60 / 75
陽川花火編
第四話 募る想い⑧
しおりを挟む
「……でも、最近は花火と遊びに出掛けたりもしているので、勉強ばかりでも……」
「ああ、そうだったな。うちの馬鹿息子が連れ回して、お前さんに迷惑掛けてんじゃあねえかと思ってたが、いいガス抜きになってんなら良かった」
「迷惑なんて」、と言いかけたところで、花火が天ぷらが山盛りになった大皿を持って入ってくる。揚げ物が出てくるとは珍しい。
「一温は勉強しなくても勉強出来るんだから、余計なお世話だよなぁ?」
「お前はちょっとは見習え!」
と、説教が始まりそうな雰囲気を察知したのかそそくさと皿をテーブルに置いて台所に戻っていく。
「あの、僕も何か手伝った方が……」
「いい、いい。あいつにやらせとけ。客なんだから座ってればいいんだ」
確かに慣れていない僕が中途半端に手を出しても邪魔にしかならない。花火が求めていないことを僕がやるのは迷惑だろう。花火が次々に盆に載せて副菜、味噌汁、ご飯と順に手際よく運んでくるので、僕のしようとしたことは余計なことだったと思う。
「今日は一温が居るから、天ぷらにしたぜ。いっぱい食えよ」
箸と麦茶を注いだコップを渡される。花火のお父さんも「そうだぞ、遠慮しなくていいぞ」と言う。二人して僕に食事を勧めてくるので、僕はそんなにひ弱に見えるのだろうか、と思ってしまった。
「……いただきます」
二人に見られながら手を合わせて、味噌汁を飲む。実家に居た頃は、出前や出来合いのものを食べることもあったが、最近はずっと口にしてなかった。久しぶりの味噌汁の味に思わず吐息を漏らす。
「お前、味噌汁も久しぶりとか言いそう」
「……何で分かったの?」
僕の心を読むような台詞に驚いていると、花火が大きく溜息を吐き、花火のお父さんは目を見張っている。
「なあ親父……一温に今度から晩飯も食わせてやろうぜ」
「ああ、それがいいな……」
二人してしみじみと感じ入るように言うので、自分の食生活についても一般的ではないのかと不安になった。
「でも……」
「迷惑、とか無いからな! 俺が一温に飯食わせてぇだけなんだからさ」
花火にまた僕の言おうとすることを読まれてしまった。そして、僕が気兼ねしないようにか、いつも「自分がしたいだけ」という言い方をする。大雑把に見えて細やかな気遣いのできる人だ。
「ま、無理にとは言わねえけど、俺は一温と親父と飯食う方が楽しいし。たまになら良いだろ?」
厚意に甘えても良いのだろうか、と花火と花火のお父さんの顔を交互に見る。僕の言葉を待つように、二人とも笑みを浮かべている。
「……うん」
小さく頷くと、花火は「やった」と尖った犬歯を覗かせて笑い、「いただきます」と鶏の天ぷらをつゆにつけて一口で食べた。ぼうっとその表情を、仕草を見詰めていること気づき、慌てて副菜のひじき煮に箸を付ける。胸の辺りに違和感を覚えながら。
食事をしながら、テレビのニュース番組を観た。政治の話題に、花火のお父さんが文句を言ったり、野球やサッカー、格闘技の試合結果に花火が喜んだり落胆したりする。そして南瓜の天ぷらが美味しいとか、好物の天ぷらは何かを言い合ったりした。
「ああ、そうだったな。うちの馬鹿息子が連れ回して、お前さんに迷惑掛けてんじゃあねえかと思ってたが、いいガス抜きになってんなら良かった」
「迷惑なんて」、と言いかけたところで、花火が天ぷらが山盛りになった大皿を持って入ってくる。揚げ物が出てくるとは珍しい。
「一温は勉強しなくても勉強出来るんだから、余計なお世話だよなぁ?」
「お前はちょっとは見習え!」
と、説教が始まりそうな雰囲気を察知したのかそそくさと皿をテーブルに置いて台所に戻っていく。
「あの、僕も何か手伝った方が……」
「いい、いい。あいつにやらせとけ。客なんだから座ってればいいんだ」
確かに慣れていない僕が中途半端に手を出しても邪魔にしかならない。花火が求めていないことを僕がやるのは迷惑だろう。花火が次々に盆に載せて副菜、味噌汁、ご飯と順に手際よく運んでくるので、僕のしようとしたことは余計なことだったと思う。
「今日は一温が居るから、天ぷらにしたぜ。いっぱい食えよ」
箸と麦茶を注いだコップを渡される。花火のお父さんも「そうだぞ、遠慮しなくていいぞ」と言う。二人して僕に食事を勧めてくるので、僕はそんなにひ弱に見えるのだろうか、と思ってしまった。
「……いただきます」
二人に見られながら手を合わせて、味噌汁を飲む。実家に居た頃は、出前や出来合いのものを食べることもあったが、最近はずっと口にしてなかった。久しぶりの味噌汁の味に思わず吐息を漏らす。
「お前、味噌汁も久しぶりとか言いそう」
「……何で分かったの?」
僕の心を読むような台詞に驚いていると、花火が大きく溜息を吐き、花火のお父さんは目を見張っている。
「なあ親父……一温に今度から晩飯も食わせてやろうぜ」
「ああ、それがいいな……」
二人してしみじみと感じ入るように言うので、自分の食生活についても一般的ではないのかと不安になった。
「でも……」
「迷惑、とか無いからな! 俺が一温に飯食わせてぇだけなんだからさ」
花火にまた僕の言おうとすることを読まれてしまった。そして、僕が気兼ねしないようにか、いつも「自分がしたいだけ」という言い方をする。大雑把に見えて細やかな気遣いのできる人だ。
「ま、無理にとは言わねえけど、俺は一温と親父と飯食う方が楽しいし。たまになら良いだろ?」
厚意に甘えても良いのだろうか、と花火と花火のお父さんの顔を交互に見る。僕の言葉を待つように、二人とも笑みを浮かべている。
「……うん」
小さく頷くと、花火は「やった」と尖った犬歯を覗かせて笑い、「いただきます」と鶏の天ぷらをつゆにつけて一口で食べた。ぼうっとその表情を、仕草を見詰めていること気づき、慌てて副菜のひじき煮に箸を付ける。胸の辺りに違和感を覚えながら。
食事をしながら、テレビのニュース番組を観た。政治の話題に、花火のお父さんが文句を言ったり、野球やサッカー、格闘技の試合結果に花火が喜んだり落胆したりする。そして南瓜の天ぷらが美味しいとか、好物の天ぷらは何かを言い合ったりした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる