、定期的にシャーロットに相談するように指示を出した。
レイモンドの補佐官はシャーロットの報告書を見て目を丸くしていた。自分達が作る資料よりもわかりやすく、事業計画書の出来も申し分なかった。
レイモンドが夜会に参加している頃にコメリ男爵邸では反省会と今後の方針について真剣な話し合いが行われていた。
***
レイモンドはシャーロットの好みをミズノに相談していた。好みに合わないドレスを贈られると迷惑なのは元婚約者のおかげでよく知っていた。動きやすく華美でない物を好むと聞き、商人を呼んでミズノに選んでもらうように頼んだ。男爵家にはオーダーメイドという選択はないが貧しい家に嫁いでいるのがわかっているミズノは何も言わなかった。大事なシャーロットをレイモンドが大事にしてくれようとするなら快く協力した。ヒノトよりもミズノのほうが常識と協調性を持っていた。
レイモンドはアリシアが欲しがるドレスより価格が低く驚いていた。
「これでいいの?」
「はい。一番お好みだと思います。重たいドレスがお嫌いですから」
ミズノは装飾のない肌触りの良い白いドレスを選んだ。今までシャーロットが身に付けていたものは好みと正反対の物だった。
シャーロットには秘密があった。常に最高峰の装飾品を身に付けていたシャーロットは装飾品等に全く興味がなく機能性重視の嗜好の持ち主だった。目利きはできても、宝石の美しさを饒舌に語っても全く興味を持っていなかった。王子の婚約者として必要だっただけである。高価な宝石を贈られてもシャーロットの心を引き付けた令息は誰もいなかった。唯一心に残ったのは珍しい花束を送った後輩だった。
レイモンドは戸惑いながらもミズノを信じて購入した。
レイモンドが離れに顔を出すとヒノトを抱いて寝転がっているシャーロットがいた。
「男爵様」
起き上がったシャーロットにレイモンドは箱を渡した。シャーロットは首を傾げた。レイモンドはシャーロットが動かないので箱の中身を開けた。
「贈り物。」
箱の中には白いドレスが入っていた。シャーロットは贈られる理由がなかった。
「いえ、受け取れません」
「君が受け取らないと処分しか」
「あ、ありがとうございます。」
「気に入るかはわからないけど、俺はこれで。」
レイモンドはシャーロットが震える手で受け取ったので頭を撫でて立ち去った。シャーロットは茫然と背中を見ていた。
晩餐の招待を受け、シャーロットは贈られたドレスを身に纏った。
軽く着心地の良いドレスはシャーロットの好みだった。ドレスを着て、ふわりと回ると体が軽く驚いた。
「ヒノト、一曲踊ろう」
「シャーリー、遅れるからダンスは後よ。座って」
ミズノに笑顔で指摘されシャーロットは座った。
髪の毛を巻くと違和感があるため、真直ぐな髪に庭から摘んだ小ぶりな花を飾った。
「ミズノ、これで平気かな・・?」
「可愛い。似合ってるから大丈夫」
「シャーリーはどんなものも似合うからな」
シャーロットは二人の称賛に頬を染めて笑った。二人に励まされて、真っ直ぐの髪のまま晩餐の席につき、レイモンドを待っていた。悪役令嬢の装いをしないで晩餐を共にするのは初めてだった。
レイモンドは頬をほのかに染めて、恥ずかしそうに座っているシャーロットに笑った。
「似合ってるよ」
シャーロットは頷くだけで何も言わなかった。貴族の仮面を被れていなかった。
頬を染めて、上品な仕草で食事をするシャーロットに給仕の侍女が驚いて見ていた。無言の晩餐の席でレイモンドはシャーロットを見ながら安いドレスもシャーロットが着ると上等なものに見えると感心していた。レイモンドは着る物が人を選ぶという意味が初めてわかった日だった。レイモンドにとってはシャーロットはアリシアと比べ物にならないほど愛らしかった。デザートの苺を口に運びにっこり笑った姿に見惚れたのはレイモンドだけではなかった。
