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しおりを挟む「いや、何でお前、自分が俺に選ばれるって自信満々なんだよ!」
「生まれ変わっても忘れられていない時点で私の勝ちです!魂レベルで!───それともレーヴェル様は齢60を超えたジジイのシナジーに手篭めにされたいと?」
「は?てごめ?神子として神殿で担ぎ上げて利用するだけじゃなくて?」
神子として働くことで誰かを救えるなら、それもアリか?と少し思いかけていただけに、ケイニードの問い掛けに驚く。どうしてそうなるのか、今ひとつ理解できない。
「神子として働かせたいなら、大々的に神殿として神子が現れたと発表し、貴方様が逃げられなくなる状況を世間的に作ればいい。秘密裏に誘拐を目論むなど疚しい事がある証拠でしょう」
どんどん顔を近づけてくるケイニードに耳を撫でられ、レーヴェルの心臓が危機感に震える。
「ちょ、」
「あの男が欲するのは神子という存在です。前世で突然神聖力を失った貴方様を裏切ったあの男を私は許していません。神聖力を失ったのは過度な力の使い過ぎのせいであり、元は神殿が貴方様を散々酷使したせいでした。それが、神聖力が蘇った途端、再び手を伸ばしてくるなど………!」
レーヴェルは覚えてもいない前世に何があったのかなど興味が無いので深く問うことは無い。
そもそも、神殿にレーヴェルが見つかったのは、王弟令息であるケイニードが毎日繰り返し求婚するなどという目立つことをしたせいなのではないか?とレーヴェルは本気で疑っていた。
「んー、そのオッサン?が俺を手篭めにしたところで俺を犯そうとはしないと思う」
「私は今すぐにでも貴方様と繋がりたいのに?」
不埒な目で見られている自覚を持ってくれとケイニードが警告してくる。それをレーヴェルは鼻で笑った。
「そう、それだよ。神殿として秘密裏に実家へと根回しをして俺を呼び出すこともせずに、焦ったように寮を襲撃した理由」
「は?それ、ですか?」
神殿側が事を荒立てずに、秘密裏にレーヴェルを呼び寄せる方法などいくらでもあった。その手順を踏む余裕がなかった理由にヒントがある。
「聞いたことないか?神官っていうのは純潔じゃないとダメだって。もちろん建前だけで既婚者もいるけどな。その元々の由縁が神子だったとしたら?お前とセックスしたら俺はその神聖力とやらを失うんじゃないか?」
セックスという単語だけでケイニードは顔を真っ赤にして口をパクパクと開閉する。手篭めは平気で言う癖に、そこは照れるのかとレーヴェルは呆れた。
「どうせお前のことだから、警備の不備を指摘して、俺が狙われているのに離れるわけにはいかないとか主張して無理やりクラス変更してきたんだろ」
「は、はい。仰る通りです」
「当然、襲撃のあった寮に俺を置いておくわけがないから家に連れ帰る気満々で勝手に俺の外泊届け出してあるんだろ?」
「その通りです」
未だ顔を赤くして視線を泳がせているケイニードの首に抱きついて、頬にキスをしてやる。目を白黒させる様が微笑ましい。
「じゃ、ヤろうぜ、今夜」
「…今夜!?」
「俺を放す気ないなら覚悟を決めろ」
「しょ、初夜まで…」
「待ってる間に何かあったら後悔するだろ?それで神聖力が消えるとは限らないし出来ることはやっておこうぜ」
「や、あの、しかしですね、」
頭を抱えつつ、もう片手をレーヴェルの顔面に突きつけ、今更距離をとろうと足掻くケイニードが可愛く思える。
「ご両親に俺のことは既に話してあるんだろ?いくら友人枠でも事前調査なしに王族の住む家に俺を連れ帰れないだろうし、お前はその辺り抜かりなく万が一を想定して動いていたはずだ。昨夜動いたっていう護衛もその一環としか思えない」
「あ、はい。私が貴方と結婚することは伝えてあります。特に反対もされませんでした。一応父なりに貴方様のことは調査したようですが」
「………まだ俺は承諾してないのに、何で結婚することが確定してるんだ」
友人枠ではなく、既に伴侶枠だった。
「その、貴方様に冷遇されていた期間に話したので、友人という言い訳では納得して貰えず、単なる痴話喧嘩だと説明したので、少なくとも結婚を前提とした恋人と認識されています」
「……………」
レーヴェルが彼を認識できないままだったら一体どうするつもりだったのか。その場しのぎが酷すぎて言葉を失う。計画性があるのかないのか、行動力だけは確実にあるので恐ろしい。
「あの、怒ってます?」
「いや、呆れてる」
レーヴェルがイエスに踏み切れなかった理由の一部は既に片付いており、悩むだけ無駄だったらしい。己の空回り具合に呆れざるを得ない。もういっそ気になることは聞いてやればいいという気分になる。
「俺たちじゃ子供は出来ないが、家の相続はどうするんだ?」
「そもそも王弟というのは父の生まれに付随する1代限りのものですから後継者は必要ありません。私も成人したら平民になる予定です」
「は?平民?」
「領地運営なんて面倒じゃないですか。貴方様と共に居られる時間を削られるのは嫌です」
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