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10 お久しぶり
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シスイがあてがわれた部屋でうとうとしているとコンコン、とノックの音がした。ふらふらしながらペット用ドアから頭を出すと二人の近衛兵がいた。
「シスイ様 昼食の準備ができております。こちらへお越しください」
シスイはおとなしく近衛について歩いた。
着いたところは広い食堂だ。大きなテーブルが置いてあり、二十人くらい座れそうである。シスイは席に案内されて座って待った。
するとユークリッドと背の高い美しい装いの女性が執務室に入ってきた。その女性は席についているシスイが目に入るやいなや、
「シ……シスイちゃあああんん!!」
とガッシといきなり抱きあげて席から引きはなし、ギューッとしてきた。苦しくてもがもがする。
「苦しそうだぞ。それに、それで誰だかわかるのか。シスイ、これは王妃で……」
「あっそうか。私よ~~!」
と、鼻先に顔を突きだす。
(あっ、俺を世話してくれてたマリーザさん!? わあ! 相変わらずキレイだけど近いよ! 大丈夫なの奥さんにこれは)
不安になってユークリッドを見ると。
「そろそろシスイを返せ」
ブレないユークリッドだった。そして返されなかった。
マリーザに肉球をにぎにぎされたまま話を聞くと、マリーザはユークリッドについてここに来たあと、二人でシスイの話をして慰めあっているうちに結婚するコトになったそうだ。結婚五年になるらしい。
シスイは二人を交互に見てしっぽをぶんぶん振ることでお祝いを示した。
「喜んでくれるの~? ありがとうね」
マリーザはシスイの鼻にちゅっとした。キスをされたシスイはカーッと汗が吹きでるのを感じた。
心臓のドキドキが治まると、気まずそうにユークリッドに向かってぺこりとした。ユークリッドは立ちあがった。
「私もする」
(いらん!!)
シスイは両手で鼻を抑えて隠した。折良くそこに食事が運ばれてきて事なきを得た。
シスイの食事はありがたいことに人間用で、食べやすいようになっている。王宮に来て初めてともにする食事なので、こういう形式にしたそうだ。
これからの食事もこういう形式を取るか聞かれたが、できたら食堂に行きたい。あとで頼もうとシスイは決意した。
それから食事中の語らいで、実は二人にはニ歳の息子がいるのを知った。まだ小さいので部屋で子供用の小さいテーブルについて食事を取っているということだ。夕方会いに行くことになった。
午後になり、シスイは謁見の間の控室に連れてこられた。ユークリッドと二人でしばらく待たされる。
「これからこの国の宰相、内務長官、財務長官、法務長官、外務長官、それから各騎士団長、魔術師長らと謁見する。お前が聖獣であること、この国の成立に深く関わっていることを申し伝える」
シスイはごくりと喉を鳴らした。そんな偉い人たちを上から見るなんて冷や汗ものである。
「お前が一番偉くて強くてかわいいのだから緊張する必要などない」
そんなこと言われても無理である。近衛隊長のシズラーが呼びに来たが、手と足がもつれそうだ。どうにか所定の位置につきおすわりをする。広間に十数名の頭が並んでいた。
「おもてを上げよ」
一段下に立ったシャールのひと声で一同はこちらを向いた。みなシスイを見ている。キラキラした目で見ている。シスイはビクッとなった。
「こちらは神獣シスイ様である。八年前、陛下を龍よりお守りしたさいに力を失っておられたが、再び陛下のもとへ帰ってこられ、これからも陛下をお守りしていただける運びとなった」
広間の臣下らはいっせいに跪いた。シスイは再びビクッとなった。
「楽にせよ」
ユークリッドが声をかけた。
「シスイが帰ってきてくれたことは僥倖である」
その後、シスイを褒めたたえる言葉がえんえんと続く。
「――――しかしながら聖獣を世のことわりに縛りつけることなどできぬ。何ごとにも縛られず、心安らかに過ごせるよう配慮せよ」
「「「はっ!」」」
要するに、自由にうろうろするからヨロシクね、ということだ。
「わふ」
シスイもいちおう挨拶しておいた。場がどよめく。
いったん謁見は終了となり、ユークリッドとシスイは退場した。あとは残って詳しく話を詰めるようだ。
謁見のあと、執務室のユークリッドの足下でもふられながら過ごし、夕方になってからユークリッドといっしょに王妃の客間に行った。
「シスイちゃーん! 待ってたわよ。お茶にしましょうね」
そこへ侍女が子どもを抱っこして入室してきた。色白でバラ色のほっぺた、金髪碧眼の天使ちゃんである。シスイは目を丸くした。
「シスイちゃん、この子はシスラン。シスイちゃんの名前を貰ったの。二歳よ」
シスランをシスイの前に下ろして紹介する。
「わんわん! おすわりして!」
シスランはシスイを指さして言った。シスイは悶えた。ユークリッドにそっくり! かわいすぎる!