***
レイモンドは前回の夜会で会えなかった父の友人の男爵邸を訪問していた。
お世話になっていたため婚姻の報告に訪問していた。
祝いの言葉をもらい落ち着いたら二人で来なさいと言われて感謝を告げて帰るつもりだったが、男爵子息のグレイに捕まった。よくレイモンドを気に掛けてくれる友人だった。
父親が倒れた時に駆けつけて手伝ってくれたのはグレイ親子だった。
「レイモンド、大丈夫か?モール嬢、もう男爵夫人か・・・。お前、令嬢苦手だろう。いくら評判が良くても公爵令嬢なんて・・」
グレイはシャーロットのファンではないので純粋に心配していた。いつも運の悪い友人を。
「ちょっと変わってるけど大丈夫。色々あったけど、うまくやっていけそうだよ・・。あのさ、落ち着いた雰囲気のドレスが欲しいんだけど・・・。アリシア嬢とは趣味が違って」
「もうねだられてるのか・・。財産食いつぶされるなよ」
気の毒そうな顔を向けられレイモンドは首を横に振った。
「違うよ。シャーロットは何もねだらない。俺が贈りたいだけ。領民の仕立てる服に感謝をする子だから」
「見た目と違って慎ましいんだな。上手くいってるなら良かったよ。姉上の気に入りの店を紹介するよ」
「ありがとう。」
レイモンドが初めて贈ったドレスを着たシャーロットを思い出し、照れ笑いを浮かべて頬を掻いている姿にグレイは笑った。レイモンドが本気で気に入っているのがわかり安心していた。
「レイモンド、シャーロット様と婚姻って本当なの!?」
部屋に飛び込んできたのはグレイの姉のヤーナだった。
「はい」
「あの美しさの秘訣は何!?」
掴みかかられレイモンドは引いていた。
「俺にはわかりません」
「訪問してもいい?今までは話せなかったけど、レイモンドの妻なら私の妹分よね」
シャーロットが怯えるのを想像し、レイモンドは首を横に振った。
「すみません。まだ生活に慣れるので精一杯なので・・。」
「あんな豪邸に住んでいた方がオンボロ屋敷だものね・・。建て替えるの?」
「いえ、当人に必要ないと言われました。何も望まないんです。本当に・・・・。」
「まだ気持ちの整理はつかないわよね。殿下と婚約破棄してレイモンドと婚姻。私もショックで寝込むわ」
「姉上はやけ食いじゃ・・・。嘘です。足を踏まないでください。痛い。ヒールなんですから」
レイモンドは友人達を見ながらシャーロットとの違いを眺めていた。今頃はヒノトを抱いて昼寝をしている姿を思い出し、用も終わったので帰ることにした。姉弟喧嘩をしている二人に声を掛けずにそっと立ち去った。ヤーナはしつこいので苦手だった。グレイやレイモンドを小間使いのように使うのであまり良い思い出もなかった。シャーロットが小間使いにさせられ、震える姿を想像してできるだけ会わせないようにしようと思いながら帰路を進んでいた。
***
その頃、使用人宿舎では使用人の子供に文字を教える侍女姿のシャーロットがいた。
「シャーリー、お話して」
文字の勉強に飽きた子供にねだられシャーロットは子供が好きな物語を話し始めた。
孤児院の視察も公務にあったためシャーロットは子供の扱いは身に付いていた。ただ礼儀正しい子供の相手ばかりだった。
「シャーリーはどうしてここに来たの?」
捨て子だった旅人が故郷を探す物語を語り終えたシャーロットは無邪気な瞳の子供を見て微笑んだ。
「お仕事に失敗したの。でも生きていればどうにでもなるわ。人でなしの王子様の話をしようか」
レイモンドが聞けなかった婚約破棄の騒動を一番に聞いたのは子供達だった。人でなしの王子と無能の公爵令嬢の話を聞き、子供経由で話を聞いた親達は困惑していた。
「シャーリーは王子様が好きだったから結婚の約束したの?」
