アネモネの花

藤間留彦

文字の大きさ
上 下
48 / 75
陽川花火編

第三話 再会③

しおりを挟む
「…ふぅ」
僕はベッドの上で軽く息を吐いた。
やっと体調も回復したのに父さん達は僕がベッドから出るのをまだ許してくれない。
「…ひま」
暇つぶしのものは本とスマホしかないし。
…夏が言ってたゲームやってみようかな。
僕は記憶を頼りにいくつかゲームを入れてみた。
「…えっと…これを押せばいいの?」


「…ゆず?」
「な…なつぅ!!これどうすればいいの!?」
扉から顔をのぞかせた夏に僕は泣きながら抱きついた。
「げ…げーむやってたらね…しらないひとに…はなしかけられて…」
「え?みせて?」
夏は僕のスマホを見ると…
「なんだ。ほかのプレイヤーか」
「…どうすればいいの?」
「ともだちになるか、ならないかってだけだよ?」
…友達?
ゲームの中なのに?
「てかこれなつのやってるゲーム?…ゆず…もしかしてきょうみあるの?」
「ううん。ひまだったから」
「そか」
夏はベッドに上がり、僕と一緒に大きな枕にもたれ、自分のスマホを出した。
「じゃあなつとフレンドとうろくしよ?」
「ふれんどとーろく?」
「ともだちになってたすけあってゲームするの」
「…する」
わかんないし。
夏がいれば怖くない。


「…ひっ!!」
僕は急に怖くなってスマホを投げ出した。
「ゆず?」
「こ…こわい!!」
僕は夏にぎゅーっと抱きついた。
「…夏。柚はどうしたんだい?」
「わかんないけど…きゅうにこわいって」
「夏。何があったのか母さんに話してくれる?」
「かぁしゃん!!」
僕は母さんの胸に顔を擦り寄せた。
「なつと…げーむしてたの」
「うん」
「そしたらね…しらないひとがはなしかけてきて…」
「それで?」
「『いくつ?』ってきかれたから…さんさいってこたえたの…そしたらね『いいなぁ。おじさんとともだちにならない?』って…」
「…怖いところはないと思うけど…」
「そのあとにね…いっぱいぷれぜんとくれたの。『リアルでもあおうね』って…りあるって…げんじつってことでしょ?しらないひとこわいの…」
「…夏。そのゲームのプレイヤー調べられる?」
「わかんない。けどゆずのスマホここにあるよ?」
夏は僕の捨てたスマホを取り上げた。
「ちょっと貸して」
「はい」
父さんはいくつか操作をして…
「…ちっ。逃げたか」
「なんとか出来ないの?」
「出来ない。…けどプレイヤー名は知れたからね。通報くらいは出来るんじゃないかな。夏、近づいてきたら教えて」
「わかった!!」
母さんはその間もずっと僕を抱きしめて背中を撫でてくれた。
「大丈夫よ。…そんな人なんて消えてしまえばいいのに」
「…かぁしゃんもこわい…」
「ごめんなさいね。ちょっと本音が表に出ちゃったわ」
「…雫が柚に怖がられてどうするの」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

零下3℃のコイ

ぱんなこった。
BL
高校1年の春・・・ 恋愛初心者の春野風音(はるのかさね)が好きになった女の子には彼氏がいた。 優しそうでイケメンで高身長な彼氏、日下部零(くさかべれい)。 はたから見ればお似合いのカップル。勝ち目はないと分かっていてもその姿を目で追ってしまい悔しくなる一一一。 なのに、2年生でその彼氏と同じクラスになってしまった。 でも、偶然のきっかけで関わっていくうちに、風音だけが知ってしまった彼氏の秘密。 好きな子の彼氏…だったのに。 秘密を共有していくうちに、2人は奇妙な関係になり、変化が起こってしまう…

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

創作BL)相模和都のカイキなる日々

黑野羊
BL
「カズトの中にはボクの番だった狛犬の『バク』がいるんだ」 小さい頃から人間やお化けにやたらと好かれてしまう相模和都は、新学期初日、元狛犬のお化け・ハクに『鬼』に狙われていると告げられる。新任教師として人間に混じった『鬼』の狙いは、狛犬の生まれ変わりだという和都の持つ、いろんなものを惹き寄せる『狛犬の目』のチカラ。霊力も低く寄ってきた悪霊に当てられてすぐ倒れる和都は、このままではあっという間に『鬼』に食べられてしまう。そこで和都は、霊力が強いという養護教諭の仁科先生にチカラを分けてもらいながら、『鬼』をなんとかする方法を探すのだが──。 オカルト×ミステリ×ラブコメ(BL)の現代ファンタジー。 「*」のついている話は、キスシーンなどを含みます。 ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています。 ※Pixiv、Xfolioでは分割せずに掲載しています。 === 主な登場人物) ・相模和都:本作主人公。高校二年、お化けが視える。 ・仁科先生:和都の通う高校の、養護教諭。 ・春日祐介:和都の中学からの友人。 ・小坂、菅原:和都と春日のクラスメイト。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

処理中です...