そしてシスランは伏せて触りやすくしたシスイの耳をぎゅううっと握ってみたり、背中に乗って落ちてみたり、しっぽをうっかり踏んづけたりしたが、かわいいものはかわいい。
「なんとかわいらしい。そうだ、家族の肖像画を描かせよう」
何を言いだすんだとシスイは面倒臭そうにユークリッドを見た。
ところが、すごい肖像画家がいるそうで、じっとしてなくても、こうやって遊んでいるだけで素晴らしい肖像画ができあがるんだそうだ。数日後、みんなで並んでいる美しい肖像画ができあがったのだった。
朝早くシスイは目が覚めた。夕べは疲れてしまって早々に部屋に帰り、収納に入れていた軽食を食べて寝てしまったのだ。
せっかくなので、昔のように騎士団の鍛錬を見に行くことにした。隣に騎士団棟があるのが見えたので行ってみればわかるだろう。
騎士団棟まで来ると、騎士たちがシスイに気がついて囲まれてしまった。
「聖獣シスイ様! 俺聖獣様って凄く神聖でなかなか会えないと思ってた」
「生きてるうちにお会いできるとは。触らせて頂くことは可能だろうか」
「何!? そんな不敬なことを! けしからん!」
ギラギラした目で大柄な騎士たちに囲まれて、シスイはちょっと怖くなり、耳が後ろにぺたんとくっついた。
そこで上司らしき騎士が走ってきて囲んでいた騎士たちの頭を無言で順番にスパーンと叩き、シスイは助けられた。節度は保って頂きたい。
「シスイ、俺のこと覚えてる?」
その上司の騎士が突然自分をさしてシスイに聞いた。シスイは見たことあるけど……? と頭を傾けている。
「俺だよ、セザール! イーダン王国から移ってきたんだよ」
シスイはびっくりしてじーっとその騎士の顔を見たあと、立ちあがってセザールの腹辺りに手をかけ、ぴょんぴょん飛んだ。
「わう!」
「覚えてくれてた? どこに行ってたんだ、シスイ。陛下が落ち込んでとても見ていられなかったぞ。俺も寂しかった!」
セザールは八年たって、ひょろりとしていた身体に少し筋肉がつき、ダークブルーの髪を後ろだけ伸ばしてしっぽのように結んでいた。しかも出世して第三騎士団の団長になっていた。カッコよくなっていて、さっき広間で会ったはずなのに気がつかなかったのだ。
このアングレア王国では、第一騎士団は近衛、第二騎士団は街の警備、セザールの所属する第三騎士団は魔獣を退治しているそうだ。第四騎士団は国境警備であちこちに常駐していて普段はいない。
鍛錬場ではほかの騎士団の騎士たちも鍛錬していて、セザールを羨ましそうに遠目で見ている。
今日は見学だけして、朝食はセザールについて騎士団棟の食堂に行くことになった。犬用のも頼むそうだ。犬じゃないし人間のでもイケるんじゃ、とシスイは思った。
食堂に着くと、シスイは数人にまた囲まれた。イーダンから来た人だ。――――あと犬好き。八年たって老けている人も、あまり変わらない人もいる。イーダンから来た人はみんなユークリッドが赴任するときに騎士団を辞めてついてきたそうだ。
「うわ、もふもふ!」
「おい、俺にも触らせろ! 譲れ!」
「次は俺だ! お前はさっき触っただろう!」
知らない人にまでもみくちゃにされたシスイは、ほうほうのていでユークリッドのところに転がりこんだ。
