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しおりを挟む───なんて、センチメンタルになったこともあったなと、ハレナは晴れ渡る空を仰ぐ。過去回想に浸ったところで何かが変わるわけでもない。
ハレナが恋を知った日から20年ほど経った。
ヴィナードは国王となったが未だに独身。複数の国から縁談が絶えないが、後継者には甥を指名し、万が一自身の子が出来ても王族とは認定しないと名言している。その甥は、ヴィナードの元婚約者の産んだ子供だ。父親はもちろんヴィナードの弟。
彼はハレナに、隣にいて欲しいと願った。だが、王となった彼の隣に立てるだけの実力がハレナにはなかった。精神的な強さもなかった。ヴィナードの子を望む者たちから、お前がいるから、お前が王を惑わせるから、と責め立てられるだけなら我慢できたが、実家にまで圧力をかけられれば折れざるを得なかった。
そんなハレナは田舎の小さな道場で子供達に剣術を教えている。首都から馬車で七日かかるほどの田舎だ。ここに住んでいることは家族すら知らない。ヴィナードには別れすら告げず、安い長屋に訪ねてきた彼にいつも通り抱かれてから荷物を片付け、その日のうちに乗り合い馬車に乗り込んで。行き先なんて決めずに放浪し、最終的に閑散とした田舎に居を構えて今に至る。
今まで、親密な関係になった相手も数人いた。けど結局、ヴィナード以上に気持ちが溢れるような相手はいなかった。きっとそれが答えなのだ、未だに彼を愛している。
甥が成人したのと同時にヴィナードは退位した。
「ハレナ!」
【完】
もっと早く、責任なんて投げ捨ててハレナを追いかけたかった。そもそも王になんてなりたくなかった。王にならなければ学園卒業後すぐにハレナと同棲できたし、他人になど指一本触れさせなかったのにと悔やんでならない。
ハレナのことは常に配下に監視させていた。守りきれなかった後ろめたさもあり、ハレナが別の誰かを愛しても責める気はない。責める気はないが許せるものでもない。自分の甲斐性のなさを許せない。幸か不幸か、離れた期間、ハレナと親密になったのは女性ばかりだった。
今頃になって何をしに来たと拒絶されることも想像していた。しかし、ハレナは驚きながらも涙ぐみ、ヴィレと呼んでくれた。
10年以上経って、ハレナは痩せたようだが、筋肉の衰えは見られない。差し入れた指の締め付ける秘部は処女のように狭い。
「ぅ、」
異物感が苦しいのか、眉根を寄せて呻くハレナの表情だけでヴィナードの欲は盛り上がる。
「…も、はやく」
我慢できないと誘うように中がうねる。思わず生唾を飲み込んだ。昔より確実にエロい。
「久しぶりなんだ、ちゃんと慣らさないと…」
自身に言い聞かせる。
「ほし、ヴィレぇ」
涙目でねだられると、貴族たちのどんな甘い囁きにも脅しにも屈指なかった鋼の精神があっさり白旗を挙げる。指を抜くと、ぶるりとハレナの身体が震えた。獲物を逃がすまいと、すかさず欲望をねじ込む。
「んあああっ」
狭い。熱い。うねり、奥へ奥へと招かれる。ようやくあるべき場所に帰って来れたのだと、心から安堵して泣けてきた。
「すまない、すまない、ハレナ」
独り善がりだと分かっていても、抱き締めれば謝罪が止まらなかった。
「ふ…、子供みたいに泣くんですね」
苦笑しつつ、ハレナの声もまた震えていた。
「もう離してやれない、すまない」
「いいですよ、ヴィレ。俺ももう離れたくない」
繋がったまま動きもせず、抱き締めて、唇を重ねて、互いを確認し合う。
「───あぁ、しあわせだ」
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