指先で描く恋模様

三神 凜緒

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夕暮れの下校 その2

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誰かと共に下校するという時間が当たり前なのはきっと、とても幸せな事なのだろう。
学校の前にある大通りの向こうにある大きなガソリンスタンドに次々と車が入っていく。
ガソリンスタンドは車の喫茶店だ…お腹一杯になったら元気よく店員さんに笑顔でお見送りされる…
人間も車も変わらない…何かを食べていかないと生きていけない…
ただ人間よりも車って凄い早食いなんだよね~とっても大食漢♪
ボクは別に車が好きって訳じゃないけど、もしかしたら…
愛車が元気よく給油される時の感覚って、好きな男性が自分の料理をもりもり食べてくれるのと同じなのかな?

「うふふふっ、東谷君も将来車とか好きになるのかな?」
「車? 免許とか取ったら乗るかも知れないけど…走り込みとか出来ないからな~」
「そうだよね~東谷君はきっと、数十キロも平気で走りそうだよね…」
「いやいや…さすがにそこまでじゃないぞ? 車に乗る癖が出来ると運動不足になるかなって…思ったんだよね」

相変わらずの運動にしか頭を働かせない…脳筋…なのだろうか? 東谷君は…
いつか、彼にボクの手料理を食べて貰って、喜ばせる事は出来るかな?
母には料理の才能はあるよ~と言われているが、最近は失敗続きでちょっとへこんでる。

「車って何か、東谷君に少しだけ似てるかな?」
「どんな処が?」
「走るしか脳がないとこ♪」
「ああ~なるほど…確かに俺って試合中ずっと走ってるもんな…って、俺にだってもうちょっと特徴あるだるだろうがっ!」
「例えば…どんな所?」
「そりゃ…お前…う~~ん…どこだろう?」

軽い冗談で言った事を真剣に悩んでいる~(*^-^*)
先程まではボクが二歩歩く毎に、向こうは一歩歩いて横にいたのに、今は考え過ぎて歩幅がどんどん小さくなっていく。その内前を見て歩いていなかったのか、電柱にぶつかりそうになって、慌てて肩を引っ張る。

「うふふふっ…そういう所だよ? 東谷君のイイ所は…」
「うんっ?」
「分からないなら、分からないままでいいの」

ボクがしっかりしてないと、君はすぐに怪我をしちゃいそうだよね? と言いながら、そっと彼の手を握り、ぶんぶんと振り回す…
最初はびっくりしたような顔で…だが、その内に恥ずかしそうに顔を赤らめてなすがままになっている彼…

「樹《たつき》…お前、変わったよな…最近?」
「うん? 何が~?」
「少し前までは、完全に男みたいだったし、ずっと学ラン着てたのに…最近はたま~にスカートも履く事あるよな? どういう心境の変化だ?」
「うふふふ…ヒ・ミ・ツ♪」

ボクが学ランを着ていた訳。そしてたまにスカートを履くようになった理由。
そして何より、自分の性別がどっちなのかも実は、彼には内緒にしている。
秘密を抱えてる乙女はとても魅力的だと母に言われたのを実践しているから…というのもあるが……

「はぁ~~またそれか…いつになったら教えてくれるんだ?」
「あっはっはっは…ボクとお風呂に入ってくれたら教えてあげるよ?」
「バッ…バカ野郎!! 誰がお前となんか…」
「冗談だよ~冗談」

乙女として接すると、ボクは一言も喋る事が出来ないぐらい緊張してしまうから、彼を待っている間は乙女な気分で、下校中はずっと男友達を弄る感覚でずっと喋っていた。
彼の前でスカートを履いた事は実は今まで殆どない…あれを履くと女になった気分でダメになってしまうから…

「まあ、東谷君の思春期特有の煩悩は置いておくとして~今日は漫才動画があるよね~」
「何の話だ! まあ…それは置いておくとして、動画サイトであるな~毎週木曜の夜に…だがあれ…樹《たつき》はずっと愚痴ばかり零しているよな?」
「漫才自体は好きなんだけど~漫才の一番大事な所が抜けているんだよね~あの動画」

自分は特に大阪人って訳じゃないが、それでも漫才に関しては一家言(いっかげん)持っているのだ…!
それを常々、東谷君には伝えているのでまた始まったか~という顔をされるぐらいで、他には何も言わないでくれている。

「苦情があるなら、何か書き込みでもすれば?」
「ボク動画サイトのアカウント作ってないから~無理」
「相変わらずの機械オンチだな…作り方が分からないのか?」
「拒絶反応が出ちゃうんだよね~機械には…あははは…」

直接手で弄れない領域? 感覚で分からないモノ…って感じが機械にはある…
その感覚がいつまでも抜けきれなくて、最近やっと彼に教えられて動画を見始めたばかりなのだ。
運動にしか興味のない彼はもっと機械やネット世界が詳しいみたいだけど、ボクにはチンプンカンプン…羨ましい…( `―´)ノ

「まあ、機械がなくても生きていけるし、樹《たつき》には樹《たつき》の良さもあるさ…」
「ううっ…ボクの良さってどこなのさ?」
「そりゃ…お前………う~ん…どこだろ?」
「そこは即答してよっ!」

こちらの意図を汲んでいるのか、わざとらしく首を傾げて惚けてくれるので、思い切り合いの手をかます。それを笑って受け止めてくれた。
まるで男友達同士のように軽くじゃれ合いながら、ゆっくりとその時間を楽しむように帰路へとつく…
彼と一緒にいるだけで、ボクの心は満タンになりました♪
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