王の仕事は午前中は謁見、午後は執務になっている。シスイは謁見について行き、邪魔しないよう端のほうから見守った。本日の謁見の相手は、ぐちぐちしつこく、説教くさいお爺ちゃんだった。
謁見を終えて執務室に戻ったユークリッドはシスイを思う存分もふった。随分疲れているように見える。心配でシスイはおとなしくもふられた。
「シスイ。昼食は私はいつもここで済ませている。お前のも運ばせるとしよう」
朝食のことがあったため、シスイもそのほうが助かる。人間用のものを運んでもらい、人払いして人化して食事をした。
「そういえばさっきのお爺ちゃん誰だったの?」
「ハラール侯爵だ。アングレア領に隣接する……ルイーズの祖父にあたる。ルイーズはマリーザと結婚する前に話のあった女性だ」
「ルイーズさんて……ああ」
ユークリッドと街に出かけたときに、ユークリッドの兄がくっつけようといた女性だろう。
「第二王妃として押し付けられそうなのだ。断っているのだが」
「ええっ! なんでいまさら? ユークリッドが好きなの? それとも政略結婚?」
「ルイーズは昔から私のことを自分のものだと思っている。孫かわいさと、もちろん何らかの思惑はあるだろうな」
慧吾はうへえという表情だ。人間ではモテなくて良かったと内心思っていそうだ。
昼からは、今度は有能そうな中年の侍女長が王宮の中を案内してくれた。侍女たちにはチラチラ見られたが、侍女長の視線にブロックされて無事だった。
王宮で働く人々にもほとんど認知されたことで、シスイは自由に王宮内をうろつけるようになった。ついでに「聖獣様にはむやみに触らない」ことも周知されたのだった。
夕方にはまたシスランと遊び、夕食は王宮の食堂。この流れで一日を過ごすようになり、数日が過ぎた。
「シスイ様 昼食の準備ができております。こちらへお越しください」
シスイはおとなしく近衛について歩いた。
着いたところは広い食堂だ。大きなテーブルが置いてあり、二十人くらい座れそうである。シスイは席に案内されて座って待った。
するとユークリッドと背の高い美しい装いの女性が執務室に入ってきた。その女性は席についているシスイが目に入るやいなや、
「シ……シスイちゃあああんん!!」
とガッシといきなり抱きあげて席から引きはなし、ギューッとしてきた。苦しくてもがもがする。
「苦しそうだぞ。それに、それで誰だかわかるのか。シスイ、これは王妃で……」
「あっそうか。私よ~~!」
と、鼻先に顔を突きだす。
(あっ、俺を世話してくれてたマリーザさん!? わあ! 相変わらずキレイだけど近いよ! 大丈夫なの奥さんにこれは)
不安になってユークリッドを見ると。
「そろそろシスイを返せ」
ブレないユークリッドだった。そして返されなかった。
マリーザに肉球をにぎにぎされたまま話を聞くと、マリーザはユークリッドについてここに来たあと、二人でシスイの話をして慰めあっているうちに結婚するコトになったそうだ。結婚五年になるらしい。
シスイは二人を交互に見てしっぽをぶんぶん振ることでお祝いを示した。
「喜んでくれるの~? ありがとうね」
マリーザはシスイの鼻にちゅっとした。キスをされたシスイはカーッと汗が吹きでるのを感じた。
心臓のドキドキが治まると、気まずそうにユークリッドに向かってぺこりとした。ユークリッドは立ちあがった。
「私もする」
(いらん!!)