「違うよ。貴族は結婚は親の命令でするの。選ばれた人と上手くいくように頑張るんだけど、人には相性があるの。どうしても仲良くなれない人も世の中にはいるって覚えておいて。でも王子様に人でなしって言うと首がなくなるから内緒ね」
「わかった」
物騒な会話に突っ込みは不在だった。シャーロットと子供達の間にヒノトが入っていたため礼儀のない子供達にも怯えることなく話していた。
一部の使用人達はシャーロットが王子に全く未練がないことにほっとしていた。いくらレイモンド贔屓でも王子に敵うとは思っていなかった。
「どういうことなの!?」
「うちの子の話だよ。私が奥様から直接聞いたものではないから・・・。」
「でも、坊ちゃん、明らかに奥様を意識してるよね。いつも見惚れてるもの。」
「奥様は全くだけど・・。」
「それでもウルマ様より良かったよ。坊ちゃんを無碍にしない」
「坊ちゃんに幸せを」
使用人達はいつもレイモンドの幸せを祈っていた。
神出鬼没のシャーロットは本人の気付かないうちに使用人達に受け入れられていた。
シャーロットは暇な時間は侍女の仕事を学んでいた。
レイモンドより黒髪の侍女は丁重に扱い様子がおかしければ報告するように言われていたためシャーロットの侍女と思われていた。
使用人達は情報共有しているため神出鬼没の挙動不審のなんでも覚えたがりのヒノトとしか話さない無言の黒髪の侍女は有名だった。厨房でシャーロットとヒノトの皮を剥く包丁捌きを料理長が見ていた。
「皮むき以外もやるか?」
「シャーリーやる?」
シャーロットは頷いた。
シャーロットはまな板の上の魚を見た。真っ青になり、瞳が潤み、震える手で包丁を握っていた。
「やめるか」
料理長の言葉にシャーロットは首を横に振った。ポロポロと泣きながら魚と見つめ合い包丁を持つシャーロットに困った料理人はレイモンドを呼びに行った。ヒノトはシャーロットに危険がなければ止めなかった。
レイモンドが厨房に駆け込み、目を丸くした。
「何して、いいから。魚は。危ないから、震えながら刃物を持たないで。お願いだから、それ貸して」
レイモンドがシャーロットから包丁を力ずくで取り上げた。あまりの早さにヒノトが止めに入る暇がなかった。
「お魚、役立たず」
「いくよ。」
レイモンドに手を引かれて嵐のように去っていく姿を料理長達は無言で見送った。料理長は今後は皮むきだけを任せて、魚は触らせないことを決めた。ヒノトが見事に捌いた魚を見て、公爵家の侍従の有能さに感心していた。
その頃シャーロットは離れでレイモンドに宥められていた。
****
翌日シャーロットは料理長に震えながら頭を下げた。料理長は話しかけられて驚いていた。
「昨日は、申しわけ、ありませんでした」
「気にしなくていいから」
「ごめんなさい」
「シャーリー、もういいって。邪魔になるから謝るの終わりだよ」
シャーロットは迷惑をかけたくないのでヒノトに腕を引かれて料理長から離れた。納品された食材を見つけて運ぶのを手伝うために近づいた。
シャーロットは食材の納品者に目を丸くした。
「シャーリー?」
親方と一緒に仕入れに行く店主の一人だった。店主をよく知っていたので納品書を無言で手に取り、じっと見て顔をあげた。
「おじさん、計算、違ってるよ。あと、・・・この品質にしては高い」
納品書を指差しぼそりと言う言葉に男は笑った。
「シャーリーには敵わないな。わからない家からは儲けてたんだがバレたか。他の納品書の計算も見てくれるならまけてやろう」
「うん。見る」
料理長はシャーロットと気難しい男との会話に驚いていた。渡されたペンと書類を持って手直しをするシャーロットの手の早さはいつもの包丁捌きが嘘のようだった。
料理長は納品書の金額が3割も引かれてさらに驚いた。
「おじさん、ここではやめて。」
「シャーリーの頼みなら」
