指先で描く恋模様

三神 凜緒

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休み時間の雑談 その2

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時の流れというのは、人の感覚によって長くも短くもなる。
よく、楽しい時間はあっという間に過ぎ去ると言う。きっと、授業が退屈だと言ってる人たちはきっとその時間を楽しんでいないんだろうな~?
大人になると、何かを学べる時間と云うのが如何に大切かを子供に伝えているけど、学生に戻れば分かる…やっぱり興味のない授業はやっぱり退屈で眠くなってしまう。
この数学の授業を楽しんでいる生徒は一体どれぐらいいるのか…少ないのではないかな?

この教室にいる生徒はどうにも数学の問題が得意ではないのかな? 先程からボク以外が黒板の前に立って問題を解こうとしない…何でだろう?
まあ…ボクも普段はそこまで手をあげるタイプの子じゃないけど、今日は何となくあげていたんだ…誰も手をあげないと、先生はそこそこ数学の点数がイイ生徒を指さして答えさせるんだけど、答えが出ない場合も多い。つまり…普段はわりと授業時間がオーバーする事が多いのである…だが…!


その日の一時限目はどういう訳なのか、普段よりも5分早く終わったみたい。
きっと『今日は早く終わりたいな♪』という先生へのボクの純な訴えが通じたのだろう…
やっぱり人間まごころで動くとイイ事があるんだな~って思った(*’▽’)

「ええ~、皆授業に大変やる気があるのは結構だが、何事も息切れしないようにほどほどに頑張るよ~~~~うにっ! ………ふうううっ~~~」

しかしどういう訳か、先生はやや疲れ様な表情のまま、こちらに少しだけ怪訝な眼差しを向けていたっぽい(*_*;)
出席簿と教科書を持ち、教壇を後にする先生…その後ろ姿は何か大きな事を成し遂げたような清々しいものだった。

「さて…お手洗い行ってこようっと~」

軽く声を出して、教室を出る理由を口にする。少しだけ注目されており、何となく皆誤解しているんじゃないかな? って思ったのではっきりと周りに伝えてから、扉を開けて、今回は気分で少し遠くのトイレへと足を向けた…

――――
「一体何に対しての言い訳なんだ…あれは? 素直に彼に逢いに行くって言えば良いのに…」
「乙女だよね~♪ 恋は盲目になると人は言うけどさ…樹もパワーあるわよね…」
「ほんとよね~♪ 可愛いから良いじゃない~!(^^)!」


――――
「最近運動不足だし、ちょっと長く歩くぐらい普通だよね…うん…」

廊下と教室は扉一枚隔てただけなのに、別世界に変わる感じがするのはボクだけかな?
誰も聴いていないのに、安心出来ず口の中で自分の行為の正当性を訴える。
最初の一歩は勢いをつける為に大股に! だがすぐに小幅な歩きに変わる。そして、彼のクラスのプレートの下で一度立ち止まり…、締まっている彼の扉に指を滑らせ、力を込めて横にスライドを…

「あれ…可笑しいな…指が取っ手に届かない…おかしいな~? なはははは…」

ボクの腕がそんなに長くないのが原因なのか、扉の取っ手に指先がギリギリ届かない…!
まるで足元が崖のなってるかのような仕草で、プレートの先から足が動かず、上半身を傾け腕を伸ばすが…!! 届かない………

「いや…普通に一歩前に進めば良いんじゃないか? 一人漫才でもしているのか?」
「東谷君!! いつの間に…!?」

教室には二つ扉がある。彼は多分、もう一つの扉から出たらボクを見掛けて声を掛けたんだろうけど…一体いつからそこで見ていたんだ…!
ああ~~、何でボクはこんな至近距離に近づかれるまで気づかなかったんだよ~(´;ω;`)

「相変わらず、漫才好きだよな~いや…これはコントなのかな?」
「あうあうあ…<以下翻訳>(いや、どっちでもなく、ただ他のクラスに顔を出す難易度に今更気づいて怖気づいていただけです(;’∀’))」

こちらが伝えようとして、何かの理由で伝えられない事を察したらしい。
ボクの様子を穏やかな顔で見つめていると、そっと頭の上に手を置き、軽く撫でながら『ちょいと職員室まで行くんだが一緒に来るか?』と無理にそれを追求しようとはしなかった。

「今日も結構冷え込んだよな…もうすぐ冬って感じだ…」
「そうだね…今朝も、寒くて凍えそうだったよね…」

彼の隣を歩きながら、ゆっくりと階段を降り一回の職員室へと向かっていく。
ガチガチに緊張しているボクとは違い、彼の姿はリラックスしているがよく分かる。
まるでそれが当たり前のように、男友達と一緒にいるような感じ。唯一の救いは楽しそうにしているのが分かる事だろうか?
いつもいきなり訪れるのに、いつも爽やかに楽しそうに一緒にいてくれている…

「こんな寒いのに本当に、紅葉狩りなんてやるのかな…? しかも俳句や短歌を秋の山で作れなんて…難しいよね…でも…」
「だよな~俺、サッカーとかスポーツ全般は出来るけど、文系はサッパリでさ~まいっちゃうよ…」
「そうだよね…多分これも、どの宗派か忘れたけど大僧正である校長先生の趣味だろうね~。よく昨今の若者は大和心が足りないって言ってたから…」

どうしたら、イイんだろうって他のクラスメイトは騒いでいたよね? 確か…でも、ボクたちはそんなモノ忘れて、恋バナしていたんだよね~もう最初から捨ててた…!
だって、努力しても小学生並みのモノしか作れないって思ったもん!

「出来れば、周りをギャフンを言わせるようなモノを作ってみたいよな? 知的な女性って…男から見れば魅力的だしさ…」
「そっ…そうだよね!! うんうん…やっぱり知的な感じの短歌を作って、皆をびっくりさせたいよね(‘◇’)ゞ ボクも友達と色々と季語とか辞書で調べていたんだよね!」

OH~~~(;’∀’)! 言ってはならない事を言ってしまったような気がするぞっ!
いや、まだだ…まだ大丈夫。調べたけど、あまり綺麗な言葉が見つからなかったとか言い訳をすればまだ、間に合う…!!

「そうなのかっ! いや~やっぱり女の子してる子って文系が多いのかな? 工藤先生も古典が専門だから色々と知っていてさ。前の休み時間も色々と教えて貰っていたんだよね♪ 良かったら一緒に訊ねてみないか?」
「うっ…うん…わかったよぉ~~ううう…」
「どうしたんだ…? 一体…」

東谷君が美人女教師とマンツーマンでお勉強をするだと…!! これはいよいよ、後に退けなくなってしまった…絶対に妨害しちゃる…!!
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