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5)家族 ─ ラウエリア/レミアナ視点
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しおりを挟むアウローラ姫とラウエリア姫が再会してから今日でちょうど半年。
1ヶ月ほど前には、アウローラ姫と英雄、およびラウエリア姫と宰相の合同結婚式が執り行われた。
民間の結婚式だってもっと準備に時間をかけるのに、よくこの短期間で───とレミアナは感心したものである。特にウェディングドレスの準備が間に合ったのが驚きだった。一着は英雄と姫を結婚させると決めた時に国王が注文していた物。もう一着は王家に代々伝わる物。前者はラウエリア姫が当時の宰相との結婚を決めた時にサイズを手直ししている。アウローラ姫が着ているのは後者だ。一から作成したのでは間に合わなかっただろう。手直しでさえギリギリ間に合ったようなものだった。
ドレスは最高級だったが、それ以外に関しては実に簡素な式だった。招待客は限定され、国外からの来賓は駐在大使のみ。式にも出られない国王の体調を理由に必要最低限にしたいとラウエリア姫が泣き真似をして、やたら大掛かりにしようと提案する連中───宰相に擦り寄ろうとする者達を一蹴したらしい。
そもそも、国王がいつ亡くなってもおかしくないほど衰弱している最中、本来なら結婚式など行えない。それでも国民に、次の王はラウエリア姫の夫になる宰相なのだと、大々的に示す、必要な式だった。幸せに溢れる主役達の笑顔に歓声が上がり、国民はその発表を祝福を持って受け入れていた。国王の容態と、幼い王子しか男児がいないことで国民に広まっていた政治への不安はこれである程度払拭されたと考えられる。
余談だが、姫2人分の結婚式を一度で済ませられる、更に披露宴は王の死後、喪が開けてから戴冠式とまとめて行える。国費の節約になる!と宰相はご機嫌だった。
アウローラ姫の結婚に断固反対していたラウエリア姫は、異母姉が嫁ぐのではなく、あくまでも英雄が王家に婿入りして、結婚後も城で暮らすなら、という条件で渋々許容した。恐らく宰相の入れ知恵だろう。
今まで王族らしい生活をしたことの無いアウローラ姫はギリギリまで拒んでいたし、そもそも平民の田舎育ちの英雄はアウローラ姫以上に嫌がっていたが、最終的にはラウエリア姫の泣き落としで決着した。城の敷地内に小さな離れを建てることで合意したらしい。とはいえ、ラウエリア姫の暮らす本宮とは渡し廊下で繋がる予定だそうで。恐らくしょっちゅう出入りするのだろうな、と予想している。その辺りは宰相も想定済みらしい。
本日、小雨の降る中、国葬が営まれている。アウローラ姫とラウエリア姫にとっては父親の葬儀だ。喪服姿の姫達は互いに支え合うように寄り添っていた。
レミアナは国葬には参加せず、荷造りをしている。解雇になって祖国に帰るというわけではない。明日の早朝には、アウローラ姫と英雄、他外交官やら護衛やらを引き連れた団体で旅に出るのだ。道中、様々な領地に足を運び、新王の名代として挨拶をして回るのである。最終的にはレミアナの祖国───隣国にも同様に挨拶をしてくる予定だ。
王家に婿入りした英雄は、現在、ソレイユ大公殿下を名乗っている。ソレイユはアウローラ姫の御母堂様の名義なのだという。必然的にアウローラ姫は大公妃殿下だ。今回の挨拶回りは、新王の名代であると同時に、新たな大公夫妻としての顔見せでもある。立派な社交、つまりお仕事だ。
───そう、お仕事であって、それぞれの新婚夫婦が適切な距離を維持するためにラウエリア姫───王妃に意地悪をしているわけではないのだ、たぶん。そんな仕事を仕組んだ新王は、ラウエリア王妃に三日程無視をされ、新婚なのに夫婦の寝室から締め出され落ち込んでいたらしい。お陰でラウエリア王妃はいつも以上にベッタリとアウローラ妃殿下にくっついて離れなかった。
アウローラ妃殿下を取り合い、子供のような低レベルな口喧嘩を繰り広げる大公と王妃など、とてもではないが臣下には見せられないものであり、どうしてもその場にはレミアナが付き添うはめになる。
侍女としてのスキルを身につけたレミアナは、王家の見せられない部分も任せられる存在として非常に重宝されている。今のところ解雇になる恐れは微塵もない。
息抜きにと、メモのように書き付けた日記をポケットにしまい、レミアナは伸びをする。小さな手帳は、ちょうどここまでで全ての頁が埋まってしまった。旅先で新しい物を買うか、事前に見繕うか、悩むところではある。
何だかんだで騒がしく賑やかな日々が続くのだろうと予感して、レミアナは微笑んだ。
[完]
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