「でも、困ってるなら男爵様に相談して。私は適正価格でのやり取りをしたい。」
「子供は心配しないでいい。ヒノトの言うこと聞けよ。またな」
男を見送りシャーロットは材料を運ぶのを手伝った。料理長の凝視に、怯えたシャーロットをヒノトが背に庇った。
「まさか・・・」
「余計なことは口にしないでください。シャーリー、行こう」
手を引くヒノトに連れられて立ち去るシャーロットの背中を見て料理長が茫然とした。
「嘘だろ・・。あの子が奥様・・?でも皮むきできるって・・・」
レイモンドを男爵様と呼ぶのは男爵邸でシャーロットだけだった。
その日から食材の値段が下がっていた。料理長はぼったくりにあっていたことに気付いていなかった。料理長は厨房に顔を出す、シャーロット達を丁重に扱うようになった。
***
レイモンドは執務室で知人や友人達からの手紙に苦笑していた。卒業してから一度も親交のない友人からも送られていた。
何が目当てかはわかっていた。
夜会と茶会の招待状も増えた。親しい友人からは訪問させろと文が届いていた。男爵を継いで2年のレイモンドは多忙のため社交は最低限である。もともと社交に積極的でないコメリ男爵家に招待状はあまり来なかった。
男爵領に押しかけられても困るので婚姻して初めて夜会に参加した。
「レイモンド、おめでとう。一人なのか?」
レイモンドは明らかに落胆する友人に苦笑した。友人の弟は学生だったのを思い出した。レイモンドは知りたいことがあったが、シャーロットには詳しく聞きづらかった。
「詳しく知らないんだけど教えてくれないか?」
友人はレイモンドの言葉に頷いて囁いた。
「箝口令が敷かれてる。移動するか」
人目のない庭園の隅に二人は移動した。
「シャーロット様が殿下と親しいウルマを妬んで酷い言葉を浴びせていたらしい。シャーロット様はお一人で庭園で読書されるのがお好きだっただろう?シャーロット様に気を遣われ離れていたご友人達の目を盗んで嫌がらせをされていたと。その罪で国母の資質がないからお前と婚姻だって。羨ましい。あのボロい家にシャーロット様がいるなんて。お会いしたいけど、近づくのも恐れ多い。あの美しさを。お前、シャーロット様と話せるのか?」
レイモンドは友人がシャーロットのファンだったのを思い出した。学生時代に遠目で眺めるのに付き合わされた。令嬢が苦手なレイモンドは綺麗だと思っても興味は全くなかった。シャーロットは悪役令嬢のフリをしても嫌がらせができる性格ではないのはレイモンドはよくわかっていた。
「妬み・・?最近は緊張しないで話せるよ。環境の違いに戸惑ってるよ。シャーロットの家臣も美形だから領民達も目の保養になるって歓迎してくれてる。」
「シャーロット様を呼びすて・・、なんて」
羨ましそうに見られたレイモンドは頬を掻いた。
「本人の希望。世間では罪人扱いなのか。」
「殿下が言うなら。遠目で見に行ってもいいか?」
「いずれ招くよ。シャーロットに大声で勢いよく話しかけないなら。」
「シャーロット様に話しかけるなんて恐れ多い。いいよな。あの遠目で眺めるしか許されなかったシャーロット様を。殿下も趣味が悪いよな。美人よりも可愛らしい顔が良かったんだろうか。」
レイモンドはシャーロットの素のほうが可愛いのは口に出さなかった。
「さぁな。頼むから突然押しかけるのはやめて。余裕ないから。皆にも伝えてよ」
「レイモンドは常に余裕がないからな」
庭園で友人と話しているレイモンドは他の貴族達に見つかった。気づくと囲まれ、シャーロットのことを聞かれるため曖昧にごまかした。領民に怯えるシャーロットが、この状況にさらに怯えるのが想像できて、社交に出すのが不安になった。