シスイは両手で鼻を抑えて隠した。折良くそこに食事が運ばれてきて事なきを得た。
シスイの食事はありがたいことに人間用で、食べやすいようになっている。王宮に来て初めてともにする食事なので、こういう形式にしたそうだ。
これからの食事もこういう形式を取るか聞かれたが、できたら食堂に行きたい。あとで頼もうとシスイは決意した。
それから食事中の語らいで、実は二人にはニ歳の息子がいるのを知った。まだ小さいので部屋で子供用の小さいテーブルについて食事を取っているということだ。夕方会いに行くことになった。
午後になり、シスイは謁見の間の控室に連れてこられた。ユークリッドと二人でしばらく待たされる。
「これからこの国の宰相、内務長官、財務長官、法務長官、外務長官、それから各騎士団長、魔術師長らと謁見する。お前が聖獣であること、この国の成立に深く関わっていることを申し伝える」
シスイはごくりと喉を鳴らした。そんな偉い人たちを上から見るなんて冷や汗ものである。
「お前が一番偉くて強くてかわいいのだから緊張する必要などない」
そんなこと言われても無理である。近衛隊長のシズラーが呼びに来たが、手と足がもつれそうだ。どうにか所定の位置につきおすわりをする。広間に十数名の頭が並んでいた。
「おもてを上げよ」
一段下に立ったシャールのひと声で一同はこちらを向いた。みなシスイを見ている。キラキラした目で見ている。シスイはビクッとなった。
「こちらは神獣シスイ様である。八年前、陛下を龍よりお守りしたさいに力を失っておられたが、再び陛下のもとへ帰ってこられ、これからも陛下をお守りしていただける運びとなった」
広間の臣下らはいっせいに跪いた。シスイは再びビクッとなった。
「楽にせよ」
ユークリッドが声をかけた。
「シスイが帰ってきてくれたことは僥倖である」
その後、シスイを褒めたたえる言葉がえんえんと続く。
「――――しかしながら聖獣を世のことわりに縛りつけることなどできぬ。何ごとにも縛られず、心安らかに過ごせるよう配慮せよ」
「「「はっ!」」」
要するに、自由にうろうろするからヨロシクね、ということだ。
「わふ」
シスイもいちおう挨拶しておいた。場がどよめく。
いったん謁見は終了となり、ユークリッドとシスイは退場した。あとは残って詳しく話を詰めるようだ。
謁見のあと、執務室のユークリッドの足下でもふられながら過ごし、夕方になってからユークリッドといっしょに王妃の客間に行った。
「シスイちゃーん! 待ってたわよ。お茶にしましょうね」
そこへ侍女が子どもを抱っこして入室してきた。色白でバラ色のほっぺた、金髪碧眼の天使ちゃんである。シスイは目を丸くした。
「シスイちゃん、この子はシスラン。シスイちゃんの名前を貰ったの。二歳よ」
シスランをシスイの前に下ろして紹介する。
「わんわん! おすわりして!」
シスランはシスイを指さして言った。シスイは悶えた。ユークリッドにそっくり! かわいすぎる!
そしてシスランは伏せて触りやすくしたシスイの耳をぎゅううっと握ってみたり、背中に乗って落ちてみたり、しっぽをうっかり踏んづけたりしたが、かわいいものはかわいい。
「なんとかわいらしい。そうだ、家族の肖像画を描かせよう」
何を言いだすんだとシスイは面倒臭そうにユークリッドを見た。
ところが、すごい肖像画家がいるそうで、じっとしてなくても、こうやって遊んでいるだけで素晴らしい肖像画ができあがるんだそうだ。数日後、みんなで並んでいる美しい肖像画ができあがったのだった。
朝早くシスイは目が覚めた。夕べは疲れてしまって早々に部屋に帰り、収納に入れていた軽食を食べて寝てしまったのだ。
せっかくなので、昔のように騎士団の鍛錬を見に行くことにした。隣に騎士団棟があるのが見えたので行ってみればわかるだろう。
騎士団棟まで来ると、騎士たちがシスイに気がついて囲まれてしまった。
「聖獣シスイ様! 俺聖獣様って凄く神聖でなかなか会えないと思ってた」
「生きてるうちにお会いできるとは。触らせて頂くことは可能だろうか」
