クズな俺たちの性夜

ひづき

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「イブから泊まりがけで酒飲もうぜ!」

 プハッと、ミツルは吹き出した。

「それもう単なる酒盛りじゃん!」





 ケイゴの住むのは1LDKのアパートだ。実家から近い場所にある。実家に留まらず、わざわざ一人暮らしを始めたのは一人部屋が欲しかったかららしい。彼には弟が3人もいる。みんな腕白で物静かなミツルとは相性が悪かった。ケイゴに比べて相手のペースに合わせるということをしない連中だった。

 何度も来るようにと誘われていたが、実際に来るのは初めてである。もし女の影があったら自分の中の醜い感情が溢れてしまうのではと怖かった。

「お邪魔します」

 立ち入ったケイゴの領域は、質素というか、簡素というか、色味がないというか。スッキリしていると言えば良いのだろうか。

「なんだよ、キョロキョロして」

「いや、こう、彼女との写真とか、ぬいぐるみとか、ないのかなって」

「言ったろ、今は女なんていないって。いても呼ばないけどな」

 過去形とはいえ一応恋人だったはずなのに、彼は女と呼ぶ。そのぞんざいな口ぶりに不快感を覚えた。相手に失礼だろうと思う、その一方で内心仄暗い喜びを覚えてしまう己が気持ち悪い。

「何で?」

「マーキングなのかマウントなのか、メスの本能ってヤツ?自分の存在を残そうと我が物顔でキッチンを片付け始めたり、よくわからん雑貨持ち込んだりしてさ。そういうのがウザくて」

「ふぅん…」

 立ち入りを許されたことを、喜ぶべきなのか嘆くべきなのか、よくわからない。許されている特別感と、交際対象として認識されていないから招かれたのだという事実への絶望感と。ぎゅっと固く目を閉じて渦巻く感情を追い払い、ミツルは表情を取り繕った。

 暖房器具をつけて、買ってきたスーパーのお惣菜を並べ、缶チューハイを置いて。クリスマスらしいのはコンビニで売っていたケーキくらいという、単なる酒盛り。



 途中ケイゴが水を零し、濡れてしまったミツルに謝りながら、着替えを貸すからシャワー浴びて泊まっていくよう提案した。ミツルの戸惑いも抵抗も、彼の強引さに押し切られる。

「まぁ、元々泊まる予定だったし、シャワーは借りるつもりだったけど…」

 ミツルが覚えたのは、ほんの少しの違和感。ケイゴがわざと水の入ったグラスを倒したように見えたのだ。どうも何か企んでいるらしい。企んでいるのはミツルも同じなので、ケイゴの企みに相殺されないことを祈るばかりだ。ないとは思うが、もし万が一彼からサプライズで結婚報告なんてされたら自分は驚きのあまり死ぬかもしれない。



 □□□□□□□□



「…、あ、」

 酔っただけにしては驚くほど暑い。いや、熱い?ぐわんぐわんと回る視界に、全力疾走後のような心臓の大騒ぎ。身体を支えきれず寝そべったミツルにケイゴが覆い被さる。

「大丈夫か?」

 本気で心配している声音だが、どことなく罪悪感に苛まれているような傷ついた表情のケイゴを見て、ミツルは息を呑んだ。

「ば…か…、なにを、のませ…」

「あー、バレたか。ヤリサーの飲み会で女に飲ませてるっていうヤツをちょこっと分けて貰ったんだよねぇ」

 それをミツルがシャワー浴びている間にちょっとだけ盛りましたと奴は白状する。動かない頭で、それって犯罪なのでは?とミツルは思った。

「ひゃ、んんん!」

 スウェット越しに、ない胸を揉まれ、乳首が生地で擦れて変な声が出た。声が漏れないよう、手で口元を覆い、耐える。暑い。熱い。衣服が煩わしい。

「あついぃ…」

 覆い被さっていたケイゴが上半身を起こして離れた隙に、スウェットを脱ぎ捨てて半裸になる。

「俺が脱がせたかったのに、残念」

「ばか」

 一時的に離れていたケイゴの手に、半透明のボトルが握られていた。中には透明な液体が入っている。

「暑いんだろ?ちょっとは涼しくなるといいな」

 キャップを外し、逆さまにしたボトルの先から粘度の高い液体が吹き出し、ぼたぼたとミツルの胸や腹に掛けられる。降り注ぐ局地的な冷たさに、ミツルの身体は驚いてビクビクと跳ねるように震えた。ヌルリとしたそれを塗り広げるようにケイゴの手が滑る。バスケボールを片手で掴める男の、ゴツゴツした手が平らな胸を撫で回し、指先で乳輪をなぞるように滑って。

「…ッ」

「胸突き出してエロいなぁ。そんなに触って欲しい?」

「ぁ、ん、さわって、ちくび、さわってぇ」

「えろ…」

 にゅるにゅると、くるくると、なぞりながら乳首を押し潰されると、待ち望んでいた決定打に身を捩る。

「んあ、そこぉ」

「あー、しくった。ローションぶっかける前に舐めておきゃ良かった。吸い付きてぇ」

 ハァハァと呼吸を荒らげながら獣のように唸るケイゴを、ミツルは不思議そうに見上げた。ケイゴは巨乳好きだったはず。男だし、鍛えているわけでもない貧弱なミツルは貧乳に分類されるだろう。それを前に、彼はどうしてこんなに興奮しているのか。

「そんなに、えろい?」

「えろい。もう俺、ギンギン」

 ここぞとばかりに両乳首を転がされる。どうやらお気に召したらしい。

「ば、かぁ、そこ…ばっかりぃ」

 ローションのお陰で痛くは無いが、ぬるりぬるりと分散される刺激がなかなかもどかしい。ミツルはもぞもぞと内股を擦り合わせる。


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