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観月脩編
第五話 幸せは泡沫のごとく②
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何を言っているのかと鳩が豆鉄砲を食ったような顔で俺を見上げる。と、俺は先生の両脚を割ってしゃがみ込み、先生のベルトに手を掛けた。
「み、観月君、ちょっと待ってください……!」
「嫌です。俺我慢できないし、ちょっと怒ってるし」
ベルト、スラックスのホックを慣れた手つきで外し、チャックを下ろす。
「怒ってるんですか……?」
「ええ、まあ。二週間も会えないのに連絡もくれないし?」
「メール届いていませんでしたか? 毎日欠かさず送――っ、観月君……!」
先生の下着の中に手を差し入れ、まだ柔らかい先生のそれを取り出した。裏筋をなぞるように舌を這わせる。
「っ、駄目です……もし誰か来たら……」
「困るんですか? 俺と、もっと色々してるくせに」
ドアの鍵を掛けてあると言ってもいいが、しばらく先生の焦っている様子を楽しみたい。尖端を咥え、舌で舐め回しながら、根元を指で輪を作って上下に扱く。すると、先生のそこはすぐに頭を擡げ始めた。
「駄目だなんて言って、本当は結構溜まってたでしょ、センセ」
俺を見下ろしながら、先生が顔を赤らめる。大人をからかうのも面白いな、と硬くなった茎を喉に当たるところまで咥えた。先生のそれは俺の口の中に全部収まらない。が、これ以上奥に入れると流石に苦しい。
「……っ……観月君……」
もっと嫌がるかと思ったけれど、満更でもないのかもしれない。先生は俺を無理矢理引き剥がそうとはせず、俺の前髪を掻き揚げるようにして撫でた。
粘っこい液体が茎の尖端から溢れ出て、苦い味がし始める。舌で全体を舐め唾液で濡らし、滑りを良くしてから手で上下に扱いた。結局口だと根元の方に刺激がいかないから、勃起はしても射精はできない。
扱きながら、尖端を舐めていると先生のそれが一回り大きくなるのが分かった。
「観月君、もう……離してください……君の口に……」
「嫌だ。先生、俺怒ってるって言いましたよね?」
俺は思いっきり口を開けて、喉の奥に入るくらいまで茎を咥え込んだ。胃液だろうか、苦い味が喉の奥から迫上がってきて、蒸せそうになるのをぐっと堪える。
「……ッ」
びくっと先生が腰を浮かした瞬間、口の中いっぱいに生暖かいものが放たれ、苦い味が広がった。
「先生、いますかー?」
ノックの音と共に声がして、先生が驚いた顔でドアの方を振り向く。
「外出中って書かれてんじゃん。四限の後にしようぜ」
そう別の声がして、二つの足音がドアから遠ざかっていった。この部屋に入る前に、俺がドアの表札を変えておいたのが功を奏した。
深く溜息を吐いた後、先生は自分が俺の口の中に出したことを思い出したのか慌てた様子でテーブルの上のティッシュに手を伸ばす。俺はその手を掴んで止め、先生に見えるように喉を上下させた。
先生は短く息を吐き、俺の口の端から垂れた涎を指で拭い取る。
「……すみません。君を不安にさせるつもりはなかったんです」
俺は先生の手を握り、少し不貞腐れたように「別にいい」と呟く。
「……怒ってないけど、芳慈さんに……会いたかったっていうか」
妹のこともあって、いっぱいいっぱいになっていた。寄り掛かっても許してくれる人が側にいて欲しかった。
「私もです。君が、恋しかった」
俺の頬を撫でる手に頬を摺り寄せる。ごつごつとした大きな、温かい手に安堵する。
「今日はこれからバイトですか?」
「……バイトだったら、来ないですよ」
珍しく居酒屋のバイトも警備員のバイトも休みの日だった。今日こそは、と研究室の戸を叩いたのだ。
「私はまだ少しすることがあるので、すぐには帰れませんが」
そう言うと先生は下着とズボンを穿き直して、立ち上がって鞄を手に取った。そして、中から鍵を取り出し、俺に渡す。
「先に家で待っていてください」
家の鍵を貸してもらう、なんて、俺が信頼されている証拠だ。俺は先生にとって、そんな存在なのだ。
「……はい」
俺は大事にそのカギをジーンズのポケットに仕舞って、「待ってるんで早く来てくださいよ」と研究室を後にした。
幸せな気分だった。このまま天にも昇りそう、というのは言い過ぎかもしれないけれど。それでも、俺は学校の門を出るまでは、天国の門を潜って階段を駆け上がっているつもりだった。
「貴方、観月脩さん?」
突然話しかけられたことに驚いて立ち止まり、振り向いた。門の側に立った女性が、俺を見て一礼する。黒髪のボブカット、大きな黒い瞳が印象的な綺麗な顔をした女性だった。