王子のお気に入りのアリシアを擁護する者はいなかった。王都から離れた田舎に住む貴族達は正直で本音を隠した会話とは無縁だった。王都の社交界ではシャーロット達のことは話題に出されていなかった。王族関係はデリケートなので、口に出すのははばかられ、影で囁かれるだけだった。
****
レイモンドが夜会に出かけた夜にシャーロットは執事長に面会を求めた。
「お嬢様、どうされました?」
シャーロットは貴族の仮面を被っていた。レイモンドの仕事を手伝いながらコメリ男爵領のことを調べていた。どうしても見過ごせないことがあり、コメリ男爵家に長く仕える執事長に相談を決めた。
「お時間をいただき申しわけありません。男爵様にはお伝えできないんですが、一昨年より始めた事業の利益配分が不当です。お許しいただけるなら、私が処理します。」
シャーロットは調べて、まとめた書類を執事長に渡した。執事長は書類を読んで気付いた。
「騙されたと?」
「はい。男爵様には隠れて正しい形に戻しますが、経費がかさんで、将来的に見込みがないので、引き際を。いえ、差し出がましいのは重々承知なのですが・・。さすがにこれは・・」
シャーロットはこの事業のためにコメリ男爵領が多忙に襲われ、無駄にコキ使われたのに気付いていた。この事業を成功したと思っている領民にもレイモンドにも口にできなかった。利益が出ているように見えているが実際は材料費や運搬、人員等を配慮すれば赤字に近かった。
過労で倒れた前男爵を思い浮かべ元婚約者の無能は切り捨てろと言う声が聞こえて慌てて打ち消していた。
この事業が一番酷く他にも気になる点は多かったが男爵夫人として認められていないシャーロットは口に出せなかった。
言葉を濁し曖昧に笑うシャーロットに執事長は気付いた。
「お嬢様、もしかして他にも気になるものが?」
「はい。うちならありえないものが・・」
「モール公爵家でもお仕事を?」
「簡単な物ばかりですわ。重要なものは兄が。王家の執務は殿下と共に。私は邸の管理と後方支援専門です」
執事長はレイモンドよりシャーロットを頼りにすることを決めた。
シャーロットは執事長に正直に教えてほしいと言われ、追加の資料を渡して説明を始め、執事長が頷いた。シャーロットはレイモンドに内緒で進める許可をもらってほっとしていた。モールならば少額の取引に失敗しても痛手は少ないが貧しいコメリ男爵家では一つ一つが致命傷だった。シャーロットが関わってきた事業としては小さいものばかりだったので、レイモンドの心を折ってまで報告しなくていいかと思っていた。
執事長はシャーロットに相談しながら確認を進め手直しすると赤字が黒字にかわっていた。親子で抜けているレイモンド達にため息を溢し、聡明な男爵夫人を迎えたことに感謝した。
レイモンドの補佐官を呼び、定期的にシャーロットに相談するように指示を出した。
レイモンドの補佐官はシャーロットの報告書を見て目を丸くしていた。自分達が作る資料よりもわかりやすく、事業計画書の出来も申し分なかった。
レイモンドが夜会に参加している頃にコメリ男爵邸では反省会と今後の方針について真剣な話し合いが行われていた。
***
レイモンドはシャーロットの好みをミズノに相談していた。好みに合わないドレスを贈られると迷惑なのは元婚約者のおかげでよく知っていた。動きやすく華美でない物を好むと聞き、商人を呼んでミズノに選んでもらうように頼んだ。男爵家にはオーダーメイドという選択はないが貧しい家に嫁いでいるのがわかっているミズノは何も言わなかった。大事なシャーロットをレイモンドが大事にしてくれようとするなら快く協力した。ヒノトよりもミズノのほうが常識と協調性を持っていた。
レイモンドはアリシアが欲しがるドレスより価格が低く驚いていた。
「これでいいの?」
「はい。一番お好みだと思います。重たいドレスがお嫌いですから」
ミズノは装飾のない肌触りの良い白いドレスを選んだ。今までシャーロットが身に付けていたものは好みと正反対の物だった。