「何!? そんな不敬なことを! けしからん!」
ギラギラした目で大柄な騎士たちに囲まれて、シスイはちょっと怖くなり、耳が後ろにぺたんとくっついた。
そこで上司らしき騎士が走ってきて囲んでいた騎士たちの頭を無言で順番にスパーンと叩き、シスイは助けられた。節度は保って頂きたい。
「シスイ、俺のこと覚えてる?」
その上司の騎士が突然自分をさしてシスイに聞いた。シスイは見たことあるけど……? と頭を傾けている。
「俺だよ、セザール! イーダン王国から移ってきたんだよ」
シスイはびっくりしてじーっとその騎士の顔を見たあと、立ちあがってセザールの腹辺りに手をかけ、ぴょんぴょん飛んだ。
「わう!」
「覚えてくれてた? どこに行ってたんだ、シスイ。陛下が落ち込んでとても見ていられなかったぞ。俺も寂しかった!」
セザールは八年たって、ひょろりとしていた身体に少し筋肉がつき、ダークブルーの髪を後ろだけ伸ばしてしっぽのように結んでいた。しかも出世して第三騎士団の団長になっていた。カッコよくなっていて、さっき広間で会ったはずなのに気がつかなかったのだ。
このアングレア王国では、第一騎士団は近衛、第二騎士団は街の警備、セザールの所属する第三騎士団は魔獣を退治しているそうだ。第四騎士団は国境警備であちこちに常駐していて普段はいない。
鍛錬場ではほかの騎士団の騎士たちも鍛錬していて、セザールを羨ましそうに遠目で見ている。
今日は見学だけして、朝食はセザールについて騎士団棟の食堂に行くことになった。犬用のも頼むそうだ。犬じゃないし人間のでもイケるんじゃ、とシスイは思った。
食堂に着くと、シスイは数人にまた囲まれた。イーダンから来た人だ。――――あと犬好き。八年たって老けている人も、あまり変わらない人もいる。イーダンから来た人はみんなユークリッドが赴任するときに騎士団を辞めてついてきたそうだ。
「うわ、もふもふ!」
「おい、俺にも触らせろ! 譲れ!」
「次は俺だ! お前はさっき触っただろう!」
知らない人にまでもみくちゃにされたシスイは、ほうほうのていでユークリッドのところに転がりこんだ。
王の仕事は午前中は謁見、午後は執務になっている。シスイは謁見について行き、邪魔しないよう端のほうから見守った。本日の謁見の相手は、ぐちぐちしつこく、説教くさいお爺ちゃんだった。
謁見を終えて執務室に戻ったユークリッドはシスイを思う存分もふった。随分疲れているように見える。心配でシスイはおとなしくもふられた。
「シスイ。昼食は私はいつもここで済ませている。お前のも運ばせるとしよう」
朝食のことがあったため、シスイもそのほうが助かる。人間用のものを運んでもらい、人払いして人化して食事をした。
「そういえばさっきのお爺ちゃん誰だったの?」
「ハラール侯爵だ。アングレア領に隣接する……ルイーズの祖父にあたる。ルイーズはマリーザと結婚する前に話のあった女性だ」
「ルイーズさんて……ああ」
ユークリッドと街に出かけたときに、ユークリッドの兄がくっつけようといた女性だろう。
「第二王妃として押し付けられそうなのだ。断っているのだが」
「ええっ! なんでいまさら? ユークリッドが好きなの? それとも政略結婚?」
「ルイーズは昔から私のことを自分のものだと思っている。孫かわいさと、もちろん何らかの思惑はあるだろうな」
慧吾はうへえという表情だ。人間ではモテなくて良かったと内心思っていそうだ。
昼からは、今度は有能そうな中年の侍女長が王宮の中を案内してくれた。侍女たちにはチラチラ見られたが、侍女長の視線にブロックされて無事だった。
王宮で働く人々にもほとんど認知されたことで、シスイは自由に王宮内をうろつけるようになった。ついでに「聖獣様にはむやみに触らない」ことも周知されたのだった。
夕方にはまたシスランと遊び、夕食は王宮の食堂。この流れで一日を過ごすようになり、数日が過ぎた。
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