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陽川花火編
第六話 愛すること⑥
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入れ替わりで花火が脱衣所に入っていく。そういえば脱いだ服をそのままにしてしまったと気付いたが、花火がお風呂に入っているのに中に入るのは流石にどうかと思うので、諦めて二階への階段を上った。
二階に上がってすぐの畳部屋に、布団が二つ並べてあるのが見えた。物があまりない部屋だが、制服が壁に掛けられているのを見ると、花火の部屋なのだろう。電気は点けたままで、奥の布団に横になる。
今日は疲れているから、よく眠れるだろうと思ったけれど、どうしてか目が冴えていた。慣れない環境のせいなのか、それとも余計なことを考えてしまったせいなのだろうか。
「あれ? まだ寝てなかったのか?」
しばらくして風呂から上がってきたのだろう、花火が来て部屋の電気を消し隣の布団に横になった。布団は離れているが、互いに手を伸ばせば届きそうだ。
「……ねえ、花火」
「ん? どうした?」
花火がごろんと寝返りを打って、僕の方に身体を向ける。暗くても目が合ったのが分かって、どきりとする。僕は恐る恐る布団から手を出した。
「手、握って寝てもいい……?」
返事が無い。もしかして呆れられてしまったのだろうか、と思った時、花火が起き上がった。かと思うと、僕の身体に掛かっている布団が捲り上げられる。
「奥に詰めて」
何が起こっているのか分からないまま身体を端の方に避けると、目の前に大きな影が横たわり、僕の手を握った。
「これでいいだろ」
目の前に花火の顔があって、心臓が早鐘を打ち、触れたい衝動に駆られた。しかし、花火は人に触れられることを恐れる。手を伸ばしたくても、伸ばせない。
「……キスしたいって言ったら、嫌?」
花火の顔をじっと見詰めると、「いいよ」と小さな声で答えた。僕は目を閉じ、自分からは触れないようにして待った。
一瞬触れるだけのキスだった。けれど、花火の乾いた唇の感触と彼が震えているのが伝わる。そして、手のぬくもりと唇の感触、吐く息も届く距離に、身体が熱を持っていることに気付いた。
「ごめん、花火……興奮してきたかも」
「ははっマジか!」
最近夢精で勝手に排出されることばかりで、自慰をしていなかったせいか、身体中の血が沸騰しているかのように熱くなっている。
「花火は?」
「俺は……緊張してるからさ」
花火は優しい。本当は僕とこの距離に居るのも怖くて震えているのに、「緊張してるから」なんて言ってくれるのだから。
「その代わり手伝うぜ」
「……え?」
「自慰、するんだろ?」
何を言っているのか分からなかった。が、花火が僕のズボンの中に手を差し入れてきてようやく意味が理解できた。花火は触るのは良いのだ。
「あっ……」
パンツの中のものに手が触れて思わず声が漏れた。尖端はすでに湿り気を帯びている。
「もう硬くなってるな。普通に扱けばいいか?」
「うん……でもちょっと待って……」
僕はズボンを膝の辺りまで下ろし、自分の指を舐めて唾液を絡ませた。そしてその指を孔に一本、二本と挿入する。
「何してんだ?」
「っん……おしりに指、挿入れて……いじっ、てる……」
花火の前でなんてはしたないことをしているのかと思うけれど、結局前だけだと足りないと自分のことはよく分かっている。それにもう、身体が熱くて仕方なく、早く刺激が欲しいと急いていた。
二階に上がってすぐの畳部屋に、布団が二つ並べてあるのが見えた。物があまりない部屋だが、制服が壁に掛けられているのを見ると、花火の部屋なのだろう。電気は点けたままで、奥の布団に横になる。
今日は疲れているから、よく眠れるだろうと思ったけれど、どうしてか目が冴えていた。慣れない環境のせいなのか、それとも余計なことを考えてしまったせいなのだろうか。
「あれ? まだ寝てなかったのか?」
しばらくして風呂から上がってきたのだろう、花火が来て部屋の電気を消し隣の布団に横になった。布団は離れているが、互いに手を伸ばせば届きそうだ。
「……ねえ、花火」
「ん? どうした?」
花火がごろんと寝返りを打って、僕の方に身体を向ける。暗くても目が合ったのが分かって、どきりとする。僕は恐る恐る布団から手を出した。
「手、握って寝てもいい……?」
返事が無い。もしかして呆れられてしまったのだろうか、と思った時、花火が起き上がった。かと思うと、僕の身体に掛かっている布団が捲り上げられる。
「奥に詰めて」
何が起こっているのか分からないまま身体を端の方に避けると、目の前に大きな影が横たわり、僕の手を握った。
「これでいいだろ」
目の前に花火の顔があって、心臓が早鐘を打ち、触れたい衝動に駆られた。しかし、花火は人に触れられることを恐れる。手を伸ばしたくても、伸ばせない。
「……キスしたいって言ったら、嫌?」
花火の顔をじっと見詰めると、「いいよ」と小さな声で答えた。僕は目を閉じ、自分からは触れないようにして待った。
一瞬触れるだけのキスだった。けれど、花火の乾いた唇の感触と彼が震えているのが伝わる。そして、手のぬくもりと唇の感触、吐く息も届く距離に、身体が熱を持っていることに気付いた。
「ごめん、花火……興奮してきたかも」
「ははっマジか!」
最近夢精で勝手に排出されることばかりで、自慰をしていなかったせいか、身体中の血が沸騰しているかのように熱くなっている。
「花火は?」
「俺は……緊張してるからさ」
花火は優しい。本当は僕とこの距離に居るのも怖くて震えているのに、「緊張してるから」なんて言ってくれるのだから。
「その代わり手伝うぜ」
「……え?」
「自慰、するんだろ?」
何を言っているのか分からなかった。が、花火が僕のズボンの中に手を差し入れてきてようやく意味が理解できた。花火は触るのは良いのだ。
「あっ……」
パンツの中のものに手が触れて思わず声が漏れた。尖端はすでに湿り気を帯びている。
「もう硬くなってるな。普通に扱けばいいか?」
「うん……でもちょっと待って……」
僕はズボンを膝の辺りまで下ろし、自分の指を舐めて唾液を絡ませた。そしてその指を孔に一本、二本と挿入する。
「何してんだ?」
「っん……おしりに指、挿入れて……いじっ、てる……」
花火の前でなんてはしたないことをしているのかと思うけれど、結局前だけだと足りないと自分のことはよく分かっている。それにもう、身体が熱くて仕方なく、早く刺激が欲しいと急いていた。
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