シャーロットには秘密があった。常に最高峰の装飾品を身に付けていたシャーロットは装飾品等に全く興味がなく機能性重視の嗜好の持ち主だった。目利きはできても、宝石の美しさを饒舌に語っても全く興味を持っていなかった。王子の婚約者として必要だっただけである。高価な宝石を贈られてもシャーロットの心を引き付けた令息は誰もいなかった。唯一心に残ったのは珍しい花束を送った後輩だった。
レイモンドは戸惑いながらもミズノを信じて購入した。
レイモンドが離れに顔を出すとヒノトを抱いて寝転がっているシャーロットがいた。
「男爵様」
起き上がったシャーロットにレイモンドは箱を渡した。シャーロットは首を傾げた。レイモンドはシャーロットが動かないので箱の中身を開けた。
「贈り物。」
箱の中には白いドレスが入っていた。シャーロットは贈られる理由がなかった。
「いえ、受け取れません」
「君が受け取らないと処分しか」
「あ、ありがとうございます。」
「気に入るかはわからないけど、俺はこれで。」
レイモンドはシャーロットが震える手で受け取ったので頭を撫でて立ち去った。シャーロットは茫然と背中を見ていた。
晩餐の招待を受け、シャーロットは贈られたドレスを身に纏った。
軽く着心地の良いドレスはシャーロットの好みだった。ドレスを着て、ふわりと回ると体が軽く驚いた。
「ヒノト、一曲踊ろう」
「シャーリー、遅れるからダンスは後よ。座って」
ミズノに笑顔で指摘されシャーロットは座った。
髪の毛を巻くと違和感があるため、真直ぐな髪に庭から摘んだ小ぶりな花を飾った。
「ミズノ、これで平気かな・・?」
「可愛い。似合ってるから大丈夫」
「シャーリーはどんなものも似合うからな」
シャーロットは二人の称賛に頬を染めて笑った。二人に励まされて、真っ直ぐの髪のまま晩餐の席につき、レイモンドを待っていた。悪役令嬢の装いをしないで晩餐を共にするのは初めてだった。
レイモンドは頬をほのかに染めて、恥ずかしそうに座っているシャーロットに笑った。
「似合ってるよ」
シャーロットは頷くだけで何も言わなかった。貴族の仮面を被れていなかった。
頬を染めて、上品な仕草で食事をするシャーロットに給仕の侍女が驚いて見ていた。無言の晩餐の席でレイモンドはシャーロットを見ながら安いドレスもシャーロットが着ると上等なものに見えると感心していた。レイモンドは着る物が人を選ぶという意味が初めてわかった日だった。レイモンドにとってはシャーロットはアリシアと比べ物にならないほど愛らしかった。デザートの苺を口に運びにっこり笑った姿に見惚れたのはレイモンドだけではなかった。
***
レイモンドは前回の夜会で会えなかった父の友人の男爵邸を訪問していた。
お世話になっていたため婚姻の報告に訪問していた。
祝いの言葉をもらい落ち着いたら二人で来なさいと言われて感謝を告げて帰るつもりだったが、男爵子息のグレイに捕まった。よくレイモンドを気に掛けてくれる友人だった。
父親が倒れた時に駆けつけて手伝ってくれたのはグレイ親子だった。
「レイモンド、大丈夫か?モール嬢、もう男爵夫人か・・・。お前、令嬢苦手だろう。いくら評判が良くても公爵令嬢なんて・・」
グレイはシャーロットのファンではないので純粋に心配していた。いつも運の悪い友人を。
「ちょっと変わってるけど大丈夫。色々あったけど、うまくやっていけそうだよ・・。あのさ、落ち着いた雰囲気のドレスが欲しいんだけど・・・。アリシア嬢とは趣味が違って」
「もうねだられてるのか・・。財産食いつぶされるなよ」
気の毒そうな顔を向けられレイモンドは首を横に振った。
「違うよ。シャーロットは何もねだらない。俺が贈りたいだけ。領民の仕立てる服に感謝をする子だから」