「……誰ですか」
直ぐ側に黒のベンツが停まっている。何か、嫌なことが起こる。そんな予感がした。
「初めまして、鳥海の妹です」
――妹。
「み、観月君、ちょっと待ってください……!」
「嫌です。俺我慢できないし、ちょっと怒ってるし」
ベルト、スラックスのホックを慣れた手つきで外し、チャックを下ろす。
「怒ってるんですか……?」
「ええ、まあ。二週間も会えないのに連絡もくれないし?」
「メール届いていませんでしたか? 毎日欠かさず送――っ、観月君……!」
先生の下着の中に手を差し入れ、まだ柔らかい先生のそれを取り出した。裏筋をなぞるように舌を這わせる。
「っ、駄目です……もし誰か来たら……」
「困るんですか? 俺と、もっと色々してるくせに」
ドアの鍵を掛けてあると言ってもいいが、しばらく先生の焦っている様子を楽しみたい。尖端を咥え、舌で舐め回しながら、根元を指で輪を作って上下に扱く。すると、先生のそこはすぐに頭を擡げ始めた。
「駄目だなんて言って、本当は結構溜まってたでしょ、センセ」
俺を見下ろしながら、先生が顔を赤らめる。大人をからかうのも面白いな、と硬くなった茎を喉に当たるところまで咥えた。先生のそれは俺の口の中に全部収まらない。が、これ以上奥に入れると流石に苦しい。
「……っ……観月君……」
もっと嫌がるかと思ったけれど、満更でもないのかもしれない。先生は俺を無理矢理引き剥がそうとはせず、俺の前髪を掻き揚げるようにして撫でた。
粘っこい液体が茎の尖端から溢れ出て、苦い味がし始める。舌で全体を舐め唾液で濡らし、滑りを良くしてから手で上下に扱いた。結局口だと根元の方に刺激がいかないから、勃起はしても射精はできない。
扱きながら、尖端を舐めていると先生のそれが一回り大きくなるのが分かった。
「観月君、もう……離してください……君の口に……」
「嫌だ。先生、俺怒ってるって言いましたよね?」
俺は思いっきり口を開けて、喉の奥に入るくらいまで茎を咥え込んだ。胃液だろうか、苦い味が喉の奥から迫上がってきて、蒸せそうになるのをぐっと堪える。
「……ッ」
びくっと先生が腰を浮かした瞬間、口の中いっぱいに生暖かいものが放たれ、苦い味が広がった。
「先生、いますかー?」
ノックの音と共に声がして、先生が驚いた顔でドアの方を振り向く。
「外出中って書かれてんじゃん。四限の後にしようぜ」
そう別の声がして、二つの足音がドアから遠ざかっていった。この部屋に入る前に、俺がドアの表札を変えておいたのが功を奏した。
深く溜息を吐いた後、先生は自分が俺の口の中に出したことを思い出したのか慌てた様子でテーブルの上のティッシュに手を伸ばす。俺はその手を掴んで止め、先生に見えるように喉を上下させた。
先生は短く息を吐き、俺の口の端から垂れた涎を指で拭い取る。
「……すみません。君を不安にさせるつもりはなかったんです」
俺は先生の手を握り、少し不貞腐れたように「別にいい」と呟く。
「……怒ってないけど、芳慈さんに……会いたかったっていうか」
妹のこともあって、いっぱいいっぱいになっていた。寄り掛かっても許してくれる人が側にいて欲しかった。
「私もです。君が、恋しかった」
俺の頬を撫でる手に頬を摺り寄せる。ごつごつとした大きな、温かい手に安堵する。
「今日はこれからバイトですか?」
「……バイトだったら、来ないですよ」
珍しく居酒屋のバイトも警備員のバイトも休みの日だった。今日こそは、と研究室の戸を叩いたのだ。
「私はまだ少しすることがあるので、すぐには帰れませんが」
そう言うと先生は下着とズボンを穿き直して、立ち上がって鞄を手に取った。そして、中から鍵を取り出し、俺に渡す。
「先に家で待っていてください」
家の鍵を貸してもらう、なんて、俺が信頼されている証拠だ。俺は先生にとって、そんな存在なのだ。
「……はい」
俺は大事にそのカギをジーンズのポケットに仕舞って、「待ってるんで早く来てくださいよ」と研究室を後にした。
幸せな気分だった。このまま天にも昇りそう、というのは言い過ぎかもしれないけれど。それでも、俺は学校の門を出るまでは、天国の門を潜って階段を駆け上がっているつもりだった。
「貴方、観月脩さん?」
突然話しかけられたことに驚いて立ち止まり、振り向いた。門の側に立った女性が、俺を見て一礼する。黒髪のボブカット、大きな黒い瞳が印象的な綺麗な顔をした女性だった。
「……誰ですか」
直ぐ側に黒のベンツが停まっている。何か、嫌なことが起こる。そんな予感がした。
「初めまして、鳥海の妹です」
――妹。
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