「見た目と違って慎ましいんだな。上手くいってるなら良かったよ。姉上の気に入りの店を紹介するよ」
「ありがとう。」
レイモンドが初めて贈ったドレスを着たシャーロットを思い出し、照れ笑いを浮かべて頬を掻いている姿にグレイは笑った。レイモンドが本気で気に入っているのがわかり安心していた。
「レイモンド、シャーロット様と婚姻って本当なの!?」
部屋に飛び込んできたのはグレイの姉のヤーナだった。
「はい」
「あの美しさの秘訣は何!?」
掴みかかられレイモンドは引いていた。
「俺にはわかりません」
「訪問してもいい?今までは話せなかったけど、レイモンドの妻なら私の妹分よね」
シャーロットが怯えるのを想像し、レイモンドは首を横に振った。
「すみません。まだ生活に慣れるので精一杯なので・・。」
「あんな豪邸に住んでいた方がオンボロ屋敷だものね・・。建て替えるの?」
「いえ、当人に必要ないと言われました。何も望まないんです。本当に・・・・。」
「まだ気持ちの整理はつかないわよね。殿下と婚約破棄してレイモンドと婚姻。私もショックで寝込むわ」
「姉上はやけ食いじゃ・・・。嘘です。足を踏まないでください。痛い。ヒールなんですから」
レイモンドは友人達を見ながらシャーロットとの違いを眺めていた。今頃はヒノトを抱いて昼寝をしている姿を思い出し、用も終わったので帰ることにした。姉弟喧嘩をしている二人に声を掛けずにそっと立ち去った。ヤーナはしつこいので苦手だった。グレイやレイモンドを小間使いのように使うのであまり良い思い出もなかった。シャーロットが小間使いにさせられ、震える姿を想像してできるだけ会わせないようにしようと思いながら帰路を進んでいた。
***
その頃、使用人宿舎では使用人の子供に文字を教える侍女姿のシャーロットがいた。
「シャーリー、お話して」
文字の勉強に飽きた子供にねだられシャーロットは子供が好きな物語を話し始めた。
孤児院の視察も公務にあったためシャーロットは子供の扱いは身に付いていた。ただ礼儀正しい子供の相手ばかりだった。
「シャーリーはどうしてここに来たの?」
捨て子だった旅人が故郷を探す物語を語り終えたシャーロットは無邪気な瞳の子供を見て微笑んだ。
「お仕事に失敗したの。でも生きていればどうにでもなるわ。人でなしの王子様の話をしようか」
レイモンドが聞けなかった婚約破棄の騒動を一番に聞いたのは子供達だった。人でなしの王子と無能の公爵令嬢の話を聞き、子供経由で話を聞いた親達は困惑していた。
「シャーリーは王子様が好きだったから結婚の約束したの?」
「違うよ。貴族は結婚は親の命令でするの。選ばれた人と上手くいくように頑張るんだけど、人には相性があるの。どうしても仲良くなれない人も世の中にはいるって覚えておいて。でも王子様に人でなしって言うと首がなくなるから内緒ね」
「わかった」
物騒な会話に突っ込みは不在だった。シャーロットと子供達の間にヒノトが入っていたため礼儀のない子供達にも怯えることなく話していた。
一部の使用人達はシャーロットが王子に全く未練がないことにほっとしていた。いくらレイモンド贔屓でも王子に敵うとは思っていなかった。
「どういうことなの!?」
「うちの子の話だよ。私が奥様から直接聞いたものではないから・・・。」
「でも、坊ちゃん、明らかに奥様を意識してるよね。いつも見惚れてるもの。」
「奥様は全くだけど・・。」
「それでもウルマ様より良かったよ。坊ちゃんを無碍にしない」
「坊ちゃんに幸せを」
使用人達はいつもレイモンドの幸せを祈っていた。
神出鬼没のシャーロットは本人の気付かないうちに使用人達に受け入れられていた。
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